蘇生の章第三十九話 蘇りし魔姫
メディスの凶刃によって刎ね落とされたリリシアの首を取り返すため、ガルフィスは一人魔界の首都ルーズ・ケープに赴いた。クリスとの戦いで傷ついたメディスを気遣い、ガルフィスはリリシアの首を魔導炉の中に放り込む仕事を引き受け、自室で休むように言った。ガルフィスはあらかじめ用意していた抗菌袋の中にリリシアの首を入れ、リリシアの首の代わりとなるもえないゴミを魔導炉に放り込んだ後、レミアポリスへと向かい、仲間たちと共に蘇生の準備を始めるのであった。
蘇生の準備が着々と進んでいる中、クリスが戻ってきたというカレニアの声を聞いたガルフィスは、
早速リリシアを蘇らせる作戦の最終段階に移り始めた。クリスをガルフィスの元につれてきたガルフィスは、クリスの持つ雷の術でリリシアの心臓を動かすということをクリスに伝える。しかしクリスは仲間を傷つけたくない思いと助けたい思いがぶつかり合い、苦しんでいた。そんな中、カレニアの慰めによってクリスは落ち着きを取り戻し、術を放つ態勢に入る。
「聖なる光よ……私の大切な仲間を助けてっ!!波導究極雷撃術、裁きの雷!!」
クリスが詠唱を終えた瞬間、聖なる光が雷に変わり、リリシアを貫いた後、聖なる光がリリシアを包み込んだ。どうやら聖なる光はリリシアを悪しき者ではないということを示したのだ。
「私の聖なる光が……リリシアを包み込んだ。後は助けたいという思いを術に込めるだけね!!」
クリスはリリシアを助けたい気持ちを術に込め、シャムシールを天に掲げてそう叫んだ。
「聖なる光よ……正しき者に光をっ!!」
クリスがそう叫んだ瞬間、雷が再びリリシアを貫く。クリスはさらに魔力を込め、もう一度リリシアに雷を落とそうとした瞬間、カレニアが呼び止める。
「クリスっ!!これでいいわ。これ以上電撃を与え続けたら肉体的にも危ないわ…。」
カレニアの言葉を聞いたクリスはシャムシールを鞘に収め、リリシアの元へと走る。クリスはリリシアの胸に耳を当て、心臓の音を聞き始める。
――ドクン…ドクンッ……。止まっていたリリシアの心臓が回復し、生命活動を始めた。どうやらクリスの助けたいという気持ちが、奇跡を起こしたのだ。
「どうやら、作戦は成功したわね……。雷を落とすというガルフィス様の作戦にはこの私もハラハラさせられたわ。クリス、リリシアを部屋に運ぶわよ…。」
カレニアがクリスのほうを向いた瞬間、クリスはリリシアの心臓が動き出したことに、うれし涙を流しながら、そう呟く。
「ぐすっ…リリシアのバカ……。どれだけ私が心配したと思っているのよ……。」
リリシアが蘇ったことが、嬉しくてたまらなかった。クリスはリリシアを背負い、王宮へと向かった。
王宮に戻ったクリスたちは、リリシアをベッドに寝かせた後、ガルフィスは仲間たちにこう伝える。
「なんとか王宮の中に運び込めたな。しかしリリシアは息を吹き返さない……。誰か人工呼吸が出来る物はいないのか……?」
ガルフィスはクリスたちにそう呼びかけると、仲間たちは話し合っていた。
「フィリス様…ここは人生経験豊かなあなたが便りなのです!!」
「何を仰っているのですかカレニア!?私は人工呼吸のやり方は知らないですわ。確か鼻をつまんで口うつしで息を吹き込むことなんて……!!」
フィリスがそう言った瞬間、カレニアは笑いながらこう答える。
「ほらやっぱり!フィリス様…やり方わかるならあなたが……!」
カレニアの言葉を聞いたフィリスは、顔を赤くしながらそう言う。
「ちょっと、無理言わないでよ。女は……。」
フィリスは同じ性別の人とは人工呼吸は苦手であった。カレニアはディオンを呼び出し、リリシアの人工呼吸をするように勧める。
「ディオン、ファーストキスのビッグチャンス到来よ、ここはあなたが人工呼吸してちょうだい!!」
「確かに……俺はフィリス様に人工呼吸のやり方は教えられた。でも初めてだからうまくいくとは限らん。カレニアよ、ここは俺に任せろっ!!」
ディオンはリリシアの鼻をつまみ、口移しで空気を送り始めた。ディオンの人工呼吸のおかげで、リリシアはかすかに息を吹き返した。
「リリシアが息を吹き返したのだが、まだ目を覚まさない状態だ。もっと魔力と栄養を与えなければ、体はどんどん衰弱していく一方だ…。」
ガルフィスの言葉を聞いたフィリスは、鞄の中から結界石を取り出す。
「この結界石なら、魔力と体力を回復させる結界を作り出すことが可能です。ガルフィス様、これをリリシアの寝ているベッドの上に……。」
フィリスは結界石をガルフィスに手渡すと、それをリリシアの寝ているベッドの上に置き始めた。結界石が置かれたことにより、リリシアの周りに回復の結界が張られる。
「この結界の中で一日安静にすれば、リリシアの体力と魔力がすべて回復できそうだ。フィリスよ、いい物をありがとう。私は少しアメリア様とこれからの事について話をするため、皇帝の間に行くとするか……。」
ガルフィスはアメリアと話をするため、皇帝の間へと向かった。クリスたちはリリシアの無事を祈りつつ、王宮の来客室で一晩を過ごすのであった。
クリスたちが寝静まった後、皇帝の間ではガルフィスとアメリアがなにやら話し合っていた。
「アメリア様…魔界をご存知ですか?言うなればこの世界、フェルスティアとは別の世界のことだ。」
ガルフィスの言葉を聞いたアメリアは、真剣な眼差しで答える。
「何ですと…!!魔界が本当に存在しているということは初めて聞きました。メディスとかいう奴を倒すには、魔界へと赴かなければならない…。ガルフィス殿、何か知っていることがあれば頼む…。」
その言葉に、ガルフィスはアメリアにこう伝える。
「そうだ!!フェルスティアには確か魔界に通じる扉がエルジェにあったはずだ。そこから魔界へと向かい、メディスのいるルーズ・ケープに突入することが可能です。」
「エルジェに魔界へと続く扉が存在したとすれば、魔界への突入が可能になるということだな。ガルフィス殿、いい情報をありがとう。明日仲間たちに伝えておく。」
アメリアがそう言った後、ガルフィスはそう言って王宮の間を去る。
「アメリア殿、これより私はリリシアの看病に行ってまいる!」
ガルフィスは目を覚まさないリリシアを看病するべく、治療室へと向かった。ガルフィスは疲れた表情を浮かべながら、リリシアの額に塗れた布を当てる。
「ふぅ…私も疲れた。とりあえず君の横にあるベッドで寝る。」
疲れきったガルフィスはリリシアの横にあるベッドに横たわり、眠りについた……。
翌朝、仲間たちよりも早く目が覚めたクリスは、リリシアのいる治療室へと向かった。彼女はよほどリリシアのことが心配なのか、様子を見に来たのだ。
「クリス…おはよう。」
クリスが治療室に来たときには、リリシアはすでに目覚めていた。クリスはリリシアの元気な姿を見た瞬間、なぜか涙が溢れてきた。
「ぐすっ…、私、今すごく嬉しい……。あなたが生き返ってくれて……。」
嬉しさのあまり涙を流すクリスに、リリシアがそっとクリスに近づき、慰める。
「今こうして私が生きているのも、クリスの聖なる力のおかげよ。クリス、よかったらこれ使って……。
リリシアはクリスにハンカチを手渡すと、クリスはリリシアから貰ったハンカチを手に取り、涙をぬぐい始める。
「ありがとうリリシア…。私、あなたの仇を討つためにメディスを倒すことを決めたの。みんなで戦えば、きっと倒せるはずよ。ねぇリリシア、王宮で私が言ったこと、覚えているかな…?」
クリスの問いかけに、リリシアが答える。
「確か『あなたは一人じゃない…。私たちがついている。』ってクリスは言っていたよね。あの言葉を聞いたときすごくうれしかった。あの時は一人だったから負けてしまったけど、仲間たちと一緒ならきっと勝てるかも知れないわね…。」
クリスとリリシアが会話をしている中、ガルフィスが目覚めた。ガルフィスは結界石に札を貼り、結界石を封印する。
「リリシア…もう目覚めたのか。結界石はまた使えるよう札をしておいた。しかし石にヒビが入っているようだから、いつ壊れるか分からないぞ…。」
ガルフィスの言葉を聞いたリリシアは、真剣な眼差しでガルフィスにそう言う。
「わかりました…。メディスは私を殺した後、王宮に戻られたのですか…?」
目覚めたばかりのガルフィスに、リリシアがメディスのことを尋ねる。
「メディスの奴は王宮にいる。私が君の首を持ち帰るときにメディスを見かけたのだが、クリスからダメージを受けた右腕を抑えていたようだな…。君たち、そろそろ食事の時間だな。私も行くとするか…。」
クリスたちは朝食をとるため、急いで王宮の大広間へと向かった。クリスたちがきたときには仲間たちがすでに食卓を囲み、クリスとリリシアを待っていた。
「おはようリリシア!さぁ、ここに座って!!」
嬉しそうな表情を浮かべるリリシアが、リリシアを椅子まで案内する。全員が椅子に座った時、アメリアが大広間にいる全員にそう言う。
「うむ…。昨晩ガルフィス様と話し合いをし、これからの対策を考えていたのだ。この世界を守るためには、魔界へと向かい諸悪の根源である魔界王メディスを倒さなくてはならん……。そこでクリス、君に一つ頼みがある。仲間たちとともに魔界へ向かい、魔界王メディス討伐をして欲しいのだ。かなり危険な任務だが、引き受けてくれるかな……?」
アメリアがクリスたちにメディス討伐を命じると、クリスは動揺することなく椅子から立ち上がりアメリアにそう言う。
「わかりましたアメリア様、私は仲間たちと共にメディス討伐に向かいます。心配しないでください、自らの命を懸けて、必ずこの任務を遂行して見せます!!」
クリスのその言葉に、アメリアはクリスの成長に驚いていた。仲間との出会い、そして強敵との戦いが、クリスをここまで成長させたのだ。
「クリスよ、良くぞここまで成長したな。君にならこの任務を任せられるな…。魔界への扉のありかは、ガルフィス様が知っている…。ガルフィスよ、魔界への扉の場所を頼む…。」
アメリアの言葉で、ガルフィスは前に出てクリスたちにこう話した。
「エルジェにある魔界への扉は、治安の理由で撤去された。しかしまだ唯一残っている扉がルディア地域の龍の山にあったはずだ。龍の山にある魔界への扉から魔界へと突入できる。五人だけでは不安だ…私も一応同行しよう…。それでは食事が済んだら王宮の前に来たまえ…。詳しい話はそこからだ。」
ガルフィスの話が終わった後、クリスたちは食事を済ませ、旅の支度を始める。全員が王宮の前に集まったのを確認すると、ガルフィスはこれからの事を話し始めた。
「全員集まったようだな。これからルディア地域にある龍の山へと向かおう。今から私が使っている魔界製フリゲートを呼び出すから、少し離れていてくれ……。」
ガルフィスの合図で、クリスたちが離れた瞬間、メディス率いる魔界兵たちが乗っているタイプとは別の魔界製フリゲートが王宮前に着陸した。
「これは…メディスが乗っていたものと同じ魔界製フリゲート…ガルフィス様も密かに開発していたのですねっ!!」
リリシアが王宮前に着陸した魔界製フリゲートを見て、ガルフィスにそう言う。
「こいつは私が密かに開発していた魔界製フリゲートだ。メディスが使っている奴とは型が違う。こいつは移動用に開発された物だ。さぁ乗りたまえ…。こいつで龍の山の頂上に向かおう。」
クリスたちは魔界製フリゲートに乗り込み、ルディア地域にある龍の山へと向かった。メディスを倒すため、クリスたちは魔界へと向かう!!