蘇生の章第三十八話 魔姫の為に…

 

 魔界兵たちを倒したクリスの前に、突如魔界のすべてを統括する王、メディスが現れた。メディスがレミアポリスを襲撃した理由は七大魔王の反逆者であるリリシアを殺すためであった。リリシアはメディスと戦ったが、メディスの大鎌によって首を刎ねられ、殺されてしまった。レミアポリス襲撃事件から一日後、リリシアの死によってクリスは完全に心を閉ざし、何も言わず王宮を飛び出していった……。

 

 一方リリシアの首を奪い返すため、魔界の首都ルーズ・ケープの王宮へと戻ってきたガルフィスは、メディスのいる王座の間へとやってきた。

「ガルフィスよ、よくぞ戻ってきた。私は今からリリシアの首を魔導炉に放り込むところだ…。」

その言葉を聞いたガルフィスは、メディスの表情を見ながらそう言う。

 「メディス様…ここは私にお任せください。クリスから受けた腕の痛みもあるでしょう、要するにリリシアの首を魔導炉に放り込めばいいのですね。ならばその鉄の桶を私に……。」

メディスは鉄の桶をガルフィスに渡すと、メディスはそう言って王座の間を去る。

「よかろう…。ではこの鉄の桶をお前に預ける。その中にあるリリシアの首を魔導炉の中に入れてくるのだ。私は疲れたから部屋に戻るぞ。あの小娘から受けた腕のダメージが癒えんのでな……。」

メディスは腕を抱えながら、自分の部屋へと戻り、ベッドに寝転がり眠りについた。メディスが眠りについた後、ガルフィスは王宮の地下にある魔導炉に行き、鉄の桶の中に入っているリリシアの首を取り出し、抗菌袋の中に首を入れる。

「これでOKだ。後は代わりとなる物を魔導炉に放り込めば、私の計画は終了だ。」

ガルフィスは鞄の中から人間界では処理に困るもえないゴミを魔導炉に放り込んだ後、そそくさと王宮を去っていった。ガルフィスが王宮を去った後、ヘモアが王宮に帰ってきた。

 「メディスがリリシアを倒したようだな。これで地上界はメディス様のものだな……。ハッハッハ…。」

高笑いを浮かべながら、ヘモアは王宮の中へと入っていった。ガルフィスはリリシアの首が入っている抗菌袋を抱えながら、仲間たちの待つレミアポリスへと戻るのであった。

 

 仲間たちがガルフィスの帰りを待つ中、クリスは船着場へとやってきた。クリスは船の切符を買い、ルディア行きの船へと乗り込む。

「お爺様……私はやるべきことを果たせませんでした…。もう私は戦いに疲れました…。」

クリスはため息をつきながら、そう呟く。数分後、クリスを乗せた船はルディアの船着場に到着した。

 「はぁ…、家に帰って眠りたい気分だわ…。」

ため息をつきながら、クリスは自分の故郷であるルドリーの村へと戻ってきた。自分の家に戻ったクリスは鎧を脱ぎ捨て、私服に着替えてベッドに寝転ぶ。

「みんな、後は頼んだわ……私どうしていいかわからない……」

戦いに疲れたクリスは、眠りについた。クリスが眠りについている間、メディスからリリシアの首を返したガルフィスは、スピードを上げてレミアポリスへと向かっていた。

 

 仲間たちが悲しみにくれる中、アメリアが仲間たちの前に現れた。

「お前たちよ…元気が無いぞ?何が起こったのだ…。」

アメリアがそう言った瞬間、フィリスが涙ながらにアメリアに伝える。

 「リリシアはメディスに首を刎ねられ、殺されてしまいました……。彼女の死体なら地下の霊安室に安置しております。リリシアのことをよく知っているガルフィスは今、メディスに奪われたリリシアの首を取り返すといっていました……。」

フィリスがそう言った瞬間、アメリアは驚きの表情で答える。

「な…なんだと!?リリシアはメディスとかいう奴に首を刎ねられて殺されたのか…。おや、クリスがいないのだが、何処に行ったのだ?

アメリアがクリスがいないということについて尋ねると、フィリスが答える。

 「クリスはリリシアが死んでからというもの、彼女はしばらく食事も食べて無いし、私たちと言葉を交わすことも無かったわ。それにかなりやつれていた様子でした。少し前に王宮の中を探して見ましたが、クリスの姿は何処にもいませんでした……。」

フィリスの言葉を聞いたアメリアは、目を閉じてクリスの魔力の波長を探り始める。その結果、クリスは故郷であるルドリーの村にいることが分かった。

「クリスはルドリーの村にいるようじゃ。何があったかは知らんが、クリスの魔力の波長がだんだん薄れていくのを感じるのだ。きっと彼女は何か苦しみを抱えているのかもしれぬな…。」

アメリアの言葉に、カレニアはそっとアメリアにこう伝える。

 「いなくなる前にクリスの姿を見かけましたが、確かに苦しみを抱えているようでした。リリシアがメディスに殺され、悲しみのあまり心を閉ざしたのだと思うわ…。しかし今はリリシアの首を取り返しに魔界へ向かったガルフィス様の帰りを待ちましょう。アメリア様。」

カレニアがアメリアにそう言った瞬間、袋を抱えたガルフィスが仲間たちの前に現れた。

 「が…ガルフィス様!!リリシアの首を取り返したのですかっ!?

ガルフィスの帰りに、カレニアは嬉しそうな表情でガルフィスに近づく。ガルフィスは抗菌袋の中をカレニアに見せると、すこし涙を浮かべる。

「よかった……。さぁガルフィス様、リリシアを蘇らせるための準備を始めてください…。フィリス様、地下の霊安室から棺を持ってきてください。」

カレニアの言葉で、フィリスは地下の霊安室からリリシアの死体が入っている棺をガルフィスの元へと運び、蘇生の準備を始める。

 「まずは斬りおとされた首をこの『万能のり』で接合する。万能のリは私が持っているから安心したまえ。まずはカレニア、抗菌袋の中から首を取り出してくれ。切断された面から菌が入ってはいけないから、この抗菌手袋を使いたまえ…。」

ガルフィスはカレニアに抗菌手袋を渡すと、カレニアは抗菌手袋を身につけ、リリシアの首を抱える。ガルフィスは万能のりを取り出し、リリシアの首の切断面に糊付けを始める。

「カレニアよ、首を胴体の切断面に近づけるのだ…。」

カレニアは恐る恐る胴体の切断面と首をあわせ、接合を始める。するとリリシアの体と首は完全につながったが、心臓は再び脈打つことは無かった。

 「ガルフィス様、まだリリシアは復活しません。あと何をすればよいのですか……?

焦りの表情を浮かべるカレニアに、ガルフィスがリリシアの胸に手を当てながらそう言う。

「万能のりで切断面をくっつけただけでは蘇らせることは出来ない。リリシアの心臓に何らかのショックを与えれば、再び動き出すのだが……。言葉で言い表すとすれば心臓に電気を送るということだな。」

ガルフィスの言葉をヒントに、カレニアは何かを思いついたようだ。

「心臓に電気を送る……。私たちの中で雷の術を使えるのはクリスしかいないわ!しかし肝心のクリスはリリシアの死によって心を閉ざしているわ。ああ!!一体どうすればよいのかしらっ!

クリスの不在に、困り果てたカレニアは頭を抱えるばかりであった。

 

 一方クリスは眠りから覚め、村の中の散歩に向かおうとした瞬間、クリスのお爺様が自宅に戻ってきた。

「クリスよ、もう戦いは終わったのか…。だから戻ってきたのだな。」

お爺様の言葉に、クリスは小さな声でこう答える。

 「私…仲間に黙って故郷に戻ってきちゃったし…もう何をすればいいか分からない。大切な人が死ぬのを見るのはもう嫌なのっ!私と共に旅をしてきたリリシアという人が…目の前でメディスに首を刎ねられてっ……ぐすっ…。」

クリスは涙を流しながら、お爺様にそう言う。お爺様はクリスを抱きしめ、慰める。

「大切な人が死ぬのは悲しいことじゃ。大切な人の死を乗り越え、強くなるのが人間というものだ。メディスはどんな奴だ…。知っていることを話してくれ。」

お爺様がそう言うと、クリスはメディスのことを話し始めた。

「リリシアを殺したメディスは、魔界王と呼ばれている者です…。リリシアが死ぬ間際に放った一撃で冥府の大鎌を破壊したのですが、まだ安心は出来ないわ……。この世界を守るために戦いたいのですが、もう剣を捨てて普通の生活に戻ります。どうかお許しくださいお爺様…。」

クリスの言葉に、お爺様はクリスの肩を叩き、こう答える。

 「そんなことを言うでないクリスよ、勇気を振り絞って再び剣を握るのだ。その剣でリリシアを殺したメディスをぎゃふんと言わせるのじゃ!クリス、今こそ戦いのときじゃ。これをお前にやろう…。」

お爺様はクリスに何やら白い石のような物を手渡す。

「お爺様…この石は一体!?

お爺様に手渡された白い石を見たクリスは、謎めいた表情でお爺様にそう言う。お爺様は白い石をクリスの方に向けた瞬間、眩い光がクリスを照らす。

「こいつはホーリーストーンといってな。強い光の力が込められている石だ。武器にその石を近づければ、聖なる光はきっとお前に応えてくれるだろう。さぁ、旅の支度をするのだ!!

ホーリーストーンの放つ聖なる光に照らされ、クリスは再び戦うことを決意した。クリスは旅の支度を終え、自宅の前にやってきた。

 「お爺様、私はメディスを倒すために仲間の元に戻ります。それでは……。」

仲間たちの待つレミアポリスへと向かうクリスを、お爺様が大声で見送る。

「クリスよ、お前が悲しむ顔はわしは見たくは無いのだ。帰ってくるときは笑顔で帰ってくるのだぞっ!お前ならきっと出来ると信じておるからな!!

お爺様の声を聞いたクリスは、振り返って元気な笑顔を見せる。クリスは仲間たちの待つレミアポリスへと戻るべく、中央大陸行きの船に乗るのであった。

 

 レミアポリスの王宮では、仲間たちがクリスが戻ってくるのを待ち続けていた。そんな中、アメリアがが立ち上がり、クリスの魔力の波長が強くなっていくのを仲間に伝える。

「皆の者…クリスが今ここに向かっているぞ!

その言葉に、仲間たちは王宮前に向かい、クリスが戻ってくるのを待つ。しばらく待っていると、鎧を纏った女戦士の姿がそこにあった。仲間たちは目を凝らして女戦士のほうを見つめると、それは紛れもなくクリスであった。

「ガルフィス様、クリスが来たわ。早速蘇生の準備を始めて!!

カレニアはガルフィスに準備を始めるようにそう言うと、カレニアは急いでクリスを連れてガルフィスの元へと急ぐ。

 「クリス、リリシアが蘇らせるにはあなたの力が必要なの!おねがい…力を貸して。」

カレニアの願いに、クリスは笑顔でこう答える。

「わかったわ。私の力が必要ならば、いつでもいいわ!しかし蘇らせるにはどうすればいいのかしら…?

クリスが困惑する中、ガルフィスが説明を始める。

「わからないのなら私が説明しよう……。クリスが雷の術を使えるということを、そこの眼鏡のお嬢さんから聞いた。君の持つ雷の力を、リリシアに直撃させるのだ。強いて言えば雷の力で心臓を動かすということだ。」

その言葉を聞いたクリスは、仲間を傷つけることはできないというう気持ちでいっぱいであった。

 「雷って、まさか裁きの雷をリリシアに直撃させるって事!?そんなことできない…でもリリシアを助けたい……。」

クリスの心の中では、リリシアを助けたい思いと、傷つけたくない思いがぶつかり合っていた。クリスは涙を流しながら困惑するばかりであった。

「クリス…リリシアを助けたいという思いを術に込めれば、聖なる光は必ずクリスに答えてくれるわ。さぁ、リリシアに術を放つ準備を!!

涙を流しながら困惑するクリスを、カレニアがそっと宥める。その言葉を聞いたクリスは、涙を拭いて術を放つ態勢に入る。

 「聖なる光よ……私の大切な仲間を助けてっ!!波導究極雷撃術、裁きの雷!!

クリスが詠唱を終えた瞬間、聖なる光が雷となり、リリシアを貫いた。果たしてリリシアを助けたいというクリスの思いが、奇跡を起こすのだろうか……!?

 

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