蘇生の章第五十五話 終焉告げる黒き竜、メディス!!
溶岩煮えたぎる決戦場での死闘の末、リリシアはヴァーミリアンを打ち倒し、クリスたちの元へと戻ってきた。ヴァーミリアンとの戦いを終えた一行はメディスの持つ黒き魔力を頼りに、先を進んで行くと、そこにはメディスの姿がそこにあった。強大な魔力を持つメディスに苦戦を強いられていたクリスたちであったが、仲間との連携によってメディスの両腕と首を刎ね飛ばし、勝利したかのように見えたのであったが、メディスの心臓は動いていた。その異変にいち早く察知したリリシアがメディスの方に振り向いた瞬間、メディスの体が怪しく蠢き、徐々に黒き鱗に覆われた黒竜の姿へと変貌していった。黒竜として目覚めたメディスに、クリスたちはなす術は無いのであろうか……。
首が生え、完全なる黒き竜へと変貌を遂げたメディスは、怒りに満ちた魔眼でクリスたちを睨みながら近づいてくる。クリスたちは武器を構え、メディスに立ち向かっていく。
「相手は伝説とされている黒き竜よ……。一撃の破壊力はとにかく強力だから気をつけてっ!!」
フィリスがクリスたちにそう伝えると、メディスに立ち向かっていくクリスたちをサポートに入る。メディスの足元に来たクリスたちは、黒き鱗に覆われたメディスの足に攻撃をしかける。
「足に攻撃を一点に集中させれば、黒竜でも立っていられなくなるものよ…。ここは一気に足を攻めて転倒を狙いましょう!」
足を狙うクリスたちに気付いたのか、メディスは軽く尻尾で地面を叩き、クリスたちをなぎ払う準備を始める。そのとき、リリシアのその尖った耳が、そのわずかな音を捕らえていた。
「みんな、尻尾の一撃が来るわっ!!ひとまず武器を納めて回避するわよ!」
リリシアの声を聞いたクリスたちは、一気に回避の態勢に入る。クリスたちがメディスの足元から離れたそのとき、メディスの大きな尻尾がなぎ払った。
「あの尻尾……実に厄介だわ。うかつに近づくと危ないわ。ディオン、獄炎竜と戦った時みたいにスパッとあの厄介な尻尾を斬り落とせないかな…?」
「いくらドラゴンキラーでもそいつは無理そうだが……やるしかない!!」
メディスの尻尾を斬り落とすべく、ディオンはメディスの背後に回りこもうとする。しかしディオンの存在に気付いたメディスは、ディオンのほうへと振り向き、口を大きく開け始めた。
「まずいっ…!!こちらの存在に気付かれてしまったか!?ここは奴から離れよう!」
大きく開けた口の中で、黒き炎弾が徐々に大きくなっていく。ディオンが急いでメディスから離れた瞬間、黒き炎弾が地面に炸裂する。
「奴の吐き出す黒い炎弾に当たれば致命傷では済まないな…。この状況で尻尾を斬り落とすのは不可能だ。仕方ない…ここは一時撤退しよう。」
この状況では無理だと判断したディオンは、クリスたちの所へと戻っていく。ディオンがクリスたちの所へと戻ってきたその時、外での騒ぎを聞きつけた大勢の魔界兵が戦いの場へとなだれ込んできた。魔界兵たちの背後には、ディンゴとレジスタンスたち、そして二人の召使いのダークエルフまでもが来ていた。
メディスの怒りを静めるべく、魔界兵たちが説得を始める。
「メディス様…お気を確かにっ!」
「このままでは王宮が崩壊してしまいます。どうかお静まりを…。」
黒竜と化したメディスは、魔界兵たちの言葉に耳を貸さなかった。メディスは黒き眼で魔界兵を睨み付けると、ゆっくりと兵士たちの下へと足を進める。
「キシャアアアアアアッ!!」
黒き竜の咆哮を上げる。しかし魔界兵たちは耳をふさぐ素振りすら見せなかった。どうやら魔界兵たち身につけている兜が、耳栓の役割を果たしていた。
「やばいっ!!メディス様がこちらに近づいてきたぞっ!!皆の者、武器を構えろっ!!」
魔界兵たちが武器を構え、一気にメディスに攻撃を仕掛ける。メディスは尻尾を振り回し、魔界兵たちを次々となぎ払っていく。
「ぐわあっ!!」
黒く巨大な尻尾の一撃を受けた魔界兵たちは、大きく空中に吹き飛ばされていく。怒りの表情を浮かべるメディスは口を大きく開け、黒き炎弾を魔界兵たちめがけて吐き出す。
「は…歯が立たんっ!!ここはひとまず退……ぐわあああっ!!」
王を守るべき魔界兵たちを、黒き竜は次々と葬り去っていく。
ある者は、黒き炎弾によって消し炭となった。
またある者は尻尾の一撃により首が刎ね落とされ、即死であった。
そして最後の者は、黒き竜の胃袋へと飲み込まれた。
あれほどいた魔界兵たちは、すべてメディスによって殺されてしまった。しかしまだメディスの猛攻は止まらない。黒き魔眼を光らせながら、クリスたちのところへと向かっていく…。
「おやめくださいメディス様っ!このままだと王宮は壊滅してしまいます!!」
メディスの目の前に、二人の召使いのダークエルフが現れ、メディスにそう言う。しかしメディスは二人の召使いのダークエルフを睨みつけると、そのまま口を大きく開き、炎弾を吐き出そうとする。
「このままでは魔界が…すべてが滅んでしまいますわっ!」
召使いのダークエルフの一人がそう言った瞬間、メディスの口から黒き炎弾が放たれ、二人の召使いのダークエルフに襲い掛かる。
「あぶないっ!!」
メディスの口から吐き出された黒き炎弾が召使いのダークエルフに直撃しようとした次の瞬間、ディンゴが二人を抱えて地面へと飛び下がるが、爆風によって三人は大きく吹き飛ばされてしまった。
「何故私を助けた?」
「どうして私なんかのために…。」
ディンゴに助けられた二人の召使いのダークエルフは、唖然となる。
「危ないところだったな……。メディスがあの様子だと何を言っても無駄だ。君たち、死にたくなければ今すぐここから逃げるんだっ!!」
ディンゴは二人の召使いのダークエルフを逃がした後、レジスタンスの武器庫から持ってきたライトボウガンを構えてクリスたちの下へと駆けて行く。
「あいつ…うまく魔界兵たちから逃げてきたみたいね。」
ボウガンを構えてクリスたちの下へと急ぐディンゴを見たリリシアがそう呟く。ディンゴは走りながらライトボウガンに弾を補填し、メディスに放つ態勢に入る。
「これでも喰らいやがれっ!!忌まわしき黒竜めっ!」
引き金を引いた瞬間、装填した弾が炎の矢となってメディスの黒き鱗に包まれた体に放たれた。ボウガンから発射された弾は、メディスの体に突き刺ささった瞬間破裂し、飛散する。
「あらら…当たった瞬間弾が砕け散ってしまったわ。これじゃあ何のダメージも与えられないわね。」
リリシアが呆れ顔でそう呟いたそのとき、飛散したボウガンの弾の欠片たちが一斉に小爆発を起こす。その爆発により、僅かではあるがメディスの黒き鱗がはがれる。
「この弾は炸裂弾だ。刺さった後欠片が飛散し、爆発する弾だ。今の爆風で僅かだが鱗が剥がれたようだ。」
強固な黒き鱗が剥がれたのはいいが、クリスたちには届かない首の辺りであった。
「ディンゴ…あなたは鱗が剥がれた部分を狙ってちょうだい。私は尻尾にダメージを与えるわッ!」
鉄扇を構え、リリシアはメディスの尻尾の方へと向かっていく。ディンゴは鱗が剥がれた首の辺りに狙いを定め、精神を集中させる。
「メディスの奴、常に動いているから狙いが定まらないな…。」
精神を研ぎ澄ませながらライトボウガンを構えるディンゴは、メディスの動きが止まるのを待ち続けていた。リリシアが尻尾へと近づいたそのとき、メディスの動きが一瞬止まった。
「どうやらリリシアの気配に気付いたようだな……今だっ!!」
ディンゴは急いでライトボウガンに炸裂弾を装填すると、メディスの首に狙いを定めて引き金を引く。放たれたボウガンの弾は一筋の炎の矢となり、先ほどのダメージで剥き出しとなった皮膚に突き刺さる。
「奴の皮膚に刺さったぞ。この状態で爆発すれば大ダメージだっ!!」
メディスの皮膚に突き刺さった炸裂弾が爆発した瞬間、首を横に振りながら一瞬よろめきだした。リリシアはその隙にメディスの尻尾に攻撃を仕掛ける。
「ありがとうディンゴ!!炸裂弾のおかげで奴は一瞬怯んだわ!この隙に私は一気に尻尾に攻撃を仕掛けるから、ディンゴは追撃をお願いっ!!」
鉄扇に赤き炎の力を纏わせると、リリシアは鉄扇を振り上げ、メディスの尻尾に斬りかかった。赤き炎の力が加わった斬撃は、メディスの強固な鱗をも突き通すほどであった。魔姫は乱舞の態勢に入り、眼にも留まらぬスピードで鉄扇を振るい、追撃する。
「はあああああっ!!」
凄まじいスピードで振るわれる鉄扇の一撃が、メディスの尻尾に襲い掛かる。赤き炎の力が加わった鉄扇の一撃により、メディスの強固な黒き鱗が次々と剥がれ落ちていく。
「ディオン、出て着て頂戴っ!!尻尾を斬りおとすビッグチャンスよっ!!」
尻尾の鱗の一部分が剥がれ落ちたのを見計らい、リリシアがディオンを呼ぶ。その声を聞いたディオンは、すぐさまリリシアの下に駆け寄る。
「ディンゴのおかげで、奴は怯んでいるわ。尻尾を斬り落とすなら今のうちよ…。」
ディオンはドラゴンキラーを振り上げ、力を込めてメディスの尻尾に振り下ろした。鱗が剥がれたとはいえ、竜の皮膚は硬く、尻尾を斬り落とすまでには至らなかった。
「ダメだ…。多少刃が食い込んだのだが、これでは尻尾を斬り落とせん。リリシアよ、私に力を貸してくれっ!!」
「わかったわ!!私の赤き炎の力をあなたの剣に注いであげるわ!!」
リリシアがドラゴンキラーに手を添えた瞬間、赤き炎の力が刀身に流れ込んでいく。赤き炎の力を帯びたドラゴンキラーは、赤き竜殺しの大剣と化した。
「これなら奴の尻尾を完全に斬りおとせそうだな…。リリシアよ、私と共に剣を振るってくれるか?」
その言葉を聞いたリリシアは、ディオンと共に赤き竜殺しの大剣を握り締め、大きく振り上げる。
「赤き竜殺しの大剣よ……悪しき黒竜の尻尾を斬り落とさんッ……!!」
「いくぞリリシアよっ!!一気に尻尾めがけて振り下ろすぞっ!」
リリシアの赤き炎の魔力が込められた赤き斬撃が、メディスの尻尾に振り下ろされた。赤き竜殺しの斬撃が炸裂し、メディスの黒き尻尾を斬り飛ばした。
「ギジャアアアアッ!!」
尻尾を切られたことにより、メディスはその痛みに悶えていた。
「これで尻尾の一撃を喰らうことはなくなったわ。さぁみんな、ここで一気に決着をつけるわよっ!!」
リリシアがクリスたちを集め、そう伝える。尻尾を斬り落とされたメディスは怒りの表情でクリスたちの方へと振り向き、血走った眼を光らせる。眼が光った瞬間、がちがちという音と共にメディスの体が徐々に硬くなっていく。
「どうやら肉質硬化が始まったみたいだな……。この状態なら竜殺弾が効きそうだな…。」
ディンゴはライトボウガンを構え、静かに竜殺しの弾丸を装填し、メディスの頭に照準を合わせ、静かに攻撃のチャンスを待っていた……。
メディスの尻尾を斬り落としたことで、厄介な尻尾によるなぎ払い攻撃ができなくなった。クリスたちはメディスの足元に向かい、一斉に攻撃を加え始める。しかし肉質硬化が始まっている今、武器での攻撃では歯が立たなくなっていた。
「ダメっ!!ぜんぜん歯が立たないわ……。フィリス様、奴の肉質を下げる術をお願いっ!!」
「わかったわ。今すぐにでも奴の肉質を下げる術を唱えるわっ!!ディフェンス・ブレイクっ!!」
攻撃を続けるクリスたちであったが、いくらメディスに攻撃しても弾かれて意味が無かった。フィリスはメディスの肉質を下げるべく、防御の力を打ち砕く術を唱え始める。術を受けたメディスの肉質硬化が打ち消され、クリスたちの武器が通るようになった。
「これで肉質硬化はしばらくの間打ち消されたわ。みんな、メディスの足に攻撃を集中させるのよっ!!」
フィリスの掛け声と共に、クリスたちは武器を構えて一斉に攻撃を仕掛ける。足を攻撃されているメディスは翼を大きく羽ばたかせ、風圧でクリスたちの動きを封じながら宙に舞い上がる。
「ギシャアアアアアアアアッ!!」
天を突く咆哮と共に、メディスは口から黒き炎弾をクリスたちめがけて吐き出し始める。クリスたちを守るべくフィリスは守りの結界を張るが、黒き炎弾の直撃を受けた結界は破壊されてしまった。
「私の結界が…破壊されてしまったわ。みんな、ここは一気に逃げ……きゃあっ!!」
クリスたちが逃げようとした瞬間、二発目の黒き炎弾がクリスたちの目の前で炸裂し、爆風によってクリスたちは大きく吹き飛ばされる。そして最後の三発目にはなった黒き炎弾は、リリシアに向けて放たれたが、素早い身のこなしでかわしきる。
「メディス……よくも私の仲間を傷つけてくれたね。ここは私が相手よっ!!」
仲間を傷つけられ、怒りの表情を浮かべるリリシアは鉄扇を構えると、六枚の翼を背中に生やし、一気に宙へと舞い上がる。
「我が翼よ…赤き炎の力を纏いて相手を斬りさかん……。」
リリシアが呟いたそのとき、六枚の翼が赤き炎の力が宿り、赤く染まる。リリシアは翼を大きく羽ばたかせ、メディスに突進する。
「キシャアッ!!キシャアアアッ!!」
怒り狂うメディスは黒き炎弾をリリシアに向けて放つも、魔姫の素早い身のこなしによって当たらなかった。炎を吐き終えた瞬間、リリシアの赤き翼の一撃がメディスの顔面を切り裂いた。
「喰らいなさい…メディスっ!!」
赤き翼の一撃により、メディスの左眼が潰れた。左眼を潰されたメディスは、怒りの表情でリリシアの方を睨み付ける。リリシアの方を向いた瞬間、ディンゴがライトボウガンの引き金を引き、竜殺しの弾丸をメディスに向けて放つ。
「喰らえっ!!竜殺弾ッ!」
ライトボウガンに装てんされた竜殺しの弾丸は、緑色の炎の矢となりリリシアの翼の一撃で潰れたメディスの左眼に突き刺る。竜殺弾が炸裂した瞬間、メディスの左の眼球が完全に潰れ、メディスの左眼から血飛沫が飛び散る。
「ギシャアアアアアアアッ!!」
左眼を潰された痛みにより、空中に浮かんでいたメディスは地面へと大きく落下する。リリシアは一気に急降下し、鉄扇を構えてメディスの頭に近づく。
「頭を狙うなら今しかないわ。起き上がってしまえば厄介だからね…。」
鉄扇を振るい、メディスの頭に攻撃を始める。魔姫は鉄扇の振るうスピードを徐々に上げ、乱舞の態勢に入る。
「はあああああっ!!」
鉄扇の乱舞が、メディスの頭部に次々と襲い掛かる。目にも留まらぬ斬撃により、メディスの角が真っ二つに折れ、ボロボロになる。ある程度攻撃を加えた後、リリシアは一気に後ろへと下がる。
「そろそろ立ち上がりそうだわ…。ここは一旦離れましょう。」
リリシアが後ろへと引いた瞬間、地面に倒れていたメディスは立ち上がり、左眼から血を流しながら血走った目で再びリリシアを睨み付ける。クリスたちが倒れた今、怒りのメディスがリリシアに黒き牙を向く!!