蘇生の章第十二話 アリの巣の大ネズミ
クリスたちは大ネズミを倒すため、女王アリの部屋の壁にあいた大きな穴へと入り込んだ。そのおくには無残にも大ネズミと戦い、倒れた兵隊アリの姿がそこにあった。
「ギギ・・ギ・・ギギッ…」
クリスたちが倒れている兵隊アリを横切ろうとしたとき、兵隊アリがクリスたちに何かを訴えていた。その言葉を聞いたリリシアは、クリスたちにそう言う。
「この兵隊アリは、『この穴の奥にいる大ネズミは、私たちの力では到底敵わない相手です・・。地上界の客人よ・・この奥に行くときには・・気をつけろ』と言っているみたいだわ・・。しかしもう死んでいるみたいだわ。他の兵隊アリにも話を聞いてみるわ。」
リリシアは他の兵隊アリに話しかけた。すると兵隊アリがリリシアにそう言った。
「大ネズミはもともとは小さなネズミだったのですが、この巣に住むアリを喰らい、大きくなったのが大ネズミだ。奴は女王の間の壁に穴を開け、その奥で構えている。地上界の客人よ・・どうか我々の願いを聞いてくれ・・必ずやこの先にいる大ネズミを倒してくれ・・。それと、この家の人に、ネズミが入れないようにしてくれって言ってくれ。では頼んだぞ・・。」
兵隊アリがそう言うと、リリシアはクリスたちを集め、こう答える。
「心配しないで・・。私には仲間がいるわ。私たちにならきっと大ネズミを倒してくれるわ。みんな、穴の奥へと行き、大ネズミを倒しましょう。」
リリシアがクリスたちにそう言うと、大ネズミの待ち受ける穴の奥へと向かっていった。
一方村長の家では、床にあいた穴の中に入っていったクリスたちの無事を案じていた。村長は不安のあまり穴の中を覗いたりしていた。
「ああ…。帰ってこないな。普通の人なら女王アリから道具をもらって帰るのだが、今回ばかりは何か違うような気がする・・。床下から何かが歩き回る物音がするから不安でたまらん・・。」
村長はクリスたちを心配する中、男の村人がそう言う。
「あの人なら大丈夫です。心配しないでください。あのアリの巣は長いからね・・。私は女王アリの部屋にたどり着くのに一時間ぐらいかかったよ。女王アリからこの部屋にたどり着いた証として、身体変化の道具をもらったんだぜ・・。」
男の村人がそう言うと、村長が男の村人に答える。
「そうか・・お前は3年前にに床下のアリの巣に行き、女王アリと会ったのだな。そのときはアリの巣には魔物はいなかったのか…。」
村長が男の村人にそう言うと、男の村人が首を縦に振り、こう答える。
「3年前にはそういう魔物はいなかったぜ。床下から音が聞こえるって村長が言っていたのだが、何かがアリの巣に入り込んだ可能性がありますね。」
男の村人の言葉に、村長が答える。
「やはりこの穴は封じなければならんのか・・。確かに、アリの巣はこの穴のほかにもいろいろと通じている。ここを小さな穴を開けた板で補強すれば、魔物が入ってくることは無くなる。小さくなった人間が入れるサイズにしなければならん。そこの男よ、手伝っておくれ・・。」
村長がそう言うと、男の村人は床下の穴を補強する作業に取り掛かる。小さく穴を開けた板を床下の穴を覆うように重ね、そこに釘を打って完成である。
「さてと・・板を作るか!!この小さな穴は小さくなった人間やアリが入れるようにしないとな・・。アリの巣の中にいる人たちは大丈夫だろうか・・。わたしも心配になってきたな。」
男の村人がそう言うと、急いで床下の補強作業に取り掛かるのであった。
一方大ネズミのいる大きな穴の中を進むクリスたちの目に、赤く怪しく光る眼光が見えた。その目はまさしく大ネズミだ。たくさんの兵隊アリを喰らい、さらに大きくなっていた。
「ヂュアアッ!!ヂュアアッ!!」
牙を向き、激しくクリスたちを威嚇する大ネズミが、今にも襲ってきそうな形相であった。
「こいつが大ネズミね…。そいつを倒せば、女王アリから道具をくれるわ。少々危険だが、がんばって倒すしかないわね。武器で戦っちゃダメだから、魔法で戦いましょう!」
リリシアがクリスたちにアドバイスを送ると、フィリスが防御呪文を唱える。
「さすがに…この小ささだとダメージも多く喰らってしまいますわね。ここは守りの呪文で守備力を上げて立ち向かいましょう。守りのオーラよ、仲間たちを守れ!リフレクト・シェル!」
フィリスが術を唱えた瞬間、ダメージを軽減する守りのオーラがクリスたちの体を覆った。
「ありがとうフィリス様。これであのネズミのダメージを軽くできるわ!!さぁ、一気に大ネズミを倒しますわよ!」
カレニアがそう言った後、クリスたちは術を放つ態勢に入り、大ネズミを迎え撃つ態勢に入る。
「ヂュウアアアアッ!!!」
大ネズミが雄たけびを上げ、クリスたちを威嚇し、今にも襲ってきそうな勢いであった。クリスが先に大ネズミの前に出て、呪文を唱える。
「行くわよ!!波導の術、炎翔波!」
クリスの手から炎の波動が放たれ、大ネズミに攻撃を仕掛ける。大ネズミは火傷を負い、その場にのたうち回る。その大ネズミの様子を見たフィリスとディオンは、何かを話し合っていた。
「フィリス様と私の水の術をあわせれば、より強力な水の術が生まれるかもしれないぞ!!あの大ネズミが火傷でのた打ち回っている時にやってみる価値はありそうだ。」
ディオンはフィリスに大ネズミを倒すための秘策を練っていた。ディオンの言葉に、フィリスが口を開き、了承のサインを送る。
「いいですわよ。私とあなたなら、きっと強い水の術ができると思いますわ!!ディオン、態勢を整えて術を放つ態勢に入るわよ!!」
二人が術を放つ態勢に入った瞬間、リリシアが二人の前に現れた。
「私も協力させてください!私も水の術が使えます!!三人なら二人よりも強力な術が生まれる可能性はあるわっ!」
リリシアが加わり、三人は陣形を組み、術を放つ態勢に入る。術を邪魔されないため、リリシアはクリスに敵の動きを止めるように指示する。
「クリス…あいつの動きを止める術をお願い!!いま奴の動きを止めることができるのはあなただけよっ!!」
リリシアの指示を聞いたクリスは相手を束縛する術を唱え始めた。彼女が念じ始めると、手のひらから糸のような物体が現れた。
「相手を束縛する光の糸よ、相手を締め付け、痛みを与えよっ!!束縛術(バインドスペル)、聖なる糸(ホーリー・ストリングス)!!」
クリスの放った聖なる糸が、大ネズミに絡みつき、自由を奪う。聖なる糸に絡まれた大ネズミは糸から発せられる聖なる電撃の激痛が走り、うめき声を上げる。
「ヂュアアアアアッ!!ヂュアッ!!」
クリスが大ネズミを足止めしている間、魔力を練りこんでいた三人は大ネズミに手をかざし始める。フィリスの合図で、ディオンとリリシアが水の魔力を込め始めた。
「今です!クリスのおかげで、詠唱時間は稼げました。後は私たち三人の術があの大ネズミに通用するかどうかです。ディオン、リリシア!一斉に水の術を放つのです!!」
フィリスの言葉で、ディオンとリリシアは水のエネルギーを高め、術を放つ態勢に入る。フィリスは二人の水の魔力を集め、一気に大ネズミに向けて放った。
「受けてみよ…私たち三人の水の力をっ!喰らいなさい!連携水術奥義、アクアストリーム!!」
三人の水の力が、大ネズミの周りに水の渦を作り、大ネズミを水流の中に閉じ込める。カレニアとクリスが大ネズミの方を向くと、水の渦の中でもがき苦しんでいる大ネズミの姿がそこにあった。
「クリスのおかげで術の三人がけが成功したわ!大ネズミはこの水の中で息ができなくなるわ・・。これで女王アリから身体変化の道具がもらえるわ。やったね!!」
カレニアがそう言った後、フィリスたちの術が解け、息ができなくなり力尽きた大ネズミが地面に倒れた。大ネズミが倒れた後、女王アリがクリスたちの下に現れ、彼女たちにそう言った。
「ギギギギ…ギギッ!!ギギギーギッ!!」
女王アリの言葉を、リリシアが通訳しクリスに伝える。
「女王アリは『地上界の客人よ…巣を荒らす大ネズミを倒してくれてありがとう。あなた方のおかげで救われた…。お礼にこの身体変化の道具を差し上げましょう。』と言っているわ。」
女王アリは身体変化の道具を取り出し、リリシアに手渡した。リリシアは不思議そうな表情で、女王アリにそう言った。
「この道具は…どうやって使えばいいの?使い方を教えていただけますか?」
リリシアが女王アリにそう言うと、女王アリが答える。
「この道具はミニマムオーブといって、この宝珠に小さくなれと念じれば小さくなり、大きくなれと念じれば普通の体に戻ることができます。実はこの宝珠は、天寿を全うしたアリの死骸を集め、蟻酸と魔力で宝珠に変えたものです。どうぞ持っていってください。あと言い忘れていましたが、あなたたちはなぜミニマムオーブをほしいのですか?」
女王アリがクリスにそう言うと、フィリスがその理由を答える。
「私たちはソウルキューブを求めて旅をしているものです。そのひとつが海神の神殿にあるのです。しかし港町の人の話では、この島から海神の像が盗まれたことにより、このエルザディア諸島は沈み行く一方です。その像がある場所は、普通の人間ではいけない場所なの…だからこそあなたの持っているミニマムオーブが必要なのです。」
フィリスの言葉に納得したのか、女王アリがそう呟いた。
「あなたの言っていることは理解できました。あなたたちを村長の家の床下の穴へと送りしましょう。兵隊アリの背中に乗ってください。」
クリスたちは兵隊アリの背中に乗ると、兵隊アリはもと来た道へと歩き出した。クリスたちを乗せた兵隊アリが去った後、女王アリが呟く。
「クリス…そしてその仲間たちよ。あなたたちのたびに光あれ……。」
こうして、村長の家の床下の穴にある大きなアリの巣は、クリスたちの手によって救われた…。
クリスを乗せた兵隊アリは、もと来た道を辿り、床下の穴にやってきた。クリスたちが兵隊アリの背中から降り、床下の穴をよじ登り、村長の家へと帰ってきた。クリスたちは先ほど手に入れたミニマムオーブを使い、元の身長に戻った。
「おお…戻ってくるのが遅かったので心配したぞ。無傷でここに帰ってこれたからよかった・・。」
村長の言葉に、クリスが答える。
「アリの巣に大きなネズミがいて、巣の中のアリを食べていたのです。私たちはそれを倒し、女王アリからこのミニマムオーブをもらったのです。わたしたちはこれから海神の神殿へと向かいます。村長さんもどうかご無事で…。」
クリスたちが村長の家を出た瞬間、そこには目を疑う光景が目に映った。砂浜は完全に浸水し、港町へと続く洞窟が完全に閉ざされてしまった。
「どうしよう…元に戻れなくなっちゃった。先を進むしかないわね。」
リリシアが不安そうな表情でそう言った後、クリスたちは海神の神殿に向かうのであった。
大ネズミを倒し、身体変化の道具、ミニマムオーブを手に入れた!!
もう後戻りはできないクリスたちは、海神の神殿を目指す!!