蘇生の章第十八話 リヴェリアスvsリリシアA

 

 「あなただけは…この鉄の扇で倒すっ!!
ソウルキューブの力により、海竜へと変貌を遂げたリヴェリアスの長い尾に締め付けられ、電撃を浴びせられて絶望的な状況に追い込まれた魔姫は、死んでしまった何よりの友であるリュミーネの言葉で、再び戦いの場に復活した。
「何っ……!?これほどの攻撃を受けてなお立ち上がれるとはな…。だが、何度立ち向かっても同じだということをお前の体で思い知らせてくれるわっ!!
リヴェリアスは長い尾をリリシアに巻きつけようとした。しかしリリシアは軽やかな動きで長い尾をかわし、魔姫の愛用する髪飾りでもあり唯一の武器である鉄扇を手に、リヴェリアスに立ち向かっていく。
「フフフッ…この尻尾、何かと邪魔ね。こいつで斬り落として差し上げますわ…。」
リリシアは鉄扇を手に、リヴェリアスの後ろへと回り込む。後ろへと回り込んだリリシアは、リヴェリアスの長い尾を力を込めて切り裂いた。
 「があああああっ!!おのれ…よくも私の尻尾を……!!貴様、絶対に許ぬぞおっ!!
尻尾を切られたリヴェリアスは、リリシアを睨みつけて怒りの表情を見せる。しかしリリシアはあざ笑うかのようにリヴェリアスへと向かっていく。
「もう終わりかしら……。あなたの弱点は頭の角だったよね…だったら容赦なく行かせてもらうわっ!
リリシアはリヴェリアスの頭部にある角を握り、魔力を込めてへし折ろうとしたとき、リヴェリアスは長い体を起こし、リリシアに大きな口を開け、電撃を放つ態勢に入る。
「小娘がっ…そうはさせんぞっ!!喰らえっ、エレクトロン・ブラスター!!
リヴェリアスの体内で作られる電気エネルギーを、リリシアに向けて一気に放たれた。一瞬直撃したかのように見えたが、リリシアは電撃が直撃する前に魔力の結界で防御した。
 「マジックバリアよ。使用者の魔力が強ければ強いほど強度が上がる術よ。魔王…いや魔姫たる私の魔力を持ってすれば、この程度の魔力ならかき消してしまいますわ…。」
リヴェリアスの電撃を防いだリリシアは、リヴェリアスの東部にある左の角に手をかけ、腕に魔力を込めて一気にへし折った。
 「ぐあああああああっ!!私の角がああっ!!
――ボキッ!!嫌な音がして、リヴェリアスの左側の角がへし折られた。頭が割れるほどの激痛がリヴェリアスを襲った。リリシアはもう一つの角を握り、暴れるリヴェリアスが静まる隙を狙っていた。
「今は奴の速さが静まるのを待つしか無いわね。今は角にしがみ付くだけで精一杯よ…。」
今手を離せば、振り払われてリヴェリアスに攻撃する隙がなくなってしまう。リリシアはただリヴェリアスの角に掴まっていた。荒れ狂うリヴェリアスが静まるまで、彼女はただ耐えるしかなかった。

 そしてしばらく耐え抜いた後、リヴェリアスは疲れ果てて動きが鈍っていた。
「無理も無いわね。それほど暴れれば誰だって疲れるわね。残念だけど、最後の一本の角を折らせていただきますわよっ!!
疲れ果てたリヴェリアスには、もはや抵抗する力も無かった。リリシアは再び腕に魔力を込め、最後の角をへし折った。
「グギャアアアアアアアアッ!!
――ボキッ!!再び嫌な音がして、リヴェリアスの角がへし折られた。両方の角を折られたリヴェリアスは、大きな呻き声とともに倒れた瞬間、彼の体内に取り込まれていたソウルキューブがリリシアの目の前に現れた。
 「これが……リュミーネの魂が封じられているソウルキューブなのね。お待たせ…リュミーネ…。やっとリヴェリアスから取り返したわ!!
リリシアはソウルキューブを手に、クリスたちの元へと戻ろうとしたそのとき、死んだと思われたリヴェリアスが再び立ち上がり、リリシアに牙を向けた。
「このままでは済まさんぞっ!!我が命をかけた大海嘯で全てを海の藻屑にしてやるっ!!
ただならぬリヴェリアスの様子を察知したリリシアは、スピードを上げてクリスたちの所に戻ってきた。
 「リリシアよ、無事でよかった…。私のせいで危険な目に晒してしまった。許してくれ…。」
ディオンがリリシアの無事を喜んでいたが、今はそんな余裕ではなかった。
「無事を喜ぶのは後よ!はやくここから逃げましょう!!
リリシアがクリスたちに海神の神殿から逃げるようにそう言うと、クリスたちは一斉に神殿の外へと向かおうとしたその時、地底湖からリヴェリアスが現れた。
「リリシアめ…生かしては帰さんぞおおっ!!わが命をかけた大海嘯で全てを海の藻屑にしてやるのだっ!貴様らが神殿の外に出ても同じだ…。この地底湖は海に続いているのだからな!!
リヴェリアスがそう言っている間に、クリスたちは神殿の外へと向かっていた。

 神殿の外に来たクリスたちに、再びリヴェリアスが現れた。
「しつこいわね…。あなたはもうリリシアに負けたのよ。おとなしく退散しなさいっ!!
カレニアがリヴェリアスにそう言った後、リヴェリアスは大きな波を呼び寄せ、クリスたちにぶつけようとしていた。
「悪いが…お前たちの命はここまでのようだな…喰らえ、大海嘯(タイダル・ウェイブ)!!
リヴェリアスは大きな波をおこし、クリスたちを襲った。大海嘯によって、クリスたちは海へと流されてしまった。
「ふははっ!リリシアよ…大海原で死ぬがよいっ!!
リヴェリアスが不気味な笑みを浮かべながらそう言った後、何者かが現れ、リヴェリアスにそう言う。
「死ぬのは……お前のほうだ…!!
物陰から現れたのは黒い翼が三枚、白い翼が三枚の人の姿をした魔族の男であった。その男は空中に浮かび、リヴェリアスを睥睨する。
 「貴様はっ!!七大魔王エルーシュ!何をしにきたのだ。リリシアなら私が葬ってやったぞ…!!
リヴェリアスがエルーシュにそう言うと、エルーシュはリヴェリアスに冷たい表情で答える。
「愚かな……貴様は魔姫に完膚なきまでに倒されたのに、お前に倒せるわけが無かろう…。おまけにソウルキューブまで奪われるとは、お前は七大魔王として失格だ…ここで死んでもらう!!はあああっ!!
エルーシュはリヴェリアスに打撃の乱舞を繰り出した後、魔力を両腕に高めて両手を突き出す。するとリヴェリアスの体が宙に浮かび始めた。
 「お前はもう逃げられんぞ…喰らいなさいっ!!ダークマター・デスホール!!
突如空間がゆがみ、大きなブラックホールが現れた。リリシアとの戦いで体力を使い果たしたリヴェリアスにはもはや逃げる力さえなかった。
「や…やめろエルーシュ!!やめ…!!
その言葉を最後に、リヴェリアスは暗闇に飲み込まれた。
「フフフ……魔姫よ、リヴェリアスと渡り合えるまで力を上げたようだな。私と戦う日がいつか来るであろう…。それまでその命大切にすることだな…ハッハッハッ……!!
エルーシュは高笑いとともに、翼を広げてどこかへ去っていった。

 リヴェリアスの放った大海嘯により、レミアポリスなど他の国が津波の被害を受けた。レミアポリスの都市部には被害はなかったものの、海辺の港町が打撃を受けた。
「アメリア様……各地で津波が発生しているという知らせを聞いた。早急に対策をお願いしてくれぬか?
一人の将軍が、レミアポリスの王宮の中にある皇帝の間に入ってきた。そう、その人こそディオンとフィリスとともにミアポリスを守るために戦ったレイオスたちの仲間のリーダーであるファルスであった。ファルスはその武功により、光迅将軍となったのだ。
 「わかった…ファルスよ。おぬしには津波の発生している国へと赴き、兵と共に救済活動をしてくるのだ。では行って参れ…。」
アメリアの命を受け、ファルスが皇帝の間を去ろうとした瞬間、何か思いついた表情でアメリアにそう言った。
「すまぬ……ディオンとフィリスがいないのですが、あの二人は何処に行ったのですか…?
ファるうすがフィリスとディオンのことについて尋ねると、アメリアが静かに口を開いた。
「ファルスよ、驚くかもしれんが聞いてくれ……。今あの二人はクリスたちと共にレイオスたちの魂が封じられている『ソウルキューブ』を探すために旅をしている。あとブレアの姉のカレニア、そして最後に人間と魔族のハーフであるリリシアと言う者だ…。」
リリシアの名を聞いた瞬間、ファルスは驚きのあまり開いた口が塞がらなかった。
 「な…なんだとっ!!魔導戦艦でリュミーネと戦っていたあの女かっ!?も…もうこの世界は…!!
ファルスがひどく落胆している中、アメリアがそっと手を差し伸べた。
「大丈夫だ。リリシアはリュミーネとの戦いで自分の過ちに気付き、成長したようだ。今はクリスたちと共に旅をしているので安心せい…。」
その言葉を聞いたファルスは、すこし心配した表情であった。かつての敵がクリスたちを旅をしているとなれば、いつ裏切ってもおかしくないと思っていた。
「万が一言っておくが、クリスたちを襲ったりしないだろうな…?
ファルスが不安な表情でそう言うと、アメリアが苦笑いしながら答える。
 「まだ分からぬか…リリシアは決してそんなことはしない!さぁ、救済活動に行ってくるのだ!!
ファルスはアメリアに一礼をした後、兵士と共に津波の被害が起きた国の救済活動に向かうのであった。

 リヴェリアスが死ぬ間際に起こした大海嘯の後、どこかの大陸では兵士のような出で立ちの人が海辺に集まっていた。
「海辺で誰かが倒れているぞっ!すぐさま助け出すぞ!
「二人の人間と一人のエルフのようです!全員女だ!まだ意識はあるようだ。はやく救護施設へ!
「さっさと我らのキャンプに運ぶぞっ!けが人は放っておけないのが俺たちのポリシーだからな!お前ら、気を失っているからといって変なことはするなよっ!
兵士のような人が海辺に流れ着いた三人をキャンプへと運んでいった……。

 しばらく気を失っていたクリスが目を開けた瞬間、そこには見たこともない風景がそこにあった。牢屋の前には見たこともない兜と鎧を着た兵士の姿がそこにあった。そしてクリスはあることに気付いた。
 「フィリスと……ディオンがいない!!
牢の中にいるのはカレニアとリリシアのみであった。しかし何処を見渡してもディオンとフィリスの姿は無かった。
「よう…気がついたか?海での訓練中にお前たちが流れ着いたので、救助しておいた。今からお前たちには我々のキャンプで雑用をしてもらおう。眼鏡をかけた女は掃除係、紫の髪のエルフは店番をしてもらおう…お前は兵士たちの食器を洗ってもらおう。みんなを起こした後、このテントの外で待っている。」
兵士はそういってテントを後にした。クリスたちは急いでカレニアとリリシアを叩き起こした。
「あれ…?私たちは海に流されたのですが、生きているのは不思議ね…。それより、ディオンとフィリスがいないのですが何処へ行ったのですか…?
「流されたけど生きているなんて不思議ね、しかしフィリスとディオンがいないのは気がかりだわ…。もしかすると私の持つソウルキューブが奇跡を起こしてくれたのかな…?
クリスによってたたき起こされた二人は、ディオンとフィリスがいないことを気にしていたが、クリスはそんな二人の手をとり、急いでテントを後にする。
 「用件は後で話すわっ!急いでテントから出ないと私たちを助けてくれた兵士に怒られちゃうわ!
カレニアとリリシアは何が起こったのか分からない表情だが、クリスは二人の手をひっぱり、テントの外に出るのであった…。

リヴェリアスの死ぬ間際に放った大海嘯により、クリスたちは流されてしまった。
兵士に助けられた三人に、雑用の魔の手が迫る!!

 

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