蘇生の第四十七話 使いこなせ!赤き炎

 

 レフィーヌから赤き炎の伝説を聞き、クリスたちは館を後にしようとした瞬間、突如空中から獄炎を纏う飛竜、パルガドラスの襲撃を受けた。獄炎を纏いし竜を討つべく、クリスたちは武器を構え応戦したが、その強靭な体にはダメージを与えられなかった。苦戦するクリスたちを助けるべく、リリシアは赤き炎の力を使い、獄炎竜に放ったが、赤き炎の力がまだ未熟だったため弾かれてしまった。しかしその力を見た獄炎竜は、リリシアに一つの要求を投げかけた。

 

『赤き炎の力だけで私と一対一で戦おうではないか……。武器と魔導術の使用は禁ずる。』

 

 彼女の突然の行動に呼び止めようとするクリスに赤き炎の使命だということを伝え、獄炎竜の所へと歩いていく。リリシアは果たして赤き炎の力だけで獄炎竜を倒すことができるのか……?

 

 「リリシアよ、準備が出来たか……?さぁこの私にお前が持つ赤き炎の力を見せてくれっ!!

そう言った瞬間、獄炎竜と対峙するリリシアの周りに炎の壁が現れた。二人の戦いには加勢は許されないのだ。

「ええ、準備は出来ましたわ。早くしないと体が冷めてしまうからね…。」

赤き炎の力を集め、リリシアは戦う準備を終え、獄炎竜にそう言う。

「よかろう……ならば始めよう。赤き炎の試練と言う物をなぁっ!!

 叫び声と共に、地獄の炎が獄炎竜の体から吹き出し、攻撃の態勢に入る。リリシアは一旦獄炎竜から離れ、術を放つべく精神を集中し始める。

「これだけ離れていれば十分精神を集中できそうだわ…。後は出来るだけ素早く魔力を練られるかどうかだわ…。」

精神を集中し、赤き炎の力を練り合わせ始める。すると魔姫の周りにはすさまじいほどの炎のエネルギーが体を覆っていた。並大抵の人間なら近寄るだけで肉を焦がすほどの威力である。

「またその炎か……。だがその炎は私には通用せんッ!!貴様などこの私の炎で焼き尽くしてくれる!

獄炎竜の口から、煉獄の炎の息が吐き出され、リリシアを襲う。しかし煉獄の炎はリリシアに直撃した瞬間、かき消された。驚きの表情で獄炎竜はふとリリシアのほうを向くと、赤き炎の力で炎の壁を作り上げていた。

 「赤き炎の力……少し使いこなせるようになってきたみたいだわ。私が今使ったのは防御の炎、『フレア・ウォール』よ。その守りの炎は触れる物全てを灰にする鉄壁の壁よっ!!

どうやらリリシアは少しだけだが、赤き炎の力を制御できるようになってきたようだ。そのことに感心したのか、獄炎竜の顔が綻ぶ。

「うむ…。赤き炎の力を使いこなせているな……。しかしまだだ…、まだ私は物足りないッ!

一瞬笑顔になったものの、獄炎竜は再び怒りの表情を浮かべ、その体に炎を纏いリリシアに突進を仕掛けてくる。しかし魔姫は赤き炎の力を使って空中に浮かび、獄炎竜の突進をかわす。

 「何ぃっ!炎の推進力で空中に飛び上がるとは……!?なかなかやるようだな、ならこれならどうだっ!!

獄炎竜は大きく息を吸い込み、空中にいるリリシアめがけて熱線を放射する。空中にいるリリシアには、もう逃げ場は無い。

「こ…これじゃあ逃げられないわっ!!こんなピンチの時にこそ赤き炎の力で何とかできるかも…!?

そう呟いた瞬間、高温の熱線がリリシアに直撃し、地面へと落下していく。リリシアを仕留めた獄炎竜は炎の壁を解除し、雄叫びを上げる。

 「そ…そんなっ!!

リリシアが獄炎竜に敗れたことを知り、唖然となるクリスたち。しかしリリシアが地面に落下した地点から、大きな火柱が上がる。

「みんな、あれを見てっ!!

カレニアの言葉を聞いたクリスたちは、一斉に火柱が上がったほうに振り向く。しばらくして、火柱が消え、獄炎竜の目の前にリリシアが現れる。

「あの一撃は熱かったわ……。私のローブがボロボロになっちゃったじゃない。どうしてくれるのよ……。」

 リリシアは熱線が直撃する際、全身に赤き炎の力を纏わせ、熱線を吸収し無効化していた。しかしその代償として、魔姫のローブが熱線によってボロボロになり、ローブで守られている左胸がはだけてしまっていた。

「何だとっ…!?私の熱線を受けて無傷でいられるとは…たいした奴だな貴様ッ!

獄炎竜は雄叫びと共に、その体に獄炎を纏い、リリシアを睨み付ける。

「左胸を隠しながら戦うのはロスになってしまうわ…。ええいっ!この際左胸を隠さずやってやるわ!

左胸の露出が少し気になるのか、リリシアは左胸を手で隠しながら戦うことにした。しかし隠しながら戦うことは相手に隙を与えることになってしまうと思い、魔姫は露出した左胸を隠さず戦うことを決めた。

「行くぞリリシアッ!!私を本気にさせたのはお前がはじめてだ…。」

深く息を吸い込み、リリシアに向けて再び熱線を吐き出す。リリシアは咄嗟に回避し、安全な場所へと走り出す。獄炎竜は首を横に振り、薙ぎ払う熱線でリリシアを襲う。

 「横に逃げれば追ってくるわ。まずは奴の後ろに回り込み、ここで一気に術を放つ!

大地を薙ぎ払う熱線を避けながら、リリシアは獄炎竜の後ろへと回り込み、精神を高め赤き炎の力を解放する。

「燃え上がれ赤き炎よ、悪しき者を焼き尽くさん……」

魔姫のただならぬ赤き炎の力を察知した獄炎竜は、リリシアのほうへと振り向く。しかしリリシアはすでに闇の炎を放つ態勢に入っており、すでに手遅れであった。

「な…何だとっ!?熱線の一撃をかわしながら私の後ろに回ってくるとはっ!!

「これで終わりにして差し上げますわ…。ダーク・ファイアッ!!

リリシアの放った赤き炎が、獄炎竜の頭部に直撃する。獄炎竜の頭部に命中した炎は、生命を持ったかのように体に燃え広がり、獄炎竜の全身が赤き炎に包まれる。

 「ぐっ…ぐおおっ!貴様…いつの間に赤き炎の力を完全に使いこなせるようになったのだあぁっ!!

炎に包まれる獄炎竜は、肉を焦がすような感覚に襲われていた。赤き炎の力の前では、炎に強い獄炎竜の堅牢な鱗など無力であった。

「全身に力を感じる……。どうやら赤き炎の力を完全に使いこなせるようになったみたいだわ。」

獄炎竜との死闘の末、リリシアは赤き炎の力を使いこなし、獄炎竜に打ち勝ったのだ。クリスたちはリリシアのところへと駆け寄り、手当てを施す。

「あらら……。ローブの一部分が焦げてしまっているわね。とりあえずその上からコートを着たほうがいいわ。そのままだと恥ずかしいからね。」

フィリスは鞄の中からコートを取り出すと、リリシアに手渡す。コートを手に取ると、すぐさまローブの上から羽織る。

 「ありがとう…。」

仲間たちが戦いで傷ついたリリシアを見守る中、獄炎竜は静かに口を開く。

「リリシアよ……よくぞ赤き炎の力を使いこなし、私を打ち破った。お前に私の持つ炎の力を授けよう。さぁ、私を斬るがよい。そしてその血を飲め……。」

その言葉を聞いたディオンは、ドラゴンキラーを振り上げ、一気に獄炎竜の体に振り下ろした。ディオンの竜殺しの斬撃が直撃し、傷口から血が流れる。

 「それでいいのだな。その血をリリシアに飲ませればいいのか?

獄炎竜の血を手ですくい、それをリリシアに飲ませる。獄炎竜の血を口にした瞬間、苦さのあまり顔をしかめる。

「さすがに血を飲むことに抵抗があるようだな…。それも赤き炎の血を引く者の試練だ。私の血には赤き炎の力を高める成分が含まれておるからな。」

リリシアが獄炎竜の血を飲み終えると、獄炎竜はリリシアに静かにそう言う。

 「リリシアよ……お前は立派な赤き炎の血を引く者だ。その力、誤って使うでないぞ…。もし誤って使えば魔界を滅ぼすほどの大惨事だからな…。どうやら私はそろそろ無理そうだ。赤き炎の血を引くお前に出会えて、私は本当に幸せだったぞ……。ぐふっ!!

獄炎竜はリリシアにそう告げると、そのまま息を引き取った。リリシアは獄炎竜が安らかに眠れるよう、赤き炎の力で獄炎竜の亡骸を火葬した。

 

 しばらく経ち、炎が消えて獄炎竜の亡骸は灰と化した。リリシアは獄炎竜の灰を手ですくい、小瓶の中に入れ始める。

「あなたのおかげで、赤き炎の力を完全に使いこなすことが出来た……。あなたの死は決して無駄にはしないわ。必ず赤き炎の力でメディスを打ち倒してみせるわっ!!

リリシアは獄炎竜に別れを告げ、クリスたちはルーズ・ケープへと向かうべく、再び歩き出した。その旅路の途中で、一向はテントを張り、キャンプを始めた。

 「後少しでルーズ・ケープだな。しかし別行動をしているディンゴたちの身が心配だ。無事にルーズ・ケープに到着して入れればよいのだが…。」

レジスタンスと共にルーズ・ケープへと向かうディンゴの様子が心配なのか、ディオンは頭を抱えていた。するとそれを慰めるかのように、フィリスが声をかける。

「大丈夫ですよディオン…。あの人たちは簡単には負けはしませんよ。さぁ、もう夜も更けてきたから、テントの中に入りましょう…。」

そろそろ夜も遅くなったので、外にでているディオンとフィリスは焚き火を消し、テントの中に入る。テントの中ではリリシアが特殊な釜を使ってなにやら変な実験をしていた。その横にガルフィスが付き添い、リリシアに錬金の方法を教えていた。

「まずは焦げてしまったローブを釜の中に入れ、その跡に魔界獣の良質な上皮と先ほど手に入れた獄炎竜の灰を釜の中に入れて一夜経ったら完成だ。」

ガルフィスに言われるがまま、リリシアは焦げたローブと魔界獣の良質な上皮、そして最後に獄炎竜の灰を釜の中に振り掛けると、蓋を閉じる。

 「それでいいわね。ガルフィス様、本当に一晩たったら焦げたローブが元に戻ってくるんですよね……?

不思議そうな目で、ガルフィスを見つめる。

「私の錬金術は必ず成功する。心配するな…。リリシアよ、私たちも寝よう。」

錬金術の成果が気になる中、リリシアとガルフィスは眠りに着いた。一晩経ち、クリスたちよりも一足先に目が覚めたリリシアは、釜の中を確認する。

 「私のローブが……元通りになっているわ。しかも魔力が今までとはまるで違う感じがするわ……。」

リリシアは釜の中から新しく生まれ変わったローブを取りだし、魔姫はさっそくその真紅のローブに身を包む。

「新しいローブは私の体にぴったりだわ。隠し味として少し振りかけた獄炎竜の灰が、込められたローブの魔力をさらに高めてくれているようだわ。」

獄炎竜との戦いで焦げてしまった魔姫のローブは、ガルフィスの釜を使った特殊な錬金術により高い魔力を持つ真紅のローブへと進化を遂げた。リリシアがそのローブに身を包んだ瞬間、強力な魔力が体の中に流れてくるのを感じた。

「さてと、そろそろみんなを起こして出発しなくちゃね…。」

リリシアは眠っているクリスたちを起こし、旅の準備と腹ごしらえを終え、再びルーズ・ケープへと向けて歩き出した。一方その頃地上界・中央大陸の主要都市であるレミアポリスの王宮では、メディスが地上界を侵略すべく呼び出された三角獣の襲撃を受けていた。

 

 「ファルス様っ!!また魔物が王宮を破壊しようとしています!

もはや当たり前のように、兵士がファルスにそう伝える。ファルスは槍を手に取ると、そう言ってすぐさま兵士たちの詰め所を出る。

「私と王宮魔導士たちで戦う。兵士たちは休んでいろ…。」

兵士の詰め所を出たファルスは、王宮魔導士たちと合流し王宮を破壊しようとする三角獣の討伐に向かった。果たしてファルスと王宮魔導士たちは、地上界に現れた三角獣を討伐することが出来るのか!?

 

 

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