蘇生の章第四十四話 暫しの休息
クリスたちとレジスタンスたちを乗せた魔列車は、ルーズ・ケープを目指すべく出発した。クリスたちがルーズ・ケープへと向かっている中、レミアポリスでは再び魔界の魔物の襲撃を受けていた。その正体はメディスの臣下であるヘモアであった。ヘモアは地上界を侵略するべく、魔導竜ドラグドゥスを率いてレミアポリスに現れたのだ。ファルスと兵士たちはヘモアと戦ったが、あと一歩のところで逃げられてしまった。ファルスたちはそのことをアメリアに伝えるべく、王宮へと戻るのであった……。
ヘモアによる地上界侵攻を阻止したファルスと兵士たちは、皇帝の間にいるアメリアに今まで起こった出来事を伝えるべく、ファルスが前に出る。
「アメリア様、また魔界から魔物が攻めて来たのですが、何とか撃破しました。しかし魔物の背に乗っていたヘモアとかいう奴を取り逃がしてしまいました…。奴は確かメディスの命により地上界をいただくとか言っていたが、メディスとは一体何者なのだ?」
ファルスの言葉を聞いたアメリアは、ファルスたちにそう言う。
「皆の者よ、メディスはこの地上界とは別の世界、魔界を統治する魔界の王だ。おそらくお前が言っていたヘモアとかいう奴はメディスの僕なのかもしれないな。」
アメリアがそう言った後、ファルスは敬礼し、こう答える。
「アメリア様…心配は要りません。必ずこの王宮を魔界の者の手hからお守りいたします!!」
ファルスがそう言った後、兵士たちと共に詰め所へと戻っていった。ファルスが去った後、アメリアは王宮魔導士を集め、対策会議を始めるべく準備を始めるのであった。
一方クリスたちとレジスタンスたちを乗せた魔列車は、ルーズ・ケープへと向かうべく山の中を進んでいた。ディンゴは地図を広げ、次の町を指差しながらクリスたちにそう言う。
「今魔列車は山のトンネルの中を走っている。あと少しすればルーズ・ケープの一つ前の駅がある町、エステイシアに着くぞ。とりあえずこの町で休憩しよう。」
魔列車は山を抜け、一面の荒地を走っていた。その荒地の向こうには町のような建物が見えてきた。
「荒野の向こうに町が見えてきたわ。あれがエステイシアという町なのかしら?」
リリシアが魔列車の窓から外を眺めている中、ディンゴは魔列車を停止態勢にさせるべく、ブレーキを踏み始める。
「ただいまエステイシア付近に到着した。これより停車にはいる。」
ディンゴの言葉を聞いたクリスたちは、席に座り始める。クリスたちが席に座った瞬間、轟音とともに魔列車はスピードを落とし、停止した。
「皆の者、エステイシア付近に着いたぞ。しばらく魔列車を休ませなければならないので、一日ほど休憩とする。食料などを買うため、私とクリスたちで町に行く。」
ディンゴがレジスタンスたちにそう言った後、食料などを買うためにディンゴはクリスたちと共に、魔列車を降りてエステイシアの町へと向かった。
エステイシアの町にやってきたクリスたちは、さっそくレジスタンスたちの食料を買うべく、市場へと向かうことにした。ルーズ・ケープの近くということだけあって、ディンゴはリリシアに髪飾りを外し、コートを着るように命じる。
「リリシアよ、君にはいまから髪飾りを外し、このコートを着てもらおう。このエステイシアの町はルーズ・ケープの近くだから君の正体がばれてしまえば一大事だ。わかってくれ…。」
ディンゴの言葉を聞いたリリシアは、渋々ディンゴの要求をのむことにした。リリシアはディンゴから手渡されたコートを羽織り、いつも身に着けている髪飾りを鞄の中に入れる。
「仕方ないわねぇ…。このコートは派手でかっこ悪いけど、着てあげるわ。」
渋い表情で愚痴をこぼすリリシアに、ディンゴは苦笑いしながら答える。
「かっこ悪いとはなんだ…。俺は君のためを思って言っているのだ。もし今の格好でいたら奴らに見つかってしまうんだぞ!!」
ディンゴの言葉を聞いたリリシアは、反省の意を込めてディンゴにそう言う。
「すまなかったわ、ディンゴ。あなたの言うとおりにするわ。さぁ食料を買いにいきましょう。」
ディンゴとクリスたちは食料を買うため、市場へとやってきた。ディンゴがレジスタンスたちの食料を買っている間、クリスたちは自由行動となったが、リリシアはディンゴと同行することになった。
「悪いが、リリシアは私と一緒に食料を魔列車の中へと運ぶ手伝いをしてもらおう。」
ディンゴが市場で買ってきた食料をリリシアに渡すと、リリシアは渋い表情でディンゴを見つめ、そう呟く。
「はーい……。」
渋い表情のリリシアとディンゴは、先ほど買ってきた食糧を魔列車の中へと運ぶため、エステイシアの町を後にし、魔列車へと歩き出す。魔列車へと戻った二人は、食料を倉庫に置くと、再びエステイシアの町へと歩き出す。
「レジスタンスの食料は一回分だけでは足りない。もう一回エステイシアの町の市場へと向かい、食料を買おう。食料はなるべく多くあった方がよいからな…。」
再び市場へとやってきた二人は食料を買った後、再び魔列車の倉庫へと向かい食料を置いている間に、クリスたちがエステイシアの町から戻ってきた。
「ただいま。エステイシアの町でいろいろと道具を買ってきたわ。」
クリスの声を聞いたリリシアは、クリスたちのところへ駆け寄り、そう言う。
「クリスたちはいいよね。私は格好悪いコートを着せられた上、ディンゴと一緒に食料を魔列車の倉庫へと運ぶ力仕事だったわ。おかげで肩を痛めたわ…。私は部屋に戻っておくわ。」
クリスたちは部屋に向かい、エステイシアの町で買ったものの整理を始める。食料運びで肩を痛めたリリシアは、ベッドに寝転がり眠っていた。
「とりあえず買った物を整理しましょう。回復薬や浄化薬といった回復道具は各自二本ずつ常備しておいてね。それが終わったら武器の強化よ。武器を強化しないとこのさき危ないからね。」
エステイシアで購入した道具を、カレニアが分け始める。クリスたちは回復薬と浄化薬といった回復道具をそれぞれ鞄の中に入れ、準備を終える。
「回復道具の準備は終わったわね。それじゃあ武器の強化よ。ディオンはドラグレア鉱石を、フィリス様はアルティミシア鉱石を、クリスはノヴァメタルをそれぞれ武器に近づけてちょうだい。私は武器と共鳴する鉱石が無いからいいわ。」
カレニアは鞄の中からエステイシアで手に入れた鉱石を取り出すと、クリスたちはそれぞれ自分の使う鉱石を手に取り、準備を始める。
「みんな鉱石を取ったわね。じゃあ鉱石を武器に近づけて強化を始めるわよ。ではクリスから先に初めてちょうだい。」
カレニアのの言葉を聞いたクリスは自分の武器を取り出し、鉱石を手に取り武器の強化を始める。鉱石を武器に近づけた瞬間、鉱石が武器の中に取り込まれ、眩い光を放ち始める。
「うわあっ!!」
あまりの眩しさに、クリスたちの眼がくらむ。クリスたちが目をつぶっている間に、鉱石を取り込んだ武器は今までとは別の武器と生まれ変わっていた。
「あら…。私の武器が別の姿へと変わっているわ!!武器強化が成功した証だわ!」
クリスの持っているメタルシャムシールが、聖晶剣【煌】へと生まれ変わった。
「わたしの持っているメタルシャムシールが、水晶の輝きを持つ剣に変わっている…。手に取るだけで水晶の輝きが体を包む気がするわ…。」
ノヴァメタルの力で生まれた聖晶剣【煌】を手にしたクリスは、水晶の光が体を包み込む感じがした。クリスの武器の強化が終わり、続いてフィリスが武器の強化を始める。
「さて、このアルティミシア鉱石で私のダンシングブレイドがどのように生まれ変わるか楽しみだわ。では強化を始めますわよ…。」
フィリスはアルティミシア鉱石を手に取り、ゆっくりとダンシングブレイドに近づける。鉱石はダンシングブレイドに取り込まれ、異様な輝きと共に武器が変化し始める。
「光で目がくらみそうですが、ここは我慢して武器が生まれ変わる瞬間を見てみたいものですわ。」
目も眩むほどの輝きが、フィリスを襲った。しかしフィリスは目を閉じず、武器だけを見ていた。
「武器がゆっくりと変化していく様子が目に見えるわ。私はこの瞬間を見てみたかったのよ!!」
フィリスの持つダンシングブレイドが、鉱石の力により破邪剣ラスティモアへと変化を遂げた。フィリスは生まれ変わった武器を手に取り、見定める。
「私が見たとおり、このクレイモアはかなりの業物ですわ。かなり威力がありそうですわね。ふふっ…。」
新しい武器を手にしたフィリスは、少しばかり笑みがこぼれる。フィリスの武器の強化が終わり、ディオンが武器の強化を始めるべく、ドラグレア鉱石を手に取り始める。
「最後は私のようだな。このツヴァイブレイカーがどのように変化するのか楽しみだな…。」
ドラグレア鉱石を手に取ったディオンは、ツヴァイハンダーの強化系であるツヴァイブレイカーに鉱石を近づけ始める。鉱石を近づけた瞬間、ツヴァイブレイカーが鉱石と共鳴し、緑色の光を放ち始める。ドラグレア鉱石の力により、ツヴァイブレイカーは竜を討ち祓う大剣、ドラゴンキラーと化した。
「こっ…これは!!竜を討ち祓う大剣、ドラゴンキラーじゃない!!ドラグレア鉱石に宿る竜の力が、ツヴァイブレイカーに眠る竜の属性を強化したのだわ!!これは滅多にお目にかかれないわよ…。」
竜を討ち祓う緑色の大剣と化したディオンの武器を、カレニアが珍しい物を見るような目で見定め、ディオンにそう言う。
「ははは…。まさか俺の武器が竜を討つ武器になるとは思ってもいなかったな…。これで全員の武器の強化は終わったな。おっと、そろそろ夕食の時間だ。カレニア、リリシアを起こしてくれ。私たちは先に行くとしよう…。」
ディオンがカレニアにリリシアを起こすようにそう言うと、クリスたちは夕食を取るべく魔列車の広間へと向かった。カレニアはリリシアを起こし、クリスたちの待つ広間へと急いだ。
クリスたちとディンゴが夕食の準備を終えたとき、カレニアとリリシアが遅れて広間へとやってきた。クリスたちは椅子に座り、夕食を楽しむ。夕食が終わり、ディンゴがクリスたちにそう話し始めた。
「明日の話なのだが、君たちに一応話しておく。エステイシアの北にある村に着いたら君たちとはしばしのお別れだ。この先は魔列車では進めないほど道が険しいのだからな。だが私たちは君たちとは別ルートでルーズ・ケープへと突入する。少し話が飛ぶが、酒場で聞いた話なのだが、エステイシアの北にある村には、古の時代より生き続ける魔導士がいるようだ。その魔導士ならルーズ・ケープに関する情報が得られそうだ。」
ディンゴの話を聞いていたリリシアは、真剣な眼差しで答える。
「その話は本当の話なのかしら…。古の時代に生き続けているならメディスの事は一つぐらい知っているかもしれないわね。村にいる魔導士に話を聞いてみる価値はありそうだわ…。」
リリシアがそう言った後、ディンゴはクリスたちにそう伝え、広間を去る。
「そうだな…じゃあ明日古の魔導士がいる村に向けて出発だ。君たちは部屋で休むがいい。」
ディンゴが去った後、クリスたちは自分の部屋に向かい、就寝の準備を済ませ、眠りに着くのであった。