蘇生の章第五十四話 伝説の黒竜
驚異的な発電・放電能力を持つメディス四天王のひとりであるサンディーラを退けたクリスたちは、ついに王座の間へと辿り着いた。王座に座するメディスは四天王のリーダーであるヴァーミリアンに侵入者の討伐を任せると、いそいそと王座の間を後にした。ヴァーミリアンが異次元へと続くワームホールを発生させ、リリシアはヴァーミリアンと共に決戦場へと吸い込まれた。溶岩が煮え滾る決戦場で、今まさに黒き炎と赤き炎の戦いが始まろうとしていた……。
リリシアは六枚の翼を広げ、大きく宙へと羽ばたく。ヴァーミリアンは黒き炎の力で出来た4枚の黒き翼を生やすと、一気にリリシアに向かっていく。
「何っ!!貴様…背中から翼を生やし空中に浮かぶとは!?ならばこちらもメディス様からいただいた黒き炎の力なら……はああああぁッ!!」
四枚の黒き翼を羽ばたかせ、猛スピードでリリシアの後を追う。ヴァーミリアンの気配に気付いたのか、リリシアが振り向き、攻撃の構えを取る。
「ここまで追ってくるとは…さすがは四天王のリーダーね。だが、元七大魔王である私には敵わないわよっ!!」
リリシアはその手に鉄扇を握り、一気にヴァーミリアンに攻撃を仕掛ける。しかし黒き翼で空を飛ぶヴァーミリアンはリリシアの攻撃を次々とかわしていく。
「黒き炎の力をあまり舐めないでいただこう…。黒き翼よ、あの小娘を焼き尽くせっ!!」
ヴァーミリアンの翼が黒き炎となり、リリシアに迫ってくる。黒き炎は触手のように伸縮し、リリシアの翼を燃やそうとする。
「フハハハハッ!!翼が燃えれば一気に溶岩へと真っ逆さまだな。貴様もここで終わりだっ!!」
ヴァーミリアンがそう嘲笑ったそのとき、黒き炎の威力がどんどん薄れていくのを感じていた。ヴァーミリアンがふと振り向くと、そこには闇のオーラを纏ったリリシアがそこにいた。
「お…俺の黒き炎が、かき消されていく!ここは一旦引いて攻撃の手段を考えなければ……。」
黒き炎がリリシアに触れた瞬間、闇のオーラにより黒き炎はかき消されていく。ヴァーミリアンは次の攻撃の手段を練るべく、一旦リリシアから離れる。
「ヴァーミリアンの奴、一旦引くつもりね。しかしそうはさせませんわよっ!!」
リリシアは翼を大きく広げ、スピードを上げてヴァーミリアンを追うべく、滑空を始める。スピードが加わり、リリシアの翼は白き風を纏い始める。
「お…追ってきやがった!!ここはスピードを上げて引き離せねば!」
ヴァーミリアンは黒き炎の力を最大限まで高め、リリシアとの距離を引き離そうとする。
「逃がしはしませんわよ……。ここで終わりにして差し上げますわっ!!」
リリシアは高速で翼を羽ばたかせると、翼に纏った白き風が大きな竜巻となってヴァーミリアンへと襲い掛かる。
「な…なんだっ!!身動きがとれん…!!小娘め、何をしやがった!」
リリシアの放った白き竜巻が、ヴァーミリアンの体を絡めとる。リリシアは翼を大きく広げた後、身動きの取れないヴァーミリアンに向かって滑空を始める。スピードが加わったリリシアの六枚翼は、刃のような鋭さとなる。
「この一撃で……あの世に送ってさし上げますわっ!ウイング・ブレイドッ!!」
風を孕み、鋭い刃と化した黒き六枚翼の一撃が、ヴァーミリアンの体を切り裂いた。六枚翼によって切り裂かれたヴァーミリアンは、そのまま溶岩へと落下していく。
「しまった!!小娘の放った白い竜巻のせいで、黒き翼が無くなってしまったではないか!!ちくしょう…こんな小娘ごときに敗北を喫するとは……!!」
その言葉を最後に、ヴァーミリアンは溶岩へと落ちていった……。しかしヴァーミリアンに勝利したのいいが、一向に元の世界に戻るためのワームホールが発生しなかった。
「ヴァーミリアンは溶岩に落ちて死んだはずなのに…どうして元の世界に戻れないのよ…。」
リリシアがそう呟いた瞬間、溶岩の中から死んだはずのヴァーミリアンが現れた。溶岩の中から出てきたヴァーミリアンは、溶岩によって全身を焼き尽くされたが、黒き炎の力によって溶岩人間となり、生きていたのである。
「リリシアよ…よくも私をこのような姿にしてくれたなっ!しかし黒き炎の力で溶岩人間となって蘇った……。さぁリリシアよ、最後の勝負だっ!!」
溶岩人間と化したヴァーミリアンは、黒き炎を纏いながらリリシアへと近づいてくる。相手は溶岩で出来た人間だ。うかつに攻撃すれば火傷では済まされない。
「熱い…近づいてくるだけで身を焦がすような猛烈な熱風が襲い掛かってくるわ…。ここは奴の動きを封じることが先決ね。」
リリシアは水の魔力を集め、ヴァーミリアンに向けて放った。溶岩人間と化したヴァーミリアンにとって、水は最大の弱点であった。
「水の魔力など、黒き炎の力で蒸発してくれるわっ!!」
水の魔力はヴァーミリアンに命中する前に、身に纏う黒き炎によって蒸発してしまった。ヴァーミリアンは黒き炎の力を最大限まで高め、一気にリリシアに反撃をしかける。
「うおおおおおおおおっ!!」
雄叫びと共に、ヴァーミリアンの体が黒き炎に包まれる。リリシアは水のオーラを纏い、少しでも熱のダメージを防ごうとする。
「このままヴァーミリアンの体から放たれる熱を受ければ、大火傷じゃ済まされないわ。ここは水のオーラで少しでも熱のダメージを防ぐしかないわね。あれ?ヴァーミリアンの体がだんだん崩れていくわ。どうやら黒き炎の力を制御しきれなかったのかしら……。」
黒き炎を発し続けるヴァーミリアンの体に、一つの異変が起きていた。溶岩で出来た体が強大な黒き炎の力に耐え切れず、ボロボロと崩れ落ちていく。
「馬鹿ね……黒き炎の力をなめているからこうなるのよっ!!キャハハハハッ!」
リリシアが嘲笑いながら、己の力に耐え切れずボロボロと崩れ落ちるヴァーミリアンを見ていた。しばらくして、ヴァーミリアンは完全に黒き炎に焼かれ、灰となった。
ヴァーミリアンが倒されたことにより、元の世界に戻るワームホールが現れた。ワームホールが現れた瞬間、決戦場は大きな揺れと共に崩壊を始めていた。
「早くクリスたちのところへと戻らないと…溶岩に飲み込まれてしまいそうだわっ!!」
ワームホールへと向かうリリシアに、溶岩の波が押し寄せてくる。リリシアは翼を広げて宙に浮かぶと、一気にワームホールのあるほうへと向かっていく。
「決戦場の火山が噴火を始めたわね。早くしないと私まで死んじゃうわ!!」
決戦場の火山が轟音とともに噴火し、火山岩が決戦場に降り注ぐ。猛スピードで滑空するリリシアは降り注ぐ火山岩をかわしながらワームホールを潜り抜け、無事にクリスたちの所へと戻ってきた。
ヴァーミリアンとの戦いに勝利して戻ってきたリリシアに、クリスたちが駆け寄る。
「よかった…無事でいてくれて!!さぁ、メディスの後を追いましょう!」
「四天王はすべて倒した。後はメディスだけだな。とりあえずリリシアの手当てが終われば、すぐにでも後を追おう。」
ガルフィスがヴァーミリアンとの戦いで傷ついたリリシアの手当てを済ませた後、クリスたちはメディスを追うべく、王座の間の裏口へと向かおうとした瞬間、二人の召使いのダークエルフがクリスたちの目の前に現れ、そう言う。
「メディス四天王のリーダーであるヴァーミリアンを倒したことはほめてあげましょう…。しかしあなたたちをメディスのところへと行かせるわけには行きません……。ここで死んでもらいます。」
召使いのダークエルフの一人が笛を取りだし、笛を吹き始める。王座の間に、綺麗な笛の音色が響き渡る。
「あいつ…こんなときに笛なんか吹きやがって……。」
召使いのダークエルフの突然の行動に、ディンゴは唖然となっていた。しばらくして、笛の音色を聞きつけた魔界兵たちが王座の間の中へとなだれ込む。
「魔界兵たちよ…その者たちを排除せよっ!!」
笛の音を聞いて駆けつけてきた魔界兵たちがクリスたちを取り囲むと、召使いのダークエルフが兵士にクリスたちを排除するように命じた。魔界兵たちは剣を構えると、それをクリスたちに突きつける。
「王宮の中に入り込んだのは貴様らかっ!ならばここで排除する!!」
「侵入者は抹殺するのみ!!」
魔界兵たちに取り囲まれたクリスたちは、武器を構えて魔界兵たちを突っ切る態勢に入る。しかし兵の数が多く、いくら退けても意味が無かった。
「ダメだわ。数が多いから強行突破できないわ。それなら私が……。」
数の多さに苦戦するクリスたちを見たリリシアは、鉄扇を手に大きく回転を始めた。するとリリシアの周囲に真空の刃が放たれ、魔界兵たちを切り刻む。
「リリシアのおかげで、魔界兵たちが次々と倒れていくわ!!みんな、今のうちに進むわよ…。」
リリシアが魔界兵たちと戦っている間に、クリスたちは王座の間の裏口へと進んで行く。少し遅れてリリシアが裏口へと向かおうとしたそのとき、ディンゴが呼び止める。
「ここは俺たちに任せろ!!リリシアはクリスたちの所へと急ぐんだっ!」
ディンゴの言葉を聞いたリリシアは少し頷いたあと、クリスたちの所へと向かって行った。リリシアが王座の間を去ったその時、新たに現れた魔界兵たちが王座の間に押し寄せてくる。
「侵入者だ、直ちに排除せよっ!!」
「王宮を荒らした罪、その命で償ってもらおうぞっ!!」
王座の間に現れた魔界兵たちが武器を構えると、それにあわせてレジスタンスたちが武器を構え、魔界兵たちを迎え撃つ態勢に入る。
「ここは俺たちが相手だっ!!お前たち、準備はいいか!」
ディンゴの声を聞いたレジスタンスたちは、武器を天に掲げて雄叫びを上げた後、魔界兵たちのもとへと向かっていく。クリスたちが去った王座の間では、魔界兵たちとディンゴ率いるレジスタンスとの白兵戦が勃発したのであった……。
一方クリスたちはメディスを追うべく、裏口を抜けて外へと来ていた。
「この先に強い魔力を感じる……。きっとこの先にメディスがいるかもしれないわっ!!」
先に進むにつれ、魔力の波長がだんだんと強くなっていく。クリスたちはその魔力を追って先に進むと、そこにメディスの姿があった。
「見つけたわよ…メディス!!貴様を倒すため……地獄から蘇ってきたわっ!!」
リリシアがメディスを指差し、一喝する。指を指されたことが気に入らないのか、メディスは怒りの表情でリリシアを睨み付け、こう答える。
「リリシアよ、何故人間共の味方をするのだ…。人間など下等な生物だ…それを滅ぼすためにお前は七大魔王の一人となったのではないのかっ!!」
その言葉に、リリシアはメディスの言葉を一瞥する。
「私は一度人間を滅ぼそうと思ったわ。しかし人間の持つ暖かさに触れ、自分の過ちに気付けた…たくさんの仲間も出来た。私はクリスたちの味方として、メディスを倒します……。」
メディスを倒すというリリシアの言葉に、怒り心頭のメディスは杖を構え、戦闘態勢に入る。
「リリシアよ…話は尽きた。お前の心が変わらぬのならば、魔界王の名において、ここでお前らを滅してくれるわっ!!」
黒き炎の力を解放し、メディスはクリスたちの所へと向かっていく。クリスたちは武器を構え、メディスを迎え撃つ。
「奴の魔力は桁違いに強力よ、みんな気をつけてっ!」
黒きオーラを纏い、メディスがどんどんクリスたちの所へと近づいてくる。リリシアがクリスたちにアドバイスを送ると、クリスたちはメディスから離れる。
「人間の行動など…お見通しだっ!!」
メディスは杖に魔力を込めると、杖の先から炎弾が放たれ、クリスたちを襲う。フィリスはクリスたちの前に立ち、守りの結界を張る。
「人間の力を舐めないでいただこうかしら…。たとえ小さな光でも…たくさん集まれば大きな光となるのよっ!!」
フィリスの結界が、メディスの炎弾をはじき返す。
「ほう…私の魔力をはじき返すとはなかなかの者だな。しかしそう簡単に私が貴様らに倒されるわけにはいかな…何っ!?」
フィリスがメディスの炎弾を防御している隙に、クリスがメディスの背後に回り込んでいた。クリスは聖昌剣を構え、聖なる一撃をメディスの左腕に放つ。
「はああああっ!!」
聖なる光の斬撃が、メディスの左腕を斬り飛ばす。しかしメディスは痛みを感じないのか、不敵な笑みを浮かべる。
「炎弾を防御している隙を狙い、背後から攻撃を仕掛けるとはな…。だが、私の黒き炎の力の前では無力に等しいわっ!!」
メディスの周りに黒き粉塵が巻き起こり、クリスを包み込む。メディスが小さな炎をクリスに放った瞬間、すさまじい爆風が起こりクリスは大きく吹き飛ばされた。
「きゃああああっ!!」
爆風によって吹き飛ばされたクリスは、その場に倒れる。カレニアが傷ついたクリスの元に駆けつけ、クリスを抱きかかえてフィリスの元に走る。
「フィリス様…クリスの手当てをお願いっ!!」
カレニアが傷ついたクリスを床に寝かせると、フィリスはクリスの額に手を当て、回復呪文を唱え始める。クリスの手当てをしている間、ディオンとリリシアがメディスの方へと向かっていく。
「クリスが左腕を斬り飛ばしてくれたおかげで、行動が制限されたわ。ディオン、私が奴を引き付けている間に右腕を破壊して頂戴っ!!」
「了解した!リリシアよ、うまくメディスを引き付けてくれ!」
リリシアは鉄扇を構え、一気にメディスのほうへと向かっていく。ディオンは急いでメディスの背後に回ると、物陰に隠れてその隙を待っていた。
「この私の鉄扇の威力…その体で思い知るがいいっ!!」
メディスの魔杖とリリシアの鉄扇がぶつかり合い、火花が苛烈に散る。リリシアは華麗な手捌きで鉄扇を振るい、乱舞の構えにはいる。
「私の鉄扇の乱舞から…逃れられるかしらっ!!」
挑発的な態度でメディスにそう言った後、リリシアは目にも留まらぬ速さで鉄扇を振るい始める。メディスは手に持った魔杖でリリシアの一撃を受け流そうとする。
「は…早すぎるっ!!リリシアごときに負けてたまるかあぁっ!!」
メディスは右腕だけで、リリシアの鉄扇の乱舞を受けきっていた。しかしリリシアは手を休めることなく鉄扇を振るうスピードを上げる。
(今だッ――!!)
一瞬の隙をつき、リリシアの鉄扇がメディスの魔杖を弾き飛ばす。
「今よ、ディオンっ!!メディスの動きが一瞬止まったわっ!!」
リリシアの言葉を聞いたディオンは、大剣を構えてメディスのほうへと向かっていく。
「リ…リリシアめ!こしゃくなマネをっ!!」
メディスがそう言った瞬間、背後から竜殺しの斬撃がメディスの右腕に振り下ろされた。両腕を失ったメディスに、リリシアの鉄扇がメディスの首を捉える。
「レミアポリスでの出来事…覚えているかしら…?あの時私にしたことを…百倍にして返して差し上げますわっ!!」
リリシアは鉄扇を振るい、メディスの首を刎ね落とした。首を失ったメディスは、ピクリとも動かなくなった。しかし首を失ったはずのメディスの心臓は、まだ動いていた……。
「な…なんですって!!首を失ったはずなのにっ!?」
メディスの心臓の鼓動を聞いたリリシアが振り向いたそのとき、首を失ったメディスの体に異変が起きていた。メディスの体が怪しく蠢き、何かが起こりそうな気配であった…。
「見てっ!!メディスの体が…どんどん変わっていく!!」
カレニアがメディスのほうを見た瞬間、メディスの体が黒き鱗に包まれた竜の姿へと変貌していく。体が変化した後、黒き尻尾が徐々に姿を現し始める。
「メディスの体が…だんだん黒い竜の姿になっていくわ……。あれが魔界兵が言っていた…黒竜族の真の姿だわ…。ここは一旦離れて、様子を見ましょう。」
黒き竜に変貌するメディスに危険を感じたリリシアは、クリスの所へと急ぐ。その間にもメディスの体は徐々に変貌を始めていく。
「フィリス様……あの兵士が言っていたとおり、メディスは黒竜族だったのよ。その黒き鱗に包まれた体が、全てを物語っているようだわ。」
フィリスが振り向いた瞬間、メディスの背中に漆黒の翼が生え、だんだんと竜に近い姿となっていた。あとは首が生えれば、完全な黒き竜として目覚めるであろう。
「あとは首が生えれば、メディスは完全に黒き竜として目覚めるわ。ここは何としてでも阻止しなくてはいけないわっ!!フィリス様、クリスの手当てが終わったら援護をお願いっ!!」
クリスの手当てを続けるフィリスにそう言い残すと、リリシアはディオンとカレニアを連れてメディスのほうへと向かっていく。
「ディオン、カレニア!力を貸してっ!!ここはメディスが目覚める前に決着をつけるわよっ!」
三人は武器を構え、メディスの足元へと向かい、攻撃を開始する。黒き鱗が集まってできた甲殻は、生半可な武器では歯が立たないほどの強度であった。
「行くぞリリシア、カレニアよっ!!全員の攻撃を一点に集中させるぞっ!!」
メディスの足に、三人の渾身の攻撃が降りかかる。まだ首の生えていないメディスは攻撃するリリシアたちを感じたのか、大きな尻尾を振りまわし、反撃する。
「きゃああっ!!」
メディスの巨大な尻尾になぎ払われたリリシアたちは、大きく吹き飛ばされたものの、またすぐに態勢を立て直し、立ち向かっていく。
「みんな大丈夫!?あの尻尾の威力は半端じゃないわよ。ここは私が赤き炎の力で何とかするから、その隙にメディスを攻撃してっ!!」
直接攻撃では尻尾で阻まれてしまうと判断したリリシアは、赤き炎の力を解放し精神を集中し始める。詠唱をしている間、ディオンとカレニアがメディスの足元に攻撃を仕掛ける。
「リリシアが集中している間、ここは俺たちが何としても時間を稼がなければならんっ!!カレニアよ、出来るだけ奴にダメージを蓄積させるんだっ!!」
「わかったわ。ここは一気に攻めるわよ!ディオンっ!」
太陽の熱を帯びた斬撃と竜殺しの斬撃が同時にメディスの足に降りかかる。その頃リリシアは詠唱を終え、赤き炎の力を解放する。
「みんな下がって!!」
リリシアの声で、攻撃を続けるディオンとカレニアは武器を収め、リリシアの下へと走っていく。二人がメディスの足元から離れた瞬間、リリシアの手のひらに赤き炎の力が集まる。
「赤き炎の力よ……悪しき者を焼きつくさんっ!!ダーク・ファイアッ!!」
リリシアの手のひらから、闇の力を帯びた炎が放たれ、メディスに炸裂する。赤き炎の一撃を受けたメディスは、一瞬動きが止まる。どうやら変貌の最終段階に入ったのか、メディスの頭が徐々にその姿をあらわし始める。
「そろそろ目覚めるときだわ……みんな気を引き締めてっ!!」
リリシアがメディスの方に振り向いたそのとき、メディスは黒き竜として目覚めの時を迎えていた。黒き竜と化したメディスは大きく口を開け、目覚めの咆哮を放つ。
「グオオオオオオオオオッ!!!」
大きな地震に似た叫び声が、ルーズ・ケープの王宮と宮下町に響き渡る。黒き竜の咆哮に、リリシアたちは耳をふさぎだす。
「今の音は何…?何が起こったのかしら……。」
クリスの手当てを終えたフィリスが大きな音があった方向に振り向くと、そこには完全な黒き竜と化したメディスがそこにいた。
「あれが…メディスの真の姿なのね……。早いところクリスを起こして、リリシアたちの援護に向かわなければっ!!」
フィリスはクリスを起こした後、武器を構えてリリシアたちの所へと向かっていく。少し遅れて、クリスが武器を構えてフィリスの後を追う。
「これで全員集合したわね…。さぁ、黒き竜を討伐するわよっ!!」
黒き竜と化したメディスが、クリスたちを睨みつけながら舌なめずりを始める。伝説の黒き竜と化したメディスが、今クリスたちに襲いかかろうとしていた……。