蘇生の章第二十四話 魔蝕の町アドリアシティ

 

七大魔王の一人であるデモリックを倒すため、クリスたちはサンディの町から南に広がる砂漠を進んでいた。砂漠は日中は灼熱地獄だが、サンディの町で手に入れた日除けの衣のおかげで、暑さを気にせず砂漠を進んでいく。
「みんな、日が沈む前に砂漠を抜けるんだ。日没には強烈な寒さが襲い掛かってくるぞ!!
――歩き続けて二時間が経過し、もうすぐ日没だ。砂漠ではさえぎるものが無いため、暑さとは逆に急激な寒さが襲い掛かってくる。ディオンの言葉を聞いた瞬間、クリスたちは急ぎ足になる。しかし、太陽は容赦なく沈んでいく。
 「もう空が暗くなってきたわ…。そろそろ寒くなる頃だわ。」
カレニアがそう言って空を見たとき、もうすでに太陽は沈んでいた…。太陽がなくなったと同時に、強烈な寒さがクリスたちを襲った。
「きゃあっ!!
砂漠の夜の冷たい風が、クリスたちの体を吹き抜ける。まるで冬の雪山にいるような感覚を覚えそうなほどの冷たさに、クリスたちの手は震えていた。
「あれ…?体だけは寒さを感じないわ。一体なぜかしら…この日除けの衣には何か秘密があるのかしら…?
手と足は寒さを感じないが、体だけはなぜか寒さを感じなかった。不思議に思ったリリシアはフィリスにそのことを言うと、フィリスはクリスたちにそう言う。
 「この日除けの衣は、日中受けた熱を吸収し、夜になるとその熱を放出し、寒さから身を守ってくれる効果があるようね…。」
リリシアの言葉をヒントに、フィリスは日除けの衣に隠されたもう一つの効果を見抜いた。灼熱の砂漠の熱を防ぐだけでなく、夜の寒さに反応して日中で蓄えた熱を放出する特殊な魔物の皮で作られた衣であった。
「すごい……日除けの衣にはそんな効果が隠されているなんて知らなかったわ。これで夜の寒さの影響を受けずに砂漠を進むことが出来るわ!さぁ早く砂漠を抜けて、アドリアシティへ急ぎましょう!!
リリシアがそう言った後、クリスたちは休むことなく砂漠を歩き続けるのであった。

 一方魔界の首都であるルーズ・ケープの王宮にいるメディスに、側近であるヘモアが現れた。ヘモアはメディスにスピナが倒さたということを伝えると、メディスは歯軋りをしながら苛立ちながら答える。
「人間界に送り込んだスピナが倒されたようだ。メディス様…リリシアにはどうやらクリスとかいう奴と共に行動しているようだが、何か身に覚えは無いか…?
ヘモアの言葉に、メディスは何か思い出したようだ。
 「ヘモアよ、よくぞ情報を仕入れてくれたな…。情報量としてお前には3万DGを与えよう。」
メディスはヘモアに3万DGの入った袋をヘモアに渡すと、ヘモアは何か気に障る感じであった。
「メディス様…いくらなんでも受け取れません。これは返します。」
「いいから受け取れ!!
受け取りを拒否するヘモアをよそに、メディスは無理やり金の入った袋をヘモアの服のポケットの中にねじ込んだ。話に夢中になりすぎて、ヘモアは金の入った袋をねじ込まれたことに気付いていないようだ。
「ヘモアよ、もう下がっていいぞ…。また情報を頼む…。今度はクリスの顔を記録蟲で写してくれ。」
メディスがそう言った後、ヘモアは王座の間を去っていった。
 「クリスか…奴も許せぬ存在だな。まぁよい、クリスの首にもいずれ賞金を懸ける予定だ。フフフ…これからが楽しみだ…。」
メディスが不気味な笑いを浮かべながらそう言った後、眠りに着くため、自室へと向かっていった。

 休憩を織り交ぜながら砂漠を歩き続けて7時間後、クリスたちの目に緑の草むらが見えた。どうやら砂漠の終わりのようだ。
「草むらが見えるわ…あれは蜃気楼では無いかな?
クリスが目を擦りながら草むらの方を見た。その遠方に家らしきものが建っているのが見えた。
「家があるようだ。とりあえずその家に立ち寄ってみよう。きっと何か情報が得られるかもしれんな。」
クリスたちは砂漠の近くにある家に立ち寄ることにした。クリスたちが建物の近くまで来ると、宿屋の看板が立てかけられていた。
 「おっ、ここは宿屋のようだな。砂漠での疲れを癒す絶好のチャンスだな…。」
ディオンがそう言うと、クリスたちは宿屋の中に入って行った。宿代を店主に渡し、クリスたちは自分たちが泊まる部屋へ来ると、すぐさま眠りに着いた。どうやら砂漠で歩きつかれてしまったようだ。
 しばしの休息の後、クリスたちが宿屋を去ろうとした時、宿屋の主人が話しかけてきた。
「君たち…一つ聞いておきたいことがあるのだが、この先はかつてアドリアシティと呼ばれていた港町があったのだが、それはもう昔の話さ。今では魔物の巣窟さ……。」
宿屋の店主の言葉に、リリシアは何かを思い出したようだ。
「アドリアシティのことですね…。聞いたところでは七大魔王の一人であるデモリックの占領下にあると聞きます。私たちはデモリックを倒しに行くところです。」
リリシアがそう言った後、深刻な表情をしたフィリスが前に出る。
 「デモリック…今度こそ、絶対に許さない。15年前の借りを返さなくてはならないわ…。クリス…そしてみんな、絶対にアドリアシティを平和にして見せますわ!!店主さん、昨日はどうもありがとうございます。」
フィリスがそう言った後、クリスたちは宿屋を後にした。宿屋から少し進んだ時、大きな城のようなものがクリスたちの目に映った。城の周りには緑の蔦のようなものが絡み付いていた。
「私の持つ精霊の鏡が…光っている!とりあえず念じてみるわ!
アドリアシティの近くに来たとき、精霊の鏡が突然光りだした。リリシアは鞄から鏡を取り出し、強く念じ始めた。すると鏡に写ったのは、見たことも無い植物が生い茂る場所であった。
「見たことも無い風景ね…まぁこの町の中にソウルキューブがあるのは確かね…。とりあえず町の中に入って探してみましょう。」
リリシアがそう言った後、クリスたちはアドリアシティの門を開け、町の中へと入った。すると、傷ついた一人の兵士が町の中で倒れていた。
 「おお…お前は確かキャンプで出会った女たちではないか……。この町はもう終わりだ…私と一緒にいた兵士はすでにこの基地の栄養にされてしまった…。デモリックはこの町を占領し、大きなバイオ基地を築き上げ、人間を生体改造して魔物にしているのだ…お前たちよ…後は頼んだぞ…ぐふっ!!
兵士は息を引き取った。
「許せない…!!人間を魔物に変えるなんて!
クリスは非情なデモリックのやり方に憤りを感じていた。
「あの兵士が言っているように…この町一体が大きなバイオ基地ってことね…。私の考えによれば、デモリックはソウルキューブの力を悪用しているとしか思えないわ!!早くデモリックを倒しに行きましょう。」
クリスたちはデモリックを倒すべく、アドリアシティへと脚を踏み入れた。クリスたちが去った後、地中から大きなミミズが現れ、兵士の死体を丸飲みにしていた…。どうやらこの町はデモリックのバイオ技術によって腐敗しきっていたのだ。

 クリスたちはリリシアの持つ精霊の鏡を頼りに、ソウルキューブがある場所を探していた。町の中には人はおらず、不気味な生き物や虫が跋扈していた。
「気味悪いところね……。とりあえず虫を蹴散らしながら進むわよ。」
クリスたちは近づいてくる虫を蹴散らしながら、町の奥へと進んでいく。しばらく歩いていると、大きなドーム状の建物が目に映った。どうやらここがデモリックのバイオ基地であった。
 「みんな、リリシアの持つ精霊の鏡の光が、強くなっています!!どうやらこの基地の中にソウルキューブがあるようですわ!!みんな突入するわよ!
フィリスの号令により、クリスたちは一斉にデモリックのバイオ基地へと突入した!バイオ基地の内部に突入したクリスたちの目に映ったのは、なんともおぞましい光景であった。
 「なによ…これ!?
どうやらこのバイオ基地では、人間を魔物に変えてしまうという恐ろしい実験が行われていたのだ。クリスたちはバイオ基地の中を探索していると、檻に入れられた人間がクリスたちに助けを求めるようにそう言う。
「たすけて…くれ…。私はまだ……ぢにたくない…!!
「返してぇ……私の体を返して…!!
デモリックの魔術により、蟲にされた人間がうめき声を上げていた。蟲にされた人を見たクリスの目には、涙が溢れていた。
 「ぐすっ…ひどい……ひどすぎるっ!!こんな人間じゃない物に変えるなんて許せない!急がなきゃフェルスティアの人間が同じような目にあうかもしれないわっ!!みんな、行こう!!デモリックを倒しに!
クリスの言葉で、全員はデモリックのいる場所を探し出そうとしたとき、まだ蟲に変えられていない一人の老人が話しかけてきた。
「おまえさんたち…デモリックを倒しにいくのかね?わしは生体改造を受けられている人間を見たことがある。奴はネックレスに念じている所を偶然見かけたのじゃ。その瞬間、人間が人で無い姿になったのじゃ……。おそらくこれが奴のいう生体改造なのじゃ。奴のネックレスをつぶせば、わしらの呪いは解け、普通の人間に戻れるというわけじゃ!おっと、長話をしている場合ではない!早くデモリックを倒しなされ!奴は3階のコントロールルームにいるはずだ!
老人がそう言った後、クリスたちはデモリックのいるコントロールルームへと急ぐことにした。

 3階へと来る途中にも生体改造を受けられた人間が何度も襲ってきたが、クリスたちは殺さずに退けてきた。3階のコントロールルームの前まで来た瞬間、怒りの表情のクリスが扉を蹴破り、中へと入る。
「あなたがデモリックね……!!人間をこんな姿にするなんて許せないっ!
クリスの言葉に、デモリックは笑いながら答える。
「いかにも…私がフェルスティア七大魔王の一人、デモリックだ。わしが生体改造をしているのも事実だ…。このネックレスのおかげでな。」
デモリックがネックレスをクリスたちに見せ付けたそのとき、クリスはシミターをデモリックに向けた。どうやら怒りの感情が、クリスの心を支配していた。
 「許さない…あなただけは許さないっ!!ここで倒してやるわ!
もはや狂戦士と化したクリスは、デモリックのネックレスにシミターの刃を引っ掛け、思い切り振り上げた。するとデモリックのネックレスがばらばらになった。
「わ…わしのネックレスが!!少しばかり油断したかっ!だが魔石がある限り、何度でも生体改造が…!?
デモリックが魔石が嵌め込まれたネックレスを取ろうとしたとき、クリスがネックレスの魔石の部分を壊していた…。
「こんなものがあるから……いけないのよっ!!
ネックレスが壊れた瞬間、蟲に変えられた人間が次々と元の姿に戻っていく…。ネックレスを壊され、怒りに震えるデモリックが、ついに魔王の本性を表そうとしていた。
 「許さぬ!わしの計画を水の泡にしよって!わしの計画を邪魔したわが苦しみ…お前らの命で贖ってもらうぞっ!!うおおおおおっ!
デモリックの服が破け、魔王たる猛々しい姿と化した。この姿を見たフィリスは、何かを思い出したのか唖然となる。
「この姿かたち…ウォルティアを襲撃したときと同じだわ。全てあいつがやったのよっ!!
デモリックの姿を思い出すたびに、フィリスの脳裏に15年前の忌まわしい出来事がよみがえった。デモリックはフィリスの方を向き、不敵な笑みを浮かべながらそう言った。
 「フハハハッ!!わしをこの姿に変えたこと…地獄で後悔させてやる!この魔王たるデモリックという名にかけて…貴様を血祭りに上げてやる!!
怒りの雄たけびを上げながら、魔王の本性を表したデモリックがクリスたちに襲い掛かってきた。

砂漠を抜け、デモリックがいる魔蝕の町、アドリアシティへとやってきた。
魔王と化したデモリックを倒し、クリスたちはソウルキューブを手に入れることが出来るのか!?

 

次の話へ

 

前の話へ

 

蘇生の章TOP