新章激闘編第六十五話 断罪の聖炎!!聖鳥、舞う!

 

 魔導獣ディオ・ヴァルギルスの体から放たれた膨大なる魔導エネルギーを消し去るべく、アメリアとクリスたちは急いで魔導学校の屋上へとやってきた。
 「ダグ殿・・クリスたちを連れてきた。早速始めてくれぬか・・。この世界の明暗がかかっておる。」
アメリアがダグにそう言うと、屋上にいる魔導士全員が配置につく。その様子を見ていたクリスたちも、魔導士たちの輪の中に入っていった。
 「すみません・・私たちもできることがあれば手伝わせてもらえますか・・?
クリスが他の魔導士たちに手伝うように言う。すると他の魔導士はぼそぼそと離し始めた。
「本当にダグ様はこの人選で大丈夫なんでしょうか・・。」
「ああ・・こんな子供と女一人の魔力では足りないわ。いっその事ほかの魔導士を派遣しましょう。」
彼らの返答は、まるでクリスたちを冷たくあしらうようであった。
 「ちょっとアメリア様、今の聞いた!!これは私たちに対する差別ですわ!アメリア様もあいつらに何とか言って!!
魔導士たちの不謹慎な言動に、クリスは怒った表情になる。彼女は小声でアメリアにそう言うと、アメリアがクリスに答える。
 「クリスよ・・。ここは我慢するのじゃ。決して怒りの表情を見せてはいかん。怒りの表情を見せれば、奴らは私たちをさらに敵視するであろう。この場は奴らに魔力を見せ付けてやるのだ!クリスよ、お前の強大な魔力で、お前たちを馬鹿にした奴らを見返してやるのだ。」
アメリアがそう言うと、クリスは魔導士たちに見せ付けるように魔力を放出し始めた。
 「こんな私でも、この世界の危機を救うための魔力は持っているんですわ!!
クリスがそう言うと、彼女の体から強大な魔力のオーラが湧き出ていた。それを見ていた他の魔導士たちは、クリスを見てそう言った。
 「おお・・人間だが強大な魔力だ。ダグ様が認めただけはあるな・・。」
「この魔力なら・・私たちの魔力とあわせればいける!さっき言ったことは撤回するわ!私たちとともに世界を守りましょう!!
他の魔導士たちの言葉に、クリスは笑顔でこう答える。
 「私たちとともに、この世界を守るために、共に参りましょう!!さぁアメリア様、そしてみんな、配置について!!
クリスの言葉で、屋上にいる魔導士全員とアメリアたちが配置につき始めた。

 魔導士全員とクリスたちが配置についたとき、魔導士のダグが全員に言った。
「皆の者、これより魔導エネルギーを消し去るために、魔力を天に向かって放つのだ。そうすれば、この世界を覆っている魔導エネルギーを消し去る大きな力となるだろう・・。さぁ、もてるだけの魔力を天に向けて放つのだ!!
ダグの言葉で、魔導士全員が天に向かって魔力を解き放つ。クリスたちも天に手をかざし、魔力を開放し始めた。
 「魔導獣と命を懸けて戦っているレイオスさんのために・・私ががんばらなくちゃいけないわ!さぁ、アメリア様も一緒に魔力を解き放ちましょう!!
クリスの言葉に、アメリアはしぶしぶと天に手をかざした。
 「仕方ない・・。ここは私も手伝うしかないな・・。私はクリスたちよりも魔力はある。できる限りのことをするだけだからな・・。」
アメリアがそう言った後、大きく息を吸い込み、魔力を高めはじめる。するとアメリアの体からクリスをはるかに超えるほどの魔力が放出されていた。
 「す・・すごい魔力だ。先ほどの娘さんとはえらく違う魔力だ。やはりあなたたちが来てくれてよかったよ。これほどの魔力を持つ人たちなら、この世界の崩壊を救えるかもしれん!
魔導士がアメリアにそう言うと、アメリアは天に向けて強大な魔力を放った。その姿を見たクリスたちは、天に手をかざし魔力を高め始めた。
 「さぁ、私たちも魔力を天に向けて放ちましょう。すべえてはこの世界を救うためですわ!!
クリスがそう言うと、ディオンとフィリスは天に手をかざしはじめた。
 「私もがんばらなきゃね・・。こんなところで負けてはいられませんわ。今必死で魔導獣と戦っているレイオスのためにも、がんばりましょう!!
フィリスはそう言った後、魔力を一気に天へと放った。
 「俺もできる限りのことをする!!そうでもしなければ天国にいるリュミーネに笑われてしまうからな・・。見ていてくれ・・リュミーネっ!!
ディオンはありったけの魔力を開放し、一気に天へと魔力を放った。他の魔導士たちも次々と魔力を天に放つと、空が魔力の光で満ち溢れた。
 「ダグ殿、魔力は足りております。この光が世界中に届くよう、ダグ殿も協力をお願いいたします。」
魔導士の一人がそう言うと、ダグがこう答えた。
 「これほどの魔力が集まれば、世界を覆っている魔導エネルギーが消え、魔導獣の力も少しは弱まるであろう・・。後はレイオスのがんばり次第だ。では私がこの光を世界に届くよう、私の最大限の魔力をこの術にかけよう。」
ダグがそう言うと、高密度のエネルギーを手のひらに集め、魔力の光に向けて放った!!
 「私の最大限の魔力・・ここで放つ!!魔導術、テンダネスアロー!!
ダグの放った魔力は、巨大な光の矢となり、天へと向かっていく。巨大な光の矢はが天に届いた瞬間、その光はまるで流星のように世界に降り注いだ。
 「ダグ様の術が・・この光を世界中に降り注いでくれれば、この世界の崩壊も食い止められるだろう。しかし今はあの炎の鳥が倒してくれることを信じよう・・。世界を覆う魔導エネルギーが消えた今、魔導獣の魔力もかなり落ちているはずだ。今なら倒すチャンスはいくらでもあるぞ!!
他の魔導士がそう言って辺りを見回すと、魔力を出し尽くした魔導士たちはつかれきった表情であった。クリスたちもかなり疲れきった表情であった。
 「全員よくがんばったものだ・・。今は休ませておくか・・。」
魔導士の一人はそう言ったあと、その場に倒れ、眠りについた。

 一方その頃、レイオスとヴァルギルスが戦っている間、フェルスティア上空で異変が起きた。どうやら魔導士たちとクリスたちのおかげで、青空が戻ってきたのだ。
「この世界を覆う魔導エネルギーが消えていく・・。なぜか体から力が抜けていくようだ・・。しかし、魔導エネルギーを生成するこの体がある限り、何度でもこの世界を魔導エネルギーで覆いつくせる!
ヴァルギルスは力を込めて魔導エネルギーを生成しようとするが、それができなかった。魔導士たちが放った魔力の光が、ヴァルギルスの体内にある魔導エネルギーを生成する機関が破壊されていた。
 「なぜだっ!!魔導エネルギーが出ない!!あの光を浴びたせいで、魔導エネルギーを作ることができん!魔導士たちめっ!!余計なことをっ!!
ヴァルギルスがそう言った瞬間、レイオスがヴァルギルスの前に現れた。
 「もうお前はどうすることもできんな・・。このまま俺に倒されるべきだ!!
レイオスは大きな翼を広げ、大きく羽ばたき始めた。その翼からは、聖なる光の粒子が溢れていた。
 「これで終わりだヴァルギルス!!喰らえ、ルナティック・ブレイズ!!
レイオスはその羽ばたきを加速させると、大きな光の炎がヴァルギルスを焦がす。
 「ぐ・・ぐおおっ!!このまま我がこんな死に方をする訳にはいかん!
ヴァルギルスはそう言いながら必死に抵抗するものの、レイオスが放った聖なる炎の前にはなす術がなかった。
 「これが俺の力だっ!仲間の痛みを思い知れ!!
レイオスは魔力を最大限まで高めた聖なる炎を吐き、ついにヴァルギルスを灰になるまで焼き尽くした。
 「グワアアアアアアッ!ち・・ちきしょおおおおっ!!!
ヴァルギルスは聖なる炎により、身も骨も焼き尽くされ、跡形もなく消え去った。

 戦いを終えたレイオスは、フェルスティア上空で人間の姿に戻った。
「こ・・これですべては終わったんだ・・。しかし・・俺の命ももうこれまでのようだな。ブレア・・リュミーネ・・ボルガ・・。今からそっちに行くからな・・。」
死を覚悟した表情でレイオスがそう言うと、彼は地上へと落下していくのであった・・。

 レイオスの活躍により、魔導獣ディオ・ヴァルギルスは死んだ。
果たして、地上へと落下していくレイオスの運命はいかに!?

 

 

 

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