蘇生の章第三十四話 超魔王の胎動
リリシアは襲ってきたエルーシュを退け、無事にクリスたちと再会し、一行は超魔王の復活を止めるために再びアンダーグラウンドへと向かった。しかしその道中で暗黒の魔竜と化したエルーシュがクリスたちに襲い掛かってきた。リリシアによって大きなダメージを受けたエルーシュは、レイオスの魂が封印されているソウルキューブを飲み込んだことにより、大いなる力を手にしたのだ。仲間たちが苦戦を強いられる中、クリスはリリシアと共闘を誓い、聖なる水晶の神弓と魔姫の翼を手に、エルーシュに立ち向かうのであった……。
水晶の神弓を手に、クリスはエルーシュのほうへと向かっていく。魔竜と化したエルーシュは煉獄の炎を吐き、クリスたちの行く手を阻む。
「リリシア、吐き出される炎をうまく避けてエルーシュに近づくわよ。」
「わかったわ!!クリスは弓で炎を撃って道を開いて…。こうしなきゃ奴は倒せないわ!」
迫り来る煉獄の火炎をかわしながら、クリスは水晶の矢を放ち、エルーシュの炎をかき消していく。炎が弱まったのを見て、リリシアは翼を広げてエルーシュに近づく。
「ガアアアアァッ!!」
クリスがエルーシュに近づいた瞬間、エルーシュは巨大な腕でクリスを殴りつけた。その衝撃により、クリスはアンダーグラウンドの闇へと落とされた。
「きゃああああっ!」
叫び声と共に、クリスは奈落の闇へと引きずり込まれる。クリスを助けるべく、リリシアは急降下の態勢に入る。
「クリスっ!!」
急降下を開始したリリシアは、徐々に速度を上げていく。奈落のそこへと落下していくクリスのところまできた瞬間、魔姫はクリスの背中を掴み、上昇を始める。
「助けてくれてありがとう……リリシア。」
その言葉に、リリシアはクリスを見つめ、こう答える。
「窮地を助けるのが仲間なんだから……。さぁ、戦いの場に戻りましょう。」
リリシアはクリスを掴みながら、翼を広げて再び戦いの場へと戻ろうとしたそのとき、エルーシュがクリスたちの目の前に現れた。
「魔姫め……今度こそ貴様を闇に葬ってやるぞ!冥土の土産にお前らに教えてやる……この穴の底には灼熱のマグマが煮え滾っている。つまり底に落ちればお前らは死ぬ…。そうなると私のこの暗黒球の力が役に立つようだな…いくぞっ!!」
エルーシュの暗黒球が黒い光を放ち、クリスたちを包み込んだ。一見何の変化が無いように見えたが、リリシアが上昇を始めた瞬間、その効果が分かった。
「何ですって!?翼を羽ばたかせても上昇しないなんて…どうなってるのよ!!」
リリシアがいくら翼を羽ばたかせても、上昇せずにどんどん下へと降下を始める。しかしエルーシュは重力の影響を受けず、エルーシュの暗黒球から放たれる重力で上昇できないリリシアの頭上まで移動し、奇襲攻撃の態勢に入る。
「フハハハハッ!!魔姫よ、今頃気付くとは遅いなぁっ!煉獄の炎で終わりにしてやるっ!!」
リリシアの頭上に、煉獄の火炎が放たれた。クリスは動揺するリリシアを落ち着かせ、すぐさま回避するようにそう言った。
「落ち着いてリリシア!!上昇は出来なくても落ちながら移動する手もあるわっ!!今はエルーシュの攻撃をかわすことが優先よ!!」
その言葉を聞いたリリシアは、落ち着きを取り戻して急降下を始める。
「わかったわ。なるべくあの炎の攻撃をかわし、何とか攻撃できる隙を探すわ…。クリス、あの弓の射程距離は直線だけじゃないわ。追尾効果もありそうだから、試しにエルーシュに狙って一度はなってみて!!」
リリシアの言葉を聞いたクリスは、水晶の神弓に魔力を込め、聖なる矢を放った。水晶の神弓から放たれた矢は、大きく弧を描きながらエルーシュの方へと向かっていく。
「無駄な足掻きを……ぐおぉっ!?」
クリスの放った矢が、エルーシュの暗黒球に突き刺さった。暗黒球に突き刺さった矢が光を放ち、暗黒球の内部が見え始めた。
「見て…クリス!!暗黒球の中に何かいるわっ!取りあえず私の眼力で調べてみるわ。ディテクト・アイズ!!」
リリシアの目が赤く光り、エルーシュの暗黒球を見つめ始めた。どうやら暗黒球の中にいる生物が、本体のようだということが分かった。暗黒球の中にいる小さな魔物が巨大な魔竜を操っていたのだ。
「暗黒球の中にいる小さな魔物がエルーシュの本体よ!!あの魔竜を操って私たちを攻撃しているみたいね。クリス、あの小さな魔物を狙い撃って!!」
クリスは水晶の神弓をエルーシュの暗黒球の中にいる小さな魔物に照準を合わせ、力を込めて矢を放った。聖なる矢は暗黒球の中にいる魔物を貫き、エルーシュの動きが完全に止まったが、本体は堅い甲殻のおかげで、致命傷には至らなかった。
「なぜだっ!!なぜ本体が暗黒球にいることが分かったのだ!!貴様…このまま道連れにしてやるっ!」
暗黒球の中にいるのエルーシュの本体が重力波を放ち、周囲の重力をさらに強める。
「あの竜の体内からソウルキューブの反応があったわ。奴は暗黒球だけが生きている状態だから、ここは仰向けにしてから竜の腹を引き裂いてソウルキューブを取り出すしかないわね…。」
抜け殻の魔竜の体の中に、ソウルキューブの反応があることを知ったリリシアは、魔力を使ってエルーシュを仰向けにした後、クリスとリリシアは抜け殻の魔竜の腹の上に乗ることに成功した。
「クリス、髪飾りを私に……。ここは私の出番ね…。」
クリスは水晶の神弓から髪飾りに戻した後、それをリリシアに手渡す。リリシアは髪飾りを鉄扇に変え、抜け殻の魔竜の腹を切り裂いた。そのなかから、黄金色をした球体がそこにあった。それこそがレイオスの魂が封印されているソウルキューブであった。
「これが最後のソウルキューブね。これはクリスが持っていて…。」
リリシアがクリスにソウルキューブを手渡した瞬間、すさまじい雷の力が沸き起こり、クリスを包み込んだ。湧き上がる力を感じながら、クリスはシャムシール大きく天にを掲げはじめる。
「レイオスさん……私に力をっ!!」
クリスが叫んだ瞬間、激しい稲妻がクリスのシャムシールに落ちてきた。レイオスの持つ力が、武器を伝ってクリスの体に流れ込んでいくのを感じた。
「リリシア…私の近くへ。私の新しい術はあなたを巻き込む可能性が高いからね…。」
リリシアがクリスのところに来た瞬間、クリスは雷の力を集めはじめた。
「荒れ狂う雷よ…悪しき者を滅せよっ!!波導究極雷撃術・裁きの雷!」
詠唱が終わった瞬間、聖なる光が荒れ狂う雷の嵐となり、エルーシュの暗黒球を貫いた。
「ぐおおっ!!七大魔王最強の存在であるこの私が小娘と魔姫に倒されるとは…無念だっ!!」
エルーシュが倒されたことにより、クリスたちの周囲の重力が消えた。リリシアはクリスを掴み、仲間たちの元へと戻るべく、翼を羽ばたかせ上昇を始めた。
クリスとリリシアがエルーシュとの戦いに勝利した後、アンダーグラウンドの最深部では異変が起こりつつあった。最深部の見張りを任されたエルーシュの臣下は、超魔王が封印されている石像を見た瞬間、驚きの表情でそう言う。
「おおっ…石像にひびがっ!!超魔王の復活は相当近いようだな。そのことをエルーシュ様に報告せねばならん!!」
急ぎ足で臣下が報告に向かおうとした瞬間、見張りの交代に来たエルーシュの臣下が現れた。
「エルーシュ様が……アンダーグラウンドに入ってきた侵入者によって倒されてしまった!!これは一大事だ。エルーシュ様亡き今、超魔王の復活はもはや絶望的だな…。」
見張りの交代に来た臣下の言葉に、見張りをしていた臣下の表情が凍りついた。
「そ…そんなっ!!エルーシュ様が倒されたとは!?しかしまだ希望はある!エルーシュ様は死ぬ前にリヴェリアスとデモリックを生贄にしたから、超魔王の最低限の魔力は復活しているはず。地上界に出撃させれば、一つの国を壊滅に追い込むことも可能だ……。」
見張りをしていた臣下の一言で、交代に来た臣下はこう答えた。
「超魔王が復活する前に、何とかして侵入者を排除しなければ!俺は見張りをするから、お前は侵入者の排除に向かえっ!!」
超魔王の復活を阻止する侵入者を排除するべく、エルーシュの臣下たちは動き始めた。
エルーシュとの戦いに勝利したクリスとリリシアが、仲間たちの所へと帰ってきた。クリスは戦いで取り返したソウルキューブを仲間たちに見せると、フィリスがクリスにそう言う。
「フィリス様…エルーシュからソウルキューブを取り返してまいりました。これで全てのソウルキューブは私たちの手の内にあります。」
「皆さんのおかげで、ソウルキューブは全て取り返しました…。しかし新たなる脅威である超魔王の復活を阻止しなくてはなりません…。もし超魔王が復活すれば、フェルスティアは一瞬のうちに壊滅状態になってしまいましょう…。みんな、アンダーグラウンドの最深部に行きましょう!!」
クリスたちは超魔王の復活を阻止するため、アンダーグラウンドの最深部を目指し、再び暗闇の中を進み始めた。クリスたちは襲い掛かってくるエルーシュの臣下たちを退け、ついに超魔王が封印されている最深部へとたどり着いた。
クリスたちが最深部へとやってきたときには、封印されている超魔王は徐々に胎動を始めていた。その音に気付いたリリシアは石像を調べ、クリスたちにこう伝える。
「石像から超魔王の胎動を感じるわ。しかし魔力の値はエルーシュよりも低いわ。この段階で復活させれば簡単に倒せるかもしれないわ…。とりあえず無理やり復活させるわよ!!」
リリシアが超魔王の石像を破壊した瞬間、大きな揺れと共に超魔王が復活した。しかし魔力の供給が不十分なためか、体は形成されず、どろどろの状態であった。
「き…気持ち悪い……。あれが超魔王の姿なの…!?見ているだけで吐き気が……!」
カレニアが超魔王の姿を見た瞬間、強烈な吐き気に襲われた。フィリスはカレニアの背中をさすり、気分を落ち着かせる。
「カレニア、あなたはここで休んでいて…。あとは私たちで何とかするわ。」
フィリスはカレニアを安全な場所に避難させた後、クリスたちと共に超魔王を迎え撃つべく、戦いの場に戻った。
「ゴ…ゴゴゴッ……!」
おぞましい姿と化した超魔王に、クリスたちはどう戦えばいいか迷っている中、リリシアは超魔王の弱点を見つけ、クリスたちに報告する。
「超魔王について何か分かったことがあるからみんなに報告するわ!奴の名は超魔王オーギュラス…かつて魔界を壊滅に追いやった七大魔王を越える超魔王よ。弱点はほぼ全て…魔力が足りない分装甲も脆いわ。側面の大きな口に魔力のダメージを与えれば、一瞬怯んだ隙がチャンスのようね…。私が側面を攻撃するから、クリスたちは奴を集中的に攻撃して!!」
まだ未完全なまま復活した超魔王オーギュラスが、不気味な叫び声を上げながら襲い掛かってきた。クリスはフェルスティア七大魔王を上回る強敵に、どう立ち向かうのか!?