蘇生の章第四十話 いざ、魔界へ!!

 

 クリスの強き思いが込められた聖なる雷により、リリシアは息を吹き返した。その翌日、レミアポリスの皇帝であるアメリアは、クリスたちにルーズ・ケープ王宮にいる魔界王メディス討伐を命じた。ルディア地域の龍の山にある魔界への扉へと向かうため、クリスたちとガルフィスは小型の魔界製フリゲートに乗り込み、龍の山の頂上へと向かうのであった……。

 

 クリスたちを乗せた魔界製フリゲートは、速度を上げてルディア地域へと向かっていた。レミアポリスを離陸してからしばらく経った後、フリゲートは龍の山の頂上に着陸した。

「クリスたちよ、ここが龍の山の頂上だ。この山の頂上にある風穴から魔界へと続く扉があるはずだ。みんな、風穴の中に入るぞ。」

風穴の中から、異様なまでの魔界のエネルギーを感じたガルフィスは、クリスたちとともに風穴の中へと入っていく。風穴の奥にたどり着いたクリスたちの目に、大きな扉のような物が現われた。それこそが魔界に続く扉なのである。

 「あれが魔界へと続く扉……その扉の先が魔界なのですね。しかし、人間が魔界に踏み込めば何かしらの悪影響があるかもしれませんわ…。」

魔界へと続く扉を見たフィリスは、心配そうな表情でそう呟いた。そのフィリスの様子を見たガルフィスがクリスたちにそう伝える。

「心配はいらない…。魔界は人間でも住める環境だ。ただ唯一地上界とは違うところは人々の違い…かな。」

ガルフィスの言葉を聞いたフィリスは、ホッと肩を撫で下ろした。フィリスが安堵の表情を浮かべる中、カレニアが魔界に続く扉に手をかけ始めた。

 「へぇ……これが魔界の扉ね。私の掛けている眼鏡でも解析できないわ。とりあえず魔界に着いたら眼鏡を改良しなきゃね…。」

カレニアは眼鏡を掛け、魔界の扉の開け方を調べようとしたが、全く情報が得られなかった。カレニアの言葉を聞いていたガルフィスが、カレニアに近寄り、そう言う。

「君の掛けているその眼鏡、いろいろと調べものが出来るようだね。悪いようにはしないから、少し貸し

てごらん……。」

カレニアは掛けていた眼鏡を外し、ガルフィスに手渡す。ガルフィスはカレニアの眼鏡を手に取り、魔力を込めはじめた。ガルフィスの魔力が込められ、カレニアの眼鏡はパワーアップした。

 「これで完了だ。眼鏡を掛けて魔界への扉を見てごらん……。」

ガルフィスによって改良された眼鏡を掛け、魔界への扉の解析を始める。眼鏡を通じて、カレニアの脳に魔界への扉の情報が入り込んでくる。

「すごい……。魔力を与えられた眼鏡なら扉の開け方が脳に浮かんでくるわ。扉に手を当てて魔力を込めれば開きそうね。みんな、扉に手を当てて扉に魔力を送り込んで!!

カレニアの言葉を聞いたクリスたちは、扉に手を当て。魔力を込め始める。すると魔界への扉が少しずつ動き出し、開き始める。

「いいぞっ!!その調子だ…。ならば私も手伝おう!

ガルフィスもクリスたちと共に扉に魔力を込め始める。ガルフィスの魔力が加わり、魔界への扉は大きな音と共に開いた。

 「みんな、扉が開いたぞ!この扉の向こうには別の世界が待っているのだから、気を抜くなよ!!

魔界に続く扉が開き、魔界への扉を抜けたクリスたちは魔界へと足を踏み入れる。そこには紫の空と黒き大地、そして見たことも無い草花がそこにあった。

「見たことも無い世界だわ…。フェルスティアとは大違いですね。」

クリスは地上界とは別の光景に驚いていた。彼女たちが普段見ている地上界の空は青空だが、魔界では紫の雲が漂う常夜の世界であった。クリスたちが魔界の空を見上げている中、ガルフィスは仲間たちを呼び出し、こう伝える。

 「みんな良く聞いてくれ…ここから南に行った所にあるフォル・エクリスの町からルーズ・ケープへと向かう魔列車が走っている。その魔列車に乗り、ルーズ・ケープへと向かう。まずはフォル・エクリスの町に行き、休憩と情報収集だ……。」

クリスたちは魔界の町であるフォル・エクリスを目指して歩き始めた。しばらく歩いていると、大きな魔界の獣がクリスたちに襲い掛かってきた。

「ギャアアアアッ!!!

大きな咆哮を上げ、爪を立ててクリスたちを威嚇する。クリスたちが身構えるよりも早く、ガルフィスはナイフを取り出し、魔界獣の懐に入る。

 「はあっ!!

ガルフィスのナイフが、魔界獣の腹部を切り裂いた。ナイフの一撃を受けた魔界獣はその場に倒れ、動かなくなった。

「すごい……あの凶暴な魔物を一撃で倒してしまうなんて…。」

クリスたちはガルフィスの力に圧倒されていた。ガルフィスはナイフを収め、クリスたちの下へと戻ってくる。

 「今の戦いを見ただろう…これが魔皇帝の力というものだ。私はかつてメディスに忠誠を誓い、魔界王の側近として仕えていた。しかし、魔導城での戦いで敗れたはずのリリシアが生きていた事を知ったメディスは、魔界の強き者を集め、リリシアに賞金を掛け、地上界にいるリリシア討伐に向かわせたのだ。私はそのことに嫌気がさし、メディスの放った魔物を片っ端から潰していくことを決めたのだ。そう、すべてはリリシアを助けるためにな……。」

リリシア討伐の為に地上界に向かったガルフィスは、主であるメディスを裏切り、リリシアの首を狩るべく地上界に放たれた魔界の者たちを殲滅するために行動していたのだ。そのことを知ったリリシアは、ガルフィスに感謝の表情で見つめる。

 「ありがとうガルフィス様…もしかして私を助けるためにメディスを裏切り、私たちの味方をしてくれたのね……。」

その言葉を聞いたガルフィスは、少し微笑みながらこう答える。

「ハハハ…。七大魔王の中で唯一優しい心を持つことが出来たのは君だけだからな……。だからこそ助けたいと思ったのだからな。さて、早いとこフォル・エクリスの町へと急ごう。何か一つでも王宮へ行く方法を知りたいのだからな…。」

魔界獣を倒したクリスたちとガルフィスは、魔列車が走る街であるフォル・エクリスの町へと再び足取りを進めるのであった。

 

 一方ルーズ・ケープの王宮では、自室で眠りについていたメディスが王座の間へと戻ってきた。クリスから受けた腕のダメージも回復し、元気な表情で玉座に座る。

「うむ。ガルフィスの奴がリリシアの首を魔導炉に放り込んでくれたおかげで、強大な魔物を製造できそうだな…。奴の魔力があれば今までの十倍、いや百倍以上のパワーを持つ魔物が生まれるかもしれん!!

ガルフィスに裏切られていることを知らないメディスは、強い魔物を生み出すべく王宮の地下にある魔導炉へと急いだ。

 「むむ…なにやら大きな物が浮かんでいるようだな。魔物製造の失敗で出来たゴミだな。このままでは炉が詰まって動かなくなってしまう!!ここはヘモアに炉の中のゴミを取ってもらうしかないな。」

大慌ての表情を浮かべるメディスは、玉座の間にいるヘモアを呼び出し、地下にある魔導炉へと急ぐ。メディスはヘモアに魔導炉の中にあるゴミを取り除くように命じた。

「ヘモアよ、炉の中にあるゴミを取ってくれぬか。早くしないと炉が詰まってしまうのでな。ヘモアよ、よろしく頼むぞ。」

メディスの命令を聞いたヘモアは、魔導炉の中のゴミを取り除く作業に入る。しばらくして、大きなゴミを抱えたヘモアが魔導炉の中から戻ってきた。

 「メディス様、これが炉の中のゴミです。どうやら魔物の製造の失敗で出来たもえないゴミのようです。」

ガルフィスがリリシアの首の代わりに放り込んだもえないゴミとは知らずに、メディスは燃えないゴミを焼却炉の中に入れると、笑みを浮かべながらメディスにそう言う。

「リリシアの首は炉の中で解け、強力な魔素が発生したようだな。ヘモアよ、強大な魔素の力で、強き魔物を生み出し、地上界を侵略するのだっ!!これで地上界は私のものだ!ハハハハハッ…!!

高笑いを浮かべながら、メディスは王座の間へと戻っていった。ヘモアは魔導炉のスイッチを入れ、魔物を生み出す準備に取り掛かる。

 「フハハハッ!強力な魔物が生み出せるようになったので、一度試しに強い魔物でも生み出してみるか…。」

ヘモアは魔導炉のスイッチを入れた瞬間、大きな音を立てて魔導炉が稼動を始める。スイッチを入れてからしばらく経った後、魔導炉の中から大型の魔物のような物体現れた。

「よしっ!!大型の魔物が生まれたぞ!さっそく見てみるか!

うきうき顔のヘモアは魔導炉から現れた大きな魔物のような物体に近づいた。しかしヘモアが近づいても、魔物が牙を向ける気配が無かった。どうやら魔物製造に失敗し、巨大なもえないゴミが生まれてしまった。

「こいつは魔物ではなく、ただのもえないゴミだな…。やはりリリシアの魔力を持ってしてもダメだったようだ。このままではメディス様に申し訳が立たぬ!!もう一度稼動させるぞ!!

ヘモアはもう一度魔導炉を稼動させ、魔物を生み出す準備に取り掛かる。今度は失敗しないよう、自分の魔力の一部を魔導炉に込める作戦にでた。しばらく経った後、魔導炉の中から巨大な魔物のような物体が現れた。

 「さぁ強き魔物よ、目覚めてくれ……。」

ヘモアが恐る恐る魔導炉から現れた巨大な魔物のような物体に近づいた。ヘモアが近づいた瞬間、巨大な魔物のような物体が動き出した。それを見たヘモアは、成功を確信した表情であった。

「もえないゴミではないようだな。強き魔物を生み出すことに成功したようだ。」

ヘモアがそう呟いた瞬間、魔導炉から出てきた巨大な魔物のような物体が動き出し、ヘモアを見つめ始める。

 「グルルルルル……。」

魔物は腹が減っているのか、ヘモアに何か食べる物を要求してきた。ヘモアは自分の鞄の中から魔界の果物であるブラックグレープを差し出すと、巨大な魔物のような物体は嬉しそうな表情で食べ始めた。ヘモアから差し出された果物を食べ終えた瞬間、ヘモアの手をざらついた舌で舐め始めた。

「そうだ。お前の名前をまだつけていなかったな。お前の名前は魔導獣ガルデ・アルカディスだ!こいつを地上界に放り込めば、一瞬にしてフェルスティアを壊滅状態にできるかもしれん!

先ほど魔導炉で生まれた魔導獣ガルデ・アルカディスと共に、ヘモアはメディスのいる王座の間へと向かい、メディスに強力な魔物が生まれたということを伝える。

 「メディス様、魔導炉から強力な魔物が生まれました。生まれた魔物を魔導獣ガルデ・アルカディスと名づけた。メディス様、この魔物を地上界に放ってもよいかな?

ヘモアの言葉に、メディスは笑顔で答える。

「でかしたぞヘモアよ、早速この魔物を地上界に放つのじゃ!こいつの力があれば地上界制圧も夢ではないようだな。地上界に続くワープホールを発生させるから、少し離れておくれ。」

魔導獣ガルデ・アルカディスを地上界に転送させるべく、メディスはワープホールを作りだした。ヘモアは自らが生み出した魔導獣を、ワープホールに放り込む。

 「ガルデ・アルカディスよ、必ず地上界を侵略してくるのだっ!!

ヘモアは名残を惜しみながら、地上界へと向かうガルデ・アルカディスの無事を心配するのであった。クリスたちがメディスを倒すために魔界に来ているということを、メディスたちはまだ知らない……。

 

 一方クリスたちは魔列車が走る町、フォル・エクリスに到着した。クリスたちは早速駅へと向かい、情報収集を開始した。

「駅に到着したのはいいんだけど、まずは駅員に話を聞いたほうがいいわね。」

駅員に話をするため、カレニアは早速駅員のいる切符売り場に向かった。切符売り場に向かったカレニアは、早速駅員に交渉を始める。

「駅員さん、ルーズ・ケープ行きの切符が欲しいのですが……。」

カレニアの言葉を聞いた駅員は、頭を下げながらこう答える。

 「すみません。ルーズ・ケープ行きは運休となっております。魔界王メディス様がルーズ・ケープへの通行手段を完全封鎖した模様で、運行は未定となっております。」

そのことを聞いたカレニアは、驚きの表情でそう呟く。

「そうですか……。駅員さん、ありがとうございました。」

 カレニアは駅員にそう言うと、がっかりした表情でクリスたちのところへと戻っていった。メディスによってルーズ・ケープへの通行手段が完全封鎖された今、クリスたちはルーズ・ケープにたどり着けるのだろうか…?

 

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