蘇生の章第二十話 それぞれの冒険

 

 クリスたちは明日に備え、セルディア大陸の東部の兵士のキャンプで一晩を過ごしている間、ディオンはフィリスと共に七大魔王の一人であるデモリックに連れ去られ、とある塔の中で拘束されていた。怒りが頂点に達し、身を縛る鎖を引きちぎったディオンはデモリックに深手を負わせたものの、後一歩で逃げられてしまった。ディオンは魔物製造装置の動力源とされていたフィリスを助けだし、彼女を背負って塔の出口へと向かっていた。
「デモリックの奴はここで魔物を生み出している話だが、フィリス様を動力源にするとは許しがたいことだ。フィリスが元気を取り戻したら、とりあえず私たちもデモリックを倒すために旅をしよう。旅をしていれば必ずや行方が分からないクリスたちと会えるだろう…。」
ディオンはフィリスを背負ったまま、塔の出口へと向かっていく。塔の出口へと向かう途中にデモリックがこの塔で練成した魔物が何度か襲ってきたが、ディオンの大剣で次々となぎ払っていく。魔物との戦いの間、フィリスを安全な場所に移動させ、戦いが終わると再び背負うことにより、フィリスを魔物の攻撃から守っていた。
 「もうすぐ出口だ。しかし動力源を失ったこの塔ではもう崩落が始まっているようだ。急いでこの塔から出なければ私たちの命も危ないからな…。」
ディオンはフィリスを背負ったまま、猛スピードで塔の中を駆け抜けていく。運がよかったことに、塔の出口へと続く道には魔物は一匹もいなかった。二人が塔の外に出た瞬間、二人が拘束されていた塔が大きな音を立てて崩壊した。

 傷ついたフィリスを背負いながら、ディオンは辺りを見回すと、そこには見知らぬ光景がそこにあった。そのとき、今まで気を失っていたフィリスが静かに口を開いた。
「ディオン……あなたが私を助けてくれたのね…はぁはぁ…。」
フィリスはデモリックの魔物製造装置によって多量の魔力を失っていたので、今すぐにでも休養が必要な状態であった。フィリスが無事であることを知った彼は、嬉しさのあまり涙がこみ上げてきた。
 「フィリス様…今は喋ってはいけない。今は近くの村を探して、休息を取るのが一番です。ウォルティアの王女であるフィリス様が無事でよかった……!!
ディオンはこみ上げる涙をぐっとこらえながら、困憊しきったフィリスを休ませるため、近くの村へと急ぐのであった。

 そして夜が明け、クリスたちは近くの村に到着するまで兵士の行軍の列に参加することになった。兵士たちは兵士のキャンプを離れ、近くにある村を目指していた。
「とりあえずお前たちをフーリアの村へと案内しよう。村に着いたら私たちはボルディアの南の砂漠へと向かう。とりあえずありったけの食料と水は確保してあるので大丈夫だ。私たちは今度こそデモリックを討ち、このセルディア大陸に平和を取り戻すために……。」
兵士の一人がそう言うと、リリシアがそっと口を開いた。元七大魔王の彼女なら、デモリックについて何か知っているに違いないだろう。
 「デモリックは確かフェルスティア七大魔王の一人だって聞いたわ。奴はおじいさんのような風貌だけど、侮ってはいけないわ。その姿とは似合わない魔力を持っているわ。デモリックと戦うなら、できるだけ魔法の詠唱の時を狙ったほうが良いわ。」
リリシアのアドバイスに、兵士たちが静かに頷いた。
「そこのエルフの娘さんよ、いい情報をありがとう。そろそろフーリアの村だ。」
クリスたちはそれぞれ兵士たちと話し合いながらフーリアの村へと歩いていた。しかし目の前に大きな剣と手裏剣を持った魔物が現れた。クリスたちが身構える前に、兵士たちが先に前に出た。
 「前方にベルセルク2号とシノビ2号を確認!デモリックの奴め、こんな魔物まで生み出していたとはな…。こいつは以前戦った奴と同じのようだが、侮ってはいかんぞ!!皆の者、かかれっ!
兵士たちが剣を持ち、ベルセルク2号とシノビ2号へと立ち向かっていく。クリスたちが魔物のほうへと向かったときにはすでに倒されていた。兵士たちの見事な連携プレーが出来るのは、キャンプでの厳しい訓練の成果であった。
「すごい…。あの二人をたった数秒で倒してしまうなんて。厳しい訓練の成果ですわね。とりあえず先をっ…!?
カレニアが先を進もうとしたとき、再び魔物が目の前に現れた。どうやらデモリックの練成した魔物ではなく、この地に住む原生モンスターのロックレイヴンであった。
 「こいつは…!!凶暴な原生野鳥、ロックレイヴンだ!鋭い爪と炎を武器とする魔物だ。皆の者、迎え撃つぞ!
兵士たちが一斉にロックレイヴンに立ち向かっていくが、巨大な翼から繰り出される羽ばたきによって吹き飛ばされてしまった。その様子を見たクリスたちは、兵士たちに代わって前に出た。
「ここは私たちが行きます!みんな、あの怪鳥を倒すわよっ!
クリスたちは武器を持ち、一斉にロックレイヴンに攻撃を仕掛ける。力自慢のディオンと聖なる力と強大な魔力を持つフィリスを欠いたクリスたちであったが、知らぬ間に二人がいなくても強敵に立ち向かえる強さを身に付けていた。
 「クリス、ここは私が術で攻撃するわ!!私たちの武器だとあまりダメージを与えられないわ。みんな、あの怪鳥から離れてっ!!
リリシアがクリスたちにそう言うと、クリスたちは一斉にロックレイヴンから離れた。クリスたちが離れたのを確認すると、リリシアが精神を集中させ、術を放つ態勢に入る。
「沸き起これ…私の闇の力よ!!喰らいなさいっ!ブラックペインッ!
リリシアが闇のエネルギーを凝縮させた波動をロックレイヴンに放った。闇の波動から発せられる重力により、ロックレイヴンは一瞬動きが落ち、地面へと落下を始める。動きが落ちたロックレイヴンの体に、リリシアの放った闇の波動が体を貫いた。
 「キシャアアアアアアッ!!!!
体を貫かれたロックレイヴンは、大きな叫び声を上げて地面へと落下し、動かなくなった。
「おお!!私たちでも敵わなかったロックレイヴンをたった三人で倒したとはなかなか力のあるやつだな…。さぁ先を進もう。そこでひとまず休憩だ。」
兵士たちがクリスたちに歓喜の言葉をおくった後、クリスたちは兵士と共にフーリアの村へと行軍を開始した。

 魔物の襲撃を乗り越え、クリスたちはついにフーリアの村にたどり着いた。クリスたちはキャンプで出会った兵士たちと別れを告げ、村の散策を開始した。
「ねぇカレニア…、ここなら武器を強化できるところがあるかもしれないわ。クリス、私はカレニアと一緒に散策するわ。」
「じゃあ私は武器と防具を扱う店に行き、装備品を見てみるわ。気に入ったものがあれば買うわ。あなたたちも用が済んだらここに来てね。」
リリシアは少し頷いた後、カレニアを誘って村の散策を始める。クリスは自分の装備品を買うため、武器と防具を扱う店へと急いでいった。
 「いらっしゃい。何にするね…。」
武器防具の店にやってきたクリスは、自分にあった鎧を探していた。しばらく辺りを見回していると、そこにはリリシアとカレニアの姿がそこにあった。
「あれ…。リリシアとカレニアじゃない。どうしてここに…?
クリスが偶然居合わせたカレニアにそう言うと、カレニアは笑顔で答えた。
「村の人に武器を強化できる所を訪ねてみたところ、偶然クリスと同じところだったの。今店の人に私のライトフルーレを強化してもらっているところよ。あと少ししたら強化が終わる頃よ、クリスの装備している青銅のシミターも強化してもらったら?
カレニアがそう言った瞬間、武器防具屋の主人がなにやら武器を持ってきた。どうやらカレニアの武器の強化が終わったようだ。
 「ほらよっ!カレニアさん、こいつがウェアバスターだ。こいつは獣や獣人に大きなダメージを与えられる代物だ。こいつにはまだまだ強化できる可能性があるんだから、売らずにとっておいてくれ…。」
カレニアはウェアバスターを受け取ると、武器防具屋の主人に嬉しそうな表情を見せた。クリスは自分の装備品である青銅のシミターを武器防具屋の主人に差し出すと、主人がクリスにそう言った。
「君の持っているのは青銅のシミターのようだな。こいつは鍛えられそうだ。どうだ、そいつを俺に預けてみないか…。すぐに出来上がるからさ。」
武器防具屋の主人がそう言うと、クリスは首を縦に振り、こう答えた。
「わかったわ。強化をお願いするわ。強化している間、私にあった鎧を見ることにするわ。」
クリスがそう言った後、自分にあった鎧を探すことにした。魔法の法衣が気にいったカレニアに対し、クリスはそこにあった女騎士の鎧を見つめていた。
 「ねぇカレニア…あれ欲しいんだけど、いくらするかなぁ…。」
クリスが鎧を見つめながらカレニアにそう言うと、カレニアが武器防具屋の主人に女騎士の鎧の値段を尋ねた。主人の話によると、この鎧は5000Gもする高価な物であった。
「その鎧は5000Gするけど、クリスが気に入ったって言うのならいいわ。お金なら心配しないで。さっき倒した怪鳥の爪と嘴と翼を売ればクリスが欲しかったあの鎧は買えるわ。それでいいかな?
カレニアは先ほど倒したロックレイヴンの翼と嘴、そして爪を武器防具屋の主人に手渡し、5000Gあまりのお金を受け取った。カレニアがクリスに鎧の代金を手渡すと、クリスは鎧を武器防具屋の店主に差し出し、お金を渡した。
 「おっ、そいつを買うのかい?その鎧は聖なる鉄で作られた女騎士のために作られた高価な鎧だよ…。5000Gになるけど、それでいいのかい?
主人の言葉に、クリスはOKのサインを送り、欲しかった女騎士の鎧を受け取った。クリスはその鎧を早速装備すると、カレニアとリリシアにその姿を披露した。
「見て…。かっこいいでしょう。この鎧が買えたのはカレニアのおかげよ。どうもありがとう。」
クリスの言葉に、そばにいたリリシアとカレニアはすこし笑顔を浮かべた。
「クリス、とってもかっこいいわよ。リリシアもそう思っているわ。」
「今のクリスは輝いていますわ。あっ!店主が武器を持ってきたわ。」
リリシアの言葉を聞いたクリスは、すぐさま武器を受け取るため、主人のところへと向かった。すると、武器防具屋の主人が主人が強化されたシミターを持ってきた。
 「ほらよっ、クリスさん、こいつが銀のシミターだ。こいつは攻撃力が高く、悪魔やゾンビ系に大きなダメージを与えられる代物だぜ。こいつもまだまだ鍛えがいがあるから、売らずにとっておいてくれ。」
クリスはパワーアップした武器、シルバーシミターを受け取ると、武器防具屋の主人に感謝の眼差しをおくった。
「みんな、そろそろ店を出るよ。主人さん、今日はどうもありがとうございました…。」
クリスたちは店の主人にすこし挨拶をして、武器防具屋を後にした。

 装備を整えたクリスたちは、一日の疲れを癒すため、宿屋へと向かっていた。その道中、村の人々があることを話していた。
「さっきここに傷ついた男と女が運ばれてきたらしいね…。」
「今この村の宿屋でにいるけど、男のほうは傷だらけだったわ。女のほうは魔力をかなり失っていてぐったりしていたわ。」
村の言葉を聞いていたリリシアが、何かに気付いたのかクリスたちにそう言った。
 「もしかすると…ディオンとフィリスのことかも知れないわ!!とにかく宿屋へ行ってみましょう!
リリシアはクリスたちを引っ張り、急いで宿屋へと向かうのであった。

ロックレイヴンを倒し、クリスたちはフーリアの村にたどりついた。
傷ついた男と女の正体は、果たしてディオンとフィリスなのか!?

 

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