蘇生の章第七話 火炎亀ヴォルカス・トータス
平和な日々が続いた中央大陸の大都市、レミアポリスに突如魔物が現れた。魔界から現れた魔物たちの目的は、賞金を懸けられたリリシアの首を討ち取る事であった。外の騒ぎに気がついたクリスたちは、リリシアの臣下の魔物たちの力を借り、次々と敵を蹴散らしながら先へと進む。しかしその先には大きな火炎亀との戦いで負傷したディオンとカレニアの姿がそこにあった・・。
「ディオンとカレニアが挑んでも歯が立たないなんて予想外だわ・・。早くあいつを倒さないと、町中に被害が出てしまうわ!!」
クリスはナイフを手に取り、一気にヴォルカス・トータスに立ち向かっていく。しかしクリスの攻撃はヴォルカス・トータスの堅い装甲には傷一つ付かなかった。
「ナイフなんぞでこの俺の堅い体にダメージは与えられんぞ!喰らえ、マグマ・バスター!」
ヴォルカス・トータスは背中にある穴をクリスに向けると、その穴から炎の塊が放たれ、クリスめがけて放った。クリスは咄嗟に盾を構えて防御するが、炎の弾の勢いは収まらず、その衝撃によりクリスは大きく吹き飛ばされた。
「きゃああっ!!」
大きく吹き飛ばされたクリスは、大きなダメージを受けたが、すぐに態勢を立て直す。その様子を見たリリシアは、ヴォルカス・トータスに攻撃を仕掛けるべく、術を唱える。
「よくもクリスをっ!!沸きあがれ我が魔力!喰らえっ、ダーク・ウェーバー!」
リリシアが呪文を唱えた瞬間、手のひらから水の波動が放たれ、ヴォルカス・トータスの頭部にヒットした。水の波動を受けたヴォルカス・トータスは苦手な属性攻撃だったのか、後ろへとのけぞる。
「おのれ・・よくも我が弱点である水の攻撃を私に与えてくれたな・・。だが・・それが命取りになるという事を思い知らせてやる!!」
ヴォルカス・トータスは頭部に残っている水分を吸収した瞬間、背中の穴から勢いよく水蒸気を噴き出し、クリスたちを襲う。
「視界を奪ったあとでリリシアの首を討ち取る・・喰らえっ!!スチーム・ブラスト!」
水蒸気が噴出され、クリスたちは何処にいるのか分からなくなった。クリスを探すため、リリシアは髪飾りを鉄扇に変えると、水蒸気を掻き分けながら進んでいく。
「こうすれば・・少しは水蒸気の煙幕が晴れ、クリスを見つけられるはずだわ・・。早くクリスを見つけないと・・さらにあの亀からダメージを受けてしまうと、クリスの命が危ない!」
リリシアは必死でクリスを探して水蒸気の中を進んでいく。その間にも、ヴォルカス・トータスの背中の穴から噴き出される熱と水蒸気により、リリシアから体力を奪っていく。
「熱い・・水蒸気と熱で体の自由が奪われる・・。早くクリスを探さないと・・でも、もう・・動けないわ・・。みんな・・・ごめん・・ね・・。」
リリシアは水蒸気と熱で体力を奪われ、とうとう倒れてしまった。
一方治癒を受けていた二人は、水蒸気によってクリスとリリシアとの姿が見えなくなったことが心配なのか、ディオンが水蒸気の煙幕の中に向かっていこうとしたとき、フィリスが呼び止める。
「おやめください!まだあなたの体力はまだ完全に回復してはいないのです!!その状態で水蒸気の煙幕の中に入れば、水蒸気の熱で倒れてしまいますわっ!今すぐ戻ってくるのです!」
フィリスがそう言ってディオンを呼び止めようとするが、ディオンは大丈夫な表情で答える。
「大丈夫だ。私には気流を操る術を持っている。その術は自分の周りに空気の渦を作り出すものだ。クリスがレミアポリスに来るまでの一ヶ月、ずっとその術を生み出すための修行をしていたのだ・・。空気をうまく練り合わせ、渦を作り出すまで苦労したものだ・・。じゃあ、フィリス様・・クリスたちを助けに行ってくるぞ!」
ディオンはそう言って水蒸気の煙幕の中に入る前に、一ヶ月もの修行で身に着けた気流の術を唱え、煙幕の中に入る。
「風よ・・俺に力をっ!!風術(ウインドスペル)・ウインドバリア!」
ディオンが術を唱えた瞬間、ディオンの周りに気流が生まれ、水蒸気の煙幕をかき消す。ディオンは急いで煙幕を掻き分け、クリスたちの元へと向かう。その様子を、ヴォルカス・トータスは見ていた。
「また一人水蒸気の餌食となる奴が来たか・・。まぁいい、私には水蒸気の中でも見える目があるからな・・。お前が何処にいようがお見通しだ。」
ヴォルカス・トータスはそう言うと水蒸気の噴出を止め、クリスたちを助けに向かうディオンを倒すため、大きな足を上げて進んでいく。
「クリスよ!大丈夫か!?今回復の薬を飲ませてやるからな!」
ディオンはクリスの元へと来ると、すぐさま回復の薬を飲ませる。どうやら彼女は水蒸気の熱でかなり体力を奪われていた。回復の薬で体力を回復したクリスは、心配そうな表情でディオンにそう言う。
「ありがとう・・でも・・私を助けに向かったリリシアが心配なの・・。はやく助けないと首を討ち取られてしまうわ!!」
クリスがそう言うと、ディオンが気流の術をクリスに唱える。
「こいつは気流の術だ。クリスの周りの水蒸気の煙幕をかき消し、熱による体力の現象を防いでくれる。こいつを会得するには大変だったぞ・・。じゃあ、リリシアを助けに行くとするかっ!」
ディオンがそう言うと、クリスと共にリリシアを助けに向かった。
一方水蒸気の熱で薄れ行く意識の中、リリシアはクリスの元へ向かうべく、再び立ち上がろうとした瞬間、ヴォルカス・トータスの大きな足がリリシアを捕らえた。
「きゃああっ!!」
ヴォルカス・トータスの大きな足が、リリシアの動きを封じる。動けない魔姫の目に、ヴォルカス・トータスの大きな頭が映る。
「やっとお前の首を狩ることができる・・。お前には苦しみながら首を狩られるのがお似合いだ!!たっぷり痛めつけた後、お前の首をこの鋭い牙で噛み千切ってやる。噛み千切った後、その首をメディス様に持っていけば、賞金がもらえるって訳だ。それだけで俺は大金持ち、安いものだろ・・?」
うきうき顔のヴォルカス・トータスはリリシアを踏み潰しながらそう言う。その言葉に怒りを感じたリリシアは、痛みに耐えながら反論する。
「うぐぐ・・私の首がそんなに価値があるわけ・・。だったら首を狩られるわけにはいかないわ・・だったら・・こうしてあげるわっ!!」
リリシアは手のひらから強烈に眩い黒い光を放ち、ヴォルカス・トータスの目を晦ませる。その隙をついて、リリシアは残っている力を振り絞ってヴォルカス・トータスから離れる。
「ぐおおお・・・目が!目を開けていられん!小娘め・・こしゃくな真似を・・。」
ヴォルカス・トータスは目を擦りながらそう言った時には、リリシアはすでにヴォルカス・トータスの視界から消えていた。
「クリス・・今助けて・・・あげるから・・待ってて・・。」
リリシアは再び立ち上がり、再びクリスを探すために歩き続けるが、すでにリリシアの体力は限界に達しており、いつ倒れてもおかしくない状態であった・・。
「ダメだわ・・もう体力が持たない・・・。でも・・がんばるしかない!」
リリシアは最後の力を振り絞り、クリスの所へと向かうものの、力尽きて倒れてしまった。
リリシアを助けるべくクリスたちは水蒸気の煙幕を掻き分けて進んでいくと、クリスたちの目の前に映ったのは、力尽きて倒れているリリシアの姿であった。
「リリシアっ!!」
クリスがリリシアの元に駆け寄り、生死を確認する。
「クリスよ・・リリシアは無事か!?」
クリスはリリシアの心臓の鼓動を確かめると、ディオンにそう言う。
「リリシアは無事よ・・。でも今はかなり疲れている様子だわ。私を探すために、ずっと水蒸気の熱と戦っていたにちがいないわ・・。はやくフィリス様のところへ・・」
クリスがリリシアを背負い、フィリスのところへと向かおうとしたとき、水蒸気の煙幕が消え、ヴォルカス・トータスが姿を現した。
「そうはさせんぞ・・。リリシアはもはや私の水蒸気と熱でもう衰弱しきっておる。後は首を取ってメディス様に渡せば賞金がもらえて、正に一石二鳥。いや、お前たちの首をあわせてメディス様に渡せばその分多くの金が手に入るから、一石三鳥!!」
ヴォルカス・トータスがそう言うと、その言葉に怒りを感じたディオンが答える。その間にクリスは倒れたリリシアを安全なところへと避難させる。
「リリシアは私たちがなんとしても守る!リリシアをお前たち・・そしてお前が言っていたメディスとか言う奴に・・決して渡しはしないっ!!」
ディオンは肩に掛けたツヴァイハンダーを構え、ヴォルカス・トータスを迎え撃つ態勢に入る。今の装備では歯が立たないと感じたクリスは、術を唱えるべく、ディオンの後ろへと下がった。
「あの大きな亀の弱点である水の攻撃はダメよ・・。奴は水を吸って水蒸気を出してくるわ。そうなれば同じことの繰り返しになってしまうから、気をつけて・・。」
クリスがディオンに相手の情報を伝えると、ディオンが答える。
「わかった。では、戦いと行くか・・。二人でこの強敵を打ち破るぞっ!」
ディオンがそう言うと、フィリスから治癒を受けていたカレニアが急いで走ってきた。
「私も戦います!!このようすだと、苦戦を強いられるわね・・。リリシアの命を奪うものには、制裁が必要ですわねっ!」
カレニアがそう言うと、細身の剣を手に持ち、ヴォルカス・トータスと戦う準備をする。ディオンは倒れたリリシアを抱え、フィリスのところへと急ぐ。
「フィリス様・・リリシアの治癒を頼む!!水蒸気の熱にやられたようだ。早く治癒を施さないと命にかかわってくる・・。」
フィリスはリリシアを地面に寝かせると、治癒を施すべく、リリシアに手をかざす。リリシアはかなり疲れており、息も絶え絶えであった。
「かわいそうに・・水蒸気の熱にやられたのね・・。今私が回復してあげるわ。」
フィリスはリリシアの治癒をしている間、クリスたちはヴォルカス・トータスと戦うのであった。
ヴォルカス・トータスに苦戦を強いられるクリスたち。
リリシアとフィリスを欠いたクリスたちは、ヴォルカス・トータスに勝てるのか!?