蘇生の章第二十八話 富の国[ファルゼーレ]

 

 レミアポリスの王宮へと帰還したクリスたちであったが、皇帝の間ではシャドウビーストによってダメージを受け倒れたアメリアがそこにいた。クリスはシャドウビーストを倒したものの、アメリア殺しの嫌疑をかけられ、兵士たちによって罪人を戒めるための島である『地獄島』へと島流しの刑に処せられた。しばらくして気がついたアメリアは、クリスたちを呼び戻すべく兵士たち数人を地獄島へと遣わせたのであった……。

 そのころクリスたちは、この島を脱出する方法を探すために、島中を探索していた。
「とりあえず木の棒を集めて筏を作らないとね。はやくこの島から脱出しましょう。」
クリスたちは筏を作るための材料を探すため、森へとやってきた。しかし生えている木を伐採するわけにはいかないので、倒れて落ちた木を探すことにした。
「落ちている木を探しましょう。生えている木を切ったら自然破壊につながるからね…。とりあえず迷わないように、みんな一緒に行きましょう。」
迷わないようにするために、クリスたちは単体行動を避け、全体行動で森を探索することにした。すると目の前に大きな木が落ちていた。
 「おお…。これは筏の材料に使えそうな大木だな。しかしこのままでは運べないな…。ちょうどいい長さに斬り落とせば、なんとか運べそうだな。」
ディオンは大剣を振り上げ、大きな力を込めて振り下ろした。すると木はちょうどいい長さになり、クリスでも運べるほどの長さになった。
「これで女でも運べるだろう…。この木を砂浜まで持って行き、筏を作るとしよう。しかし先ほど見つけた木だけでは作れないから、もう一度森へと向かおう。」
材料を集めて筏を作るため、クリスたちはディオンが斬った木を砂浜に運び始めた。筏の材料を砂浜に運んだ後、クリスたちは材料を調達するため、再び森へと向かった。
 「さぁ、筏を作る材料をさがすわよ…。魔物が出てくるかもしれないから、慎重に行動しましょう。」
カレニアの号令で、クリスたちは筏を作るための材料を探すため、森の中を進んでいく。全員は材料となる木を探す途中に、なにやら遺跡のような建物を見つけた。
「なにやら遺跡のような場所を見つけたわ…。何か新しい発見があるかもしれないからとりあえず入ってみましょう。」
興味津々なリリシアの言葉で、全員は森の中にある遺跡の中へと入っていった。遺跡を進んでいると、なにやら転送陣のようなものが描かれていた。

 「これは…転送陣!しかし私たちがが元いた場所の転送陣とは違うわ。しかし魔力が供給されていないみたいね……。」
転送陣は魔力が供給されておらず、機能していない。その様子を見たリリシアは、転送陣に手を当て、なにやら調べ始めた。
「この転送陣…どうやらファルゼーレ大陸につながっているみたいね。この転送陣を使えば、エルーシュのいるファルゼーレ大陸にたどり着けるわね。さっそく魔力を込めるわね。」
リリシアが転送陣に魔力を込めようとした瞬間、原住生物がクリスたちに襲い掛かってきた。突然二の不測の事態に、リリシアは魔力を込めるのを中断し、攻撃態勢に入る。
 「どうやら…私たちの後をつけてきたみたいね。ここは話せば……分かりやしないわね。」
ボルケニア島の原住生物の中でも最も凶暴な生物である『マグマウルフ』が、目を血走らせ唸っていた。クリスたちは戦闘態勢に入り、マグマウルフを迎え撃つ態勢に入る。
「グルアアアッ!!
マグマウルフは体に纏っている炎を滾せ、クリスたちに突進する。フィリスが張った水のシールドにより、マグマウルフは大きく弾き飛ばされた。
 「どうやら水の術に弱いようね。私が水の術で攻める間に、みんなはマグマウルフを攻撃して!!
フィリスがそう言った瞬間、マグマウルフに水の術を放った。
「荒れ狂う水流よ、悪しき者を封じたまえっ!!アクア・スパイラル!
荒れ狂う螺旋の水流が、マグマウルフを水流の中に閉じ込め、動きを封じる。マグマウルフの体が水に触れた瞬間、体に纏っていた炎が消え、外見が普通のオオカミの姿になってしまった。
「水に触れて普通のオオカミになってしまったようね。みんな、一気に攻撃よ!
身動きの取れないマグマウルフに、クリスたちが総攻撃を仕掛ける。全員の総攻撃により、マグマウルフはその場に倒れた。
 「あれ…、マグマウルフの体からなにやら魂みたいな物が!?
マグマウルフの死体から、なにやら炎に包まれた魂のような物が抜け出した。その炎の物体はカレニアの剣に染み込み、光を放ち始めた。
「な…何!!私の剣が光っている!?今度ばかりは水神の神殿と同じような光りかたではないわっ!!
カレニアの持つ剣が、すさまじい光を放っていた。その光を見たリリシアは、カレニアの剣に手を当てる。
 「武器にしみこんだその魂のような物は、武器のエネルギーみたいね。気がつかないかもしれないけど、今回のものは全員の武器にも何かしらの影響を受けてるみたいね…。」
リリシアがそう言った瞬間、全員の武器が光を放ち始めた。どうやらマグマウルフの死体から抜け出したエネルギーが拡散し、クリスたちの武器にしみこんでいたのだ。
 「どうやら、みんなそのことに気付いていないわね。さぁ、転送陣に魔力を込めるわよ…。」
リリシアは再び転送陣に魔力を込めようとしたとき、クリスたちを呼び戻すべくレミアポリスの兵士たちが現れた。

 「やっと見つけましたよ!はやくレミアポリスに帰りましょう!
兵士の一人がクリスたちにそう言った瞬間、リリシアがその旨を話し始めた。
「どうやらこの遺跡は、かつては富の国と呼ばれていたファルゼーレ大陸に続いている転送陣があります。私たちはその大陸に行き、七大魔王であるエルーシュを倒さなければいけません。どうかそのことをアメリア様にお伝えしてください。」
リリシアの言葉に、兵士たちは首をかしげた。
「しかし…。君たちを連れて来いというアメリア様のご命令で…」
「行かせてやれ!!七大魔王を倒すのがクリスたちの願いじゃ!
兵士の一人が困った顔でリリシアにそう言うと、遺跡の外からなにやら聞き覚えのある声が聞こえてきた。すると兵士たちの列をかきわけ、レミアポリスの皇帝であるアメリアであった。
 「アメリア様!!なぜここにいるのですか!?
疑問に思った兵士たちがそう言うと、アメリアが前に出て答える。
「クリスたちを呼び戻す前に原住生物に倒されるかと思い、心配して後をつけてきたのだ。どうやら安心だったようじゃな。その者たちは魔王の手に渡ったレイオスとその仲間たちの魂が封印されているソウルキューブを取り返すために戦っているのだ。兵士たちよ、レミアポリスに帰るぞ…。」
アメリアがそう言った後、兵士たちを連れてレミアポリスへと帰っていった…。

 遺跡の中には、クリスたちだけが残った。
「みんな、これからファルゼーレ大陸に向かうわよ!!エルーシュを倒してソウルキューブを取り返しましょう!リリシア、魔力を転送陣に!
クリスがそう言った後、リリシアは転送陣に魔力を込め始めた。すると転送陣が蒼く光り輝きだした。どうやら転送陣として機能し始めたようだ。
 「じゃあクリス…転送陣が機能しているかどうか調べるために乗ってくれない…?
リリシアがそう言うと、クリスは転送陣の上に乗った瞬間、クリスの体がリリシアの目の前から消えた。どうやらクリスはファルゼーレ大陸のどこかへ飛ばされたようだ。

 転送陣に乗ったクリスは、どうやらファルゼーレ大陸の祠にやってきた。
「あれ…ここは何処だろう?とりあえず外に出てみようかしら…。」
クリスは祠の外に出た瞬間、空は黒く、日も射さない大地であった。どうやらこの土地こそがかつて富の国と呼ばれていたファルゼーレ大陸であった。
「さっきまでとは空も違うし…真っ暗闇だわ。早くみんなの元へと帰りましょう。」
クリスはただならぬ気配を感じたのか、祠の中にある転送陣に乗り、仲間たちの待つ遺跡へと戻っていった。
 「あっ!!クリスが戻ってきた!これで安全ということが証明されたわ…。」
クリスが無事だということを確認すると、リリシアはほっと胸をなで下ろした。
「私が見たとおりだと、ファルゼーレ大陸は真っ暗闇の大陸だったわ。どうやらエルーシュとかいう奴が支配してしているのは本当だったわ。さぁみんな行きましょう。エルーシュを倒すために!
クリスたちは決意を固め、ついにエルーシュの支配下にあるファルゼーレ大陸に乗り込むことにした。全員は転送陣に乗った瞬間、クリスたちの体がファルゼーレ大陸の祠へと消えていった…。

 全員が祠に到着し、外に出る。クリスたちの目に、日も射さぬ暗闇が大陸を覆っていたようであった。
「これが…ファルゼーレ大陸…。かつて富の国と呼ばれていた大陸だけど、闇に包まれているわね。リリシア、これもエルーシュの仕業なの?
フィリスの言葉を聞いたリリシアは、首を縦に振り、こう答える。
 「そうみたいね…。七大魔王の中でも最強クラスと呼ばれているだけあって、大陸一つを制圧できるほどの闇の力を持っているっていう噂よ。とりあえず町を探しましょう。」
クリスは町を探すべく、暗闇のファルゼーレ大陸を歩き始めた。一面の暗闇のなか、フィリスの持つ光の術だけが便りであった。
「あっ、町が見えてきたわ!!早速この町で情報収集しましょう!
カレニアの目線の先には、町の光がそこにあった。クリスたちは早速情報収集をするべく、町へと向かった。しかし、町の中には村人など一人もいなかった。
 「おかしいわね…。町の光が見えたのだが、外には誰もいないわ。さっそく酒場の中に入りましょう。そこなら人がたくさんいるかもしれないわ。」
クリスたちは人が集まりそうな酒場の中へと入った。しかし、酒場の中は人はあまりいなかった。いるにはマスターと2,3人の客だけであった。
「いらっしゃい……。」
落ち込んだ表情のマスターが、クリスたちを出迎える。クリスはファルゼーレ大陸のことをマスターに尋ねた。するとマスターがこう答えた。
 「この大陸はもうダメだ…。天使のような悪魔がここにやってきた頃から始まったんだ。奴はこの町の南の方角にあるエーゼルポリスを占拠し、エーゼルポリスの封印にある闇の世界に通じる大穴『アンダーグラウンド』の封印を解いてしまったのだ…。その結果闇がこの大陸を覆い尽くし、今の真っ暗闇のファルゼーレ大陸の現状だ…。」
どうやらエルーシュが黒幕であった。ファルゼーレ大陸を占拠し、アンダーグラウンドの封印を解きファルゼーレを闇に包み込んだのだ。マスターの言葉を聞いたクリスは、この大陸を救うことを決意した。
「安心してください…。私たちが絶対にファルゼーレ大陸に青空を取り戻して見せます!!私のほかにも、強くて頼もしい4人の仲間がいるんですものっ!
クリスの言葉に、全員が決意の表情で答える。
「あなたの手足となりますわ!かならずこのファルゼーレに平和を取り戻して見せますわ!!
「『ひとりじゃない』という言葉に、とてつもないほどの優しさと勇気をもらえたわ。クリス…だから今度は私があなたを助ける番ね…。」
「一国の王女としても、この大陸を救済しなくてはなりませんわ!
「妹君のためにも…護りぬかなければならないな!クリス、みんなでエルーシュを倒そう!
クリスの差し出した手に、全員が手を合わせる。暗闇に包まれたファルゼーレを救いたいという気持ちは同じであった。七大魔王最強の座に立つエルーシュを倒すべく、クリスは仲間とともに共闘を誓うのであった。

 

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