蘇生の章第二十二話 大都市ボルディアポリス
フィリスを助けるため、クリスたちはフーリアの村の東にあるセルディア大陸の大都市であるボルディアポリスへと足取りを進めていた。しかしそれと同時に、魔界王メディスがリリシアの首を狩るべく遣わせたブーメラン使いのスピナが、クリスたちを探し回っていた。
「メディス様よぉ…オレにこんなに大勢の魔物を送り込まなくてもよいではないか。オレは魔物の世話などしたくは無いんだよ…。」
スピナが地上界に来る際、メディスから援護のために大勢の魔物が送られたのだ。腹をすかせた魔物たちはスピナに群がってきた。
「ええい、お前ら!!少しは我慢しやがれ!後少ししたら、紫の髪の女をつれた人間がここにやってくる。腹が減ったらそいつを食え!!」
スピナの言葉を聞いた魔物たちは、スピナのほうを向いて頷いた。
「ふふふ…。オレが他の奴よりも奴の首を狩ってやるぜ……。魔物どもよ、行くぞっ!まずはボルディアポリスを襲撃し、人間に恐怖を与えてやる!」
スピナは大勢の魔物を引きつれ、ボルディアポリスへと進軍を開始した。
スピナがボルディアポリスへと進軍を開始する中、クリスたちはボルディアポリスへ続く道をただ歩いていた。目の前に草原と山が広がっているのだが、南の方角には砂漠が広がっていた。
「南の方は砂漠ですね……。あの兵士たち、この砂漠を越えてデモリックを倒すためにアドリアシティへと向かっている途中なんだろうね…。」
クリスがそう呟いた瞬間、ディオンがそれを聞いていた。
「うむ。この砂漠の向こうに奴の根城か…。クリスよ、いい情報をありがとう。フィリス様が元気になったら、私たちもアドリアシティへと向かおう。フィリス様にひどいことをした奴に俺たちのの実力を見せてやるぜ!!」
ディオンが怒りの表情でそう言うと、クリスがディオンを宥める。
「そんなに青筋をたてなくても…。それより今はボルディアポリスに行き、魔力を回復させるための道具を売っている店を探しましょう。」
クリスに宥められたディオンは、冷静さを取り戻した。
「うむ。そうだな…。ボルディアポリスに向かうのが先だな…。みんな急ごう!!急がなければフィリス様の命が危ない!!」
ディオンがそう言った後、クリスたちは急ぎ足でボルディアポリスへと急いだ。数十分後、クリスたちがボルディアポリスの門の目の前まで来たとき、そこには大きなブーメランを持った男が立っていた。
「あの男は何をしているのかしら…?ちょっと聞いてくるわね…。」
リリシアが男に何をしているのかを尋ねるため、男に近づいたそのとき、男がいきなりブーメランを投げつけてきた。リリシアは咄嗟にブーメランをかわすと、鉄扇を手に戦闘態勢に入った。
「私の顔を見て襲ってくるということは…まさかメディスの手先ねっ!!私の首を狩ろうとしてもそうは行かないからね!!」
リリシアの言葉に、スピナが大勢の魔物を引き連れてクリスたちに近づいてきた。
「お前がリリシアとかいう奴だな…。紫の髪といい少し長い耳という特徴からしてそうだ!!自己紹介が遅れたな…。オレはスピナ・レイドだ。オレはメディス様からリリシアの首を狩れということで、大勢の魔物と共にこの地上界にやってきたのだからなっ!!行け、デザート・アリゲーターよ!!こいつらを噛み千切れ!」
スピナが大声で叫ぶと、彼の後ろから数匹の黒い色の鰐がクリスたちににじり寄ってきた。デザート・アリゲーターは腹を空かせており、血走った目でクリスたちを見つめていた。
「スピナよ、お前も以前戦ったヴォルカスと同じくメディスとか言う奴の勅令でリリシアの首を狩る者の一人だな…。」
その言葉に、スピナは少し頷いた。どうやら彼もヴォルカスと同じでメディスの勅令によりリリシアの首を狩る目的であった。
「そうだ……。オレはメディス様からリリシアの首を狩るためにこの地上界に来た!!オレはリリシアの首を狩るまでは帰れないからなっ!喰らえっ!」
スピナがそう言った後、大きなブーメランをディオンめがけて投げつけてきた。ディオンは少しでもダメージを軽減するため、大剣を盾に防御した。しかし大きなブーメランの重い一撃に、ディオンは防御の体制のまま後ろへと吹き飛ばされた。
「防御していてもこの威力か…。お前の持つその大きなブーメランは、人の首を狩るために作られたようだな…。」
ディオンの言っているとおり、スピナの持つブーメランは魔物や人の首を狩るために作られた物だ。投げたときの遠心力と重さによって人間の首など容易く跳ね落とすという殺人武器であった。ディオンがスピナと対峙している間、クリスたちはデザート・アリゲーターと戦っていた。
「なんなのよこの鰐たち…鰐の癖に炎まで吐いてくるわっ!みんな油断しないでっ!!」
クリスたちはデザート・アリゲーターに苦戦していた。普段の水棲の鰐とは違い、砂漠に生息するデザート・アリゲーターは、砂漠の熱を吸収し、炎を吐く堅い装甲をもった強力な敵であった。
「炎を吐いてくると言う事は、どうやら水が苦手のようね。クリスはリリシアをバックアップしてあげて!私は上級の水属性の術は使えないが、下級の術なら使えるわ!」
カレニアが下級の水の術でデザート・アリゲーターを攻めている間、クリスはリリシアの援護に入った。リリシアは闇の術で少しずつデザート・アリゲーターを仕留めているが、吐き出される炎に苦戦していた。
「クリス…回復をお願い!!二匹倒したんだけど、炎にやられたみたい…。」
クリスは戦いで傷ついたリリシアの傷を手当するべく、目を閉じて回復の呪文を唱える態勢にはいった。
「さっき覚えたばかりなんだけど…上手くいくかな…。ヒール・ライト!!」
クリスが先ほど覚えたばかりの回復呪文を唱えた瞬間、リリシアの傷が見る見るうちに塞がっていく。どうやら成功したようだ。
「クリス…ありがとう。おかげでまた戦えるわ!!」
「とりあえず成功してよかったわ。さぁ、一緒に戦いましょう!さっさとあの黒鰐を倒してあのブーメラン男を倒すわよっ!」
クリスとリリシアは残りのデザート・アリゲーターを倒している間に、カレニアはディオンと共にスピナを迎え撃つ態勢に入っていた。
「フン…。小娘が乱入してきたか…。まぁよい、相手になってやろう。」
スピナが手を交差したその瞬間、風の刃が放たれ、ディオンとカレニアを襲った。ディオンは風の壁を作り、風の刃の一撃を防いだ。
「ブーメランだけでなく、風の術まで使うのね…。もしかしてその技も人の首を狩るための術じゃないでしょうね…?」
カレニアの言葉を聞いたスピナは、堂々とディオンたちにそう言う。
「そうだ。ブーメランもこの風の術も、人の首を狩るためのものさ!オレは首を狩るために生まれてきたのだっ!首を狩ることがオレの生きがいだからだっ!!ハハハハハッ!!」
不気味な笑いを浮かべるスピナを見たカレニアは、怒りの表情でそう言い放った。
「腐りきってるね…心も体も。万死に値するほどだわ。ディオン、ここは私が引き受けるわ…。」
怒りの表情を見せるカレニアがそう言った後、無言でスピナに近づいてきた。その様子を見たスピナは恐る恐るブーメランを構える。
「く…来るなっ!!そんなに死にたいか!?だったらこうしてやらぁっ!」
死を恐れずに向かってくるカレニアに対し、怯えた表情のスピナが渾身の力を込めてブーメランを投げつけた。しかしカレニアはスピナの投げたブーメランを掴み、投げ返そうとする。
「私の炎の力を使えば、腕や脚の力を強化することも可能よ。たとえば、あなたの投げたブーメランも簡単に掴むことが出来る…。その掴んだブーメランを…そっくりそのまま返してあげるわっ!!」
カレニアは腕に炎の力を込め、スピナのブーメランを思い切り投げ返した。ブーメランは炎を纏いながらスピナへと向かってくる。
「ぐ…くそおおっ!!死にたくないーーー!!死に…!?」
炎のブーメランが、スピナの首を刎ね飛ばした。スピナの大きなブーメランはスピナの首を刎ね飛ばした後、そのまま遠くへと飛んでいった。
「カレニア…いくらなんでもやりすぎだぞ…。」
「ふふっ…いつもの癖でついついやってしまったわ。さぁ、先を急ぐわよ。」
スピナを倒したクリスたちは、魔法の店を探すため、ボルディアポリスへと向かった。
――大都市・ボルディアポリス。中央大陸にあるレミアポリスの約二倍ほどの面積を誇る大都市で、『世界最大のポリス』との呼び声が高いとの噂である。クリスたちは早速魔法の店を探すため、聞き込みを開始した。
「みんな、手分けして魔法の店についての聞き込みを始めるわ。とりあえず一時間たったら時計台の広場に集合よ。」
クリスがそう言った後、全員はボルディアポリスにある魔法の店についての聞き込みを開始した。そして一時間後、聞き込みを終えたクリスたちが戻ってきた。
「魔法の店の場所が分かったわ。ここのスラム街にひっそりと店を構えているって話よ。話を聞きだすのは大変だったのよ…そのことを知っている人はかなり強情で、色仕掛けでようやく話してくれたんだから……。」
リリシアは顔に手を当て、恥ずかしい表情でそう言った。
「魔法の店というものはスラム街にあったのか……。リリシアよ、よく見つけてくれた。みんな、スラム街に向かうぞ!!」
リリシアが手に入れた情報によると、魔法道具を売っている魔法の店はどうやらボルディアポリスの東にある貧乏人たちが暮らしているスラム街にあるという噂だ。クリスたちがスラム街に来たとき、そこには貧乏な人たちがさまよっていた。
「貧乏な人がたくさんいるね…。レミアポリスとは大違いだわ。とりあえずその魔法の店とか言う所に行くわよ。早く見つけてフィリス様を助けるわよ…。」
クリスたちがしばらく歩いていると、なにやら煙突のついた不気味な家がそこにあった。どうやらこの家こそが魔法の店のようだ。クリスたちは恐る恐る家の扉を開け、家の中に入った。するとそこには得体の知れない色の液体が入った瓶などが置かれている魔法の店であった。
「すみません……。ここに魔力を回復させる道具はありませんか…?」
クリスがそう言った瞬間、店の主人らしき魔法使いのようなお婆さんが現れた。
「魔力を回復させる道具か、それならあるぞ…。これはエルフ族に伝わる飲み薬でな…使用者の魔力を最大限まで回復させる効果がある物だが、かなり値が張るぞ。とりあえずこれは10万Gでどうじゃ?」
魔力を回復させるエルフの飲み薬は、いくらなんでもクリスたちには手が届かないほど高かった。そのことに腹を立てたリリシアは、店の主人にそう言う。
「いくらなんでも高すぎるわ…。とりあえず、魔力を回復させる他の道具はないの…?」
リリシアの要求に、店の主人がなにやら瓶のようなものを取り出し、リリシアに見せ付けた。
「それならこれはどうじゃ…。胸を大きくする飲み薬じゃが、これは5万G、他には異性を必ず惚れさせる惚れ薬もあるのだが、これは1万G…」
魔力を回復させる薬とは関係ないものばかりを出す店主に、リリシアの怒りは頂点に達しそうな勢いであった。
「ちょっと……関係ないものばかりじゃないっ!!まともなものを出しなさいよっ!!」
鬼のような形相をしたリリシアを見て、店主は震えていた。店主は仕方なくエルフの飲み薬に代わる魔力を回復させる薬をリリシアの前に差し出した。
「すまないな…これをもって行きなされ…。エルフの薬には劣るが、魔力を回復させる効果のあるマジックポーションじゃ。それよりお主、なんと言う名前じゃ?」
店主の言葉を聞いたリリシアは、自分のこと、そしてこれからのことををいろいろと話し始めた。
「ほう……リリシアか、いい名前じゃな…。お主はこれからもっと魔力が伸びるだろう…。その力、誤った方向に使うでないぞ。」
その言葉に、リリシアは笑顔でそう言い返した。
「わかったわ…。その力は、決して間違った方向に使ったりはしないわ。お婆さん、私たちはこれで…。」
魔力を回復する道具を手に入れたクリスたちは、フィリスの待つフーリアの村へと急ぐのであった。
迫り来る敵を倒し、クリスたちはボルディアポリスへとたどり着いた。
魔法の薬を手に入れ、クリスたちはフーリアの村へと向かう!!