蘇生の章第十三話 海神の神殿へ

 

女王アリから身体変化の道具であるミニマムオーブを手に入れたクリスたちだが、しかしその間にもクラーダ島周辺の水位はどんどん上昇し、ついには砂浜まで浸水していた。行き場所を失ったクリスたちは再び村長の家に引き返すことにした。
「どうしよう…。島の砂浜が浸水してしまい、帰るに帰れない状態になってしまいました。村長さん、私たちを海神の神殿へと行ける方法を教えてください!!
クリスは思い悩んだ表情で村長に話しかけると、村長がクリスたちに答える。
「うむ…海神の神殿に行くには、この島の北の桟橋にある渡し舟に乗るがよい。セラス島との移動手段として使っているのだ。まぁ詳しいことは渡し舟の船頭が知っているぞ…。」
村長の言葉に、クリスが答える。
「ありがとうございます!!私たちは早速北の桟橋に向かいます。いろいろとどうもありがとうございます!!
クリスはそう言った後、全員は北の桟橋へと向かっていった。クリスたちが北の桟橋に到着したが、船頭がいる気配は無かった。

 「どうしよう…。船頭がいないようじゃ、勝手に船を出すわけには行かないわね。このままではセラス島には行けないわね。」
クリスが悩んでいる中、フィリスがクリスに答える。
「船頭が見張っていない今、セラス島に行くためにいいチャンスですわ。ここは勝手に船を使い、セラス島へと向かいましょう。みんな、船に乗って。」
フィリスはクリスたちを船に乗せた後、錨を上げて発進の準備をする。そのフィリスの行動に、ディオンがそう呟く。
 「まったく…強引だよな。俺たちが勝手に船を使って船頭に怒られなければよいのだが…。まぁいいや、非常事態だからな。」
ディオンが愚痴をこぼしながらも、船を漕いでいた。クリスたちが船を漕ぎ始めてから数分後、船の前に大きな海の獣らしき影が姿を現し、クリスたちの乗った船を横切る。その衝撃により、クリスたちの乗った船は大きく揺れ始めた。
 「うわあっ!!海の底から何か現れたわ!!
クリスたちの目に飛び込んできたのは、大きな海竜の姿であった。海竜の頭部には不思議な模様の痣があり、どうやら魔界の者が放った魔物のようだ。海竜の頭部にある痣を見たリリシアは、何かに気付いた表情でクリスたちにそう言う。
「あの模様は…七大魔王の紋章では!?多くの水獣の中でも最も凶暴な性格で知られる海竜がいるって事は、まさか七大魔王の一人であるリヴェリアスがこの島のどこかにっ!?
リリシアがそう言った後、海竜の背中に男の人影らしきものが見えるのを、魔姫は薄々感じていた。するとその男が姿を現し、リリシアにそう言ったのだ。
 「フフフ…久しぶりですねリリシア殿。魔導城で死んだと思われたが、生きていたとはな…。私の勘によれば人間界征服に向けて臣下を集めているところですね。その人間たちを捕らえて何をするつもりだ?
謎の男の言葉に、リリシアは心の中でふと思った。
(ここは…嘘でも人間を魔族に変える為だって言っておいたほうがよさそうかも…。)
一瞬の静寂の後、リリシアはそっと口を開いた。
「もしかするとあなたはリヴェリアス様では!私は人間界を制圧するために臣下を集めているところよ。この人間たちはいずれ殺すつもりですわ。リヴェリアス様、人間界制圧がんばってくださいね…。」
リリシアがそう言った後、リヴェリアスが気障な口調で答える。
 「そうか…。リリシアには私のことを詳しく話してなかったね。私は海神の神殿を根城とし、多くの水獣を束ねる水族の魔王ともいえる存在なんだ。そうだ、私の宝物であるソウルキューブは海神の神殿の奥深くに隠している。君にも見せたいところだが、そろそろ海神の神殿に戻らなければいけない時間だ。水獣が腹を空かせているからね…。ではまた会おうリリシアよっ!!
リヴェリアスがそう言った後、海竜は潜水を始め、海の奥へと消えていった。

 リヴェリアスが去り、クリスたちは再びセラス島へ向けて船を漕ぎ始めた。
「あのお方、リリシアのことを知っているようだけど、一体誰なの?
クリスがリヴェリアスについて話すと、リリシアが笑顔で答える。
「ごめんね…。あの気障男を欺くためにひどいこと言っちゃって……。そうでも言わなければリヴェリアスがおとなしく引き下がってくれないからね。でも私の嘘が上手くいくかどうか心配したわ。」
リリシアがそう言った後、フィリスがクリスたちにそう言った。
「リリシアの七大魔王という特権を利用した嘘、なかなか上手くいったわね。リリシアのおかげで、リヴェリアスが海神の神殿を根城としていることも、ソウルキューブも奴が守っているって言う情報も聞き出せたわ。さぁ、こうしている時間は無いわ。早くセラス島へと向かいましょう。」
フィリスがそう言った後、クリスたちは再び船を漕ぎ始めた。しばらく漕いでいると、クリスたちの目の前に大きな島が見えた。あれがクリスたちの目指す海神の神殿があるセラス島であった。クリスたちは丘の辺りに差し掛かると、錨を下ろしてセラス島の大地を踏みしめた。
 「ここが海神の神殿があるセラス島ね。まずは村を探しましょう。」
クリスたちは村を探すべく、セラス島の探索を開始した。砂浜の辺りはすでに浸水しており、かつてあったと思われる村は水没していた。
「ここは村があった場所だわ。クラーダ島の人たちは渡し舟を使ってこの村に来ていたようね。桟橋も海に沈んでいるわ。これでは船も上陸できないわね。一体村人たちは何処に行ってしまったのだろう?
クリスがそう言葉をもらした瞬間、海を見ている村人がクリスに話しかけてきた。
 「そうだ。すべては海神の神殿から像が盗まれたことがきっかけでこのような状態になってしまったのだ。この村が水没した後、私たちは住んでいたこの村を離れ、丘に集落を作って生活する日々です。それより、あなた方はどうやってこの島に来たのですか?
村人の言葉に、クリスが前に出て答える。
「私たちはクラーダ島の渡し舟でこのセラス島へとやってきました。私たちは海神の神殿の場所を知るために村を探しているのですが、もしよければあなたが住んでいる集落に案内していただけませんか?
クリスの言葉に、村人が首を縦に振りながら答える。
「そうですか。それなら私についてきてください。集落にいる村長なら、海神の神殿の場所についても知っているかもしれません。」
男の村人がそう言うと、クリスたちは村人の案内で丘の集落に向かっていった。

 男の村人の案内で、クリスたちは丘の集落へとやってきた。
「村長の家はこちらです。村長なら海神の神殿に入る方法を知っているはずです。それでは、私はこれで…。」
男の村人はそう言うと、そそくさとその場を去っていった。クリスたちは村長のいる小屋の中に入ると、村長がクリスたちに話しかける。
 「海神の神殿に行きたいと申すのは君たちか。村の男と君たちの話は全て聞いていたぞ。あそこは危険だ。よく神殿周辺に水獣が遊んでいるのをよく見るが、これも海神の像が失われたからだ。おぬしは何故海神の神殿に向かうのだ。そのわけを聞かせてくれ。」
村長はクリスたちに海神の神殿に行く理由を話すと、フィリスが前に出て話し始めた。
「私たちはクラーダ島から渡し船でここまでやってきました。私たちが海神の神殿に行く理由は、大切な人の魂が封じられているソウルキューブを見つけるためです。村長さんが言っていた海神の像は、神殿にありますが、人が通れない小さな穴の奥にあります。もし私の言っていることが信じられないのならば、この娘の持っている精霊の鏡が映し出してくれますわ……。」
フィリスがそう言った後、リリシアは精霊の鏡を取り出し、強く念じ始めた。
 「鏡よ……海神の像の在り処を移したまえっ!!!
リリシアが鏡に魔力を込めると、鏡には海神の神殿の内部が映し出される。村長が鏡を覗き込むと、柱と柱の間に人間は通れない穴がぽっかりと開いていた。
「本当じゃ……。あのエルフが持っているその鏡は、不思議なものだな。どんなものでも探し出せる優れものじゃ。もしよければそいつを10万ゴールドで売ってくれぬか!!
村長が目を光らせ、リリシアに近寄ってきた。村長の目的は、リリシアが持っている精霊の鏡であった。
「やだやだっ!!どれほどの大金を払っても、この精霊の鏡は渡せませんわよ!村長さん、ひとつ言わせていただきますけど、私はエルフではありませんっ!!
村長の行動に怒りを感じたリリシアは、村長の頬に平手打ちを放った。平手打ちをまともに喰らった村長は、少しよろけながら我に返った。
「すまぬ……あの鏡の魅力で無礼を働いてしまった。確かにあなた方の話は本当のようだな。海神の神殿の場所はここから少し歩いたところに小さな島が見えてくるだろう。あれが海神の神殿だ。そうだ。この言葉を覚えてから行きなさい。『海神様よ…神殿へと続く道を作りたまえ!!』とな…。君たちはこのエルザディア諸島を救う最後の希望だ…海神の像を取り戻し、このエルザディア諸島を救ってくれ……。」
村長がそう言った後、クリスたちは集落から北の方角に歩き始める。すると前方の小さな島に神殿らしきものが目に映った。クリスは集落の北にある祭壇に立ち、村長に教えてもらった言葉を言った。

「海神様よ…神殿へと続く道を作りたまえっ!!

 クリスがそう言った瞬間、轟音と共に海が裂け、海神の神殿へと続く道が現れた。
「村長の教えてもらった言葉を言ったら海が裂けた……一体なぜそんなことが!?
驚くべき光景を目の当たりにしたリリシアとカレニアはただ愕然としていた。
「みんな急ぎましょう。早くしないと裂けた海が元通りに戻ってしまうわ。そうなれば私たちは海の藻屑になっちゃうわよっ!!
クリスは全員に急ぐように言うと、全員は一斉に海神の神殿に向けて走り始めた。しかしその間にも、海が徐々にクリスたちに迫ってきていた。
 「きゃあっ!!
海神の神殿まであと少しというところで、リリシアが躓いて転んでしまった。リリシアの後ろには海が迫りきていた。このままではリリシアが海の藻屑になってしまいそうであった。
「このままじゃリリシアが危ないわっ!何とかできないの!
「クリス!ここは私の氷の術で何とかするわ!ディオン、海を凍らせた間にリリシアを助け出して!行きますわよ、アイスウェーブ!
クリスが慌てふためいている時、フィリスが氷の術を唱え、リリシアに迫り来る水の壁を凍らせる。その間にディオンはリリシアを抱え、フィリスの下に走ってきた。
 「リリシアは大丈夫だ!!クリス急ぐぞ、もうこれ以上はもたない!!
ディオンが仲間たちに叫んだ後、全員は必死で向こう岸まで走り出した。向こう岸まで来たとき、海の裂け目は元通りになった。
「とりあえずリリシアが助かってよかったわ。さぁ、海神の神殿はもう目前よ。はやく行きましょう!!
フィリスがそう言った後、全員は海神の神殿に向けて歩き始めるのであった。

海割れの道を抜け、ついに海神の神殿のある小島へとやってきたクリスたち。
海神の神殿で、クリスたちを待つものとは!?

 

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