蘇生の章第十九話 引き裂かれた仲間
リヴェリアスが死ぬ間際に放った大海嘯に流されたクリスたちは運よく見知らぬ土地の兵士に助けられた。クリスたちは流されて行方が分からなくなったディオンとフィリスの無事を案じつつ三人はテントの外に出た。すると先ほどクリスたちを助けてくれた兵士がそこにいた。
「うむ。約束どおり来てくれたか。それでは君たちの仕事を説明する…。」
その言葉に、カレニアとリリシアは何が起こったのか分からず、動揺していた。
「えっ!?私たちが仕事ですって…!」
「とりあえず何をすればいいんでしょうか…。私に出来ることがあれば…。」
二人の言葉に、兵士がクリスたちに仕事の説明を始めた。
「とりあえずお前たちには雑用をしてもらおう。とりあえず、お前に話したが、他の二人は眠っていたようだから、もう一度言おう。お前の連れの眼鏡をかけた娘は掃除係、そして紫の髪のエルフは店番。そして最後にお前は兵士の食器を洗う係だ。兵士の訓練が終わるまでが仕事だ。」
兵士の言葉を聞いていたクリスたちは、仕方なく了承した。
「分かりました。私たちはあなたに助けてもらったからね…。」
クリスがそう言った後、兵士がクリスたちを見つめながら答える。
「説明はこれで終わりだ。では私がお前たちをそれぞれの持ち場へと案内しよう。まずはお前が先だ。眼鏡の娘と紫髪のエルフはそこで待っていてくれ。」
兵士は先にクリスを呼び出し、彼女の仕事場であるキッチンへと案内した。するとそこにはおびただしいほどの汚れた皿が散乱していた。
「これはすごい量ですね……。皿洗いは何度も手伝いでやったことがあるので私の力で何とか出来そうです。」
クリスが自信満々にそう言うと、黙々と兵士の皿を洗い始めた…。
クリスが持ち場についた後、カレニアとリリシアの前に先ほどの兵士が現れた。
「次は紫の髪のエルフの娘だ。お前には店番をしてもらおう。」
兵士がそう言って兵士たちのキャンプの一角にある武器や道具を取り揃える店にリリシアを案内させた後、彼女にそう言った。
「とりあえずそこに立っていれば客は必ず来るはずだ。給料のほうはちゃんと歩合で払うから、しっかりと働くんだぜ…。じゃあ俺は眼鏡の娘の仕事場に案内しなきゃならないから、じゃあまかせたよ。」
兵士がそう言って店の外に出ようとしたとき、リリシアが呼び止めた。
「すみません…。私、店番初めてなのです。なのでやり方を教えていただけませんか…?」
リリシアの言葉に、兵士が苦笑いしながらこう答える。
「仕方ない、店番の仕方を俺が教えてやる……。」
兵士がそう言った後、リリシアに店番の仕方を教え始めた。兵士は金額の計算や商品管理などの方法を次々とリリシアの頭の中に叩き込ませた。
店番のやり方をリリシアに教えた後の兵士は、なぜか疲れている表情であった。
「これで一通り分かりましたわ…。ではがんばりますわ!!」
リリシアがカウンターの前に立った後、兵士が心の中でそう思った。
(ええい…教える俺のほうが疲れた……。とりあえず眼鏡の娘のところに戻らねば…。)
そう思いながら、兵士は店を去っていった。兵士の心の中では、彼女がちゃんと店番をしてくれるかどうか心配でたまらないという思いでいっぱいであった。
数分後、カレニアの元に箒と塵取りを持った兵士が戻ってきた。
「遅れてすまなかったな…。お前にはこの掃除道具を使ってキャンプ内に落ちているごみを取ってもらおう。ここのところ兵士がごみを散らかすものでな、掃除が大変なのだ…。」
兵士がカレニアに掃除道具を渡すと、カレニアは笑顔で答えた。
「さすがに大変でも助けられた恩は返さなくてはいけないわ…。私にお任せください。」
カレニアはそう言うと、掃除道具を手に掃除を始めた。
――雑用を終えた時、すでに夜になり、訓練を終えた兵士たちが戻ってきた。兵士たちは三人をテントに集め、全員にそう言った。
「みんな、雑用ご苦労であった。お前たちに話しておこう。今日で兵士たちの訓練は終わりだ…。これから私たちはこのキャンプを離れ、このセルディア大陸の中心に位置する大きな国、ボルディアポリスの南にある砂漠を越え、デモリックの根城としているアドリアシティへと向かう。奴は魔物を生み出し、平和を脅かしているのだ。だから私はここで力をつけ、倒さなければならんのだ。そんな話はさておき、君たちに雑用をしてくれたお礼だ。受け取ってくれ…。」
兵士の話が終わり、兵士はクリスたちにお礼として1000Gずつもらった。リリシアは店番の歩合があるので、さらに500Gを手に入れた。
「ありがとうございます。これで私たちの旅が再開できるわ。私たちは流されてしまった二人の仲間を探しているのですのですが、まだこの大陸について何も知らないので、右も左も分からなくて…。」
クリスは困惑した表情でそう言うと、兵士が答えた。
「そうか…お前たちはどこかから流れ着いたという訳か。そこで手を挙げて提案しよう!!とりあえず私たちと一緒についていこうか?とりあえずこのキャンプの近くの村まで案内しよう。それでよいか…。」
兵士の出した提案に、クリスたちは了承のサインを送った。
「分かりました。では私たちは明日に備えて寝ますわ。ではまた明日お会いしましょう…。」
クリスたちはそう言った後、すぐさまベッドに入った。三人はディオンとフィリスの無事を思いながら、目を閉じて眠りにつくのであった……。
クリスたちが眠りについた後、どこかの塔の中では、なにやら博士のような人物が一人の女に何かの装置を取り付けていた。
「フフフ…この女の魔力、すさまじいほどだな。この力があれば大量の魔物を生み出し、ボルディアポリスへと侵攻できる。言うなればこの女の魔力こそが、この魔物製造装置の動力源なのだ!!」
博士のような男がそう言うと、装置につながれた女はかすれそうな声で答える。彼女は魔力を吸い取られ、衰弱しているのが見受けられる。
「黙り…なさい…。高貴なるこの私が……屈するわけにはいきませんわよ…。」
装置につながれた女がそう言うと、博士のような男が女に顔を近づけ、舌を女の頬に擦り付ける。彼女は頬を這い回る舌から逃げようと、体をじたばたさせていた。
「貴様…エルフィリスか……。15年前にウォルティアを襲撃した際、お前はまだ無力な少女だったな。でも今は違うようだな。聖なる力と魔力を身につけ、ウォルティアの王女となり、姫将軍といわれるまでに成長したものだ…。」
博士のような男がそう言うと、フィリスは怒りの表情で答える。
「貴様は…フェルスティア七大魔王の一人デモリック!よく覚えていたものですわね…。あの頃の私は無力な少女だったが、今は違う!ウォルティアの王女である私をあまり甘く見ないで欲しいわっ!」
フィリスは手をデモリックに向けると、光の弾を放った。しかし魔力を吸い取られているので、思うように力が出なかった。
「フハハハッ!!魔力を吸い取られていることを忘れたかっ!!今度は私の番だ……喰らえっ!ファントム・ナックル!!」
デモリックは拳に闇の力を込め、力任せにフィリスを殴りつけた。強烈な拳の一撃を受けたフィリスは、気を失ってしまった。
「フン…これが私の力だ。そこの男よ、私に立ち向かうとこうなるのだよ…。」
鎖につながれた男は、フィリスをいたぶる様子に見かねたのか、体中に力を込め、鎖を引きちぎった。
「貴様…よくもフィリス様をっ!!許さん…許さんぞおっ!」
鎖につながれていた男はクリスたちと離れ離れになったディオンであった。ディオンは体を拘束する鎖を引きちぎると、すぐさま大剣を手にデモリックに向かっていく。
「貴様、鎖を引きちぎるほどの力があるとは思わなかった…。よほどフィリスを助けたいようだな。その前に、私を倒せたらのことだけどな…。」
デモリックが薄ら笑いを浮かべながらディオンを睨み付ける。しかし怒りの表情のディオンには挑発の言葉など一切耳に入らなかった。
「うおおおおおおっ!!覚悟しろデモリック!喰らえ、ウインド・ラップ!!」
ディオンは大剣を持つ手から右手を離し、デモリックに風の術を放った。するとデモリックの体が竜巻の渦の中に閉じ込められた。
「わ…わしの体が動かぬ!これはどういうことだっ!」
「お前は風の渦の中に閉じ込められているのだからなっ!喰らえ、ゼノ・スラッシュ!!」
ディオンは大剣を振り上げると、一気に風の渦に閉じ込められているデモリックに斬りつけた。大剣の重さと遠心力が込められ、デモリックは大ダメージを受けた。
「ぐ…ぐおおおっ!!このわしがこのような深手を負ってしまうとは予想外だ…。ここは一旦撤退するとするか…。」
大剣の一撃を受けたデモリックは空間を捻じ曲げ、逃げる態勢に入る。しかしディオンは再び大剣を握り締め、逃げようとするデモリックに向かっていく。
「貴様、逃がさんぞっ!」
ディオンがデモリックの近くまで来たとき、デモリックの姿は無かった。しかしデモリックは逃げる際、魔物を差し向けてきたのだ。
「フハハハ。ここは一旦引くぞ。ここは私の生み出した魔物と戦ってもらおう…。出でよ、わしが練成した魔物…ベルセルク一号、ダイナソー一号よ!この男を倒せっ!」
デモリックはそう言葉を残すと、異次元へと消えていった。ディオンはデモリックが差し向けたベルセルク一号とダイナソー一号を大剣で容易く薙ぎ払い、フィリスの救助にかかる。
「フィリス様よ、今助けてやるぞ。あなたを助けた後、この忌まわしき装置を破壊する!」
ディオンはフィリスに取り付けられた装置をはずし、フィリスを離れた場所に移動させた後、魔物製造装置を破壊すべく、大剣を振り上げた。
「うおおおおっ!!ゼノ・ブレイドッ!!」
ディオンは渾身の力を込め大剣を振り下ろし、魔物製造装置に強烈な一撃を叩き込む。力任せの大剣の連撃で、魔物製造装置は完全に壊れた。
「フィリス様、早くこの塔を出ましょう。そしてクリスたちを探しましょう!!離れ離れになっていてもクリスたちはきっと生きている!」
ディオンは倒れたフィリスを背負い、すぐさま塔から出るため、行動を開始したのであった。
流されてしまったクリスたちは、未知なる大陸、セルディア大陸に流れ着いた。
離れ離れになったクリスたちは、再び仲間と出会うことが出来るのか!?