蘇生の章第二十七話 地獄島[ボルケニア]

 

 デモリックを倒し、クリスたちは今までの出来事をアメリアに伝えるため、中央大陸に戻ることにした。クリスたちはレミアポリスへと向かう船の中、アドリアシティで出会った黒きエルフであるイクシードのことについて話し合っていた。
「あの黒いエルフ…一体何の目的でリリシアを襲ったのかしら…?もしかして賞金が目的なのかな…?
イクシードがリリシアを襲う目的は賞金のためだというカレニアの言葉に、リリシアは意味深な表情で答える。
 「いや、奴は魔界と地上界を行き来していないから…。私が賞金首だってこともしらないわ。でも七大魔王のことを知っているのが妙に引っかかるわね。」
その言葉に、クリスが何か掴んだ表情で答えた。
「私もそのことで引っかかっていたのよ。イクシードは確かにエルフの隠れ里に住んでいたって言ってたわね。しかしエルフの隠れ里は、何処にあるんでしょうか…?
クリスのその言葉を聞いたディオンは、何か気付いた表情であった。
「うむ…。それならアメリア様が何か知っているかも知れないな…。今夜あたりにレミアポリスに着くようだから、明日アメリア様に聞いてみよう。とりあえず到着の間、仮眠をとろう。」
クリスたちは船がレミアポリスに到着するまでの間、仮眠をとることにした。

 クリスがアドリアシティを去る少し前、天使と悪魔の翼を持つ男が瀕死のデモリックの眼前に現れた。その正体は七大魔王の最強の存在であるエルーシュであった。
「あ…あなたはエルーシュではないか…!?はやく回復呪文を!
デモリックは首の頚動脈の辺りをリリシアの鉄扇で斬られ、もはや動くことすらままなら無い状況であった。エルーシュはデモリックに手をかざし、術を唱える態勢に入る。
 「魔姫にここまで倒されるとは、仕方の無い奴だな…。しかしお前には回復呪文をかける必要も無い……。」
エルーシュはデモリックの言葉に耳を貸さなかった。エルーシュは瀕死のデモリックに追撃を加えたあと、なにやら呪文を唱え始めた。
「フフフ…ここまで弱らせれば吸い込めるだろう。喰らいなさい…ダークマター・デスホール!!
エルーシュが詠唱を終えた途端、空間がゆがみ大きなブラックホールが現れた。エルザディア諸島でリヴェリアスを暗闇に飲み込んだときと同じであった。
「エルーシュ…貴様っ!貴様もリリシア同様魔王を裏切ったのか!?
「いや…私は魔姫とは違う。私はある目的の為に魔王を亜空間へと吸い込んでいるのだ。いま亜空間には同じ七大魔王のリヴェリアスがいるのだ…。貴様はしばらくリヴェリアスとともに亜空間の中で静かにしているがいい…。」
エルーシュがそう言った瞬間、デモリックは完全にブラックホールに吸い込まれ、亜空間へと葬られた。エルーシュは背中の翼を広げ、移動を開始する。
 「残すは魔姫・リリシアのみだ…。奴さえ亜空間に放り込めば、私の目的は達成するのだっ!!このフェルスティアを闇に葬り去ることの出来る力を手にすることが出来るのだっ!私はこれから耳の尖っている女を片っ端から見つけ、殺しに行くか…。」
エルーシュがそう言った瞬間、何者かがエルーシュに問いかけてきた。
「悪いが…それは私の仕事よ。私の仕事を奪うようならば、私があなたを殺します。」
エルーシュが声がしたほうに振り向いたそのとき、そこには高貴な雰囲気を漂わせるエルフの女がそこにいた。どうやら彼女こそがイクシードが言っていたエルフの女王であった。
「貴様はエルフの女王・エルディーナではないか!悪いが、私の邪魔をするなっ!!
エルディーナはエルーシュの作戦を拒否した。
 「名前だけは知っているようね。私は魔界に住むダークエルフで、地上界のエルフを抹殺するためにこの地上界に来たのだ。ファルゼーレ大陸のエルフの隠れ里を襲撃し、隠れ里の女王となった。エルーシュよ、お前の作戦は私に任せるがいい。しかし、お前の言うリリシアも耳がとがっているのか…?
エルディーナはエルーシュにリリシアの耳が尖っているかの有無を聞いた。するとエルーシュは首を縦に振り、了承のサインを送る。
「そうだ…。リリシアは耳が尖っている。なんせ魔王だからだ。お前は今からエルフの隠れ里に帰るようなのだが、私も一緒に連れて行ってはくれぬか…。」
エルーシュがそう言うと、エルディーナは詠唱を始めた瞬間、二人の体が空中に浮かんだ。
 「この者たちを…エルフの隠れ里に導きたまえっ!
エルディーナがそう言った瞬間、二人はエルフの隠れ里へと空間転移した。

 クリスたちを乗せた船が、レミアポリスの港に到着した。クリスたちが中央大陸に到着したときにはすでに夜になっていた。この時間帯では王宮は閉まっており、クリスたちはレミアポリスの宿で夜を過ごした後、王宮へと向かった。
「ここに来るのは懐かしいですわね…。みんなもそう思うわよね。」
旅に出てから、レミアポリスの王宮に来たのは何日ぶりなのだろうか…。フィリスは懐かしさに心を打たれる中、クリスたちは皇帝の間へと向かっていた。
 「ソウルキューブを魔王から二つ取り戻したことを早くアメリア様に報告しなきゃね…。」
うきうき顔のリリシアは一足先に扉の前に走り、扉を開けて中に入っていく。クリスたちはリリシアの後を追うように、皇帝の間に入った。しかしそこには、玉座の前で倒れているアメリアの姿であった。
「アメリア様っ!!しっかりして!
リリシアとクリスは倒れているアメリアを抱き起こし、すぐさまベッドへと運んだ。カレニアがアメリアの胸に耳を当て、心音を確認する。
 「大丈夫…アメリア様は生きているわ。一体誰がこんなことを…。」
カレニアがそう言った瞬間、何者かがクリスたちの目の前に現れた。
「フハハハハッ!!我こそはエルーシュの臣下の一人…シャドービーストだ!兵士の影に潜み、アメリアのいる皇帝の間に忍び寄り、アメリアに攻撃を仕掛けたのはこの私だ!エルーシュ様からアメリア抹殺およびレミアポリス制圧を命じられているのだからなっ!!
アメリアに攻撃を仕掛けたとのたまう者は、エルーシュの臣下であるシャドウビーストであった。敵の気配を察知したフィリスは手のひらから光を放ち、シャドウビーストを攻撃する。
「よくもアメリア様をっ!!これでも喰らいなさいッ!!ライトニング・レイ!
フィリスの放った光は、シャドウビーストの体を貫いた。その一撃によりシャドウビーストは大きなダメージを受け、地面に倒れた。
 「うぐぐぐ…アメリア抹殺は失敗に終わったが、富の国と呼ばれるファルゼーレ大陸では、エルーシュ様が地上界侵略計画を進行中だ。お前たちがどう足掻こうが、ファルゼーレ大陸には行けまい。エルーシュ様の闇の結界を張っているからだ…。お前ら人間など消えてしまえ……ハハハハッ!!
その言葉を最後に、シャドウビーストは息を引き取った。皇帝の間の騒ぎを聞きつけ、レミアポリスの王宮兵士たちがクリスたちを取り囲んだ。

 「アメリア様っ!?ご無事で…一体誰がこんなことを…!?
ベッドの上で倒れているアメリアの胸に耳を当て、無事を確認する。兵士はクリスのほうを睨みつけ、そう言う。どうやらクリスたちを犯人と見た王宮兵士たちは、クリスたちに剣を向けて威嚇する。
「おのれ賊めっ!!よくも我らが皇帝アメリア様をっ!
兵たちに変な誤解を受け、リリシアは半ばうんざりした表情で兵士たちから離れようとする。
「変な誤解しないでよね…。私たちがアメリア様にそんな事するわけ無いでしょ!私がやっていないってことを証明するために、今ここで話あいま……。」
「言い訳は無用だっ!皆の者、こいつらをひっとらえろっ!アメリア様を殺そうとした貴様らには、死よりも重い罰をもって償ってもらうぞ…。」
リリシアは必死にクリスたちの無実を証明したが、兵士たちの耳には届かなかった。兵士たちはクリスたちを縄で縛りつけ、連行する。
 「私は何もやって無いわ!それは誤解……きゃあっ!!
必死に無罪を主張するクリスを、兵士のひとりが殴りつけ気絶させた。兵士たちはクリスたちに目隠しをつけ、レミアポリスの王宮の地下へと連れてこられた。
「確かこの地下に罪人を収容するための島『地獄島』に続く転送陣があったはずだ。賊たちをこの地獄島に島流ししてやりましょう。はやく転送の準備を…。」
兵士たちがクリスたちを睡眠蝶の粉を振りかけて眠らせた後、転送陣の上に乗せた。すると転送陣が光を放ち、クリスたちの体を包み込んだ。
 「罪人の穢れた魂が染み付いた呪われた地獄島で、永遠に彷徨うがいい。貴様らのように穢れ、悪に染まった魂に、安らぎの時間は無いと思え…!!
兵士がクリスたちに侮蔑の言葉を言い放った後、クリスたちは地獄島へと転送されてしまった…。クリスたちを地獄島へと島流ししたあと、アメリアの手当てをするべく皇帝の間へと戻ってきた。

 「この馬鹿者めっ!クリスたちがそんなことをするわけがなかろうがっ!
アメリアの手当てをするべく戻ってきた兵士たちに、アメリアの怒声が響きわたる。
「すまない。私があの紫の髪の女の話をよく聞いていれば…クリスたちを地獄島に島流ししなくて済んだかもしれなかった。アメリア様、許してくれ…。」
兵士たちが必死に謝罪したが、アメリアの怒りはおさまらなかった。
「ええい!!今すぐクリスたちを連れ戻してくるのだっ!いくらクリスたちでも地獄島と呼ばれるボルケニア島にいる凶悪な原住生物には敵わない。お前たちには一か月分の減給刑に処す。牢獄に入れられないということをありがたく思え…。」
アメリアが兵士たちに一ヶ月の減給処分を言い渡した瞬間、兵士たちがため息をつきながら答える。
「そんなぁ〜!
「お前たち、ため息をついている暇があればさっさとクリスを探しに行くのだ!急がなければ命が危ないからな…。クリスたちを見つけ次第、レミアポリスへと帰らせるのだ!
アメリアは兵士たちにクリスを探すよう命じ、兵士たちを地獄島に遣わせた。

 目隠しをされたクリスたちは赤茶けた大地の上で目覚めた。クリスは目隠しを外すと、そこには荒廃した荒地と朽ち果てた村の姿が目に映った。
「こ…これは一体!?私たち一体どうしちゃったの!?
クリスが何が起こったのかわからない表情であった。するとリリシアがクリスの元へとやってきた。どうやらクリスが目覚める前、リリシアがクリスよりも早く目を覚まし、空中から探索していたのだ。
 「クリス、目が覚めたのね。私少し空を飛んで見回ってきたけど、ここは海に囲まれた牢獄よ。どうやら私たちはあの兵士たちに島流しされてしまったようね…。」
突然のリリシアの言葉に、クリスは動揺を隠せなかった。
「やっぱり…。あの兵士の言っていたとおりね。どうやら私たちに安息の時間は無いようね。とりあえずみんなを起こしましょう。」
クリスたちが眠っている他の仲間たちを起こすべく、目隠しをとって体を揺さぶる。眠っている仲間が目を覚ましたことを確認すると、リリシアが全員を集め、そう言う。
 「みんな、私たちは今絶海の孤島『地獄島』に島流しにされてしまったみたいなの…。とりあえず脱出の方法を探すことが先決だわ。この島に何があるかは分からないけど、探索を始めましょう。」
クリスたちはレミアポリスに帰るべく、地獄島の探索を開始した。この島にいる凶悪な原住生物が、いつ牙をむいて襲ってくるか分からない状況で、クリスたちは生き残り、無事生還することが出来るのであろうか……。

 

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