蘇生の章第五十三話 最後の四天王、ヴァーミリアン現る!!
二体の四天王を打ち倒したクリスたちは、王宮の大庭園へと来ていた。王宮へと向かおうとしたとき、魔界兵の一人に見つかり、足止めを喰らってしまった。しかしその魔界兵は不真面目だったため、クリスたちを捕まえる気ではなかったようだ。不真面目な魔界兵に連れられ、人目につかないところへと連れてこられたクリスたちに、不真面目な魔界兵がメディスの過去のことを話し始めた。
『メディスは王になる前、種族の異なる三人の戦士と共に白き王を倒し、封印した。メディスが白き王を打ち倒し封印できた理由は、彼が黒き炎の力を持つ黒竜族であったからだ。黒き竜の咆哮は大地を揺るがし、口から吐きだされる炎弾は大地を砕く威力だ……。』
と、その兵士はそう話していた。
不真面目な兵士の話を聞いたクリスたちは、ついに王宮の中へと突入し、王座の間を目指す。しかし王座の間を目指すクリスたちの前に、武装した魔界兵たちが立ちはだかっていた。クリスたちは魔界兵たちを退け、一気に三階へと駆け上がったそのとき、雷を纏った何者かがものすごいスピードでクリスたちの前に現れた。そう、彼はメディス四天王の一人である紫電のサンディーラであった。サンディーラは休憩のために部屋に戻ろうとしていた二人の召使いのダークエルフから侵入者が王宮に入り込んだという情報を得て、クリスたちを排除すべくやってきたのだ。雷を纏い、驚異的な発電・放電能力を持つサンディーラとクリスたちの戦いが、今まさに始まろうとしていた……。
サンディーラはその身に雷を纏わせると、すぐに発電を始めて身体能力を高めはじめる。雷の力が体中に流れ込み、筋肉を増強する。
「あいつ…発電によって自分自身を強化しているわ。この状態になると身体能力がずば抜けて高くなるから気をつけて!ここは私が魔法で攻めるから、あなたたちは奴の気を逸らして!!」
リリシアが仲間たちにそう伝えると、サンディーラから離れて術を放つ態勢に入る。発電によって身体能力が強化されたサンディーラは、詠唱中のリリシアのほうへと向かっていく。
「フハハハハッ!!俺の雷の力でひいひい言わせてやるぜっ!」
雷の力を拳に纏わせ、リリシアの元へと向かっていく。ディオンはリリシアの前に立ち、大剣を盾にしてサンディーラの拳の一撃を防ぐ。
「クリス…奴の後ろから一気に攻撃を仕掛けるんだっ!」
ディオンの号令で、クリスはサンディーラの背後に回り武器を構え、一気に奇襲攻撃を仕掛ける。
「喰らえっ!」
煌きの光を孕んだ聖晶剣の刃が、サンディーラの背中を切り裂く。背後から攻撃を受けたサンディーラは、怒りの表情でクリスのほうを向く。
「今のは痛かったぞ……小娘がっ!!」
血走った目でクリスを見つめながら、サンディーラは体中に溜まった雷の力を手のひらに集め始める。放電の予備動作を始めるサンディーラの行動を見たカレニアが、クリスに逃げるように呼びかける。
「クリス、奴から離れてっ!!あいつは今放電の準備をしているわ!」
カレニアの言葉を聞いたクリスは、サンディーラから離れる。
「一旦離れたのはいいのですが、あいつ私の方に近づいてくるわっ!」
足音を聞いたクリスが振り返ると、体に雷を纏ったサンディーラがじわりじわりとクリスのところへと近づいてくる。
「貴様だけは俺の雷で貫かなければ気がすまねぇ……!リリシアより先にお前をこの俺の雷の力でひいひい言わせてやるっ!!」
怒りの言葉と共に、サンディーラは放電の構えをとる。クリスは放電の一撃を防ぐべく、盾を構えて防御の態勢にでる。
「逃げればまた近づかれる……。こうなりゃ放電の一撃を防ぐしかない!!」
防御の態勢をとった瞬間、サンディーラの手のひらから強大な雷の力がクリスに向けて放たれた。サンディーラの手のひらから放たれた雷の力が、クリスの盾に命中する。
「きゃああっ!!」
放電の直撃は免れたものの、クリスは大きく吹き飛ばされてしまった。もしクリスが盾を構えて防御していなかったら、雷の力がクリスを貫通していた所であった。
「防御していたおかげで助かったわ…。もし防御していなければ死んでいた所だったわ。」
大きく吹き飛ばされたクリスであったが、すぐに起き上がり反撃の態勢に入る。すべての雷の力をクリスに放出したサンディーラは雷の力が抜け、身体能力がダウンしていた。
「くそっ……あいつにすべて放ったせいで身体能力が下がったじゃねぇか!!ここはひとまず離れて体内発電の準備を……!!」
「そうはさせないわよっ!!」
フィリスがサンディーラに剣を突きつけ、サンディーラを一喝する。フィリスの持つ破邪剣ラスティモアから放たれる破邪の気が、サンディーラの動きを封じる。
「な…なんだこの脱力感はっ!?体が動かぬ上に発電も出来ねぇ!」
サンディーラはフィリスの持つ剣から放たれる破邪の気により、体を動かすことが出来ない状態であった。フィリスがサンディーラの動きを完全に封じたとき、詠唱を終えたリリシアがサンディーラに闇の魔導術を放つ。
「荒れ狂う闇の力よ、全てを打ち砕け……。魔導術、カオシックペインっ!!」
リリシアの手のひらから、闇の魔力がサンディーラに放たれた。破邪の気によって動きを封じられているサンディーラに、闇の魔力が襲い掛かる。
「動け…動けっ!!こんなところで負けるわけには……っ!?ぐわあああああっ!!」
サンディーラが苦しみながらそう呟いた後、リリシアが放った闇の魔力が直撃し、息絶えた。サンディーラを倒したクリスたちは、急いでその場を後にする。
「急いで王座の間へと向かおう。騒ぎを聞きつけた魔界兵たちがこっちに来られては面倒だからな……。」
急ぎ足で王座の間へと向かうクリスたちは、襲い掛かってくる魔界兵たちを退けながら、王宮の四階へと駆け上がっていく。王宮の四階に来たクリスたちの目に、大きな扉が映る。どうやらこの扉の向こうが、クリスたちの目指す王座の間であった。
「この扉の向こうが、メディスの待つ王座の間だ。クリスたちよ、準備は良いか?」
ガルフィスがクリスたちそう問いかけると、クリスは首を縦に振る。
「突入の準備はできているわ。みんな、扉を開けて王座の間に向かうわよっ!!」
クリスが扉に手を掛け、ゆっくりと扉を開け始める。王座の間へと続く扉が開かれ、クリスたちが中へと突入する。
「フフフ……侵入者というのはお前たちのことか……。クリス、そしてリリシアよ。お前たちは術に不愉快だ…。その場で殺そうと思えばいつでも殺せるのだが、今はここで貴様らと戦うつもりはない。」
王座に腰掛けるメディスが、王座の間に突入したクリスたちに王の威厳を利かせながらそう言う。メディスの言葉を聞いたクリスの心に、徐々に怒りが込みあげてくる。
「メディス…貴様だけは許さない…リリシアの命を一度奪ったあなただけはっ!!」
メディスに怒りの炎を燃やすクリスに、リリシアがそっと手をかけ、クリスの心を落ち着かせる。
「ダメよクリス……。怒りに心を奪われちゃいけないわ。今は冷静になりましょう。」
リリシアに諭され、クリスは落ち着きを取り戻した。
「まぁよい、お前たちが私を倒すつもりでここにやってきたのはお見通しだ。私と戦う前に、一つ小手調べと行こう。ヴァーミリアンよ、今こそ戦いの時だっ!!」
メディスがヴァーミリアンの名を叫ぶと、炎の渦が巻き起こり、王座の間にヴァーミリアンが現れる。
「メディス様…。お呼びですかね?」
「ヴァーミリアンよ、この侵入者たちを排除するのだ。私はひとまず王座の間から離れよう…。」
メディス四天王のリーダーであるヴァーミリアンに侵入者の排除を命じた後、メディスは王座の間の裏口へと向かっていく。
「貴様がリリシアとかいったな。私はメディス様から黒き炎の力を貰い受けた。この黒き炎の力があれば、お前など一瞬にして灰にしてやる……。」
ヴァーミリアンがリリシアを指差し、挑発する。その挑発に怒りを感じたリリシアが、ヴァーミリアンにこう言い放つ。
「黒き炎の力ですって……あなた、その力の恐ろしさを分かっていないようね。黒き炎は黒竜族が使うことの出来る破壊の力よ。一つ間違えれば己の身を焦がしてしまう事だってありえるのよっ!」
リリシアに諭されたことが気に入らないのか、ヴァーミリアンは黒き炎の力を体に纏わせ、激昂する。
「貴様にそんな事を言われる筋合いなど無いっ!!俺はこの黒き炎の力で…お前を倒す!今から決戦場へと向かおう…。俺と貴様だけのなっ!」
ヴァーミリアンが指を鳴らした瞬間、異次元へと続くワームホールが現れ、ヴァーミリアンとリリシアはワームホールへと吸い込まれた。クリスたちは急いでヴァーミリアンの後を追ったが、ワームホールが消えてしまっていた。
「リリシア…どうか無事でいて……。」
クリスたちは王座の間で、リリシアの無事を祈るしかなかった……。
ワームホールに吸い込まれ決戦場へとやってきたリリシアの目には、溶岩が煮え滾る火山地帯が広がっていた。しばらくして、ヴァーミリアンがリリシアの目の前に現れた。
「気がついたかね……リリシアよ。ここは私と貴様が一対一で勝負できる火山地帯の決戦場だ。ここなら誰にも邪魔はされない…。どちらかが死ねば戦いは終わりもとの世界に戻る…。では行くぞっ!!」
ヴァーミリアンは黒き炎の力を解放し、リリシアへと向かっていく。リリシアは一旦ヴァーミリアンから離れ、様子を見る。
「奴は黒き炎の力によって全体的に身体能力はサンディーラより上だわ。ここは私も赤き炎の力で身体能力を上げようじゃないの…。」
リリシアは全身に赤き炎の力を込め身体能力を飛躍させると、一気にヴァーミリアンに向かっていく。
「ハハハッ!俺の怒りの黒き炎の拳の餌食となるがいい…。」
黒き炎を纏った拳を突き出し、リリシアへと向かっていく。リリシアは翼を広げてヴァーミリアンの拳を交わした後、一気に背後からヴァーミリアンを蹴り飛ばす。
「ぐおおおおっ!!」
リリシアの蹴りの一撃を喰らったヴァーミリアンは、地面に大きく叩きつけられた。不敵な笑みを浮かべながら、リリシアはヴァーミリアンへと近づく。
「フフフ…メディスから黒き炎の力を貰った割には使いこなせていないみたいね。ここで一気に燃やし尽くしてあげるわ…。」
不敵な笑みと共に、赤き炎の力を両手に込め、ヴァーミリアンを焼き尽くす態勢に入る。リリシアが炎を放とうとした瞬間、ヴァーミリアンが起き上がった。
「おっと…今のは痛かったぞ!!この痛み…百倍にして返してやらぁっ!!」
起き上がったヴァーミリアンは、拳に炎を纏わせてリリシアのほうへと向かっていく。リリシアが集中を止めたが、すでに間に合わなかった。
「ここは集中を止めて後ろへとさが……きゃあっ!!」
黒き炎を纏った拳が、リリシアに炸裂する。黒き炎の拳の一撃を喰らったリリシアは、大きく吹きとばされたが、またすぐに態勢を立て直す。
「女に対して拳を振るうとは…あなたって本当に卑劣ね……。」
真紅のローブについた土ぼこりを払いながら、リリシアがヴァーミリアンにそう言う。ヴァーミリアンは怒りの表情でリリシアに言い返す。
「貴様だけはどうしても倒さなくてはならんっ!!それがメディス様のご命令だ…。メディス様からいただいた黒き炎の力でなっ!!」
ヴァーミリアンの周りに、邪悪な殺気が渦巻いていた。リリシアは髪飾りを鉄扇をに変えると、一気にヴァーミリアンの元へと向かっていく。
「ならばこちらも本気で行かせていただきますわっ!!ヴァーミリアン、覚悟しなさい!」
リリシアは六枚の翼を広げ、ヴァーミリアンを倒すべく、大空へと舞い上がった。溶岩が煮え滾る決戦場で、赤き炎と黒き炎の戦いが今、始まる……。