蘇生の章第八話 火炎亀を撃破せよ!!
ヴォルカス・トータスにより大きなダメージを受けたリリシアは、フィリスの元で治癒を受けている間、クリスたち三人はヴォルカス・トータスと戦っていた。
「クリスの言うとおり、あの大きな亀は水の攻撃が有効だが、水を吸って水蒸気で攻撃してくるわ。水の術が使える人は、極力水の術や技を控えてください。」
カレニアが全員にアドバイスを送ると、ディオンはツヴァイハンダーを握り締め、一気にヴォルカス・トータスに攻撃を仕掛ける。
「喰らえっ!」
ディオンの大剣はヴォルカス・トータスの頭部に命中したが、僅かなダメージしか与えられなかった。ヴォルカス・トータスは頭を引っ込め、防御の態勢をとる。
「私の弱点が頭だと思っただろうが、それは大きな間違いだ・・。私には弱点など無いっ!喰らえ!」
ヴォルカス・トータスは甲羅の天辺にある穴から炎の弾を噴き出すべく、身を屈めて穴をディオンに向ける。その甲羅の天辺にあいた穴に疑問を感じたのか、ディオンは一人呟く。
「あの穴・・奴はなぜ亀の癖に大きな穴が開いているのだ。何か秘密でもありそうだな・・。」
ヴォルカス・トータスは背中の穴から炎の弾を噴き出し、ディオンに攻撃を仕掛ける。
「お前らもあの小娘のようにしてやる!喰らえ!マグマ・バスター!!」
ヴォルカス・トータスの背中の穴から炎の弾をディオンめがけて吹き飛ばす。ディオンはツヴァイハンダーを地面に突き刺し、防御の態勢に入る。
「こんな炎の弾、私には通用せん!リリシアの首を狙うものは、決して許しはしない!」
ヴォルカス・トータスの炎の弾がディオンの大剣に命中すると、炎弾を受けたディオンは後ろへとのけぞるが、すぐに態勢を立て直す。その隙に、クリスとカレニアがヴォルカス・トータスの頭部に攻撃を仕掛け。
「ディオンさん!!ここは私たちに任せて!あなたのおかげでだいぶ時間が稼げたわ。あいつの首が出てきたから、今がチャンスよクリス!!」
クリスとカレニアがヴォルカス・トータスの頭部を取り囲むと、術を唱える態勢に入る。
「まずはクリスが奴の動きを止めて!!その間に私が土の術で押すわっ!私たちはこんなところで絶対に負けるわけには行かないわ!!ここで負ければ、リリシアの首を討ち取られてしまいますわっ!」
カレニアの指示で、クリスはヴォルカス・トータスの動きを遅くする術を唱える。
「速く動くものに、重圧を与えよっ!!波導の術・重圧波!!」
クリスが術を唱えた瞬間、ヴォルカス・トータスの動きが止まる。堅い甲羅と重力呪文のせいで、ヴォルカス・トータスは一歩も動けない状態であった。
「ありがとうクリス!!これで奴に大きなダメージを与えることができますわ!!喰らえっ!グランド・バレット!!」
カレニアが動けないヴォルカス・トータスに土属性の術を唱える。するとヴォルカス・トータスの頭部にに岩の礫が命中する。
「ぐおおっ!」
カレニアの術を受けたヴォルカス・トータスは痛さのあまり少し怯んだが、またすぐ態勢を立て直し、反撃に入る。
「私を怒らせたな・・ならばお前ら全員ここで焼き尽くしてやる!喰らえ、ヴォルカノ・キャノン!!」
怒りが頂点に達したヴォルカス・トータスは背中の穴から溶岩を噴火させ、クリスたちを襲う。それどころか、溶岩の弾が町にも降り注いでしまう有様であった。
「いかんっ!!あいつめ、町まで壊すつもりかっ!あの背中の穴・・奴はあの穴の中で溶岩を精製しているようだな・・。クリス!カレニア!!一旦奴から離れるんだっ!!」
ディオンの声を聞いたクリスとカレニアは、一旦ヴォルカス・トータスから離れ、ディオンの元に駆け寄る。ディオンは二人が来たことを確認すると、二人に勝つための作戦を話し始めた。
「いいか、クリスとカレニアよ・・。奴の弱点はあの背中の穴の中だ!!奴は穴の中で溶岩を精製しているようだ。あの中に水の攻撃を放てば、穴の中にある溶岩が冷えて固まり、奴は溶岩を精製できなくなる!!今は近づけないが、噴火が収まって体内の溶岩が無くなって来たときがチャンスだ!」
ディオンの指示を聞いたクリスとカレニアは、ヴォルカス・トータスの噴火が止まるまで様子を見ることにした。その間にディオンはリリシアの治癒を施すことにした。
数分後、突如ヴォルカス・トータスの動きが止まった。体内の溶岩が減ってきたので溶岩を増やすためであった。リリシアの治癒をしていたディオンは戦線に戻り、クリスにそう言う。
「クリスよ、お前の水晶術の推進力で、俺をあの亀の背中まで飛ばしてくれ!溶岩を作っているときに奴によじ登れば火傷ではすまされないことになるからな・・。」
ディオンの言葉で、クリスは首を縦に振り、了承のサインを送る。
「わかりました。持てる限りの力で、何とかしてみます!水晶術(クリスタル・スペル)!クリスタル・ニードル!!」
クリスが水晶術を唱えて水晶の塊を生み出すと、その水晶の上にディオンが飛び乗る。水晶術の推進力を利用し、ディオンはヴォルカス・トータスの甲羅の上まで来ることができた。
「おっと・・。奴の背中はまるで火山だな。それよりも背中の天辺にある穴を探さないとな・・。」
ディオンはヴォルカス・トータスの背中の天辺にある穴にやってくると、その穴の中に水の術を放った!!
「今だ!!喰らえっ!アクア・ウェイブ!」
ディオンは穴の中に手を入れて術を唱えた瞬間、水の波動がヴォルカス・トータスの体内の溶岩を冷やす。溶岩が冷えたことにより、ヴォルカス・トータスの体内では、今にも背中の穴から水蒸気が噴き出される様子であった。
「やばい!!今にも背中から水蒸気が噴き出してきそうだ!早いところ奴から離れなければ、熱でやられてしまいそうだ!!」
ディオンは急いでヴォルカス・トータスの甲羅から飛び降り、クリスたちの元へと急ぐ。ヴォルカス・トータスは体内の溶岩が水によって冷やされたため、体内が水蒸気で充満していた。
「ぐ・・ぐおおおっ!体が冷える・・何が起こったんだっ!!」
ヴォルカス・トータスがそう言うと、ディオンが答える。
「お前の弱点は背中の穴の中にある溶岩だ!!なぜならば、溶岩は水に触れると冷えて固まってしまうということだ。だから私はその穴の中に水の術を放てば、当然その現象が起こる。お前の体は水蒸気で充満され、大爆発を起こすであろう・・。リリシアの痛み・・これで少しは思い知るだろう・・。」
ディオンがそう言うと、水蒸気によって体が大きく膨れ上がり、レミアポリスの上空に浮遊するヴォルカス・トータスが答える。
「ぐ・・ぐおおっ・そんなバカなっ・・!!し・・死にたくないー・・ぐわああああっ!!」
ヴォルカス・トータスがそう言った瞬間、体内の水蒸気がついに大爆発を起こし、ヴォルカス・トータスは粉々に砕け散った。その大爆発のせいで、レミアポリスでは数分にわたり強風が吹き荒れた。
ヴォルカス・トータスが倒され、全員がリリシアの元に駆け寄る。フィリスの治癒を受けていたリリシアだが、まだ水蒸気の熱による衰弱が激しく、一日安静にする必要があった。
「はぁ・・はぁ・・・。」
水蒸気の熱にやられたリリシアの呼吸は荒く、ひどく疲れている様子であった。フィリスは傷ついたリリシアを抱え、レミアポリスの宮殿へと向かっていく。
「事態が鎮静化しましたね。さぁ早くリリシアの手当てを!!皆さん、宮殿に向かいましょう!」
フィリスが宮殿に向かっていく様子を、リリシアの臣下が心配そうに眺めていた。
「リリシア様・・死んでしまうのかなぁ・・。」
魔導魚兵が悲しい表情でそう言うと、魔導獣兵が答える。
「お前・・リリシア様から弱音を吐くなといわれただろ!!今はリリシア様の回復を祈るだけだ!!俺たちができることをしなければ、リリシア様が死んでしまうのだぞっ!」
魔導獣兵がそう言うと、魔導魚兵が表情を変えて答える。
「リリシア様を元気付けるために、私たちも宮殿に向かいましょう・・。私たちリリシア様の臣下として、できることをやるしかないんです!!」
魔導魚兵がそう言うと、いつもは寡黙な魔導鳥兵が答えた。
「・・・そうだな。私たちはリリシア様に忠誠を誓ったのだからな・・。まぁいい、俺も宮殿に行ってやるか・・。」
リリシアの臣下たちはリリシアを元気付けるため、一斉に宮殿に向かっていった。
一方リリシアは皇帝の間のベッドに寝かされ、回復を待っていた。心配するクリスたちの前に、リリシアの臣下たちが駆けつけてきた。
「リリシア様っ!!大丈夫かっ!」
臣下たちがリリシアの手を握り、心配する。リリシアの無事を祈る臣下たちの姿を見たとき、彼女の目からは涙がこぼれた。
「はぁはぁ・・・ありがとう・・我が臣下たちよ・・。私、絶対死んだりしないから・・安心して・・。」
リリシアを心配するかのように、魔導獣兵が涙をこらえながら答える。
「絶対死ぬなよっ!!死んだら俺たちはどうすればいいんだっ!はやく元気な姿を俺たちに見せてくれよ・・。お前ら・・外に出るぞ・・。」
悲しみの中、リリシアの臣下たちは宮殿を後にするのであった・・。
そして夜が開け、朝が来た。リリシアは元気を取り戻し、今では立って歩けるまでに回復した。今まで寝ないでリリシアの看病を交代で続けていたフィリスとカレニアは、疲れ果てて眠っていた。
「ありがとう・・フィリス様・・カレニア・・。私のために看病してくれるなんて・・嬉しい・・。」
リリシアは嬉しさのあまり涙が出そうになるが、必死にこらえて安静にするのであった・・。
クリスたちによって火炎亀ヴォルカス・トータスは倒れた。
しかし、これから5人に苦難の旅が待っていることなど知る由も無かった・・。