蘇生の章第五十一話 襲い来る四天王!!
魔界の首都であり、メディスの本拠地であるルーズ・ケープに向けて歩き続けるクリスたちはルーズ・ケープの宮下町にたどり着いた。魔界兵に正体がばれないよう、クリスたちは変装をして宮下町から王宮に向かおうとしたが、重装備の魔界兵たちが王宮に続く門を守っていて、とても入れるような状況ではなかった。正面からの突入が無理だと判断したクリスたちは、仲間と考え抜いた末、町はずれの魔列車が走る駅へと向かい、線路を伝ってやってきた地下トンネルの奥で、ディンゴ率いるレジスタンスの乗る魔列車があった。どうやらクリスたちよりも早くここに来ていたのだろうか。しかし王宮の地下へと続く非常口の扉が開かず、立ち往生していた。そんな中、リリシアが赤き炎の力で硬い扉を壊し、クリスたちレジスタンスたちは王宮の地下を進んでいく。しかしその途中、メディスの命により指名手配の三人を排除すべく召集されたメディス四天王の一人、翠氷のフリージアの急襲を受け、クリスたちは足止めを喰らってしまったのであった……。
クリスたちの前に突如現れたフリージアは氷で出来た剣を構え、攻撃態勢に入る。フリージアはフィリスを指差し、前に出るようにそう言う。
「とりあえずそこのあなた!前に出なさいっ!!」
「え!?なぜ私が前に出なくてはいけないのですか……。」
突然指を指され、フィリスは困惑気味であった。フィリスは言われるがまま前に出ると、氷の結界が張られ、リリシアと共に結界に閉じ込められた。
「あなたたちにはここで私と戦ってもらうわよ。どちらか死ねば戦いは終わるというルールよ。私の氷の刃で……あなたたちを切り裂いてあげましょう!!」
氷の結界の中は寒く、閉じ込められた二人はまるで雪山の中にいるような感じに襲われる。寒さを緩和できる物が無ければ、身を切るような寒さが徐々に体力を奪い、死に至らしめるほどであった。
「寒いわ…この結界の中に居ると雪山の中に放り出されたような感じがするわ…。」
そうしている間にも、寒さが二人の体に襲い掛かる。フィリスの手が寒さによって悴み始める。
「手が動かない……。寒さにやられたみたいだわ。このままじゃ武器を持つことが出来ないわ…。」
寒さで手がかじかみ、フリージアが武器を持つこと出来ないフィリスに襲い掛かる。氷の刃がフィリスの身を切り裂こうとした瞬間、リリシアが鉄扇を構えフリージアの一撃を受け流す。
「フィリス様、私があなたを守って見せる!!その前に…寒さを無効にしてあげるわ。」
リリシアはフィリスの手を握り、赤き炎の力をフィリスの体に送り込み始める。赤き炎の力により、寒さで体力を奪われていたフィリスの体が徐々に熱を帯び、寒さに強くなった。
「体が熱くなってくる……。これなら寒くないわ。リリシア、一緒に戦いましょう!」
寒さで悴んでいたフィリスの手に、再び力が戻ってきた。フィリスは破邪剣ラスティモアを握り締め、フリージアを迎えうつ。
「あら…いつの間に寒さに強くなったのかしら…?まぁいいわ。あなたたちはここで倒すわ。この氷双剣ツインフリーズでねっ!!」
フリージアの持つ氷の刃が、二つに分裂し氷の力を宿す双剣、ツインフリーズと化した。双刃から繰り出される冷気が、あたりを包み込む。
「結界の中がかなり冷たくなってきたわ。奴が冷気なら私は赤き炎の力で攻めるわッ!!」
リリシアは赤き炎の力を手のひらに集め、炎弾を放つ。フリージアは双剣を交差させ、防御の態勢を始める。
「ハハハッ…。この程度の炎弾なら…私の氷の双剣の前では無力……何っ!?」
赤き炎の力が込められた炎弾がフリージアの双剣に命中した瞬間、大きな爆発が巻き起こり、フリージアは大きく吹き飛ばされ、その場に倒れる。
「くっ……こんなところで負けるわけにはいかない!!私は必ず反逆者のリリシアを…この手で……!」
爆発によって致命傷を負ったフリージアは、地面に落ちた双剣を拾い、再び戦いの構えに入る。しかし手に持った双剣はさきほどの爆発によって折れており、たとえ攻撃しても致命傷を与えることが出来なくなっていた。
「あら……こんな無様な姿で私と戦うつもりかしら?キャハハハハッ……!!」
リリシアがフリージアを挑発し、あざ笑う。その挑発に怒りを感じたのか、フリージアは折れた双剣を構えてリリシアに突っ込んでくる。
「はああああああぁっ!!」
もはやフリージアは理性を失っていた。彼女はメディスに捨てられたくないという気持ちで頭がいっぱいであった。
「冷静さを失ったあなたに…私は倒せない。」
双剣を構えて突っ込んでくるフリージアをかわし、リリシアは拳に赤き炎の力を集め、炎の拳をフリージアに浴びせる。
「がはあっ……!!メ…メディス様…お許しを…!!」
炎の拳の一撃を食らったフリージアは、炎に包まれながらその場に倒れ、息絶えた。フリージアが死んだことにより、氷の結界が消えた。
「よかった…。二人とも無事で。」
「魔導士であるお前が体術で止めをさすとは思ってもいなかったぜ!!」
戦いに勝利した二人に、結界の外から戦いを見ていたクリスとディンゴが二人を褒め称える。レジスタンスの救護班が二人の下に駆け寄り、手当てを行う。ガルフィスはフリージアの死体のそばに落ちている紙を拾い、クリスたちにそう言う。
「奴が持っている紙には、私とリリシアとクリスが描かれていたな。メディスの奴が大急ぎで書いたのか、全く似ていないな…。四天王となればあと三人いるから気が抜けないぞ…。」
メディス四天王のひとりであるフリージアを打ち倒したクリスたちは、レジスタンスとともに地下牢獄の上層を目指すのであった……。
一方王宮の四天王の詰め所では、フリージアの魔力の波長が消えたことを察知したヴァーミリアンがウィンディアとサンディーラにこう伝える。
「フリージアが倒された……。次は誰が出るのかを決めようではないか…。」
その言葉に、サンディーラとウィンディアの手が同時に挙がる。
「私が先よっ!!」
「いや、ここは俺がでる!俺の雷であの女をひいひい言わせてやるぜ!!」
侵入者を排除する順番を争う二人を見かねたのか、ヴァーミリアンが仲裁に入る。
「待てサンディーラよ、そう慌てるな。ここはウィンディアに任せよう。お前は下がってくれ…。」
「御意。」
ヴァーミリアンが諭すと、サンディーラは後ろへと下がる。王宮に侵入した者たちの排除を命じられたウィンディアは、ヴァーミリアンに一礼をする。
「では行ってまいります。フリージアの死は無駄にはいたしませんわ……。」
荒れ狂う風と共に、ウィンディアは四天王の詰め所から姿を消し、侵入者の排除へと向かった。
メディスの四天王の一人であるフリージアを打ち倒したクリスたちは、急ぎ足で地下牢獄の階段を駆け上っていく。地下牢獄の中間地点まで来たクリスたちは、ここでひと時の休息を取っていた。
「ガルフィス様よ、あとどれくらい進めば王宮にたどりつけるのだ?」
ディンゴがガルフィスにそう尋ねると、ガルフィスの眼が怪しく光りだす。
「そうだな…。もうすぐ王宮の地下牢だ。この階段を上れば王宮の地下牢だ。休憩を終えたらすぐにでも王宮に突入しよう…。」
クリスたちは次の戦いに備え、武器の手入れをしていた。刃こぼれがしやすい剣類は、手入れを怠ると切れ味が悪くなり、大きなダメージを与えられなくなるのを防ぐため、手入れは欠かせないのだ。
「たまには武器の手入れをしなきゃ…威力が落ちるからね。みんな、武器を研いだら先に進みましょう!休んでばかりじゃいられないからね。」
武器の手入れを終えたクリスたちは王宮の地下牢へと続く階段を駆け上がろうとした瞬間、強烈な風によって押し戻されてしまった。クリスたちの目の前に、蒼き風を纏う女が階段から現れる。
「残念だけど、ここは通すわけにはいかないわ。メディス様の命令で侵入者を殺すように言われているの……。この紙に描かれた人を排除しろといって……あっ!!」
ウィンディアがクリスたちのほうを向いた瞬間何かを思い出したのか、鞄の中から紙を取り出し、見つめ始める。
「やっぱりね…。紙に書かれている人物と同じね。ならばここで全員死んでもらうわっ!!」
紙に描かれた人物とクリスたちを照らし合わせた結果、紛れも無く同じ人物であった。ウィンディアは周囲に風を纏い、戦闘態勢に入る。
「強い風だわ……このままじゃ吹き飛ばされてしまうわっ!」
ウィンディアから発せられる蒼き風は、近くにいるとまともに立っていられないほどの風圧であった。クリスたちは何とか風圧に耐えたものの、ウィンディアに近づくことすら出来なかった。
「フフフ……私の蒼き風に耐えられる者はいないわ。私の蒼き烈風の餌食となりなさい…。」
強烈な風圧に動くこともできないクリスたちに、ウィンディアが近づいてくる。
「私に任せて!わたしならあの風圧をなんとかできるかもしれないわっ!」
リリシアは髪飾りを鉄扇に変え、ウィンディアのほうへと鉄扇を振り下ろす。すると紫色の風が巻き起こり、ウィンディアの風を相殺する。
「な…なんですって!!私の蒼き風を…相殺するとは!?ならばもう一度蒼き風を纏わせ……がはあっ!!」
ウィンディアが蒼き風を纏おうとしたその時、リリシアの鉄扇がウィンディアを切り裂く。リリシアの鉄扇によって切り裂かれたウィンディアはその場に倒れ、息絶えた。
「ふぅ…四天王といっても、私の前では相手にならないわね。じゃあ先に進みましょう。ここから先は王宮の中よ。気を引き締めていかなければ危ないわ……。みんな行きましょう!!」
地下牢獄の階段を駆け上がると、明かりが灯っている牢屋へと出てきた。ガルフィスの言うとおり、地下牢獄と王宮の地下牢はつながっていたのだ。
「さぁ、一気に王座の間に行きメディスを倒すわよ!」
リリシアの掛け声で、クリスたちはメディスの待つ王座の間へと向かうのであった。
「フリージアに続き、ウィンディアまでも倒されたか……。残りは私たち二人だけになってしまった。サンディーラよ、次はお前が行け!!」
二人を失い、ヴァーミリアンは焦燥気味であった。サンディーラに侵入者の排除に向かうようにそう言った後、椅子に腰掛ける。
「ふぅ…。サンディーラよ、お前の雷の力でリリシアをひいひい言わせてやるのだっ!!」
「御意。」
サンディーラは一礼した後、王宮に入り込んだ侵入者の排除に向かった。サンディーラが去った後、ヴァーミリアンはそのことをメディスに報告するべく、王座の間へとやってきた。
「メディス様!!フリージアとウィンディアが倒された……。今はサンディーラが侵入者の排除に向かっている。」
ヴァーミリアンが報告を終えると、メディスは怒りの表情を浮かべる。
「リリシアの奴め……私が地獄に葬ったのにもかかわらず、戻ってきおって!今度はクリスたちと共に地獄へと葬り去ってやる!ヴァーミリアンよ、前に出るがよい…。私の力さえあればリリシアなど敵では無いぞ……。」
メディスの命を受けたヴァーミリアンが前に出ると、メディスはヴァーミリアンの頭に手を当て、自分の持つ邪悪な力を送り込み始める。メディスから邪悪な力をもらったヴァーミリアンの体から、黒き炎のオーラが立ち込めていた。
「感謝するぞメディス様…この邪悪なる力、最高だぞっ!!その力で必ずリリシアを倒して見せよう!」
全身に黒き炎の魔力を纏わせながら、ヴァーミリアンはリリシアを倒すべく王座の間を後にした。残りの四天王であるサンディーラとヴァーミリアンが、クリスたちの新たな脅威となる……!!