蘇生の章第三十六話 レミアポリス襲撃
超魔王オーギュラスを倒し、ファルゼーレ大陸に光を取り戻したクリスたちは、エーゼルポリスの王宮で戦いの疲れを癒していた。クリスたちが休息を取っている一方、魔界の首都であるルーズ・ケープではメディスによる地上界侵略作戦が着々と進められていた。メディス率いるフェルスティア侵略部隊は人間界に侵攻するべく、魔界製フリゲートを発進させるのであった。
メディスたちを乗せた魔界製フリゲートは、ルーズ・ケープの上空で待機していた。
「今から人間界へと続く扉を開けるぞ。早く魔導砲の準備をっ!!」
フリゲートの操縦を任されている魔界兵は、砲台のハッチを開き魔導砲を放つ態勢にさせる。
「ハッチが開いたな。これより人間界へと続く扉、すなわちワームホールを発生させるため、上空にて魔導砲を放つ。後は私が操作する……。」
メディスはフリゲートの操作パネルの前に立ち、魔導砲の発射ボタンに手をかけ、魔界兵たちにそう言う。
「皆の者よ、席に座っていてくれ。魔導砲の威力は絶大だから、フリゲート全体が揺れるからな…。」
メディスは魔界兵たちを着席させた後、魔導砲の発射スイッチを押した。発射スイッチが押され、フリゲートは砲台の先端に魔力を集め、魔導砲を放つ態勢に入る。
「フリゲートよ、放てぇっ!!」
メディスの言葉と共に、フリゲート主砲から魔導砲が放たれ、激しい揺れと轟音と共に上空に放たれた。その衝撃により、ルーズ・ケープ上空にワームホールが発生した。
「作戦は成功だっ!!このワームホールを使って人間界に攻め込むぞ!!」
メディスと人間界攻略部隊である魔界兵たちを乗せた魔界製フリゲートは、魔導砲によって上空に発生したワームホールの中へと入り、人間界へと移動を開始した。フェルスティアの人々は、まだメディスと魔界兵たちによる人間界侵略計画が始まるということなど知る由も無かった……。
アンダーグラウンドでの戦いから一夜明けた後、クリスたちは玉座の間に集まっていた。エーゼルポリスの皇帝エーゼルフィーが現れ、クリスたちにそう言った。
「あなたたちのおかげで、このファルゼーレに光が戻ってきました。エルーシュの支配によって沈んだ人々の心も、この光と共に明るくなっていきましょう…。それはさておき、あなたたちに渡したい物があるので、少し待っていてください。」
エーゼルフィーはクリスたちにそう告げた後、渡し物を取りに城の倉庫へと向かった。しばらくして、エーゼルフィーが手袋のような物を抱えてクリスたちのところに戻ってきた。
「お待たせしました……。この手袋は『エンハンスグローブ』といって、装備者の魔導エネルギーを高めてくれる手袋でございます。これをあなた方にさしあげましょう…。」
エーゼルフィーはクリスたちに魔導エネルギーを高めてくれる手袋である『エンハンスグローブ』を手渡した。クリスは早速身に着けようとしたが、不思議な力によって身につけられなかった。
「あれ…?私には身に付けられないわ。どうしてだろう…。カレニアやフィリス様なら装備できそうかな?」
カレニアとフィリスがエンハンスグローブを身に着けようとしたが、不思議な力によって身に付けられなかった。困り果てた3人はリリシアにその手袋を渡し、身に着けるように言う。
「クリスやカレニア、そしてフィリス様までも身に付けることが出来ないとなれば、ここは私が…。」
リリシアはエンハンスグローブを手に取り、身に着け始めた。するとエンハンスグローブはリリシアの体内の魔導エネルギーに反応し、白いグローブが真紅に輝き始めた。
「白だった手袋が…真紅に輝いている!!この手袋をつけた瞬間、魔力が高まってくる感じだわ…。伸縮性といい肌触りといい、文句のつけようがないわ!!」
エンハンスグローブを身に着けたリリシアは、嬉しそうな表情でエーゼルフィーにそう言う。
「エーゼルフィー様、この手袋、私にぴったりだわ。」
その言葉を聞いたエーゼルフィーは、驚きの表情でリリシアの方を見つめ、そう言う。
「その手袋を装備できる人がいたなんて……!!あなたはよほど熟練の魔導士ですわね。」
その言葉を聞いたリリシアは嬉しかったのか、顔を紅くして照れていた。クリスはエーゼルフィーにレミアポリスへと戻るということを伝え、王宮を出ようとした瞬間、遠くのほうで爆音が聞こえてきた。
「なにか爆発音が聞こえてきたのですが…王宮で何かあったのかもしれないわ!!とりあえず王宮の中に戻りましょう。」
クリスたちは王宮の中に戻り、エーゼルフィーに先ほど起こった爆発音のことを伝えた。その言葉を聞いたエーゼルフィーは、険しい表情でクリスたちにそう言った。
「大変です!!大きな魔物が上空からレミアポリスを襲撃しています!!あなた方はレミアポリスに戻ると言っていたようですわね。私の術なら一瞬でレミアポリスまで行けますわ!!転送術(ワープスペル)、ワープ・シンボル!」
エーゼルフィーは杖を取り出し、大きく輪を描き始めた。すると大きな輪はレミアポリスへと続く転送陣が王宮の床に浮かび上がった。
「この転送陣はレミアポリスへと続いています。私の作り出した転送陣の効果は約一分です。さぁ早く!!」
クリスたちはエーゼルフィーが作り出した転送陣に乗った瞬間、一分もたたないうちにレミアポリスへとワープした。クリスたちがレミアポリスへとワープした瞬間、王宮の床に描かれた転送陣は効力を失い、かき消えた。
「ファルゼーレを救いし勇者たちよ…後は頼みましたよ……。」
レミアポリスへと向かうクリスたちを心配した後、彼女は王座の間へと戻るのであった。
エーゼルフィーの転送呪文により、レミアポリスへとやってきたクリスたちはありえない光景に驚いていた。王宮の前では王宮兵と魔界兵との白兵戦が繰り広げられていた。上空には得体の知れない戦艦が空中で待機していた。
「あれは…魔界製フリゲート!!おそらくこれはルーズ・ケープで作られた魔界兵器だわ…。魔界兵たちはこれに乗って人間界を襲撃に来たのだわ。メディスの奴…私の首を狩るために人間界までっ!?王宮にいるアメリア様が心配だわ…はやく皇帝の間へ行きましょう!!」
リリシアは空を見てそう呟いた後、アメリアの無事を祈りつつ王宮の中へと向かおうとしたそのとき、魔界兵がクリスたちの目の前に立ちはだかった。
「見つけたぞ…リリシアッ!!」
魔界兵の一員である竜騎兵は、リリシアを見た瞬間手に持った武器を構え、襲い掛かる。しかしリリシアは素早く身をかわし、反撃の態勢に出る。
「私を倒そうというのかしら……魔界の兵にこの私が止められるのかしらっ!!」
リリシアは鉄扇を構え、竜騎兵を切り裂いた。竜騎兵はその場に倒れた後、動かなくなった。
「厄介ものは片付いたわ!さぁ早く王宮の中に入るわよ。」
クリスたちは竜騎兵を退け、レミアポリスの王宮の中に入った。王宮の周りと内部には結界が張られており、王宮の内部に魔物が入ってくることはないのだ。
「さすがに王宮の内部には魔物がいないようね。ここなら安全のようね。アメリア様が無事でいてくれればよいのですが……。」
クリスたちはアメリアを心配しながら、王宮の中を進んでいく。玉座の間に全員が来たとき、アメリアと武装した王宮兵がそこにいた。
「アメリア様…ただいま戻ってまいりました。私たちは見事魔王の手からソウルキューブを取り戻してまいりました。」
クリスがアメリアに全てのソウルキューブを取り返したことを伝えると、アメリアがクリスたちに葬命じる。
「おお…。よくやってくれたな。しかし今は一国の猶予も許されない状態だ。先ほど魔界の者たちがレミアポリスを襲撃してきたのだ。しかし結界のおかげで魔界の奴らはここには来れまい。迫り来る魔界の奴らに対抗するため、武装した王宮兵を戦場に送り出す。そこでだ、クリスたちも魔界兵を迎え撃って欲しいのだ…。」
その言葉に、クリスたちはこう答える。
「わかりました。これより王宮を守るために戦いますわ!!」
クリスの言葉に、アメリアは笑顔で武装兵とクリスたちを戦場へと送り出す。
「戦いの時は来た…。兵士たちよ、この王宮を守るために戦うのだ!!」
王宮を守るため、武装兵たちとクリスたちはレミアポリスを襲撃する魔界の兵を倒すべく、戦場へと向かった。先ほど王宮前で戦っていた兵たちは、魔界の兵たちによって倒されていた。
「先ほど送り出した兵士たちは全滅か……!!魔界の兵どもよ…行くぞっ!!」
兵士たちが剣を構え、一気に魔界兵に立ち向かっていく。クリスたちも兵士たちに混ざり、魔界の兵たちを迎え撃つ。
「私たちも戦いますわっ!!魔界の奴らを全滅させるため、お互いがんばりましょう!!」
クリスの言葉に、突撃を前にする武装兵たちはこう答える。
「わかったぜ!!俺たちと共に魔界の奴らを全滅し、この王宮を守ってみせる!!」
クリスと武装兵は市街地を襲撃する魔界兵を倒すべく、行動を開始した。兵士たちとクリスの様子を、メディスは魔界製フリゲートから見ていた。
「クリスめ…私に殺されにここまで来よったか。まぁ真の目的はリリシア討伐だからな…。何としてもリリシアの首を持ち帰らなければな……。」
不気味な笑みを浮かべながら、メディスは大きな鎌を取り出し、そう呟く。メディスは魔界製フリゲート内に待機している魔界兵たちをレミアポリスに送り出す。
「お前たち、行け!!必ずリリシアの首を私に持ってくるだっ!!」
「分かりました…メディス様。必ずや任務を遂行して参りますぞっ!!」
魔界兵たちはメディスにそう告げた後、フリゲートから魔界兵たちがレミアポリスに降り立った。メディスはフリゲートに残り、クリスとリリシアの動向を探ることにした。
「これでフリゲート内の魔界兵は全滅だな…。ここは私が直々にリリシアの首を狩るとしよう……。」
フリゲートの中にいる魔界兵が全滅したことに苛立ちを感じたのか、メディスはフリゲートからレミアポリスへと降り立った。
クリスたちと武装兵は、市街地を襲撃する魔界兵を殲滅させ、王宮前で魔界兵と白兵戦を繰り広げている兵士の助太刀に向かっていた。
「市街地にいる魔界兵は全滅だな……。王宮前の兵士の手助けに向かうぞっ!!」
「分かりました!!みんな、王宮前の兵士たちを援護しましょう!」
武装兵とクリスたちは王宮前で白兵戦を繰り広げている兵士の援護に向かった。一方、王宮前で白兵戦を繰り広げていた兵士たちは、一体の巨大な魔界兵によって倒されていた。
「な…なんということだっ!!武装兵たちが…全て倒されるとは!?」
武装兵たちは目を疑った。たった一体の魔界兵によって、数多くの武装兵が倒されていた。そんな中、傷ついた武装兵がクリスたちにそう言う。
「は…歯がたたん……。こいつは他の魔界兵より巨大な上、甲殻は堅く、私たちの武器では傷一つ付けられなかった…。」
傷ついた兵士はその言葉を最後に、息を引き取った。カレニアは眼鏡をかけ、数多くの武装兵たちを壊滅に追いやった巨大な魔物の弱点を探り始めた。
「こいつはバーサーカーナイトという名の魔界兵の一員よ。その堅い甲殻のおかげで、斬撃によるダメージは受け付けないわ。弱点は甲殻に包まれた腹部だが、腹部だけ装甲が脆いわ。そこを狙っていきましょう!!」
カレニアがバーサーカーナイトの情報を手に入れ、クリスたちにそう伝える。クリスたちが身構えるよりも早く、リリシアが前に出た。
「その必要はないわ…。先ほど貰った手袋により魔力が上がった術なら、こんな奴一発で終わられるわ。」
リリシアがバーサーカーナイトに近づいた瞬間、バーサーカーナイトは大きな剣を振り上げ、威嚇する。リリシアは闇の魔力を一点に集中させ、バーサーカーナイトに強力な闇の術を放つべく、詠唱の態勢に入る。
「荒れ狂う闇の力よ…全てを打ち砕け!!魔導術・カオシックペインッ!!」
リリシアが放った闇の魔力が、甲殻を纏っているバーサーカーナイトに襲い掛かる。凝縮された闇のエネルギーはバーサーカーナイトの心臓を貫き、その場に倒れて動かなくなった。
「宣言どおり、一発で終わらせたわ♪」
「す…すごい!!あの巨大な奴を一撃で……!?」
兵士たちがリリシアの強さに圧倒される中、一人の魔族の女がクリスたちに近づいてきた。リリシアはただならぬ気配を感じ、鉄扇を構えて攻撃態勢に入る。
「クックック……七大魔王の反逆者、リリシアよ。今日ここに来たわけはお前を処刑するためだ。君たちは初対面だから教えてやろう。私こそが魔界を統治する王、メディスだっ!!」
メディスの言葉を聞いたリリシアの表情が凍りつく。
「メ…メディス!!七大魔王を裏切ったのは私の意志よ…。私はあなたなんかの為に生きちゃいないわっ!」
リリシアは目を血走らせながら、メディスを威嚇する。メディスは冥府の大鎌を構え、リリシアを迎え撃つ態勢に入る。
「ならばこの場でお前の首を討ち取る!!リリシアよ…勝負だっ!!」
緊迫した表情の中、メディスとリリシアは武器を構え、戦闘態勢に入った。反逆の魔姫と魔界を統べる王との戦いが、今始まろうとしていた……。