蘇生の章第四十三話 ヘモア急襲!!

 

 レジスタンスの装備庫で新たな装備を得たクリスたちは、レジスタンスのリーダーであるディンゴと共に魔列車に乗り込み、メディスの待つルーズ・ケープへと向かう準備を整え、発車の態勢に入る。

「魔列車の発車準備はOKだ!!ルーズ・ケープへ向けて発進だっ!

ディンゴが魔列車の発車レバーを引いた後、運転席に座りアクセルを踏む。発車レバーが引かれ、魔列車のエンジンが稼動し、轟音と共に動き始めた。

 「魔列車が動き始めたわ!ディンゴ、ルーズ・ケープまでどの位かかるのかしら…?

リリシアが問いかけると、ディンゴはポケットから地図を取り出し、リリシアに見せながら伝える。

「ルーズ・ケープは確かジャド・エスペラから4つ駅を超えたところがそうだ。今更だが、お前は魔界学校を卒業してから行方知れずだったんだが、何があったか話してくれ…。」

ディンゴがリリシアに過去の出来事についてを尋ねると、リリシアが自らの過去の出来事について話し始めた。

 「魔界学校を卒業した後、私は仮面の魔導士とともにフェルスティアを征服するために働いていたわ。しかしあるとき、魔導城でリュミーネという女戦士と戦い、無くした人間の優しさを取り戻し、私は変わることが出来た…。しかしそんな生まれたての友情はすぐに壊されてしまったわ。私と同じ仮面の魔導士の側近のベルにリュミーネを殺された…。私はリュミーネの仇をとるために戦ったのですが、魔力強化を受けてパワーアップしたベルの攻撃には敵わなかった。私が死を覚悟した瞬間、リュミーネが死ぬ前に最後の魔力を使い、私を地上界に転送してくれた……。あの後クリスたちと出会い、今の私がいるっていう事かな…。」

リリシアの長い話が終わり、ディンゴは静かに口を開いた。

「そうか…。そんなことがあったのか。お前を拾って育ててくれた仮面の魔導士のことが忘れられないということは無いのか?

その言葉を聞いたリリシアは、しれっとした表情でこう言葉を返す。

 「仮面の魔導士のことですか。以前はあの魔導士と一緒にいるのが楽しかったのですが、今ではクリスたちといるだけで楽しい気分になれるから、今はどうでもいいですわよ。」

リリシアの言葉を聞いていたガルフィスが、二人の会話の中に入る。

「話している中悪いな…。今更だが、仮面の魔導士と呼ばれる七大魔王の一人であるバルバトーレのことなのだが、あいつはもう勇者たちによって倒された。リリシアは確かバルバトーレの側近として働いていたね。奴が倒されたことで、お前はもう側近ではなく自由の身だ。」

ガルフィスの言葉を聞いたリリシアは、頷きながら答える。

 「自由の身か…。私はもう仮面の魔導士の側近ではなくなったと言う事なのね…。今はクリスたちの仲間ということになるのね。」

その言葉に、ガルフィスはそっと言葉を返す。

「そうだな。これからはクリスたちの仲間として、出来る限りのことをすればいいんだ。君の魔力と優しい心があれば、きっとクリスたちの力になれると私は信じているぞ…。おっと、もうすぐ発車の時間だ。さぁみんな席に座ろうか…。」

ガルフィスの号令を聞いたクリスたちは、魔列車の席に座りこむ。全員が席に座ると、ディンゴが魔列車を発車させる。

 「さぁ…ルーズ・ケープへ行くぞっ!!

ディンゴは魔列車のアクセルを踏み、ルーズ・ケープへと向けて魔列車を発進させる。魔列車はレジスタンスのアジトを抜け、トンネルの奥へと進んでいく。クリスたちはその間、魔列車の部屋で休息を取るのであった。

 

 一方魔界から放たれた魔導獣ガルデ・アルカディスを打ち倒し、レミアポリスは平穏を取り戻したかのように見えた。しかし、見晴らしの塔にいる兵士が、再び何者かの影を捉えた。

「あれは…何だっ!?

兵士の目に、巨大な竜の姿が目に映る。兵士がそのほうを向いたとき、竜の背に人間のような人影が見えた。

 「まさか…また魔物がレミアポリスを襲撃するつもりかっ!!そのことをファルス殿に伝えなければならんっ!!

見張りの兵士がファルスに魔物が攻めてきたことを伝えようとしたとき、何者かの声が兵士の耳に入る。

「フハハハハッ!!誰に伝えるつもりだっ!!そうはさせんぞ…!!

見張りの兵士がその声を聞いた瞬間、巨大な竜が炎弾を吐きだす。兵士は猛ダッシュで階段を駆け下りたおかげで、炎弾の直撃を免れた。

 「ふぅ…。一歩間違えれば焦げてしまいそうだぜ…。はやくそのことをファルス様に伝えなければっ!!

見張りの兵士は見晴らしの塔を抜け、兵士の詰め所へと向かう。しかし竜の眼は兵士を捉え、いつ襲ってくるか分からない状況であった。

「あの竜め…俺を完全に狙ってやがる。」

見張りの兵士が兵士の詰め所へと向かっている間にも、竜はどんどん見張りの兵士に近づいてくる。見張りの兵士が走っているとき、竜は爪を突き出し、見張りの兵士を切り裂こうとする。

 「キシャアアアアアッ!!!

竜の血走った眼が見張りの兵士を睨み付け、威嚇する。しかし見張りの兵士は怯むことなく竜の爪の一撃をかわし、城の中へと入る。

「王宮の中なら安全だ…。とにかく詰め所へと向かわなければっ!!

竜の追撃をかわし、見張りの兵士はファルスにそのことを伝えるべく、兵士の詰め所へとやってきた。見張りの兵士の慌てようを見たファルスは、すぐさま何があったかを問いかける。

 「見張りの兵士よ、また魔物が攻めてきたのか!?

ファルスの問いかけに、見張りの兵士が息を切らしながら答える。

「はぁはぁ…ファルス様、そのとおりです。竜に乗った何者かが攻めてきたのです。私は竜の追撃をかわし、あなたに報告しにやってきました!

見張りの兵士が報告を終えると、その場に倒れこむ。そのことに気がついた他の兵士が、倒れた見張りの兵士を抱えベッドに寝かせる。

 「ファルス殿、今すぐにでも迎撃準備に入りますか!?

重装備の兵士がファルスにそう言った瞬間、大きな地響きが起こった。

「な…なんだっ!?大きな地響きが起きたのだが、やはり見張りの兵士が言っていた竜がこの王宮を攻撃しているのか!?このままでは王宮が破壊されてしまう!!皆の者、配置につくぞっ!!

ファルスはレミアポリスを襲撃する者を討つべく、迎撃準備を始める。バリスタ班、大砲班、そして新たに王宮魔導士班を加え、強大な魔物を打ち倒す準備に入る。

「王宮魔導士班よ、3、4人でこの王宮に結界を張り、なんとしてもこの王宮を守るのだっ!!残りの者は出来るだけ強力な術を放ち、魔物にダメージを与えるのだッ!!

ファルスが王宮魔導士班に命令を下したその時、ファルスと兵士たちの眼前に巨大な竜の姿が現れた。巨大な竜の背にのった人影が、徐々にその姿を現し始めた。

 

 「フハハハハッ!!兵士たちよ、私が地上界に放ったガルデ・アルカディスを倒すとはなかなかやるではないか…。自己紹介が遅れたな。私の名はヘモア、魔界王であるメディス様の側近だ。メディスの命により、地上界をいただくっ!!

竜の背に乗ったヘモアがそう言うと、ファルスは怒りを露にする。

「貴様…魔界の者だなっ!!なぜ地上界を我が物にしようとするのだ!

その言葉に、ヘモアは不敵な笑みを浮かべながら返答する。

 「フハハハハ。メディス様はこの地上界を欲しているのだ。地上界を手にすれば、メディス様は二つの世界を統べる王となるのだ!よい話だとは思わんか……。」

ファルスはヘモアの言動に怒りを感じたのか、拳を握り締めて激怒していた。

「許さん…許さんぞっ!バリスタ班よ、弾を放てっ!!

ファルスの命令を聞いたバリスタ班は、竜の背に乗っているヘモアに狙いを定め、バリスタの弾を放つ。しかしバリスタの弾はヘモアの体に命中したが、何のダメージも与えられなかった。

 「そんなばかなっ!?バリスタの弾が命中したはずだが、傷一つついていないとは…。」

バリスタ班はただ唖然とするしかなかった。大型の魔物なら確実に傷をつけるほどの威力をもったバリスタが通用しなかったのだ。

「こんな貧弱なバリスタごときで俺を倒せると思ったら大間違いだな…。ならばこちらの番だな。魔導竜ドラグドゥラよ、クズどもを焼き払えっ!!

ドラグドゥラの口から、強大な威力を持つ炎弾が吐き出され、ファルスたちを襲う。王宮魔導士班が結界を張っていたことにより、王宮へのダメージが最小限にまで軽減された。

 「な…何故だっ!!ドラグドゥラの炎弾の直撃を受けたはずなのだが、なぜ生きている!?ならば直接攻撃ならば防げまいっ!!ドラグドゥラよ、尻尾を振り回して王宮を破壊するのだ!!

ヘモアの命令を聞いたドラグドゥラは、尻尾を振り回し、王宮を攻撃する。しかしそれも結界に阻まれ、王宮にダメージを与えることが出来なかった。

「いいぞ王宮魔導士班よ!その調子であの竜の攻撃をすべて防げっ!!

3人の魔導士が魔力を合わせて作り出した結界は、もはやドラグドゥラの力では壊せないほどの硬度であった。ファルスは槍を握り締め、ドラグドゥラの尻尾に斬りかかった。

 「はあああああっ!!

槍の刃が、ドラグドゥラの尻尾を斬りおとした。その激痛により、ドラグドゥラはそのまま地面へと倒れこむ。ヘモアはドラグドゥラから降り、魔界へ戻るべく逃げ去ろうとする。

「私はあの竜に止めを刺してから向かう。軽装兵よ、逃げ去ったあいつを追うのだ!!

ファルスの命令により、軽装兵たちは王宮の外に出たヘモアを追うべく、行動を開始する。ファルスは地面に倒れもがいているドラグドゥラにとどめの一撃を放つため、槍を天に掲げる。

 「魔界より出でし邪悪なる竜よ、これで終わりにしてやろう…。波導究極槍術・覇光滅龍槍!!

天に掲げたファルスの槍が、光を纏い竜を討ち祓う槍と化した。ファルスは光を纏った槍をドラグドゥラの背中に突き刺した瞬間、ドラグドゥラの体が焼き尽くされていく。

「シャアアアアアアアァッ!!

最後の雄叫びと共に、ドラグドゥラは体を焼き尽くされ、灰と化した。竜を打ち倒したファルスは、ため息と共にそう呟く。

「ふぅ…。今回新たに入ってきた王宮魔導士班のおかげで王宮を守ることが出来た。今回もてこずったが、何とか王宮を守りながら倒すことができた…。はやくヘモアとかいう奴を追わなければな…。」

ドラグドゥラを打ち倒したファルスは、魔界に帰るために逃走するヘモアを追うべく、町の中へと走り出した。

 

 奇襲攻撃を受けたヘモアは、兵士たちに追われながらレミアポリスの町を抜けて草原を逃げ回っていた。

「急がなければ…メディス様の下へと帰らねばっ!ここで捕まってしまえばメディス様に申し訳が立たぬ!!そうだ、あれを使えばなんとか兵士たちを振り切れそうだな!!

ヘモアは鞄の中から何かを取り出すと、それを地面に仕掛ける。兵士たちはヘモアの仕掛けた何かに気付かず、ヘモアを追い続ける。

「逃がさんぞっ!!ここで捕まえてや……うっ!!足が動かぬっ!

「うっ、動けんっ!!何がどうなっているんだ!?

ヘモアの追う兵士の足取りが、急に止まる。どうやらヘモアは兵士たちの動きを封じるために、強力な痺れ罠を地面に仕掛けていたのだ。

 「フハハハハッ!地上界のクズどもよ、ここでビリビリ痺れているが良い…さらばだっ!!

ヘモアは兵士たちにそう言った後、転送陣を描き、魔界へと帰っていく。ヘモアが魔界へと逃げていった後、ファルスがヘモアを追う兵士たちの下へと来る。

「こ…これは一体!?何があったのだ!!

ファルスが兵士たちにそう言うと、兵士は地面を指差し、そう言う。

「ヘモアとかいう奴が地面に罠を仕掛けていたらしく、迂闊に踏んでしまったために我々は足止めを喰らってしまった。ファルス殿、あの装置を壊してくれないか!

ファルスがあたりを見回すと、地面に何かしらの装置が仕掛けられていた。どうやらヘモアの仕掛けた痺れ罠であった。ファルスは槍に力を込め、罠を破壊する。罠が破壊されたことにより、兵士たちの体の痺れが消え、動けるようになる。

 「ありがとう!!おかげで動けるようになった。ファルス殿、早く王宮に戻りアメリア様にそのことを報告しましょう。早急に対策をとらねば、フェルスティアが制圧されてしまいます!!

ファルスと王宮の兵士たちは、今日の出来事をアメリアに伝えるべく、王宮へと戻っていく。そのころクリスたちを乗せた魔列車はルーズ・ケープへと向かうべく、山の中を進むのであった。

 

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