蘇生の章第二十一話 新たなる刺客 スピナ登場!!

 

 『この宿屋に傷ついた男と女が運ばれてきた。』
その話を聞いていたクリスたちは、急いでフーリアの村の宿屋へと向かった。クリスは早速宿屋の主人に傷ついた男と女がいる部屋を尋ねた。すると宿屋の主人が心配そうな表情で答えた。
「さっきからあの話題で持ちきりだな…先ほど運ばれてきたばかりで、かなり傷を負っている状態だ。とにかく今は治療室で手当てを受けているところだ。ところで…あんたたち泊まるなら一人10Gだ。」
クリスは三人の宿代を支払うと、主人がクリスたちが泊まる部屋へと案内する。クリスの部屋は二階で、治療室からはさほど離れてはいなかった。部屋に案内されたときには夜になっていた。
 「ふああ…私疲れたからもう寝るわ…。おやすみ……。」
カレニアはベッドに寝転がって眠りにつこうとしたとき、リリシアがカレニアを起こした。
「ちょっと待った!あの傷ついた男と女の正体を知りたくない?私、いい作戦を思いついたんだ…。」
リリシアの言葉に、クリスたちは興味津々な様子であった。その様子を見たリリシアが、クリスたちを集めて小さな声で作戦を話し始めた。
「みんなよく聞いててね…。私が考えた作戦を教えるわ。とにかく治療室に行かない限り傷ついた男と女の正体は暴けないわ。この作戦でどう?
リリシアの作戦を聞いたクリスたちは、早速行動を開始した。三人は音を立てずに治療室に忍び込むことに成功した。
 「ちょうどいいわね。治療室が誰もいないわ。さてと…この村で話題の傷ついた男と女をさがしましょう…。」
クリスたちは恐る恐る治療室の探索を始めた。しばらく探索を続けていると、ベッドに横たわって眠っている男と女の姿がそこにあった。クリスたちが恐る恐るその姿を覗いてみると、なんとディオンとフィリスであった。
「みんな、傷ついた男と女の正体は、ディオンとフィリス様よ……。無事でよかったわ。」
クリスがそう言った後、ディオンの体を揺さぶる。
 「ぐぐぐ…誰だ私を起こすのは…んっ!?この顔は…ひょっとしてクリスではないかっ!クリスたちも無事だったか…。私とフィリス様は流された後、フェルスティア七大魔王の一人であるデモリックという奴が魔物を生み出している塔に囚われていたのだ。奴はフィリス様の魔力を吸い取り、動力源にして魔物を生み出していたという許しがたい奴だ。私は怒りの一撃でデモリックに深手を負わせたのだが……後一歩のところで逃げられてしまったのだ。私は傷ついたフィリス様を背負いながらこの塔を脱出したのだ。」
ディオンはクリスの顔を見た瞬間、ディオンの顔に笑顔が戻ってきた。
「ディオン、それよりフィリス様は無事なの…。」
リリシアがフィリスの無事を心配すると、ディオンは不安な表情で答える。
「言いにくい話だが…フィリス様は自分の魔力の限界を超えるほどの魔力を失っていつ目覚めるか分からない危険な状態だ…。はやく魔力を回復させないとフィリス様の命にもかかわってくる。明日宿の前で集合しよう。とりあえずフィリス様を助ける方法を見つけ出すんだ…。クリスたちよ、今は明日に備えて早く寝るんだ。」
ディオンがそう言った後、クリスは真剣な眼差しでディオンを見つめる。
 「わかりました…。とりあえず明日、この宿の前に集合ですね…。フィリス様は私たちの大切な仲間だもんね。だから……フィリス様は絶対に死なせないわ。ディオン、明日また会いましょう。」
クリスがそう言った後、三人は自分の部屋に戻り、今日一日の疲れを癒すのであった。

 次の日の朝、クリスたちは宿の前に来たとき、一足先にディオンが旅の支度を済ませていた。
「遅いじゃないかクリスたちよ。私は朝早くから私宅を済ませて、ここで一時間ほど待っていたのだぞ。まずはこの村で魔力を回復させる道具を知っている人を探し、聞き込みをしよう。情報が無ければ旅は出来ないのだからな…。」
ディオンが再びクリスたちの仲間に加わった。クリスたちは村人から魔力を回復させる道具のことを知っているかを尋ね始めた。村人のほかに…道具屋の主人…教会のシスター、神父にも尋ねた。その結果、この村の教会の神父からは重要な手がかりを見つけることが出来た。
 「『魔力を回復させる道具』ねぇ……。それならこのフーリアの村から東のほうにあるボルディアポリスという大きな町のどこかに魔法の店があったという話を私の友人から聞いたのだが、この大きな町のどこかだから、見つけるのはかなり疲れるよ…。」
神父の言葉に、ディオンが何かを掴んだような表情でクリスたちに言った。
「ボルディアポリスのどこかにある魔法の店か……そこに行けば魔力を回復する道具が見つかるかも知れない!!みんな、ボルディアポリスへと急ごう!
フィリスの魔力を回復させる道具がボルディアポリスだと分かったクリスたちは、早速フーリアの村からセルディア大陸の大都市であるボルディアポリスへと向かうのであった…。

 時を同じくして魔界の都市であるルーズ・ケープの王宮内にある皇帝の間では、魔界の王であるメディスが怒りの表情を浮かべていた。
「うぐぐ……!!なんということじゃ!七大魔王の一人であるリヴェリアスが倒されてしまうとは……一体誰の仕業なのじゃ!?
メディスが怒りの表情を浮かべながらそう呟いた後、目の前に六枚三対の白き翼と黒き翼を持つ魔族が現れた。メディスはどうやらこの魔族の男を見て、何かを思い出した。
 「おぬしはエルーシュではないか…。今まで何処をさまよっていたのだ。魔王たるものが人々に恐怖と苦しみを与えなくてどうするのだ……?
メディスがエルーシュにそう言うと、エルーシュは笑いを浮かべながら答えた。
「フフフ…大丈夫ですよメディス様、私の計画は着々と進行しておる。富の国と呼ばれるファルゼーレ大陸一帯を占領した。どうやらこの大陸には強大な闇のエネルギーが封じられているというのでな…。」
エルーシュの言葉に、メディスはあることを思い出した。
 「むむっ…!?確かアンダーグラウンドとやらに興味を持ってしまったようだな。あそこは地獄の世界とつながっているようだ。穴の底には何があるかは私にも分からぬ。命が惜しければやめておくことだ…。」
メディスがエルーシュを諭したが、エルーシュはすでに決意を固めていた。
「メディス様…俺はすでに計画を執行する覚悟は出来ている。ファルゼーレ大陸にあるエーゼルポリスの王城内にある封印されし部屋にある大穴こそがアンダーグラウンドへの入り口だ。俺はすでに封印を壊し、ファルゼーレ大陸を闇で覆い尽くしてやった。アンダーグラウンドの闇の力を使えば、フェルスティア全体を闇で覆い尽くすことも可能だ……。メディス様、いい作戦だとは思わないか…?
エルーシュがそう言った後、メディスが薄ら笑いを浮かべていた。
 「クックック…でかしたぞエルーシュよ。七大魔王の中で聖と魔を併せ持つ最強の存在と呼ばれるだけはあるわい。お前の活躍次第で、このフェルスティアを魔族の世界に出来るかも知れぬな…。」
エルーシュが深く一礼をした後、エルーシュはテラスから大空へと飛び立っていった。エルーシュが去った後、メディスは魔界の強き者を玉座の間へと集めると、全員にそう言う。
「お前たちを集めたのは他ではない…リリシアのことだ。突然な話でわるいが、七大魔王の一人であるリヴェリアスが倒された。これによりリリシアの首に掛けられた賞金を大幅に上げることにする。6万DG(デモンゴールド)から20万DGにする!!
その声に、魔界の強き者たちが武器を片手に大声で叫んだ。
「うおおおおおおおおおっ!!
「俺の武器があいつの首を狩れと仰っているようだ!!
魔界の強き者たちが猛々しく怒気の上がった声で叫ぶ中、大きなブーメランを持った男が玉座の間へと現れた。
「んっ…なんだお前は!リリシアの首を狩るのは俺だっ!邪魔をするなっ!
「そうだそうだ!!俺はあいつの首を狩って手に入れた賞金でノーパンちゃぶちゃぶに行きたいんだよっ!!
魔界の強き者の一人がふざけた表情でそう言うと、隣にいた魔族の男に頭を殴られ、胸座をつかまれた。
「バカヤローーーーッ!!何がノーパンちゃぶちゃぶだっ!お前はそんなことのためにリリシアの首を狩るつもりだったのかっ!?
魔界の強き者同士が喧嘩を始めたそのとき、大きなブーメランを持った男がブーメランを構え始めた。
 「うるさい……お前たちは奴の首を狩る資格などない…ふんッ!!
両手から放たれたブーメランが、大きな弧を描いた。ブーメランが男の手に帰ってきたそのとき、喧嘩をしていた魔界の強き者の首が切り落とされた。その惨劇に、魔族の強き者が次々と後ろへと離れていく。
「こ…こいつ、強いじゃねぇか…。お前にならリリシアの首を狩れるかもしれない!!
「とてつもなく鋭利なブーメランを持っておるな。私の武器とは大違いだ…。」
ブーメランの男を蔑ろにしていた魔族の強き者たちが、次々と彼をたたえ始めた。それを見ていたメディスは、目を光らせてブーメランの男を見つめていた。
 「おぬしのその強さ…気に入ったぞ。名はなんと言うのだ…?
メディスがそう言うと、ブーメランを持った男が静かに自分の名前を話し始めた。
「私の名はブーメラン使いのスピナ・レイドとでも呼んでもらおう。愛称はスピナでいいぜ。メディス様、この私のブーメランを持つ手がリリシアとか言う奴の首を狩りたくて疼きやがる…。」
スピナがそう言った後、メディスが王宮内にいる魔界の強き者たちを解散させた後、魔界王の側近であるヘモアに魔界の強き者の遺体の処理をするように命じた。
「ヘモアよ…この部屋に転がっている二体の遺体を地下にある魔物製造炉の中に放り込むのじゃ!!
ヘモアが一礼した後、数人の部下とともに遺体を魔物製造炉へと運んでいった。どうやらこのルーズ・ケープの王宮の地下にある設備は、死者を魔物製造炉の中に入れ、新たな魔物を練成する仕組みだ。
 「スピナよ、今リリシアたちはセルディア大陸の大都市、ボルディアポリスへと向かっているようだ。お前には数体の魔物とともにリリシアの首を討ち取って来るのだ。心配はいらん、一瞬で奴のいるセルディア大陸へと送ってやろう。空間呪文(ディメンションスキル)ディメンション・ゲート!
メディスは空間呪文を唱えた瞬間空間がゆがみ、スピナは大勢の魔物と共に地上界へとワープした。
「スピナよ、必ずリリシアの首を狩ってくるのだ。リリシアめ……お前の好き勝手にはさせんぞ。ふぅ…今日は怒りすぎて疲れた。もう寝るとしよう…。」
メディスは自分の寝室に戻り、スピナが無事にリリシアの首を持ってくることを祈りながら、眠りに着くのであった。

フィリスを助けるため、セルディア大陸の大都市であるボルディアポリスへと向かうクリスたち。
しかし新たな刺客であるブーメラン使いのスピナがセルディア大陸に来ていることは、クリスたちはまだ知らない…。

 

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