蘇生の章第五話 魔界王の策略


 フィリスの説得により、ついに心を開いたリリシアと共にレミアポリスへと戻ろうとしたが、突如崖が崩落し、気がついたら砂浜に倒れていた。クリスたちはアメリアとともにリリシアの魔力を追って砂浜に倒れている二人を発見し、全員はすぐさまレミアポリスへと帰還した。
 「二人とも無事でなによりだ・・。フィリス殿よ、何があったのか説明してくれぬか?
アメリアがフィリスに問いかけると、フィリスがこう答える。
 「私はリリシアをつれて帰ろうとしたその時、崖が崩れてしまい、私たちは海へと投げ飛ばされてしまいました・・。そんな時、リリシアの背中から翼が生え、私たちを近くの砂浜へと導いてくれました。」
フィリスの言葉に、リリシアがびっくりした表情で答える。
 「えっ!?私の背中から翼が!?そんなことはないわ・・。私はそんな能力は身に着けてはいないのに・・・。しかし、それだけは分かるわ・・あの人を守りたいって言う気持ちがそうさせたのかも知れないわ・・。」
リリシアがそう言うと、フィリスがリリシアの耳元で囁く。
 「私の命を救ってくれてありがとう・・。さぁ、みんなに謝るのよ・・。」
リリシアがクリスたちの目の前に来ると、全員に謝罪の言葉を送る。
 「みんな・・いきなり皇帝の間を飛び出したりしてごめんね・・。私のことを・・人間だと思ってくれる?
リリシアの言葉に、クリスがリリシアの前に来てそう言う。
 「そこにいるすべての人は・・みんなリリシアの仲間よ。あなたの事を人間だって思っているわ。だから、もう一人じゃない・・。私たちがついているわ。」
クリスの言葉に、リリシアは目に涙を溜めながら全員にそう言う。
 「みんな・・私のことを人間だと思ってくれていた・・そういわれると涙が出てきてしまって・・ぐすっ・・。」
リリシアが涙を流しながらそう言うと、そばにいたディオンが答える。
 「すまぬが、なぜ君がリュミーネのことを知っているのだ?私の妹君と何があったか教えてくれないか?
その言葉にリリシアが恐る恐る口を開き、ディオンにそう言う。
 「リュミーネは私の友達よ。でも・・魔導城でベルに殺されちゃったの・・最初は敵としてリュミーネと戦っていたけれど、あの人と戦ううちに自分の過ちに気付き始めたわ・・。魔導城でリュミーネと戦って、ボロボロになって初めて分かった・・。人間の優しさというものをね。戦いが終わり、リュミーネは倒れた私に涙まで流して優しくしてくれた・・そしてあの人は、私にそう言ったの・・。『私と友達になってくれる?』と言って手を差し出してきた。そして私はしっかりとリュミーネの手を握り締め、彼女と友達になったの・・。彼女の手はすごく暖かくて・・人間の暖かさが伝わってくるみたいだったわ・・・。しかし・・私が先に進むリュミーネを見送った瞬間・・ベルの魔弾がリュミーネの体を貫いき、その魔弾の銃口を私に向けた時、リュミーネがそう言って私を生かしてくれた・・。」

『私の分まで・・・生きて・・。あなたは自由よ。私の残った最後の魔力で・・あなたを人間界へと移動させてあげるわ。』

 その言葉を聞いた瞬間・・私の体は一瞬にして魔導城から消え、フレイヤードの洞窟で倒れていた。そして、偶然通りかかったカレニアに助けられ、現在に至るって言うことよ・・。」
リリシアの言葉に、ディオンが深刻な表情で答える。
 「リュミーネが死んだと言うことは・・アメリア様から聞いた。リュミーネが最後の力で君を助けてくれたんだな・・。よかった、我が妹君が君にすべてを託したのだ・・。」
ディオンがそう言うと、リリシアがディオンをしっかりと見つめながら答える。
 「私・・リュミーネの分まで強く生きるわ・・。ディオンさん・・いろいろとありがとう。」
リリシアの言葉に、ディオンは照れながら答える。
 「『さん』はいらない。ディオンでいいぜ。俺はリュミーネからは兄さんって言われているんでな。」
ディオンの言葉に、リリシアが嬉しそうな表情で答える。
 「じゃあ、改めてよろしくねっ!!ディオンっ!
そんなリリシアとディオンの会話を、魔界の者が偵察に使う蟲のひとつ、記憶蟲が皇帝の間の窓から見ていた。その様子を記録すると、すぐさまどこかへ飛び去っていった。

 レミアポリスから飛んでいった記憶虫は、魔界の首都ルーズ・ケープのメディスのいる王宮へと帰還した。記録蟲はその大きな目を開くと、レミアポリスであった出来事が映し出される。
 「何だこの映像は・・?あの男のそばにいるその娘は・・まさか・・リリシアかっ!?まさか魔王たる者が人間に毒されたのか・・。」
メディスは目を疑った。レイオスたちに倒されたと思ったリリシアが生きていたのであった。
 「まさか・・生きていたとはな・・。七体の魔王にそれぞれつけてある魔導発信機が壊れたみたいだな・・。どうりでリリシアの魔力が感じられないわけだ・・。まさか七大魔王への謀反と言うものか・・・。ガルフィスよ、今すぐリリシアを賞金首にし、地上界へと魔物を送れ!
メディスの言葉を聞いたガルフィスは、すぐさま魔界の者たちを呼び、王宮の王座の間に収集させる。魔界の者が王座の間に集まると、メディスが魔物たちにそう言った。
 「いいか魔界の者たちよっ!七大魔王の謀反人、リリシアを賞金首にする!!もしリリシアの首を討ち取った者は三万DG(デモンゴールド)を与える。最初は三万だが、首を取るものがやられれば賞金は跳ね上がるぞ・・。どうだ、勇気のある者はいないか!?
メディスの言葉に、王宮に集まった魔界の者たちが手を挙げて叫ぶ。
 「うおおおおおおおおっ!!!やってやるぜっ!賞金のためなら、何だってできるぜ!!
魔界の者たちが声を上げるなか、メディスが何かを取り出し、集まった魔界の者たちの胸に何かをつけていく。
 「リリシアを倒しに行く前に、これをお前たちに付けておく。それはお前たちの生死を確認するものだ。もしもつけている者が死ぬと、魔力の波長が消え、私に伝わるという仕組みというわけだ。さぁ、魔界の者たちよ、リリシアの首を討ち取ってくるのだ!!
メディスの命令により、魔界の者たちが人間界に向けて移動を開始した。そう・・すべてはリリシアの首を討ち取るために・・。
 「魔界の強き者たちよ・・・必ず謀反を犯した七大魔王の一人であるリリシアの首を討ち取り、我が元へ戻ってくるのだ・・。クックック・・・大勢いる魔界の強き者がリリシアの首を持ってくる日が楽しみだ・・・。」
メディスは不敵な笑みを浮かべながら、王宮のテラスから魔界の月を見ていた・・。そのメディスの後姿を、不安そうな表情でガルフィスが見つめながら小声で呟く。
 「私はメディス様の考えには反対だ・・。きっとメディス様はリリシアを殺すために人間界へと魔界の強き者を送り込んでは・・人間界まで巻き込むおつもりだ。私はメディスの放った魔物を倒すため、人間界へと赴くとするか・・。」
ガルフィスは人間界へと赴く前に、嘘交じりの言葉でメディスにそう言った。
 「すまぬが・・私もリリシアを殺すために・・人間界へと赴く。必ずやリリシアの首を討ち取ってまいりますぞ!!
ガルフィスはそう言うと、人間界へと向かった魔物を後を追うべく、行動を開始した。ガルフィスはリリシアを殺すために人間界に赴いたのではなかった・・。その理由は賞金をかけられたリリシアを付けねらう魔物を倒すべく赴いたのだ・・。
 「お許しください・・メディス様!!これは私の意志だ・・。人間として生きる道を選んだ彼女を・・決して死なせやしないっ!!
ガルフィスはそう言うと、人間界へと向かう魔物を追うことにしたのであった・・。

 王宮の王座の間には、メディスだけが残った。
「魔導城で三個の魂石(ソウルキューブ)が見つかったという話を残りの魔王が言っていたな・・。奴らは綺麗なものには目がないので、ひとつずつ持っておくと言っておった。さて・・これから暇だな・・。」
メディスは退屈そうな表情を浮かべると、再びテラスに行き、空を見ていた・・。

 一方魔界からリリシアを狙って魔物たちが来ている事を知らないリリシアは、一晩レミアポリスの王宮で休息の時を楽しんでいた。
 「ふう・・。もう夜だわ・・今日はいろいろ疲れたわ。レミアポリスの王宮は魔界とは大違いだね・・。」
リリシアは王宮の中にある客人用の部屋で休息を取っていた。その部屋で、クリスたちと会話を楽しんでいた・・。
 「フィリス様から聞いた話なんだけど・・あなたの背中から翼が生えたって本当の話なの!?
クリスの言葉に、リリシアは笑いながら答える。
 「ふふっ・・そんな事あるわけがないでしょ・・。私背中には羽が生えてませんわ・・。何かの身間違いよ・・。あの事件以来、人間と心を通い合わせることができたみたい・・。」
リリシアが笑いながらそう言うと、客人用の部屋に兵士が駆け込んできた。
 「大変です!!皆様、レミアポリスに魔物が攻めてきたのだ・・。我々が手を尽くしましたが、兵力が足りなくて困っている。あなたたちも手を貸してくれぬか!!
兵士の言葉に、部屋にいた全員が声を合わせてそう言う。
 「ええ、共に戦いましょう!
クリスたちがそう言うと、全員はレミアポリス襲撃する魔物を殲滅するため、王宮の外に出るのであった。

魔界王メディスの計画により、人間界に魔物が放たれた。
賞金を懸けられたリリシアは、この先どうなるのか!?

 

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