蘇生の章第三十五話 メディスの決断
リリシアとクリスの活躍により、魔竜と化したエルーシュを倒し、レイオスの魂が封印されているソウルキューブを取り返すことに成功した。クリスたちは新たな脅威である超魔王オーギュラスを倒すため、アンダーグラウンドの最深部へと向かった。しかしクリスたちが最深部に来たときにはすでに超魔王は胎動を始めていた。石像から超魔王の魔力を感じたリリシアは、石像を壊し超魔王オーギュラスを無理やり復活させた。無理やり目覚めさせられたオーギュラスは魔力が足らず、体がどろどろの状態であった。かつてフェルスティア七大魔王を超える存在である超魔王オーギュラスを倒すべく、クリスたちの戦いが今始まる…。
超魔王オーギュラスを倒すため、カレニアを欠いたクリスたちはリリシアの言うとおりのフォーメーションを組み、迎え撃つ態勢に入った。
「クリスたち、頼んだわよ!!私は側面にある大きな口を攻撃するから、あなたたちは術で体を攻撃して!!」
リリシアはクリスたちにそう言った後、リリシアはオーギュラスの側面へと移動した。リリシアが側面の大きな口を攻撃した瞬間、オーギュラスは動きを止めた。
「ゴゴゴゴッ……!!」
痛みを感じているのか、オーギュラスの動きが止まった。オーギュラスの動きが止まった隙に、クリスたちは一斉にオーギュラスの体に術を放った。
「みんな行くわよ!一斉にオーギュラスの体にダメージを与えるわよっ!!」
クリスの号令で、仲間たちはオーギュラスにダメージを与えるべく、全員は一斉に術を放った。しかしオーギュラスは痛みを全く感じていないようだ。
「そんな…!!私たちの術がまったく効いていないなんてっ!!」
クリスたちの術は、オーギュラスには通用しなかった。オーギュラスは口から闇の光線を放ち、驚いているクリスたちを狙った。
「ゴゴゴッ…ゴゴゴオォッ!!」
不気味な叫びと共に、オーギュラスの口から闇の光線が放たれた。フィリスが仲間たちを守るべく、守りの術を唱え結界を張ったが、未完全といえども強大な闇の力を持つオーギュラスの前には無力であった。
「きゃあああっ!!」
オーギュラスの闇の力により、クリスたちはその場に倒れた。クリスたちの悲鳴を聞いたリリシアは、急ぎ足でクリスたちの所へと向かった。
「みんなっ!」
リリシアがクリスたちを安全な場所に避難させた後、しばらく休んでいたカレニアに超魔王と戦うようにそう言う。
「カレニア…クリスたちが倒れた今、あなたが頼りなの。一緒に戦ってくれるわね…。」
その言葉に、カレニアは期待にこたえるべく、戦うことを決意した。
「わかったわ。もう気分はよくなったわ。リリシア、共に戦いましょう!!」
カレニアがそう言った後、リリシアは今後の作戦を話し始めた。
「カレニア、私の考えはこうよ…。私が側面の大きな口からオーギュラスの体内に入り、体内から潰す作戦よ。カレニアはサンブレードの持つ力を使ってオーギュラスを足止めして!!」
カレニアに作戦の内容を話した後、リリシアはオーギュラスの側面に向かった。カレニアは手に持ったサンブレードを構え、太陽の光をオーギュラスに放った。
「太陽の剣よ…私に力をっ!!」
サンブレードは強烈な光を放ち、オーギュラスの目を晦ませる。リリシアはその隙に鉄扇で牙を破壊し、オーギュラスの体内に入る。
「体内に入り込めたわ…。後は奴の心臓を破壊すれば……!!」
体内に入り込んだリリシアは、オーギュラスの心臓を目指していた。超魔王の心臓を目指す魔姫の目の前に、オーギュラスの体内魔物がたちはだかる。
「キシャアアアアッ!!」
叫び声と共に、オーギュラスの体内魔物はリリシアに襲い掛かってきた。どうやら超魔王の体内に入り込んだリリシアを排除するためであった。
「私を排除するつもりかしら……。しかしそうは行かないわよ。」
体内魔物が吐き出す消化液をかわし、リリシアは鉄扇を構え、体内魔物を次々と切り裂いていく。体内魔物を排除したリリシアは、オーギュラスの心臓部へと走り出す。
「カレニア…うまく足止めしているかしら……。」
リリシアはそう言った後、リリシアは急ぎ足で心臓部へと向かっていった……。
そのころ、カレニアがオーギュラスを足止めしている中、気を失っていたクリスたちは再び超魔王と戦うべく、準備を進めていた。
「みんな…気がついたみたいね。さぁ超魔王に攻撃を仕掛けるわよ!!」
クリスたちが超魔王に攻撃を仕掛けようとした時、カレニアがクリスたちにそう言う。
「みんな、オーギュラスを足止めして!リリシアが今超魔王の体内で戦っているの……。」
カレニアの言葉を聞いたクリスたちは、カレニアと協力してオーギュラスの足止めに入った。一方リリシアは、ついに心臓部へとたどり着いていた。
心臓部にたどり着いたリリシアは、早速心臓にもてる限りの魔力を送り込み、オーギュラスの心臓を破壊する作戦に出た。
「うぐぐっ…もてる限りの魔力を心臓に送り込めば……心臓の鼓動は乱れるはずよ。」
リリシアの魔力が、次々とオーギュラスの心臓に流れ込む。多量の魔力を送り込まれた超魔王の心臓の鼓動が乱れ、今にも破裂しそうな勢いであった。
「鼓動がだんだん激しく乱れている……。もう少し魔力を込めれば機能は停止するわね。」
リリシアは再び魔力を心臓に込め始めた。超魔王の心臓は魔力の許容量を超え、オーギュラスの心機能は停止した。
「ふぅ…奴のせいでほとんど魔力を使い果たしてしまったわ。さて、クリスたちのところへ戻るとしましょう…。」
リリシアはオーギュラスの体内から急いで脱出し、クリスたちの元へと帰ってきた。リリシアはクリスに超魔王へ最後の一撃を放つようにそう言う。
「クリス、最後の一撃を放って。心臓を破壊された今、奴はもう動けないわ。」
クリスは手に持ったシャムシールを天に掲げ、聖なる光を一点に集め始めた。
「聖なる雷の力よ…悪しき者を焼き尽くさんっ!!波導究極雷撃術・裁きの雷ッ!!」
聖なる光は雷に変わり、オーギュラスの体を貫いた。未完全でどろどろの体のオーギュラスは、雷の熱により、完全に溶けてしまった。
「す…すごすぎる……。」
クリスの術の威力に、仲間たちは愕然としていた。そんな中、カレニアがクリスに話しかけてきた。
「噂で聞いたことがあるけど、勇者にしか使えない波導の術を…まさかっ!!クリスが!?」
その言葉に、クリスはあっさりとその問いかけに答えた。
「ええ、そうですわ。私はソウルキューブを手にした瞬間、レイオスさんの力が私に流れ込んだような気がしたの…。いつの間にかそのような強力な術を使えるようになっていたのよ。レイオスさんは命を懸けてこの世界を二度救った勇者のような人よ。」
クリスの言葉に、カレニアは驚きの表情でこう答える。
「クリスの言うとおり、確かにレイオスさんって言う人はこの世界を二度救ってくれた勇者のような存在なんだということが分かったわ。みんな、アンダーグラウンドはもう崩壊寸前よ。はやく脱出しましょう!!」
超魔王を失い、アンダーグラウンドの混沌の力が消えたことにより、洞窟の一部が崩壊していた。全員が動揺している中、リリシアは転送陣を見つけクリスたちに伝える。
「エーゼルポリス王宮に続く転送陣を見つけたわっ!!はやくこの中にっ!」
クリスたちは転送陣に入り、エーゼルポリスの王宮へとワープした。王宮にワープした瞬間、転送陣から光が消え、作動しなくなった。クリスたちが去った後、アンダーグラウンドは完全に崩壊した。
アンダーグラウンドからの脱出に成功したクリスたちは、エーゼルポリスの王宮の王座の間に向かい、ファルゼーレを暗闇に閉ざしている闇水晶を破壊した。闇水晶が破壊されたことにより、ファルゼーレ大陸を覆う闇は消え去り、光が戻ってきた。
「うわあっ!!眩しいっ!」
エーゼルポリス王宮の窓から、眩しい光が差し込んできた。あまりの眩しさに、クリスたちの目がくらんだ。
「これでこのファルゼーレ大陸にも、光が戻ってきたわ。そのことをアメリア様に報告しましょう。」
フィリスが王宮を離れようとした瞬間、エーゼルポリスの皇帝がクリスたちの目の前に現れた。
「あなた方のおかげで…このファルゼーレに光が戻ってきました。私はこのエーゼルポリスの皇帝であるエーゼルフィーと申します。エルーシュを倒し、アンダーグラウンドの最深部にいる超魔王をも倒してしまうとは……。私は、あなたたちのことを誇りに思っていますわ。さぁ、今日は疲れたでしょう…今日はこの王宮の中で休んでください。」
エーゼルフィーは来客室にクリスたちを案内した後、クリスたちは戦いの疲れを癒すのであった。
一方魔界の首都ルース・ケープでは、メディスの側近であるヘモアから最後の七大魔王であるエルーシュが倒されたことを知り、メディスは深く頭を抱えていた。
「メディス様、エルーシュが倒されました。おまけに、アンダーグラウンドに封印されている超魔王オーギュラスも倒されました。クリスとかいう奴とその仲間たちは、末恐ろしいほどだな。」
「エルーシュが倒された!!それは誠の話かヘモアよ!どうやらリリシアは仲間たちと旅を続けるごとに力を上げているようだな。早いとこ潰しておかなければならんな…。」
エルーシュとオーギュラスが倒されたことを知ったメディスは、ただ怒りの表情を浮かべていた
「このまま反逆者であるリリシアを野放しにするわけにはいかん!!私が直々にリリシアを葬り去る!!」
メディスがそう言った瞬間、体中から光を放ち始めた。その異変に気付いたヘモアは、心配そうな表情でメディスに近づく。
「メディス様!!大丈夫ですかっ!?」
ヘモアがそう言って駆けつけたときには、メディスから光が消えた。駆けつけたヘモアが見た物は、今までとは違う美しい格好のメディスがそこにいた。
「ヘモアよ…えらいところを見られてしまったな。それが私の本当の姿だ。今まで隠していて本当にすまなかった。私はこれより魔界の兵共をつれてリリシア討伐の為に人間界へと赴く。」
リリシア討伐のために人間界へと向かおうとするメディスを、ヘモアが急いで呼び止める。
「メディス様!!私もお供いたしますぞっ!」
ヘモアの言葉に、メディスは首を横に振って答える。
「貴様はここに残るがいい……。リリシアに倒された三人の魔王のように死にたくはないだろう…。」
メディスの言葉を聞いたヘモアはメディスに一礼をし、そう言う。
「わかりました。では私は人間界を侵攻するため、強い魔物を用意しておきます。ピンチの時は私に何なりと……。」
ヘモアは人間界に侵攻するための魔物を作り出すため、王宮の地下にある魔物製造室へと向かっていった。メディスは数多くの魔界の兵を引きつれ、人間界へと侵攻する準備を始めていた。
「魔物たちよ、この魔界製フリゲートに乗るのだ。こいつで人間界へと侵攻できるぞ。皆の者よ、今こそ戦いの時だ。まずは中心都市であるレミアポリスを襲撃する!」
メディスと魔界の兵士たちは魔界製フリゲートのエンジンを起動させ、中心都市であるレミアポリスを襲撃すべく、人間界に向けて発進した。メディスによる地上界侵略作戦が、今まさに始まろうとしていたのであった……。
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