蘇生の章第十話 エルザディア諸島

 

中央大陸に別れを告げ、クリスたちはソウルキューブを探すため、ウォルティアのちょうど北の方角にあるエルザディア諸島へと航路を進めていた。クリスたちを見送り、レミアポリスの王宮に帰ってきたアメリアは、何かに気付いた。
 「しまった。クリスのための装備品を渡すのを忘れていた!!今から行くというのは時間がかかりすぎる。どうすればよいのじゃ・・。」
アメリアが悩んでいる中、リリシアの臣下である魔導鳥兵が前に出る。
「心配は要らない。アメリア様、今からでもクリスたちの乗った船を追えば、この荷物を渡せます!!アメリア様、行ってまいります!
魔導鳥兵がクリスに渡すための荷物を持つと、アメリアは手紙を書いていた。
「うむ。これでよしと・・では、クリスたちに渡してくるのだ。なるべく船乗りたちには見つからぬようにするのだぞ。」
アメリアの命令で、魔導鳥兵は翼を広げ、クリスの乗った船へと飛び立った。魔導鳥兵がクリスの乗った船を見つけると、一気に急降下を始め、船の甲板へと着地した。
 「よっと・・クリスたちの乗っている船ってこいつのことか。ならばクリスたちを探さねばな・・。」
魔導鳥兵がそう言うと、急いでクリスたちを探し始めた。

 船に乗ってから数時間後、クリスたちは甲板から海を眺めていた。海を眺めるクリスたちの元に、アメリアの命を受けてここに来た魔導鳥兵が現れた。
「クリスよ・・。アメリア様からこいつを渡してくれと言っておった。中身はクリスのための武器と防具だ。ほらよ・・。」
魔導鳥兵がそう言ってクリスに荷物を渡すと、クリスが答える。
「あ・・ありがとう。これは私のための装備品だわ。どうもありがとう。」
クリスが魔導鳥兵にそう言うと、アメリアの手紙を読み始めた。
「そうだ。アメリア様から手紙を預かっている。今から読むぞ。」
魔導鳥兵がアメリアの手紙を開き、読み始めた。

 「クリスよ、旅立つお前のために装備品を送る。この武器はシミターという片手で扱える剣だ。これはナイフよりも大きなダメージを与えられる代物だ。これからの戦いに役に立つだろう。それと防具のほうも用意しておる。この鎧はレディクロスといって、レミアポリスの女性騎士団が身に着けているものだ。軽装ながらも丈夫だから、多少は魔物の攻撃に耐えられるであろう。言っておくが、武器や防具はちゃんと装備しないと意味が無いぞ・・。これらの装備はエルザディア諸島に着いたときに身に着けるがよい。クリスよ、リリシアにそう言っておくれ。お前の臣下たちは元気でやっているぞとな・・。では旅立つお前たちに幸あれ・・。」
魔導鳥兵が手紙を読み終えると、甲板にいる全員を集め、こう話した。
「私は今からアメリア様の元に帰る。リリシア様、そしてみんな・・後は頼みましたよ。」
魔導鳥兵がそう言った後、翼を広げて飛び立つ準備を始める。その様子を見たリリシアは、すぐさま魔導鳥兵を呼び止める。
「クリスのための武器と防具、彼女がありがとうって言ってたってアメリア様に伝えておいて・・。あんたは口じゃうまく伝えられないから・・手紙を足につけておくわ・・。じゃあ頼んだわよ♪」
リリシアはアメリア宛に手紙を書くと、それを魔導鳥兵の足にくくりつける。その様子を見ていた魔導鳥兵は、すこしあせっている表情であった。
「リリシア様・・私は伝書鳩ではない・・。手紙ならこの鞄に入れてくれないか・・。」
魔導鳥兵の言葉で、リリシアは彼の足にくくりつけた手紙をはずすと、魔導鳥兵の鞄にそれを入れる。
「はははっ・・そうだったわね。じゃあ鞄の中に入れておくわね。アメリア様によろしく伝えといてね。」
リリシアがそう言った瞬間、魔導鳥兵はレミアポリスに戻るべく飛び立った。

 その頃、甲板から海を眺めていたカレニアが海の向こうに何かを見つけたようだ。
「あれは何かしら・・きっと島だわ。あれがエルザディア諸島よっ!!みんな、あれがエルザディア諸島よ・・。」
カレニアは全員にそう言うと、クリスたちがカレニアの元に集まる。クリスたちが目を凝らして海の向こうを見ると、目の前に島が見えた。
「おお・・あれがエルザディア諸島か・・。ここで道具を買い置きしなくてはな・・。」
「あれが・・エルザディア諸島・・。初めての船は気持ちよかったわ。」
全員が目の前にある島に釘付けになる中、フィリスがリリシアにそう言う。
「エルザディア諸島で精霊の鏡を使えば、きっと何かしらの効果が現れるはずですわ。リリシア・・島に着いた早速精霊の鏡でソウルキューブがあるか見つけ出して・・。」
フィリスがリリシアにそう言うと、リリシアが首を縦に振り、こう答える。
「ええ・・。一応鏡の力でソウルキューブの場所を探してみるわ。」
リリシアがそう言った後、船乗りたちの声が甲板中にこだました。
 「エルザディア諸島に到着するぞぉっ!!船員たちよ、錨を下ろせ!!
船は帆をたたみ、エルザディア諸島の港町に停泊するべく、船員たちが錨を下ろし、停泊の準備を進める。その様子を見ていたクリスたちは、船から下りる準備を始める。
「ここがエルザディア諸島の港町のようだわ。さぁ、みんな降りるわよ・・。まずは冒険に必要な道具を買わないとね。」
フィリスはそう言うと、クリスたちは船から下り、港町へと向かうことにした。クリスたちが船から下りた後、大勢の人が船に乗船していくのが見えた。船に向かう人々は何かを呟きながら歩いていた。
「この島はもう終わりだ・・このエルザディア諸島が水没するのは時間の問題だ・・。海神の神殿から海神の像がなくなったからだ・・。」
「おらの住んでいる島も・・もう浸水して大変だ。残念だがもうこの島を離れるしかないんだ・・。」
人々の言葉を聞いていたフィリスが、船へと向かっていく人に話しかける。
 「このエルザディア諸島で何かが起こったんですか?私に教えていただけませんか!?
フィリスがエルザディア諸島に起こっている異変のことを聞くと、船へと向かう人が答える。
「その通りだ。このエルザディア諸島の海神の神殿に異変が起こったからだというんだ。何しろこの神殿から海神の像が突如なくなったおかげで、海の水位が上がって水没の危機に瀕している。君たち、悪いことは言わない。早くこの島から出るんだ。今停泊している船はレミアポリス行きの最後の船だ。もう二度とこの港には船はこないだろう・・。」
船へと向かう人の言葉に、フィリスが真剣な眼差しで答える。
「あなたの話は分かりました。私たちはソウルキューブの手がかりを探すためここに来ました。それより、海神の像は一体何処にあるのですか?
フィリスがそう言うと、船へと向かう人が首を横に振り、こう答える。
「悪いが、ソウルキューブのことは知らない・・あと海神の像が何処にあるかも私にはわからん・・。もし見つけたら、海神の神殿に戻しておいてくれ・・。そうすればこの島の水位が下がり、水没の危険性も無くなる。おっと、もうすぐ船の出港だ。君たち、気をつけてな!
そう言った後、その人は船へと向かっていった。エルザディア諸島の海水の上昇により、人々は生きるためにこの島を離れるしかなかったのだ。彼が船に乗った数分後、船の船員たちが錨を上げ、船が進みだす。

 「船が、出るぞおぉっ!!
船長の甲高い声と共に、船はレミアポリスへと進んでいく。この船が最後の船だ。この船が出ると、もう二度とこの港には船は来ないだろう。
 船が港から出航した後、リリシアは精霊の鏡に強く念じ始めた。
「さぁ・・鏡よ、ソウルキューブの場所を探したまえ・・。」
リリシアの強い魔力により、精霊の鏡は強く光りだし、鏡には神殿のような風景が浮かび上がった。そう、このエルザディア諸島には一個のソウルキューブの反応があるようだ。
「この鏡と同じ場所に、ソウルキューブがあるのですね。しかし・・この島の神殿といえば、船に向かう人たちが言っていた海神の神殿じゃないかな・・。リリシア・・試しに海神の像の場所を探し出して。」
フィリスがリリシアに海神の像のある場所を探し出すように言うと、リリシアは精霊の鏡に強く念じ始めた。
「さぁ・・鏡よ、海神の像のある場所を探したまえ・・。」
精霊の鏡に映し出された場所は、どこかの神殿の小さな穴が見えた。人間は入れないような穴で、ネズミや小動物などが出入りする穴であった。
 「何っ!!海神の神殿の中に像があるとは!?もしかすると小さくて力のある魔物が像を盗んだといえるな。とにかくその穴の奥に像があるというわけだな。しかし、俺たち人間が通れそうな穴ではないようだ。小さくならない限り入るのは無理だ。では町の中を散策するとするか・・。」
ディオンがそう言うと、クリスたちは港町の広場へと向かった。

 町の広場へとやってきたクリスたちは、それぞれ自由行動をとっていた。ディオンとフィリスは道具屋に向かい、回復アイテムなどをたくさん買い込んでいた。クリスは早速アメリアからもらった武器と防具を装備し、カレニアたちに見せびらかす。
 「ほら、かっこいいでしょ。この青銅のシミターはブロンズナイフよりも威力があるようね。早速実戦で使ってみようかな・・。」
レディクロスを装備したクリスの姿は、誰が見ても女の戦士と見える格好であった。その姿を見ていたカレニアとリリシアが答える。
「ええ・・。かっこいいですわ。このシミターは実に強そうね。」
カレニアとリリシアがクリスにそう言うと、クリスがにやにやしながら答える。
「うふふっ・・そんなこと言われると照れちゃうわ・・。」
クリスがニヤニヤしている表情でそう言った後、カレニアが上空に魔物の姿を発見した。
 「あっ!!魔物だっ!クリス、青銅のシミターの切れ味を試す絶好の機会よ!リリシアはそこでクリスの戦いを見てあげて・・。」
町に飛んできたのは大きな蜂、ポイズンビーだった。クリスは青銅のシミターを構え、大きく飛び上がり一気にジャイアントバグを攻撃する。
「はあっ!
――バシュッ!!クリスの手に持ったシミターの刃がポイズンビーを切り裂いた。その戦いぶりを見ていた二人は、目がクリスに釘付けになる。
 「す・・すごいですわ。あの大きな蜂を一発で・・。あっ、フィリス様とディオンが買い物を済ませて帰ってきたわ・・。」
カレニアがそう言って振り向くと、道具屋で買い物を済ませてきたディオンとフィリスが帰ってきた。
「よし、みんないるな・・。さてと、回復道具は買い置きしてきたことだし、さっそく海神の神殿に向かおう。まずはソウルキューブを手に入れることが先決だな。」
ディオンが全員が集まった事を確認すると、クリスたちは海神の神殿に向けて歩き始めた。

リリシアの持つ精霊の鏡の力で、一つ目のソウルキューブが海神の神殿にあると分かった。
エルザディア諸島の冒険が、今始まる!!

 

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