蘇生の章第五十話 メディス四天王の脅威!!

 

 三角獣を退けたファルスたちの前に、メディスの側近であるヘモアが襲い掛かってきた。ボルガとアルメリアの助力もあり、致命傷を与えるたが最後の力を振り絞り、巨大な魔物へと変貌を遂げた。王宮魔導士の手当てにより、麻痺毒から回復したファルスは、王宮内にいる兵士たちを集め、ヘモアを迎撃する準備に取り掛かっている間、ボルガとアルメリアは少しでも兵士たちの準備の時間を稼ぐべく、攻撃を開始した。その巨体ゆえに苦戦するボルガは奥の手である獣化(ビーストアウト)を発動し、ヘモアへと立ち向かっていく。しかし獣化すると徐々に理性を失うという危険も孕んでいたが、アルメリアが賢さを上げる術により、その危険は回避された。二人が戦っている中、迎撃準備を終えたファルスは兵士たちに指示を出し、ヘモアを迎撃する。獣化したボルガの協力もあり、なんとかヘモアの膝を地に付かせるほどの大きなダメージを与えた後、ファルスの光の槍術によって昇天した。ヘモアを打ち倒したファルスたちは王宮に向かい、ひと時の休息を取るのであった……。

 

 一方魔界の首都であるルーズ・ケープの王宮の王座の間では、燭台の蝋燭の火が音も無く消えた。それはヘモアの死を感じさせるかのようであった…。

「蝋燭の火が消えた……なぜかしら嫌な感じが漂ってくる。ヘモアの身に何かあったのかもしれぬ…。」

ヘモアの身を案じた矢先に、地上界を偵察していた魔界兵の一人が王座の間へと駆け込み、そう言う。

 「大変だっ!!三角獣とともに地上界にやってきたヘモアが…何者かによって倒されてしまった!!メディス様…対策をお願いする!

相当慌てていたのであろうか。魔界兵のひとりは息を切らしながらヘモアが倒されたことをメディスに報告する。そのことを知ったヘモアは動揺もせず、そう言葉を吐き捨てた。

「まったく……あいつは使えないな。もう下がってよいぞ。偵察ご苦労じゃった…お前には王宮前の警備をしてもらおう…。」

魔界兵はメディスに敬礼をした後、王宮前の警備に向かった。王座の間に、メディスに仕える蟲使いが入ってくる。

 「メディス様…魔界にはなったすべての記録蟲を集めたところ、メディス様が殺したはずのリリシアがその記録蟲に写っていました…。」

蟲使いの言葉に、メディスは思わず目を疑った。レミアポリス襲撃の際、冥府の大鎌で首を刎ねて葬ったはずのリリシアが生きていたのであった。しかし誰がリリシアの首を持ち出したのか……。

「確かに…リリシアは私が葬った。首は確かに魔導炉に放り込み、完全に消滅しておる。確か私の側近であるガルフィスがリリシアの首を魔導炉に放り込んでくると言っていたが…もしやガルフィスがっ!?

 メディスがガルフィスに鉄の桶を渡した後、何が起こったのか……?メディスが眠っている間にガルフィスがリリシアの首を持ち出し、王宮から地上界に運び復活させたのか…?メディスの頭の中でいろいろな情報が交錯する中、ガルフィスという名が上がった。

「まさか…ガルフィスの仕業だったとはな。しかしまだ情報が足りぬ……もう少し思い出してみよう。確かこの前ヘモアの奴に頼んで魔導炉の中のゴミを取り除いてもらったのだが、リリシアの頭蓋骨や骨の欠片は見当たらなかった…。魔導炉の中から出てきた物は魔物を製造失敗によって出来たもえないゴミばかりだった…。ガルフィスがリリシアの首ともえないゴミをすり替え、放り込んだと言うわけか……。」

メディスの証言によると、ガルフィスは鉄の桶の中にあったリリシアの首ともえないゴミをすり替え、魔導炉の中に放り込んだという事実が浮かび上がった。つまり、その時点でガルフィスはメディスを裏切り、クリスたちに協力しているということになる。

 「ガルフィスの奴め……!!魔界王の私を裏切るとどうなるか…わかっているだろうな!

ガルフィスの裏切りに、メディスは怒り心頭であった。

「メディス様…お気を確かに……。言い忘れていましたが、記録蟲が見た風景は、ルーズ・ケープの南方の荒地だったようです。リリシアとその仲間たちはこのルーズ・ケープに向かっていると思われます。」

蟲使いの言葉を聞き、メディスは冷静さを取り戻し、こう答える。

「ほう……。いい情報をありがとう。リリシアはクリスたちの仲間だ。もちろん裏切り者であるガルフィスも同行しておる。まぁ王宮で待っていれば必ずここに来るはずだ。しかしそう簡単に王宮を攻略されては面白くない…。ここは一つ魔界兵の中でも取り分け強いとされる四天王がいるから、たどり着く前に倒されるだろうな。ハッハッハ……。」

高笑いを浮かべながら、メディスは玉座に座り、四天王を王座の間に呼び寄せる。

 「四天王よ…王座の間に集結せよっ!!

メディスがそう叫んだ瞬間、王座の間に煙が立ちこめ、四天王が姿を現す。

「燃え盛る朱色の炎!朱炎のヴァーミリアン!!

「いてつく翠の吹雪!翠氷のフリージア!!

「しびれる紫の雷!紫電のサンディーラ!!

「切り裂く蒼き烈風!蒼風のウィンディア!!

四天王が格好のいいポーズを決め、自己紹介を始める。それを見たメディスは拍手を送りながら、四天王たちに侵入者の排除を命じた。

 「四天王のポーズはいつ見ても痺れるの…。四天王よ、王宮の中に侵入者とそのような人を見かけたら、排除してくれ…。」

メディスは四天王の全員に人の顔が書かれた紙を渡し始めた。メディスから渡された紙には、リリシアとガルフィス、そしてクリスの顔が描かれていた。急ごしらえで手書きで作っていたのか、少々顔が似ていなかった。

「何だこれは…。子供が描いた落書きのようにしかみえないな…。もっと丁寧に書いてくれなければ分からないだろう…。」

ヴァーミリアンが苦情を訴えると、メディスは三人の特徴を四天王全員に伝える。

 「急いで作っていたのでな…。絵が汚くなってすまぬ。リリシアは紫の髪と竜の翼のような髪飾りが特徴だ。ガルフィスは長い髪と、緑色の眼が特徴だ。そして最後にクリスの特徴は、金色の髪が特徴だ。その者たちを見かけたら、排除するのだっ!!

その言葉に納得したのか、ヴァーミリアンはホッと肩を撫で下ろす。

「メディス様……それでは私たちは侵入者を見張っておきます。さらばっ!!

その言葉を最後に、四天王は煙と共に消え去った。四天王が消えた後、メディスは玉座に座り、高笑いを浮かべる。

「魔界に迷い込んだ人間どもめ……せいぜいがんばるのだな。フハハハハハッ!!!

メディスは玉座に深く腰掛け、そのまま眠りについた。

 

 一方ルーズ・ケープを目指し歩き続けるクリスたちは、ルーズ・ケープの宮下町まで来ていた。しかし人が歩いている気配も無く、見張りの魔界兵たちが徘徊していた。

「魔界兵たちが見張っているわね。正面から突入は無理そうね…。迂回しましょう。」

正面からの突入は危険だと判断したリリシアは、魔界兵の警備が手薄な場所に向かうようにクリスたちにそう言う。リリシアの後を追うクリスたちは魔界兵に見つからないように忍び足で歩き、比較的警備が手薄な東口へと向かう。

 「ここなら大丈夫だわ。ここから王宮に侵入しましょう。」

宮下町の東口から侵入したクリスたちは、ディンゴから貰ったコートを羽織り、魔界兵たちに見つからないようにする。

「さて、王宮へと向かいましょう……。」

宮下町を歩くクリスたちは、王宮へと続く階段を上がり、王宮の門前へと来た。しかし門前には重装備の魔界兵たちが見張っていた。その様子だと変装をしても危険である。

 「ダメだわ。これじゃあ中に入れないわ。一旦町の外へと戻りましょう……。」

現実は厳しかった。王宮の門前には重装備の魔界兵たちが見張り、クリスたちが変装をしても十分危険であった。クリスたちは一旦宮下町の外に出て、対策を立て直すことにした…。

 

 「王宮の中には魔界兵たちがいて王宮には入れないわ…。さすがに変装をしても無理そうね…。しかしここで諦めるわけにもいかないわ。

クリスたちが変装をしても、厳重な警備の王宮の門前を突破できない。しかしクリスたちは諦めるわけにもいかなかった。そんな中、カレニアが口を開く。

 「確か…フォル・エクリスの駅長がそう言っていたわ。メディスがルーズ・ケープへ向かうためのすべての通行手段を封鎖したとか言っていたわね。とりあえず宮下町の駅へと行ってみましょう。そこなら何か発見があるはずよ!!

カレニアの言葉を聞いたクリスたちは早速宮下町の町外れにある魔列車が走る駅へと向かった。ホームから飛び降り、線路に沿って歩き続けやってきた地下トンネルの奥には、一台の魔列車が置かれていた。その色と形状を見る限り、ディンゴたちレジスタンスたちを乗せた魔列車であった。

「ディンゴの魔列車だわ。あいつ…強行突破したようだわ。」

クリスたちがディンゴたちの乗る魔列車の中に入ろうとしたそのとき、ディンゴが魔列車の中から出てきた。

 「この先に王宮へと通じる非常口があるのだが、入り口が硬い扉のせいで突入できないようだ……。レジスタンスたちががんばってくれたおかげで岩は取り除けたのだが、硬い扉は開けられないのだ…。」

クリスより一足先にルーズ・ケープへとたどりついたレジスタンスたちは、硬い扉を前に立ち尽くしていた。リリシアは硬い扉の前に立ち、手のひらに赤き炎の魔力を集め始める。

「ここは私に任せて…。みんな、危険だから下がってて……。」

リリシアの言葉で、クリスたちとディンゴたちが離れる。リリシアは硬い扉を壊すべく、赤き炎の力を扉に向けて放つ。

「赤き炎よ…すべてを焼き尽くさんっ!ダーク・ファイアッ!!

リリシアの手のひらから放たれた赤き炎の弾丸は、硬い扉をいとも簡単に吹き飛ばす。非常口が壊されたことにより、王宮の中へと侵入が可能になった。

 「リ…リリシア……。いつの間にそのような魔力を身につけたのだ…!あの硬い非常口の扉をいとも簡単に……恐ろしい奴だ!!

赤き炎の力に、ディンゴはただ驚くしかなかった。クリスたちとディンゴ率いるレジスタンスたちは、非常口から王宮の中へとを突入を開始した。

 

 非常口からルーズ・ケープ王宮の地下に突入したクリスたちとレジスタンスたちは、メディスの待つ王座の間へと向かっていた。ルーズ・ケープ王宮の地下は薄暗く、かつて処刑が行われていた場所であったのか、ギロチンや拷問椅子などの器具が置かれていた。

「ここは処刑場のようだ…。拷問器具のほうは王宮の改築により新しい物に変更され、今は使われてはいないようだ。ここはどうやら王宮が作られる前に建てられた牢獄だが、ルーズ・ケープの王宮の地下牢につながっているようだ。早く王宮内部へと向かおう……。」

地下牢獄から王宮の地下牢に向かうべく、クリスとレジスタンスたちは階段を駆け上がっていく。階段を駆け上がり、かつて死体を凍らせるための冷凍庫があった場所に来た瞬間、何者かが氷の刃を飛ばしてきたが、クリスたちは素早く身をかわす。

「誰なのっ!!

リリシアの声が、地下冷凍庫の中にこだまする。

 「フフフ……私の氷の刃をかわすとはたいした奴だわ。私の名は翠氷のフリージア。メディス様に仕えし四天王の一人よ…。この紙に描かれている女って、あなたのことかしら…。」

フリージアはメディスから渡された紙をリリシアに見せると、リリシアはなぜか笑い出した。

「何よこれ…。子供の落書きのようにしかみえないわ!!ははは……。ってあなた、私を知っているということは、私を殺そうって言うわけね!!

リリシアの言葉に、フリージアは怒りの表情を浮かべる。

 「リリシアっ!!メディス様の命令であなたをここで殺します…。さぁ、かかってきなさいっ!!

フリージアは氷で出来た剣を手に、リリシアに襲い掛かってきた。メディスによって放たれた四天王が今、クリスたちに襲いかかろうとしていた……。

 

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