蘇生の章第二十三話 広大な砂漠へ…


 ボルディアポリスの魔法の店で魔力を回復させる道具『マジックポーション』を手に入れたクリスたちは、急いでフーリアの村へと戻ってきた。クリスたちが村に到着した時にはもう夜であった。
「はぁ…もう夜だわ。早くこの薬をフィリス様に与えないと…。」
村に戻ってきたクリスたちは急いで宿屋にある治療室へと向かった。クリスは鞄の中からボルディアポリスの魔法の店で手に入れたマジックポーションを取り出し、フィリスに飲ませようとする。
「フィリス様…あなたのために魔法の薬を探してきたわ。さぁ、飲んで……。」
クリスはマジックポーションを瓶の蓋に少し注ぎ、フィリスの口を開き飲ませた。するとフィリスの顔色が見る見るうちに元気になっていった。
 「おや…私は今まで何を…?
何日間も眠っていたせいで、フィリスは何が起こったのか分からず動揺していた。そんな様子を見たディオンはフィリスにそう言う。
「フィリス様…多量の魔力を失ったせいで、あなたは何日間も眠っていたのです。さぁ、今は体を休めて、明日また私たちと共に旅を再開するぞ。」
ディオンの言葉に、フィリスは眠い目を擦りながら答える。
「ええ…これからまた、一緒に旅が出来ることを思えば、嬉しい限りですわ。それより…クリスたちを探さなければ…。」
「その必要は無いわ。私たちは今ここにいるわ!
フィリスが声のした方を向くと、元気な表情を見せるクリスたちがそこにいた。三人の無事を確認したフィリスは、嬉しさがこみ上げてきた。
 「みんな…無事でよかった……。ねぇクリス…私たちと合流する前に何があったか教えて欲しいわ。」
フィリスの言葉を聞いたクリスは、出会う前の出来事を話し始めた。

 話が終わったときには、もう朝になり外には小鳥が鳴いていた。
「ごめんなさい…話しが長すぎて朝になってしまったわ。」
クリスは話が長くなったことを謝罪した。しかしフィリスは笑いながらクリスにこう答えた。
「あはは…いいのよ。ちょっと身支度してくるから、ちょっと待っててね。それと、ディオン、覗いちゃダメだからねっ!!
フィリスが身支度をしている間、クリスたちはこれからのことについて話しあっていた。
 「これから私たちは砂漠を越えてデモリック討伐に向かう。砂漠に行く前にちょうど町があったはずだ。そこで少し情報収集だ。」
砂漠に向かうとなれば、女性陣には何か引っかかるものがあった。
「砂漠は日射しがひどいから…お肌に悪影響だわ。肌が荒れちゃうわ…。」
女性陣は砂漠の日射しによる肌荒れに困っていた。女性陣が困っている中、身支度を終えてクリスたちの元へ戻ってきた。
「話は聞いていたわ…。日射しでの肌荒れに困っているんですって…?
「フィリス様、なにか日射しを防げるものないの…。無防備のまま砂漠に行くと日焼けしちゃうわ!
クリスたちの話を全て聞いていたフィリスは、砂漠の日射しを防ぐ方法を考えていた。
 「とりあえず砂漠の手前の町に行けば、日射しを防げるものが何か売っているかもしれないわ…。とりあえず行ってみましょう。」
フィリスの提案で、クリスたちは砂漠の手前にある町に向かうのであった。

 砂漠の手前にある町にたどりついたクリスたちは、早速情報収集を開始した。
「みんな、ひとまずこのサンディの町で情報収集をしよう。少しでもデモリックの情報がほしいからな…。」
ディオンがそう言った後、クリスたちは情報収集のために町の散策を始めた。一方フィリスは女性陣の悩みを解消するため、砂漠の日射しを防ぐ道具を探していた。数分後、彼女は町の中にある服の店にやってきた。
 「あの…日射しを防ぐための物はここに置いてませんか…?
フィリスの言葉を聞いた店主が、こっちに近づいてくる。
「ああ、日除けの衣だね。それなら一つ500Gになるのだが、それでもいいかね…?
「じゃあ五人分お願いします。これから砂漠を抜けるのでね…。」
フィリスが五人分の日除けの衣の代金を差し出すと、店主が答えた。
「代金確かに受け取ったよ…少しここで待っていてくれないかな…。」
店主は大きな布を手に取り、日除けの衣を作る作業に取り掛かった。数分後、一枚の大きな布が五人分の日除けの衣となった。
 「ほらよっ、こいつが日除けの衣だ。持って行きな…。」
店主が五人分の日除けの衣をフィリスに渡すと、フィリスは一礼をして服屋を去っていった。

 一方町で散策をしているクリスたちは、小さな小屋の庭で畑仕事をしている獣人にデモリックのことについて尋ねた。するとその獣人はクリスを見た瞬間、なにやら動揺し始めた。
「お…お前はもしかして……レイオスの幼馴染のクリスじゃないか!?どうしてお前がここに…。」
「あなたはもしかしたら…レイオスさんと旅をしていたボルガさんでは!?
その獣人はかつて一年前にレイオスと共に旅をしていたボルガであった。ボルガはリリシアのほうを向くなり、大きな声でそう言った。
 「あーーーーっ!!お前は確か魔導戦艦でリュミーネと戦っていた女だな!!今度こそ逃がさんぞ…リ…リ……なんだっけ?海に落ちたショックで忘れてしまったか…。」
ボルガのあやふやな言葉に、リリシアはボルガの耳元でそう言う。
「何よ…私のことを忘れるなんてひどいわ!私の名前はリリシアよ!それよりあなた…ベルに倒されたはずなのに何故生きてるの…?
リリシアのその言葉に、ボルガは魔導戦艦の時の出来事を話し始めた。
 「仕方ない、教えてやるよ…俺がベルの体当たりをかわそうとして海に落っこちただけだ…。それよりお前、あの頃とは性格がぜんぜん違うな…。あの後何があったんだ?
リリシアはボルガに魔導戦艦の出来事の後の出来事を話し始めた…。

 「そうか…そんなことがあったんだな。リュミーネの奴、死ぬ前にいいことをしたものだな…。それより、ブレアとレイオスは生きているのか!?教えてくれ…。」
ボルガがブレアとレイオスが生きているのかを尋ねると、ディオンが前に出て答えた。
 「すまぬが…ブレアもレイオスも死んでしまったんだ……。魔導士の野望を阻止するためにみな命を懸けてこのフェルスティアを守ったんだ…。」
その言葉を聞いたボルガの目には、涙が溢れていた。
「みんな死んでしまったのかっ!じゃあ仮面の魔導士はまだ生きてるのかっ!?
「仮面の魔導士はレイオスさんが倒しました。しかしレイオスさんは死んでしまいました。なぜならば魔導獣を倒すために命を懸けて戦って勝ったのです…。」
クリスがそう言った瞬間、ボルガは納得した表情で答えた。
 「そうか…仮面の魔導士が倒されたのでホッとしたぜ…。俺はもうすこしここにいることにするから、アメリア様にであったらよろしく言ってくれよな。それより先ほど兵士の集団が砂漠のほうへ向かっていくところを見かけたのだが、あの砂漠の向こうにはでデモリックとかいう奴が占領しているアドリアシティと呼ばれる場所があるというのを町の人から聞いたことがある。奴はここにいるはずだ。」
ボルガの言葉を聞いたクリスは、嬉しそうな表情でこう答えた。
「ありがとうございます!!私たちはこれからソウルキューブと呼ばれる秘宝を探しているんです…。現在魔王を倒して一つ手に入れました。リリシア…ソウルキューブを出してちょうだい。」
クリスがリリシアにソウルキューブを出すように言うと、リリシアは鞄の中から青い色のソウルキューブを取り出した。
「これがソウルキューブよ、このソウルキューブにはリュミーネの魂が封印されているのよ…。私たちはあと二つのソウルキューブを探しているの…。」
ソウルキューブの放つ青い煌きに、ボルガはうっとりした表情であった。
 「リュミーネの魂が封印されている…か。それならブレアもレイオスもこのソウルキューブって奴に魂を封印されているんじゃないかな…と俺は思うんだ。クリスよ、一年前と比べるとずいぶんと凛々しくなったな。とりあえず言える事はそれだけだ。それじゃあな……。」
ボルガの言葉を聞いたクリスは、嬉しそうな表情で笑っていた。ボルガが畑仕事に戻った後、フィリスが五人分の日除けの衣を持ってクリスたちの所へとやってきた。
「とりあえず服の店で日除けの衣を作ってきたわ。これさえあれば砂漠の熱にも耐えられるわ。一応飲み水も買ってきたわ。はやく日除けの衣を着ましょう…。」
フィリスはクリスたちに日除けの衣を渡し、身に纏うようにそう言う。
「ちょっと大きいかもしれませんが、一応着てみます。」
日射しによる肌荒れを一番心配していたカレニアは、真っ先に日除けの衣を身に纏った。日除けの衣を纏った瞬間、暑さを全く感じなくなった。
 「不思議ね…この衣を装備する前は暑く感じていたが、装備した瞬間では全く違うわ。これなら肌荒れを気にせず砂漠を歩けるわね。さぁ、デモリックとかいう奴を倒しにいくわよっ!!
カレニアがそう言った後、日除けの衣を身に纏ったクリスたちは広大な砂漠へと向かっていった。

 ――熱砂の迷宮、砂漠。それは自然が作りし迷宮。出口が見えない広大さと灼熱の日射しでじわじわと旅人を苦しめる。灼熱の太陽が消えた後も気を抜けない。今度は灼熱の日射しとは逆に寒さが襲ってくる。うかつに立ち入ったものに死を与える危険な場所であった。
「サンディの町から歩いてすでに一時間経ったな…。もうすでに一面同じ景色だ。」
サンディの町から歩き続けて一時間後、すでにあたりは同じ景色だけになってしまった。
 「本当に見渡す限り砂漠ばかりだわ。とりあえず進むしかないね。」
クリスたちはアドリアシティへ向けて歩き出そうとしたそのとき、砂の中からいきなり二匹の大きな蜘蛛のような魔物が現れた。
「こいつは砂漠に生息する魔物、蟻地獄だ!!奴のはさみには麻痺毒があるから気をつけるんだっ!!
蟻地獄がはさみを交差させ、クリスたちを威嚇し始める。その様子を見たクリスたちは、武器を構えて戦いの準備を始める。
「みんな、蟻地獄の後ろからまた何かが近づいてくるわ!
砂漠に足を踏み入れた人間のにおいを嗅ぎ付け、砂漠に生息する合成魔獣であるキマイラが現れた。
 「これは辛い戦いになりそうだわ。みんな、油断しないでね!!
フィリスの号令により、クリスたちは一斉に魔物の群れに立ち向かっていった。ディオンの大剣を握り締め、蟻地獄を次々と退けていく。その頃クリスたちは、キマイラに苦戦を強いられていた。
「ダメだわ…日除けの衣を着ていても炎のダメージは受けてしまうわ!クリス、出来るだけ術で相手を攻撃して!
カレニアの言葉で、クリスはキマイラから離れ、術を放つ態勢に入る。
「喰らいなさい…!!ウォーター・シュート!
クリスの手のひらから放たれた水の弾丸が、キマイラの体に次々と当たっていく。キマイラが一瞬怯んだ瞬間を狙い、カレニアがウェアバスターでキマイラを激しく斬りつけた!!
 「グルオオオオオオオッ!!
獣殺しの短剣・ウェアバスターの一撃により、獰猛な合成魔獣であるキマイラは大きな音を立てて崩れ落ちた。
「これで魔物は全て倒したな…。さぁ先を進もう。この砂漠の南に行けば、きっとアドリアシティにたどり着くはずだ!!
襲い掛かる魔物を倒し、クリスたちは砂漠の先へと進むのであった。

魔導士との戦いで死んだと思われたボルガだが、砂漠の町で生きていた。
砂漠を越えた先に、クリスたちは何を見る!!

 

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