蘇生の章第四十五話 赤き炎の伝説

 

 クリスたちはルーズ・ケープの南方の都市である、エステイシアで暫しの休息を取ったクリスは、古の魔導士が住むといわれる村へと向け、魔列車はスピードを上げて走り出した。クリスたちが古の魔導士のいる村へと向かっている中、ファルスたちと兵士たちによってレミアポリス襲撃に失敗し、がっかりした表情のヘモアがルーズ・ケープ王宮に戻ってきた。

 「メディス様…申し訳ございません。レミアポリスを襲撃しようとしましたが、兵士たちによって阻止されてしまいました…。」

ヘモアのその言葉に、メディスはヘモアを一喝する。

「地上界を制圧できないとは何事じゃ!!お前とドラグドゥスが居ながら失敗するとはどういうことだ!お前一人で戻ってきたということはドラグドゥスは地上界の奴らに倒されたということだな…。」

ただならぬ怒りの表情を浮かべるメディスの顔を見たヘモアは、恐る恐る口を開く。

 「魔竜ドラグドゥスは、金色の髪をした男の騎士に倒されてしまいました…。メディス様、どうかお許しを……。」

ヘモアの不甲斐なさに怒りの表情を浮かべるメディスは落胆するヘモアに近づき、そう呟く。

「仕方のないやつだな…。お前に再びチャンスを与えよう……。しかし今度ばかりは失敗は許されんぞ。もし失敗したらどうなるかぐらいは…わかっているだろうな。」

「おお…メディス様、ありがたきお言葉!!ではメディス様、魔物の準備を初めてくれぬか!

メディスからレミアポリス襲撃の最後のチャンスを与えられたヘモアは、メディスと共に凶暴な魔獣や飛竜がいるルーズ・ケープ郊外にある魔物牧場へと向かった。二人が魔物牧場の中に入ろうとした瞬間、管理人が呼び止める。

「これはこれは…メディス様にヘモア殿、今日はどのようなご用件でしょう。」

「管理人よ、牧場の中に入らせてくれ。地上界を制圧するためにも強い魔物が必要なのだ…。」

メディスの言葉に、管理人は牧場の鍵をメディスに手渡す。

 「この鍵が牧場にいる魔物の檻を開ける鍵だ。くれぐれもなくさないようにな…。」

メディスとヘモアが牧場の中に入り、早速強い魔物を探すべく、牧場の探索を開始した。

「メディス様、私は飛竜のいる区画を探してきます。」

「わかった…。できるだけ強い魔物を見つけてくるのだぞ…。」

ヘモアはメディスにそう告げた後、ヘモアは飛竜のいるエリアへと向かった。メディスは檻の中にいる魔獣を見ながら、強い魔物を探していた。

 「こっ…これは強そうな魔物だな。牧場の管理人よ、こいつをくれ!!

強力な魔獣を探すメディスの足取りが止まった。どうやら強い魔獣が見つかったようだ。

「いや〜お目が高いメディス様…。この魔獣は三本の角を持つ凶悪な魔獣、トライホーン・ビーストでございます。この魔獣は非常に凶暴な性格で、石造の城なら体当たりで粉々に粉砕するほどの威力を持っています。メディス様は本当にこの魔獣をお選びになるのですか…。」

非常に凶暴な性格ゆえ、飼育員ですら手の付けられないほどの魔獣であるトライホーン・ビーストの檻を開け、メディスが檻の中へと入る。メディスは牙を剥き出しにして怒気を放つトライホーン・ビーストの頭をなでると、トライホーン・ビーストはメディスの腕をざらついた舌で舐め始める。

「な…なんということだ。あの凶暴な三角獣を手なずけてしまうとは…。メディス様にならこの魔獣で人間界を侵略できそうだ!!

「牧場の管理人とやらよ、この魔獣を地上界へと転送の準備を!!場所は中央大陸、レミアポリスの王宮に転送してくれ!!

凶暴な三角獣をいとも簡単に手なずけてしまったメディスは、牧場の管理人に地上界へと転送の準備をするように命じた。

 「地上界への転送ですね。まかせてください。私の転送術は魔界随一ですからね…。転送術(ワープ・スペル)ディメンジョン・ゲート!!

パンッ…と手を合わせた瞬間、魔方陣が三角獣の周りに現れる。牧場の管理人が強く念じた瞬間、三角獣の体が徐々に地上界へと転送されていく。

「地上界への転送が完了いたしました。地上界を制圧できるよう、応援しております!!

三角獣を地上界に転送した後、ヘモアが大きな飛竜を連れてメディスのところまで来た。赤き炎を纏う飛竜は今にも襲ってきそうな表情でヘモアを睨みつけていた。

「ヘモアよ、いい飛竜を見つけてきたな…。」

「この飛竜なら地上界を灰燼に帰すことが出来そうだ…。牧場の管理人よ、早速転送の準備を…。」

牧場の管理人が赤き飛竜を地上界に転送しようとした瞬間、突然赤き飛竜が暴れだし、牧場の管理人を大きな尻尾でなぎ払い、メディスたちにこう言い放った。

 「赤き炎の血を引く者は……どこだッ!!

赤き炎を纏う飛竜が放つ強烈な殺気に、メディスたちの足が止まる。

「赤き炎…それは私にも知らぬ。ヘモアよ、お前が連れてきたのだからお前がなんとかせいっ!!

「メディス様…そんな事言われても私に対処できるわけが無かろう。とりあえずその場は私が話をつけて何とかする。その隙にメディス様は牧場から逃げるのだっ!!

メディスの命を優先し、ヘモアはメディスにその場から離れるように命じる。

 「ヘモアよ、後は頼んだぞっ!!

メディスは一目散に牧場から去って行った。メディスが牧場から去り、魔物牧場には赤黒き飛竜とヘモアだけが残った。

 

 「貴様、赤き炎の血を引く者はどこだ…。隠すとためにならんぞッ!!

強烈な威圧感を漂わせながら、ヘモアにそう問いかける。ヘモアはその場をなんとか切り抜けるべく、とりあえず嘘の事を話し始めた。

「あ…赤き炎の血を引く者のことなら私は知っている。確か紫色の髪をして赤いドレスを着た女こそ赤き炎の血を引く者だとメディス様は仰っていた。」

「なるほど…赤いドレスと紫の髪をした女こそが赤き炎を受け継ぎし者だというのだな。しかしそれだけでは分からぬ。もう少しだけ情報を教えろ…。」

ヘモアは鞄の中から一枚の写真を取り出し、赤き竜に見せる。

 「この写真の女だ。その女こそが赤き炎の血を引く者だ…。」

その写真には、髪飾りをつけた紫の髪の姿が描かれていた。その写真の女は紛れも無くリリシアであった。

「お前の話はよくわかった…。その女が赤き炎の血を引く者だな。今からその女を探しに行くとするか……。」

ヘモアの見せたリリシアの写真に納得したのか、翼を広げ大きな咆哮と共に宙に舞い上がり、写真の女を捜すべく大空へと飛び去っていった。赤き飛竜が飛び去って行った後、そのことをメディスに報告するべく、ルーズ・ケープ王宮へと向かった。

 「メディス様…あの赤き飛竜はどうやら赤き炎の血を引く者を探していたようだ。私がリリシアの写真を見せたら納得して逃げていったさ…。まぁその話は嘘だけどな…。」

どうやらヘモアは、赤き飛竜に嘘の情報を伝えて無理矢理納得させたようだ。

「でかしたぞヘモアよ、リリシアの写真を見せて納得させるとはいい作戦だったぞ。今頃奴はリリシアを探しているに違いない…。まぁ探してもその女は見つからぬな。そのリリシアとやらは私が殺したのだからな…。へもアよ、いい魔獣を見つけたので今から地上界へと行ってまいれ!!

不敵な笑みを浮かべながら、メディスは王座に深く腰掛けた。メディスから命を受けたヘモアは、地上界へと向かうべく、地上界へと続く転送陣を使ってレミアポリスへと向かった。

 

 その頃クリスたちはエステイシア北部にある岩山のトンネルを抜け、ルーズ・ケープ地域へとやってきた。少し進んだ先は道が荒れ、魔列車では通れないうほどの荒地であった。ディンゴはクリスたちを魔列車から降ろし、別ルートで合流することになった。

 「すまない君たちよ、ここから先は魔列車が通れないほど道が荒れていて、進めない状態なのだ。我々は別ルートで合流するから、君たちはルーズ・ケープへと行くんだ。」

ディンゴが魔列車の中に乗り込むと、魔列車は来た道を戻っていく。魔列車が去った荒野には、クリスたちが残された。

「辺り一面岩だらけね。これじゃあ魔列車も走れない訳ね…。とりあえず古の魔導士が居るという村へと向かいましょう。」

 岩がごろごろと転がる荒地を歩くクリスたちは、古の魔導士が居るといわれる村へとたどり着いた。クリスたちは早速古の魔導士の館を探すべく、情報収集を開始した。

「すまぬが、この村に住んでいる古の魔導士について知っていることがあれば何か話してくれぬか?

「古の魔導士の事かい…?それならこの村の北に大きな館に住んでいるぜ。あの魔導士はかつてメディスの下で働いていたとか言っていたな。よろしければ君たちを案内してあげよう。」

村に住む一人の男が、この村に住む古の魔導士のことを知っていたようだ。クリスたちは村人に案内され、村の北にある大きな館へとやってきた。

 「ここが古の魔導士が済む館だ。私はこれで……。」

村人がクリスたちにそう告げ、去って行った。クリスは館の扉に手を掛け、恐る恐る開き始める。

「さぁ、中に入るわよみんな…。」

全員が恐る恐る館の中に入ると、クリスは館の中に人がいるかを確かめる。

「すみません…。誰か居ますか……?

 クリスがそう言った瞬間、館の奥から魔導士の姿をした女がクリスたちの前に現れた。その女こそが古の魔導士であった。

「ようこそ我が館へ…。どのような御用でこの館を訪れたのかを話してもらおう…。」

「私たちはメディスを倒す方法を知るためにこの館を訪れました。どうか私たちに話していただけませんか…?

その話に納得したのか、古の魔導士はクリスたちを館の大広間へと誘う。古の魔導士はクリスたちにメディスの事について話はじめた。

「私はかつてメディスに仕えていた王宮魔導士、レフィーヌだ。まぁそれは昔の話だ。今はヘモアとかいう奴が側近として働いておる。奴の弱点について話そう。伝説の赤き炎だけが使える闇の炎…それだけが奴の弱点だ。しかしこの魔界に赤き炎の血を引く者がいればのことだが…!?

レフィーヌがリリシアの顔を見た瞬間、強大な力をその体に感じた。

 「そなた、赤き炎と同じ力を感じる……。しかしまだ炎の力を引き出せてはいない…。よし、私が赤き炎の事について話してやろう!!

古の魔導士が指を鳴らすと、突如大広間が暗闇に包まれた。暗闇の中に、伝説の赤き炎についての文献が映し出される。

「赤き炎…それは強大な闇の炎の使い手である。ある者は赤き炎の能力を使いこなし、またある者は自分の力の強大さあまり、自らを灰にする恐ろしい力だ。赤き炎は、体が炎のように赤い事からそう呼ばれたのだ…。」

「いえ…、私の体は炎のように赤くないわ。炎のように赤いのはドレスだけですわ。」

古の魔導士の説明に、リリシアが突っ込みを入れる。

 「わかっておるわい…。赤き炎の使い手はその昔、人間界の女と恋に落ち、一人の赤子を授かったといいう噂だ。その赤子こそ赤き炎の血を引く者であり、人と魔のハーフだ。その赤子のその後の詳細は不明だ。」

「それってまさか…!?私の両親のことかしら…。その話がもし本当ならば、私が赤き炎の血を引く者ってこと!?

リリシアの言葉を聞いたレフィーヌは、驚いた表情で答える。

 「まさかそなたこそが…赤き炎の使い手のガルアドスの一子であったのか!?どおりで赤き炎と同じ力を感じているというわけだ。ならばこの赤き炎の証であるこの『赤の蝋燭』に炎を灯せるはずだ。さぁ、やってみるがいい…。」

リリシアが赤の蝋燭に手を掛けた瞬間、蝋燭に炎が灯された。しかし手を掛けた数秒後、炎は消えてしまった。

「あれ…少しの間だけ蝋燭に火がついたのですが、消えてしまいましたわ…。」

「まだ赤き炎の力を引き出せていないようだ。メディスを倒せるのはそなたしかいないのだ…。その蝋燭はそなたが持っているがいい。いずれそなたが赤き炎としての力を引き出せたとき、その蝋燭の炎は赤く大きくなるだろう…。私が言えるのはそれだけだ…。ここにはもう用はない、行くのだ。」

 クリスたちがレフィーヌの館を後にした瞬間、目の前に赤き飛竜が現れた。

「見つけたぞ…髪飾りをつけた紫色の髪の女よ…貴様が赤き炎の血を受け継ぎし者だなッ!!今ここでお前の力をためさせてもらおうぞっ!

「なっ…何のことかしらっ!?なぜ私を襲ってくるのよっ!!

リリシアが驚愕する中、赤き飛竜は咆哮と共に体に炎を纏わせ、クリスたちに襲い掛かってきた。クリスたちは武器を構え、攻撃の態勢に入る。

 「お前たちよ…赤き炎の血を引くその女の仲間かッ!ならばお前たちもろとも灰になるまで焼き尽くしてやろうぞっ!!

赤き飛竜はリリシアを睨みつけ、そう言う。カレニアはガルフィスによって魔力強化を受けた眼鏡を使い、赤き飛竜の弱点を探ろうとする。

「ダメだわ…。力が強すぎて解析できないわ!どうやら強大な力を持つ飛竜だわ。ここは力を合わせて戦うしかないわね…。」

赤き飛竜は殺気だった目でリリシアを睨みつけ、威嚇する。強大な赤き飛竜を前に、クリスたちに勝機はあるのか…!?

 

 

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