蘇生の章第十七話 リヴェリアスvsリリシア@
檻が壊され、解放されたクリスたちはリヴェリアスと対峙していた。彼は海神の神殿から盗んだ『海神の銛』を構え、クリスたちに襲い掛かってきた。
「リリシアめ…よくも魔王を裏切るようなマネをっ!!そのような行動をメディス様が許すとでも思っているのか!!」
怒りを露にしたリヴェリアスがリリシアにそう言うと、リリシアは冷たい言葉で吐き捨てた。
「あいにく…私は魔王に戻る気はありませんわよ。私はこのかけがえのない仲間たちと出会えたことが何よりも幸せですわ。魔界王のメディスが私のことを賞金首にしているって事は知ってるかしら…?」
リリシアが冷たい言葉でそう言うと、リヴェリアスが慌てた表情で答える。
「な…何だと!?お前が賞金首とは知らなかった。七大魔王を裏切った罪は相当重いからな。お前が賞金をかけられていることを知った今…標的はお前のみだっ!!」
リヴェリアスは海神の銛を手に、リリシアに襲い掛かってきた。リリシアは髪飾りを鉄扇に変え、戦闘体勢に入り、相手の攻撃を防御する。
「フフフ…七大魔王唯一の女性だが、その力は本物のようだな……。だが、この海神の銛の力を舐めないでいただこう!!」
リヴェリアスが海神の銛に魔力を込めると、海神の銛は大きく輝き始めた。
「リリシア!リヴェリアスから離れてっ!!今奴に近づくと危険よ!」
カレニアの言葉を聞いたりリシアは、すぐさまその場を離れる。リヴェリアスの持つ海神の銛の輝きがおさまった瞬間、銛はリヴェリアスの身長の倍以上あった。
「この海神の銛は、使い手の魔力により巨大化する。この力があればお前たちなど赤子の手をひねるようなものだ!!さぁ、そろそろ行くぞっ!」
リヴェリアスは銛を大きく振り回した瞬間、水の刃が発生し、クリスたちを襲った。しかし、咄嗟の判断でフィリスが結界を張ったおかげで、ダメージを最小限に抑えることが出来た。
「約束が違うじゃない!!標的は私だけだって言ったじゃない!!」
リヴェリアスの卑怯な攻撃に、リリシアは怒りの表情を浮かべる。そのリリシアの行動を見た瞬間、リヴェリアスが大きく高笑いを始めた。
「フハハハハッ!小うるさい外野が邪魔なのでな…私の銛の威力を見せ付けただけだ。何か問題でも…?」
リヴェリアスの反応に、リリシアが再び怒りの表情を見せ、リヴェリアスを威嚇する。
「問題ありすぎよっ!私の首だけじゃなく、仲間の首までも狙うつもり!?だったら私も本気で行かせてもらうわよ!!」
リリシアは鉄扇を手に、一気にリヴェリアスに立ち向かっていく。リヴェリアスは銛を盾にし、リリシアの攻撃をいとも簡単に防いでいく。
「ダメだわ。何度攻撃しても防がれてしまうわ。あの巨大な銛の前には手も足も出ないわ…。ここは間合いをとって隙をうかがうしかないわね…。」
リリシアはリヴェリアスから離れ、攻撃のチャンスをうかがっていた。その様子を見たリヴェリアスが、クリスたちに目を向け、銛を構える。
「どうしたリリシアよ…もう怖気づいたか。それならばこの仲間たちを遠慮なくいたぶれるぜっ!」
海神の銛がクリスたちの眼前に向けられた瞬間、間合いを取って攻撃のチャンスをうかがっていたリリシアが手に持った鉄扇でリヴェリアスの体を切り裂いた。彼女はリヴェリアスがクリスたちに攻撃する瞬間を狙っていたのだ。
「ぐおおおっ…!この俺が…小娘などにっ!!」
リヴェリアスは傷口を押さえ、蹲っているその隙を狙い、リリシアが次々にリヴェリアスの体を切り裂いていく。踊りながら鉄扇で相手を切り裂くその姿はまさに踊り娘のようであった。
「さっきの威勢はどうしたの…。まさかそれで終わりって言うことはないでしょうね……。この私の終焉の舞から逃げられるかしら!!」
リリシアは精神を集中させ、魔力によって舞い上がった鉄の羽を大きな鎌に変え、リヴェリアスを狙う。リヴェリアスにはもはや逃げる体力など残ってはいなかった。
「覚悟なさい!フェザー・クロス!!」
――ズシャッ!!大鎌となった羽が、リヴェリアスを切り裂いた。リリシアの一撃を受けたリヴェリアスは、海へと通じる地底湖に飛ばされ、沈んでいった。
「ぐあああああっ!この私が…この私がこんな小娘などに負けるとは……。しかしまだ負ける訳には行かない!!このソウルキューブの力を使い、更なる力を得てやる!!」
リヴェリアスは服に隠しておいたソウルキューブを取り出し、邪悪な念を込めた瞬間、リヴェリアスの体が脈打ち、その体を変貌させていく。
「な…何が起こったんだ!!私の体が熱い…!!」
――ドクン…ドクン……。リヴェリアスの体が熱くなり、彼は大きな海竜に姿を変えた。海竜と化したリヴェリアスは、スピードを上げて水面へと上がっていった。
一方リヴェリアスを倒したリリシアは、早速ソウルキューブを探すことにした。
「あれだけダメージを与えれば、リヴェリアスもたっていられないわね…。さぁソウルキューブをっ!?」
地底湖から突如現れた尻尾のようなものが、リリシアに絡みつき、そのまま地底湖へと引きずり込む。その異変に気がついたディオンは、大剣を構えてリリシアのもとへと向かっていく。
「リリシアよっ!!私が助けてやるからなっ!!」
「助けてっ!!助けてディオ……!」
ディオンがリリシアの元へ向かおうとした瞬間、リリシアの体は地底湖へと引きずり込まれていた。
「くそっ!!俺がもっと早く気がついていれば…!!リリシアはっ…!!」
ディオンは握りこぶしを地面に叩きつけ、リリシアを助けられなかったことを嘆いていた。
何者かによって地底湖へと引きずり込まれたリリシアの目に、大きな海竜の姿が映る。セラス島に行くときに見た海竜とは姿形が恐ろしいほど違っていた。
「フフフ……。お前をこの地底湖に引きずり込んだのはこの私だ。私が持つソウルキューブの力によって強力な力を得たのだ。大海嘯ひとつでエルザディア諸島を海の藻屑にすることも出来るのだ…。リリシアよ、貴様だけは今ここで消さねばならん……分かるか?」
リヴェリアスの大きな尻尾で身動きが取れないリリシアに、リヴェリアスの大きな首が迫る。
「そんなこと…絶対にさせない……!!」
リリシアは心の中でそう言うと、体を激しく動かして抜け出そうとする。しかし水の中では力が出ず、振りほどけなかった。
「水の中では力が出ないだろう…。海の中ならどれほどの力を持つ人間でも無力に過ぎん。なぜならば……海は私のホームグラウンドだからだっ!!」
リヴェリアスはリリシアを締め付ける尻尾にさら力を加える。骨が軋み、折れそうな激痛がリリシアを襲った。
「うあああっ!ああっ!あがああぁぁっ!!」
締め付けられるたびに、骨が折れるほどの激痛が走る。しかしそれでもリリシアは必死に耐え忍んでいた。全ては仲間のため、エルザディア諸島のために……。
「しぶとい奴だな。これほどまでの激痛なら、普通の人間なら骨が折れて死んでいるのだが、リリシアだけはまだ死んでいない。さすがに魔王を倒すのは一筋縄ではいかないからな…。ただ締め付けるだけでは奴は倒せそうにないから、今度は別の方法でいたぶってやるか…。」
リヴェリアスはそう言った後、大きな口をリリシアの方に向けた。
「フハハハッ!!こいつでジ・エンドだっ!エレクトロン・ブラスター!」
リヴェリアスがリリシアを解放した瞬間、口から強烈な電撃をリリシアに浴びせた。しかし長い間締め付けられていたリリシアにはもう逃げる体力すら残ってはいなかった。
「うぐあああああああっ!!!」
電撃の直撃を受けたリリシアは、力尽きて倒れてしまった。リヴェリアスは力尽きたリリシアの首を狩るべく、大きな口を開けた首を噛み切ろうとしていた。
「ハハハハッ!もう動く素振りすらしないな…。リリシア…やっぱり死んじゃったね。私に歯向かうからそうなるのだよ。今から貴様の首をこの牙で噛み切ってメディス様の所へと持っていくとしよう。その賞金で私は好きなだけ遊んで暮らせるのだっ!!」
リヴェリアスの大きな牙が、今にもリリシアの首を噛み切ろうとしていた…。
リヴェリアスの電撃を喰らい、気を失っているリリシアの心の中に誰かの声が聞こえてきた。
「リリシア…あなたはまだ死ぬときではありません。再び立ち上がりリヴェリアスを倒すのです!」
突然の出来事に、リリシアはただ迷うだけであった。
「あなたは…一体誰なの?それになぜ私の名前を知っているの……。」
リリシアがそう呟いた瞬間、何者かがそっと口を開いた。
「私はあなたにとってかけがえのない友達……仲間です。あなたの心が折れない限り、私は何度でもあなたに力を貸してあげるわ…。」
心の中で聞こえる声に、何かに気付いたリリシアが答える。
「あなたは…あなたはもしかして!リュミーネなのねっ!ずっと聞きたかった……あなたの声を。」
リリシアの心の中に語りかけていたのは、なんとリュミーネであった。
「私の魂が封じられているソウルキューブはリヴェリアスに取り込まれています。リヴェリアスはジュア開くな力でソウルキューブの力を吸収し、大きな海竜となったのです。リヴェリアスの弱点は頭部の二本の角よ。邪悪な力の根源である角さえ壊せば、その邪悪な力を抑えきれなくなり、彼の体は元に戻るでしょう。リリシア、最後に言っておくわ。どこにいても私はあなたの味方ですよ……。」
その言葉を最後に、リリシアの心に語りかけるリュミーネの声が消えていった。リュミーネの声が消えたと同時に、リリシアは再び立ち上がり、胸に手を当ててそう呟く。
「リュミーネ……ありがとう。こんなところで死んでたまるか…!!今は、リヴェリアスを倒して、リュミーネの魂が封じられているソウルキューブを取り返すまで…私は死ねないっ!!」
リリシアは体の底から力が湧き上がるのを感じていた。大切なものを守るための力を、リュミーネから貰い受けたのだ。
「あれ…?せっかく首を狩ろうと思ったのだが、まだ生きてたとはな…。私がさんざん痛めつけても死なないとはどういうことだっ!!」
リリシアの首を狩り損ねたリヴェリアスは、怒りの表情でリリシアを睨みつける。その表情に、リリシアは冷たい言葉であしらった。
「ふぅん…。私がそんなことで倒されるとでも思ったかしら。戦いはまだこれからよっ!!あなただけは…この鉄の扇で倒すっ!!」
リリシアは再び鉄扇を手に、リヴェリアスに立ち向かっていった。
絶望に追い込まれたリリシアだが、リュミーネの言葉によって戦う力を取り戻した。
行け、リリシア!ここから形勢逆転のチャンスだっ!!