新章激闘編第六十四話 燃え上がる聖鳥・魔導士の決意

 

死んでいった仲間たちの力を借り、大きな炎の鳥と化したレイオスは、地上界へと現れた魔導獣ディオ・ヴァルギルスを倒すため、大空へと飛び立った。
 「アメリア様・・・私たちも助太刀したほうがいいかな・・?」
クリスがそう言うと、アメリアは咄嗟にクリスたちを説得する。
 「よく聞け・・、クリスたちよ・・。あいつの戦いに、我々が出る幕ではないのだ。魔導士たちにもその旨は話しておく・・。わかってくれ。」
アメリアの説得に納得がいかないのか、ディオンがアメリアに反論する。
 「しかし・・このままだと世界はどうなるのだ・・。いずれにせよ私たちも助太刀をせねばならない時が来るはずだ・・。アメリア様・・ここは私が・・・。」
ディオンがそう言って前に出ようとすると、アメリアがディオンを止めようとする。しかし、彼はアメリアを振り払い、前に進もうとする。
 「離してくれ、アメリア様・・。このままでは我が妹の命が・・。」
ディオンはそう言うと、ヴァルギルスの後を追うため、走っていく。しかし、何者かの攻撃を受け、その場に倒れこんでしまった。
 「喰らえっ!エスフラウ!!
術を放ったのはアメリアであった。ヴァルギルスを追うディオンを止めるため、威力を弱めた攻撃でディオンを気絶させたのだ。
 「ぐぐぐ・・このままではリュミ・・リュミーネの命がっ!!
ディオンはそう言った後、気を失ってしまったようだ。
「やれやれだ・・。このままお前が行っていれば無駄死にするところであった・・。リュミーネの事か・・あいつはもうこの世にはいないということじゃ・・。分かってくれ、ディオンよ・・。」
アメリアは気絶したディオンを背負い、すぐさまクリスたちの下へと戻った。

 アメリアが気絶したディオンを降ろすと、フィリスがディオンにそう言う。
「ディオン・・なんて無茶な事を・・。そんなことをすればあなたの命まで失ってしまいますわよっ!!戦士としての冷静さはどこに行ってしまったのですか!!あなたの妹君のために命を捨てる気なのですかっ!!
フィリスがそう言うと、ディオンは目を覚まし、こう答える。
 「私は・・私はただリュミーネのことが心配なだけだ・・。」
ディオンが立ち上がってそう言うと、アメリアが答えた。
 「なるほどな・・お前の妹であるリュミーネを助けたい気持ちは分かる・・。しかしお前がヴァルギルスを追って死んでしまってはリュミーネも悲しむであろう。ディオンよ・・お前にひとつ話しておきたいことがあるのだが、リュミーネの事だが・・あいつはもう・・死んでしまったのだ・・。生体反応が全く感じられないのだ・・・。」
 アメリアの言葉に、ディオンの目から涙が溢れてくる。
「リュミーネが・・死んだだとっ!?それをなぜ早く言ってくれなかったのですか!アメリア様!!
ディオンの問いかけに、アメリアは真剣な眼差しで答える。
 「ディオンよ・・悲しむでない・・。あいつは仮面の魔導士とその参謀と戦い、騎士としての誇りのために命を落としたのだ。彼女は悪を討つために、その命をささげたのだ・・。」
その言葉に納得したのか、ディオンがアメリアにそう言う。
 「ならば、リュミーネのことをよく知っているブレアと言う者は生きているのか!?あの人は一度リュミーネが自ら命を絶つ事を止めてくれた優しい人だ・・。その人は生きておるのか!?
ディオンの言葉を聞いたアメリアは、静かに目を閉じて瞑想を始めた・・。
 「うむ・・。リュミーネに続きブレアの生体反応もない・・。仲間は全滅ということだな・・。ブレアもまた誇りのために死んでいったのだ。つまり、我々の最後の希望はレイオスに託されているというわけだ・・。クリスたちよ、何も言わずに私についてくるのだ・・。」
アメリアの言葉で、クリスたちは黙り込んだままアメリアの後についてくるのであった・・。

 一方炎の鳥と化したレイオスは、ヴァルギルスと空中戦を繰り広げていた。
「我をここまで怒らせたことを、地獄で後悔するがよい!!
ヴァルギルスは大きく息を吸い込み、灼熱の炎を吐いた。レイオスはその攻撃をかわすため、大きく舞い上がり、灼熱の炎から逃れた。
 「奴が炎なら・・こっちも炎で反撃してやるぜ!!喰らえ、ヴァイオレット・フレイム!!
レイオスがそう言うと、口から紫の炎を吐き、ヴァルギルスを狙う。口から放たれた炎は、螺旋状に広がり、ヴァルギルスの逃げ場を無くす。
 「ぐぐ・・・ぐおっ!!
ヴァルギルスは炎の一撃を受け、一瞬怯んだが、またすぐに態勢を立て直す。ヴァルギルスは再び大きく口を開き、すぐさま炎を吐く態勢に入った。
 「また炎を吐こうとしているな・・。だったら今度は逆の方法で攻撃してやる!炎の鳥だが、リュミーネから受け継いだ水の力がある!!そいつを口の中に放り込んでやる!!喰らえ、ハイドロキャノン!!
 レイオスは口から水の弾丸をヴァルギルスの口の中めがけて発射する。その水の弾丸は、ヴァルギルスの口の中で爆発し、ヴァルギルスに大きなダメージを与える。
 「ぐぐぐ・・ぐぼおっ!!
口の中に多量の水を含んでしまったせいで、ヴァルギルスは炎を吐けなくなる。その隙をつき、一気にレイオスが鉤爪でヴァルギルスの体を切り裂いた!
 「喰らえっ!
レイオスの鋭い鉤爪が、ヴァルギルスの皮膚に食い込む。その痛みに、ヴァルギルスは体を激しく動かしてレイオスを振り払おうとする。
 「ぐぼあっ!!離せ、離せええええ!!早くその鉤爪を我の体から離せぃ!!
ヴァルギルスはその巨大な尻尾を振り回し、レイオスを振り払う。
 「があっ!!
ヴァルギルスの大きな尻尾の一撃を喰らい、レイオスは大きく吹き飛ばされ地面へと落ちていった。だが、地面に激突する一歩手前で地面に向かって炎を吐き出し、その炎を利用して再び空中へと舞い上がったのだ。
 「何ぃ!!あの攻撃を受けたまだ立ち上がれるとは・・。まだ足掻くつもりか・・。そろそろ考え直したらどうだ・・。」
ヴァルギルスは再びレイオスにそう言ったものの、レイオスの返答は同じであった。
 「何度言わせる気だ・・。前にも言ったとおり俺は悪の手先にはならない!!だから・・俺はお前を倒す!
レイオスがそう言うと、口に大きな炎のエネルギーを集め始めた。
 「その集めたエネルギーを、我に放とうとしても無駄だ。私のスピードをなめないでいただこう・・。」
ヴァルギルスはそう呟くと、攻撃から回避の態勢へと入る。そして、その大きな翼を羽ばたかせ、レイオスから大きく距離をとる。
 「この集めた炎は・・・放つのではない!!その体に纏ってお前に体当たりを仕掛けるだけだ!!
レイオスは先ほど集めた膨大な炎のエネルギーを身に纏い、高速移動を開始する。高速で移動する炎の鳥は、空へと飛び去ったヴァルギルスを追うのであった。

 一方アメリアとクリスたちは、偶然炎を纏ったレイオスの姿が目に映った。
「あ・・あれは・・もしかするとレイオスさん!!アメリア様、青の空の向こうに・・レイオスさんがいたのです!!
クリスの言葉に、アメリアが空を見上げる。その目の先には、大きな炎の鳥がだんだん遠ざかる姿が見えた。
 「おお・・レイオスよ・・そなたこそがこの世界を救う唯一の光だ・・。この世界の平和のために倒れていった仲間たちの無念を晴らしてくれ・・。クリスたちよ・・魔導士たちがあの地割れの先にある魔導城で何かを見つけたようなので、これをお前にやろう・・。」
アメリアがそう言ってクリスに髪飾りのようなものを手渡した。それは紛れもなくリリシアが常に身に着けていた髪飾りであったが、クリスにはそれが何を意味するのかが分からなかった。
 「すみません・・。これは受け取れませんわ。だから、アメリア様が持っていてください。いずれ持ち主が探しにやってくるでしょう・・。」
クリスの言葉に、アメリアは首を縦に振り、そう言う。
 「お前がそう言うのなら、私が預かっておこう。持ち主が現れたら、必ず返却することを約束しよう。それでよいな、クリスよ。」
アメリアがそう言うと、クリスはリリシアの髪飾りをアメリアに返した。
 「わかりました。ではアメリア様・・よろしく頼みますわよ・・。」
クリスはそう言うと、地割れの探索をしている魔導士たちの支援に入ることにした。

 大きな地割れの前に来た四人は、その光景に圧倒されるのであった。
「その大きな地割れ・・あの魔導獣が起こしたものなのですか・・。なんてことなの・・。」
フィリスが大きな地割れを見た瞬間、そのおぞましいまでの光景に目を疑った。
 「魔導エネルギーは、あの魔導獣から放出されているようです。このまま奴を野放しにしておけば、いずれこの世界は魔導エネルギーに覆われてしまいます!ダグ様、何か対策をっ!
魔導士の一人が息を切らしながら、ダグに駆け寄ってきた。
 「何じゃと!!魔導エネルギーを食い止めるための対策をたった今練ってきたところだ。魔導学校の屋上に数十人の魔導士を配置しておる。この人数の魔導士の魔力なら、この世界を覆おうとする魔導エネルギーを退けられるであろう。さぁ、君たちも手伝ってくれないか・・。今君たちの力が必要なのだ。私は一足先に魔導学校の屋上で待っているよ。できれば、アメリア様にも協力してもらえれば幸いだ・・。」
 ダグの言葉に、アメリアは首を縦に振りながらクリスたちにそう言った。
「さぁ、我々も魔導学校の屋上へと急ぐぞ。魔導エネルギーを消し去る魔力を作れるのは私を含めお前たちしかいないのじゃ。早く行かねばこの世界の危機にもつながり兼ねん。急ぐぞクリスたちよ!!
アメリアの言葉で、クリスたちは魔導学校の屋上へと向かうのであった。

この世界を覆おうとする魔導エネルギーを消し去るべく、魔導士たちがついに動き出した。
炎を纏い、レイオスはヴァルギルスとの最終決戦に向かう!!

 

 

 

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