蘇生の章2nd第二話 旅の支度

 

 ソウルキューブに関する調査を終え、故郷でひとときの休息を迎えていたクリスたちはアメリアからの召集を受け、レミアポリスへと集まった。クリスたちが王宮に集められた理由……それは魔界の王のための勉強を終え、一か月ぶりにリリシアがレミアポリスに戻ってくるとのことであった。リリシアが王宮に戻ってきたと同時に、魔界より腕の立つ二人の者がやってきた。一人はクリスたちと共にメディスを打ち倒したボウガン使いのディンゴと、もう一人は聖なる術を使う治癒術士(ヒーラー)のゲルヒルデがクリスたちの旅に同行することになった。魔界から来た二人を加え、一行は天界に行く方法を知る最長老に会うべく、天空に浮かぶ魔法の国であるエルジェへと向かうのであった……。

 

 最長老が眠りから覚め、大宮殿に戻ってくるようにとアメリアからの言葉を受け、クリスたちは急いで大宮殿へと向かい、謁見の間へと戻ってきた。

「アメリア様…ただいま戻ってまいりました。」

「うむ……。これで全員じゃな。もう少ししたら最長老が謁見の間に現れるので、決して無礼なマネはせぬようにな。」

アメリアが全員にそう告げた後、しばらく眠りについていた最長老がクリスたちの前に現れる。最長老は椅子に腰かけ、天界へと行く方法を話し始める。

 「君たちが地上界の者か…アメリアから話は聞いておる。そなたたちが天界に行きたいと申しておるが、何故そなたらは天界へと向かうのだ…?

最長老に何のために天界へと向うのかを尋ねられ、クリスは鞄の中からレイオスたちの魂が封印されているソウルキューブを取り出し、最長老に見せながら答える。。

「最長老様…私たちは、このソウルキューブに封印されている魂を開放するため、私たちは天界へと向かいたいのです…。」

クリスがそう言ったあと、最長老はクリスが手に持ったソウルキューブをじっくりと見つめはじめる。

「なるほどな…そなたの言うとおり、その石の中にはレイオスとその仲間たちの魂が封印されておるようじゃな…。大魔導ルーナよ、前に出て地上界からの客人に天界へと向かう方法を述べるのじゃ…。」

最長老がそう言った瞬間、最長老の使いでもあり魔術に精通する大魔導、ルーナがクリスたちの前に現れる。千年前のヴィクトリアス王国の二つの宝石を巡るヴィンたちの戦いの後、ルーナは最長老に不老長寿の肉体を与えられ、もうかれこれ千年以上生き続けている仙女であった。

 「はじめまして…皆さん。私が大魔導のルーナでございます。あなたたちが天界へと行きたいと言うことは、最長老から聞いております。天界に向かうのなら、エルジェの大宮殿の転送陣から天への道へと行くことができます。しかし天への道は長く険しい道のりです…。その苦難の道を乗り越えた者のみが、天界へと足を踏み入れることができると言われています…。もし行くのなら、しっかりと準備をしてから天への道へと向かわれることをお勧めします……。」

ルーナの言葉の後、最長老が静かに口を開く。

「ルーナの言うとおり、天への道は長く険しい道だ…。エルジェの市場でしっかりと旅の準備をしたほうがよい。これは私からの餞別だ。受け取るがいい……。では私はこれにて失礼する。」

アメリアに小さな袋を手渡した後、最長老はいそいそと寝室へと戻って行った。アメリアは早速小さな袋の紐をほどき、中の物を取り出す。

「ルーナ殿、この袋には小さな石が入っていたのだが、何か使い道がありそうなのか…?

「その石は転送石といって、天への道でなにかあった時に使えば皆さんを一瞬にしてエルジェに戻ることができる石です。アメリア様…そして地上界の皆様、旅の無事をお祈りしています。」

ルーナはアメリアにそう告げた後、最長老のいる寝室へと戻っていく。ルーナが去った後、アメリアはクリスたちを集め、これからの旅の計画を話し始める。

 「さて…先ほどの話の通り、天への道に乗り込むわけなのだが、天界にたどりつくまで数日かかるかわからないかもしれないな。今から市場へと向かい、必要な物を買い込むとしよう……。」

大宮殿を後にしたクリスたちは天への道を攻略するために必要な道具を買い込むべく、エルジェの市場へと向かっていった……。

 

 市場へと到着したクリスたちは、まず仲間たちの傷を回復する薬などが売っている店を訪れた。薬屋には回復薬はもちろん、魔力や状態異常を回復する道具などが所狭しと置かれていた。

「いらっしゃいませ……。」

薬屋の店主が笑顔の表情で、ここを訪れたクリスたちを迎える。クリスたちは回復する薬を手に取り、どんな効能があるのかを見定める。

 「皆さん、私は調合が得意というだけあって、薬のことなら私がよく知っていますので、わからない所があれば是非とも私に聞きにきてくださいね…。」

薬の調合が得意なゲルヒルデがそう言った瞬間、アメリアがこう言葉を返す。

「うむ。効能のわからない薬の判別はそなたに任せる。では買い物といこうか…。」

クリスたちは旅に必要な薬を探すべく、それぞれ分担した探すことにした。薬を探し始めてから数分後、カレニアが何やら黒くてドロドロした液体の詰まった瓶をゲルヒルデの前に見せる。

「すみません…。この薬の効能はどんな効果ですか…?

「これはグレイウーズの体液が凝縮された液体ですわ。粘着性があるので足止め用の罠を作るのに最適ですが、これは回復する薬ではないわ…。体力や魔力を回復する薬を探すなら、液体の色は明るいほうがいいわ。」

ゲルヒルデから指摘を受けたカレニアは、持ってきたグレイウーズの体液を棚に戻し、再び薬を探し始める。その数分後、緑色の液体の入った瓶を手に、カレニアがゲルヒルデのもとへと戻ってきた。

「ゲルヒルデさん、この緑色の薬はどうでしょうか……。」

ゲルヒルデはカレニアの持ってきた緑色の液体が入った瓶を手に取ると、じっくりと薬の成分を見定め始める。

「これは体力を回復させる薬ね。カレニアさん…この薬を買うように、アメリア様に伝えてください。」

体力を回復する薬を見つけたカレニアは、アメリアにこの薬を買うようにと伝えると、アメリアはカレニアが持ってきた薬を手に、薬屋の店主のほうへと向かっていく。

 「店主よ、この体力を回復する薬を20個と、マジックポーションが10個ほど欲しいのだが、私に売ってくれぬか…。」

アメリアの言葉を聞いた薬屋の店主は、すぐさま倉庫へと向かい薬の準備を始める。数分後、薬屋の店主が大きな箱が乗った台車を押し、アメリアの前に現れる。

「はぁはぁ…回復薬が20個、マジックポーションが15個ですね。あとおまけに浄化薬5個をお付けいたします…。以上で3500Gでございます。ではそちらのほう、外に出しておきます。」

「ありがとう。では皆の者、次は食料を買いだめするとしよう。腹が減っては戦は出来ぬというからな……。」

アメリアは薬の代金を渡すと、薬屋の店主は薬の箱が乗った台車を薬屋の外に出した後、再び薬屋の中へと戻ってくる。薬屋での買い物を終えた一行は薬が入った箱が乗っている台車を押しながら、市場にある食料品を取り扱う店へと向かうのであった……。

 

 市場の奥へと来たクリスたちは、肉や果物などを売る食料品市場へとやってきた。その中でもひときわ大きな食料品を扱う店を見つけたアメリアは、そこで買い物をするようにとクリスたちにそう言う。

「皆の者、ここならいろいろな材料が買えそうだ。まずは調理に必要な調理セットと穀物、肉類、野菜、果物といった素材を買わなければな…。早速だが、料理の材料となる素材を探してまいれ…。」

食料品を扱う店の中へと入ったクリスたちは、これからの長く険しい旅に備えるべく食料を買うようにアメリアよりと命じられる。

 「さて、料理の材料となるものを探すわよ。とりあえず、肉類と野菜類は体力をつけるのに必要として、あとはデザートとして果物も欲しいところね。じゃあ、買い物を始めましょう。」

リリシアの言葉の後、クリスたちはそれぞれ役割を分担し、店内で食材探しを開始する。クリスたちは野菜や穀物など料理に使えそうな食材をある程度買い込んだあと、肉類が置かれている場所へと移動する。

「上質な肉がたくさん置いてあるようだな…。まぁ牛肉は必需品として、あと竜の肉も買っておきたいところだ。竜の肉は結構高値だが、栄養価が高いので少量口にするだけでも腹が膨れるんだぜ……。リリシア、とりあえずこれ買うから、籠の中にいれていいかな…。」

袋詰めにされた竜の肉を手にしたディンゴはクリスたちにそう告げた後、買い物籠の中へとそれを入れようとした瞬間、リリシアがディンゴに棚に戻すように命じる。

「ダメよ…。これは2000Gもする高価な肉だから買えないわ。ディンゴ、もう少し安い肉にしてちょうだい…。」

「わかった…。とりあえずこれは棚に戻して、このロックレイヴンの肉とダイヤウルフの肉を買うとしよう。魔物の肉は安い値段で買えるから得だな…。リリシア、それ籠の中に入れるぞ。」

リリシアはディンゴの持ってきた肉の値段を見定めた後、首を縦に振り了承のサインを送る。

 「飛翼鳥の肉と野生の銀狼の肉ね……これならクリスたちの口に合いそうね。では清算をすませましょう。そのあと大宮殿に戻って明日に備えて旅の準備をするわよ…。」

商品の清算をすませた後、一行は買ってきたものを台車に乗せ、市場での買い物を終えて大宮殿へと戻ってきた。大宮殿へと戻った一行の前に、大魔導のルーナが出迎える。

「アメリア様と地上界の皆様、今晩はここでお休みください。では私が今からあなたたちを部屋へと案内します。」

ルーナはクリスたちにそう言ったあと、大宮殿にある大きな部屋へとクリスたちを案内する。

 「ここは客人を泊めるために作られた部屋です。四つしかベッドがありませんが、ゆっくりしてください…。食事の準備ができていますので、支度を終えたら大広間へと来てください。」

アメリアは軽く一礼し、クリスたちのために部屋を提供してくれたルーナに感謝の意をあらわす。

「ルーナ殿、いい部屋をありがとう…。皆の者、ではさっそく市場で買った物を整理するとしよう…。」

アメリアはルーナにそう告げた後、市場で買った物を床に並べ、旅の支度を始める。まずは薬屋で買った回復薬20個とマジックポーション15個が入った箱を開け、中のものを取り出し仲間たちに渡す。

「回復薬は一人4個、マジックポーションは3個ずつ、状態異常を回復する浄化薬は一人一個ずつ鞄の中に入れるがいい…。調理道具と食材はカレニア、そなたが持っておけ。そなたは仲間の中でも唯一調理ができる存在だからな…。味が劣化するのが早い肉類は、私の術で凍らせておいたので、そなたの炎の術で解凍してから調理するがよい。」

薬類をクリスたちに分け与えた後、調理道具と食材一式をカレニアに手渡す。

 「ありがとうございます…。私、料理のほうは得意なので、皆さまに美味しい料理を振る舞えるよう、努力します。でも…道中で食材が無くなった時はどうするんですか……?

不安げな表情のカレニアの言葉の後、ディンゴが一つの提案を出す。

「食料が尽きたらどうするか…か。まぁ食材が無くなったら道中で襲ってくる魔物の肉でも剥ぎとって調理すれば大丈夫だ。」

ディンゴの言葉の後、アメリアはクリスたちを集め、夕食をとるべく大広間へと移動する。大広間で夕食をとり、風呂に入り一日の疲れを洗い流した後、部屋に戻り就寝の準備に入る。

「さて、今日は明日に備えて寝ましょう。明日は長く険しい旅になるが、みんな頑張りましょう!!

リリシアが仲間たちにそう言ったあと、ベッドに寝転がり眠りにつくのであった……。

 

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