新章激闘編最終話 レイオスよ、逝くな

 

 仲間の魂と融合し、炎の鳥と化したレイオスの活躍により、世界を破壊しようとした魔導獣ディオ・ヴァルギルスは倒され、フェルスティアに再び平和が戻った。しかし、変身が解けたレイオスはスピードをあげながら地上へと落下していた・・。
 「俺は真っ逆さまに地上へと落ちているのか・・。やはり上空で変身を解いたのが間違いだった。せめて地上に降りてから解除したほうがよかったのかもしれないな・・。」
レイオスは死を覚悟した表情でそう呟く。もしこのスピードで地上に落下すれば、全身の骨が砕けるのは免れない状態であった。万が一助かっても、彼の体力と魔力はすでに限界に達しており、もはや一日も生きてはいられない状態であった。
 「このまま死ぬのも悪くはない・・。俺はこの世界を二度も守ったんだ。クリスよ・・もしこの世界がもう一度悪の手に支配されたときは、俺に代わってこの世界を守ってくれ・・。」
 レイオスはそう言うと、彼は目を閉じてただ死ぬ時を待つのであった。

 一方アメリアとクリスたちは、魔導学校の屋上で魔導士たちとともに平和を分かち合っていた。
「作戦は成功したぞ!これで世界全体を覆っている魔導エネルギーは消え去り、この世界に再び平和が戻ってくるであろう。しかし炎の鳥が魔導獣を倒してくれればよいのだが・・。」
 一人の魔導士がそう言うと、他の魔導士が答えた。
「その心配はない。あの炎の鳥は魔導獣を倒してくれたようだ。なぜ私がそんなことを知っているかというと、私は魔導学校の上空から戦いの様子を見ていたのだよ・・。」
その言葉に、魔導士はそういいながら頷いた。
 「確かに、あの炎の鳥はこの世界を救ってくれた・・・。炎の鳥は世界を飛び回り、この世に平和をもたらしてくれるであろう。」
魔導士の一人がそう言うと、その場にいたダグが答えた。
 「なんということだ・・。炎の鳥が消えた。一体何が起こったのだ・・。」
ダグの困惑気味なその表情に、クリスたちの表情が曇る。
 「炎の鳥が消えた・・・ですって!!もしかするとレイオスさんが危ないわ!!もし上空で元に戻ったら、彼は海に落ちて死んでしまいます!早速助けに行きましょう、ダグ様!
クリスの言葉に、ダグがこう答える。
 「クリスよ、お前の話はよく分かった。今からでも遅くはない。私のマジックカーペットがあれば上空を飛ぶことができる。しかしレイオスが今何処にいるのかは分からぬが、それでもよいか・・。」
ダグのその言葉に、アメリアが前に出る。
 「その心配はないぞ・・。レイオスの居場所はちゃんと私のテレパシーで見えておる。奴なら今頃魔導の島から少し離れた上空をさまよっているようだ。このまま放置しておけば彼の命が危ない・・。ダグ殿、早速私たちをマジックカーペットに乗せてくれ・・。」
アメリアがそう言うと、全員はマジックカーペットに乗り込む。全員が乗り込んだことを確認すると、すぐさまダグが発進の準備をはじめる。
 「さぁ、レイオスを助けに行くぞ!!皆の者、しっかりと掴まっているのだぞ!!
ダグがそう言うと、マジックカーペットに全員を乗せ、上空をさまようレイオスを助けるべく、発進するのであった。

 全員を乗せたマジックカーペットは、魔導の島を離れ、上空へと舞い上がる。そして全員が辺りを見回すと、一人の男が落下していく姿を見つけた。
 「ひょっとすると・・あれがレイオスなのでは!!ディオン、もっとよく近づいて見て。」
フィリスが目を疑いながらディオンにそう言うと、ディオンがこう答えた
 「無理を言うなよ・・。近づけば俺は真っ逆さまに海に落ちてしまうぜ・・。」
ディオンがそう言うと、フィリスがダグにこう要求する。
 「ダグ様、すぐにあの男のところへ!!このままでは海に落ちておぼれてしまいますわ!!
フィリスの要求に、ダグは首を縦に振り、こう答える。
 「わかった!!マジックカーペットにさらに魔力を加えるぞ。しかしスピードも上昇するため、わしを除く全員が海に落ちてしまう可能性があるが、それでもよいのだな・・。」
ダグの言葉に、クリスが答えた。
 「レイオスさんのためです!!何があっても助けたいんです!!ダグ様、どうかお願いします!!
クリスの言葉に、全員がカーペットに魔力を込め始めた。
 「クリスよ!!我々が魔力を込め、スピードを上げて一気にレイオスの元に行くから、お前は迷わずここから飛べ!きっとお前にならできる!!
アメリアの言葉を聞いたクリスは、意を決して大空へと舞い降りた。

 一方上空をさまようレイオスは、あと少しで海へと落ちるのを感じていた・・。
「だめだ・・。もうすぐ海が見えてきた・・俺の人生はまだ終わっちゃいないのになぁ・・。まだやりたいこともあるのにここで死んでしまうのか・・俺は・・。」
レイオスがそう呟くと、上空から何か声が聞こえるのを感じた・・。
 「・・・さんっ!!
レイオスはほんの僅かしか聞き取れとれなかったが、その声の主がクリスだということが分かった。
 「その声は・・まさかクリスなのか!?それとも幻聴なのか・・。」
レイオスがそう言うと、耳を澄ませて声が聞こえるのを待つ。すると、上空からまた声が聞こえてきた。
 「・・レイオス・・さんっ!!
今度ばかりは鮮明にその声がレイオスの耳に響いた。レイオスは上空に目を向けると、そこには彼を助けにやってきたクリスの姿があった。
 「クリスっ!!お前・・もしかすると俺を助けに来たのか!!もしそうならば、俺を助けてくれないか!!
レイオスの言葉に、クリスが頷く。
 「そうよっ!!私はレイオスさんを助けに来たの!私のほかにアメリア様、そしてダグ様の力を借りて、ここまで来たのよ・・。」
クリスの言葉に、レイオスは嬉しそうな表情で答える。
 「うれしいぜ・・俺は・・。お前や他の仲間たちが助けに来てくれているなんてな・・。俺、なんだか嬉しくて涙が出てしまいそうだ・・。」
レイオスは目から涙を流しながらそう呟くと、クリスがどんどん目の前に近づいてくるのが見えた。そしてついに、クリスはレイオスの手を掴んだ。
 「やった!!ついに手が届いたわ。さぁ、一緒に帰りましょう・・。私とあなたが暮らしたルドリーの村へ・・・。」
クリスがそう言った瞬間、マジックカーペットに乗ったダグとアメリアたちがクリスたちの下へとやってきた。
 「クリスよ!助けに来たぞ。レイオスは無事か!?
アメリアの問いかけに、クリスは嬉しそうな表情で答える。
 「ええ!!無事ですわ。魔導の村へと急ぎましょう。まずはレイオスさんの手当てが先です!
クリスがそう言うと、レイオスは小さな声で答える。
 「アメリア様・・・俺は魔導獣を倒してまいりました・・。クリスよ・・俺が元気になったら、一緒にルドリーの村に帰ろうな・・・。絶対だぞ!
レイオスがクリスにそう言った後、アメリアが二人に話しかける。
 「よし、ディオン、フィリス殿、レイオスとクリスを抱えるのだ。」
アメリアの言葉で、ディオンとフィリスがレイオスとクリスを抱える準備に入る。
 「さぁ、レイオスよ、いつでもいいぞ。俺がしっかりと抱えてやるから心配するな!!
ディオンとフィリスは落ちてきた二人を抱え、マジックカーペットに寝かせると、ダグはマジックカーペットを発進させる。
 「レイオスが無事だったんだな・・。よかったよかった。さぁ、魔導の村に急ごう。レイオスの手当てが真っ先だ!!
ダグはそう言うと、マジックカーペットは魔導の村に向けて発進するのであった。

 魔導の村に着いたクリスとアメリアたちは、急いでレイオスを宿屋へと運び、治療が行われた。
「レイオスさんは必ず元気になるのですか・・・。」
クリスが心配そうな表情でレイオスのほうを見ながら、救急魔導士に話しかける。
 「彼の魔力、体力共に限界を超えています。このままではあと数時間しか持ちません・・。」
救急魔導士の言葉に、クリスが答える。
 「私の大切な人なのです!!どうかお願いします・・ううっ・・。」
クリスは涙を流しながら、救急魔導士に懇願した。

 悲しみに暮れるクリスに、フィリスがそっと手を差し伸べた。
「クリス・・悲しみに暮れている暇はありません。あなたがレイオスの手を握り、彼に問いかけてあげることが、元気になる唯一の方法なのです。さぁ、そっとレイオスの手を握ってあげて・・。」
フィリスの言葉を聞いたクリスは、救急魔導士の静止を振り切り、すぐさまレイオスがいる部屋へと入ると、レイオスの手をそっと握り締めながら話しかけた。
 「レイオスさん・・。私、あなたが元気になることを祈っています。あなたともう一度雪合戦もしたいし、たくさん思い出作りたいから・・・早く元気になって!!
クリスがそう言った瞬間、レイオスが何かを取り出した。それは彼が武器として使っていた双剣の片方であった。
 「これは・・お前が持っているんだ。俺が元気になったら、必ず返しに来い・・。わかったな、クリスよ・・もう俺は長くは持たない・・。俺が死んだら、前にも言ったとおり、今度はお前が俺と仲間たちを生き返らせるために旅に出るんだ・・。お前は決して一人ではない。仲間たちと力を合わせれば何だtってできるさ。じゃあな・・クリスよ・・。今まで・・ありがとうな。」
レイオスがそう言うと、彼の体が徐々に透けていくのを、クリスは感じていた。
 「お願い・・行かないで、レイオスさん・・・。」
クリスが涙を流しながらそう言った瞬間、レイオスの下半身が消えてなくなっていた。
 握り締めた手が、だんだん彼から離れていく。クリスの目からはとめどなく涙が溢れ、今にもこぼれそうであった。
 「ううっ・・行かないで・・私を一人にしないで・・・レイオスさん・・。」
クリスの涙がレイオスの手に落ちた瞬間、レイオスの体は完全に光となり、跡形もなく消えていった。その様子を聞いていたフィリスが、悲しみに暮れるクリスをまっすぐに見つめて、そう話すのであった。
 「クリス・・レイオスさんの言うとおり、今度はあなたが彼とその仲間たちを生き返らせるために戦わなくてはなりません。そのためには、あなたの大切な人を守りたい愛の気持ちと悪を討つ正義の心と勇気が必要なのです。決心がついたら、レミアポリスに来てくれますね!
フィリスの問いかけに、クリスは涙を拭いてこう答える。
 「わかりました・・。私に一ヶ月だけ猶予をください!私は、レイオスさんを助けるために強くならなきゃいけないのです。だから、お願いです・・フィリス様。」
クリスの言葉に、フィリスが頷きながら答える。
 「分かりました・・。その旨をアメリア様に伝えておきます。では、決心がついたらレミアポリスに来てください・・。では、私はこれで・・。」
 二人は固い握手を交わした後、フィリスは部屋を後にした・・。

 フィリスとの会話が終わった後、部屋にアメリアが現れた。
「なるほどな・・。フィリスからすべて話は聞いた。大切な人を守りたい気持ち、ひしひしと伝わってきたぞ。一ヵ月後、レミアポリスで待っているぞ。私はお前が来てくれることを信じて待っておるからな!!では、お前をルドリーの村へと帰してやろう。一瞬でな・・。お前たちのおかげで、この世界は救われた・・。私はこの魔導の村で休憩を取った後、仲間たちを故郷に帰し、レミアポリスに戻る。では、さらばじゃ、クリスよ!!
 アメリアが術を唱えると、クリスの体が宙に浮かび上がり、一瞬にして部屋から姿を消したのであった・・。

 一方クリスを故郷であるルドリーへと帰した後、休憩を取っているアメリアとその仲間たちが話し合っていた。
「ディオンよ・・お前も大切な人を失っているであろう・・。クリスと同じ気持ちなら、お前もクリスの旅に同行するがよい。不安なのでフィリスもつけておこうか・・。」
アメリアの言葉に、ディオンが答える。
 「わかった。我が妹であるリュミーネを生き返らせる可能性があるならば、私も旅に同行させていただきたいので、フィリス様も同行していただけぬか?
ディオンがフィリスに話しかけると、フィリスの返答はあっさりと了承してくれた。
 「いいですわ。いい押御忍び旅行になりそうですわね・・。ディオン殿、私と共に戦いましょう。あなたの大切なものを再びこの手にするために!!
 フィリスがそう言うと、アメリアが二人に話しかけてきた。
「皆の者よく聞け・・。二人が旅に参加していただけるとのこと、私は光栄に思っておる。クリスの決心がつき、ここに来るまで、自ら修行を積むのだ。新たなる力を身に着けてここに来い・・。ではお前らをウォルティアに帰してやろう・・。一瞬でな。」
 アメリアが術を唱えた瞬間、部屋から二人の姿が消えた・・。
「さぁて・・わしもレミアポリスに帰るとするか・・。」
アメリアはそう言うと、一瞬にして姿を消し、レミアポリスへと帰ったのであった・・。

闇を切り裂く、聖なる光・・・
それはいつでも みんなの心に
眠っているのです。
そして、その聖なる輝きを
与えることが できるのは
他ならぬ、あなただけなのです。
あなたが、死ぬ気と力の限り 尽くすとき
創造の神は、真の友と
なるのです。

そして、今
クリスと、仲間たちの
あらたなる たたかいが はじまる・・・。

CONTINUED TO
twin jewel stories 蘇生の章」

 

 

 

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長い話ですが、ご愛読ありがとうございました。

 

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