新章激闘編第六十三話 魔導獣、地上界侵攻!!
魔導獣のいる魔導城の最下層にやってきたレイオスは、早速魔導獣ディオ・ヴァルギルスに戦いを挑むべく、双剣を構えてヴァルギルスを迎え撃つ態勢に入る!!
「おぬしはなぜここに来た・・・我は主の呪文を受け目覚めた・・。この魔導の古代都市を滅ぼすためだけに生まれた破壊獣だ・・。目覚めたからには、この魔導古代都市・・そして地上を滅ぼしてやるのだ!!」
ヴァルギルスはレイオスにそう言うと、その巨体をレイオスのほうに向けた。ヴァルギルスはレイオスのほうに向いた瞬間、口から炎弾を吐き出してきた。
「こんな炎弾、我が衣で防いでやる!!」
レイオスがそう言うと、彼の身にまとう法衣が体を覆い、炎弾を防ごうとすうる。しかしその炎弾はレイオスの法衣を焦がすほどの威力であった。
「しまった・・法衣が使い物にならなくなったな・・。あの炎弾をもう一度でも受ければ、俺の体力が持たない・・。」
レイオスは焦げた法衣を再び身にまとい、再びヴァルギルスに向かっていく。しかし、圧倒的な力を持つヴァルギルスの咆哮が、レイオスを威嚇する。
「グルオオオオッ!!!」
ヴァルギルスのけたたましい咆哮が、レイオスを威圧する。しかし、彼はその咆哮に耳を貸すことなく、一気にヴァルギルスの頭部を双剣で切り裂いた。
「喰らえっ!!」
レイオスの双剣が、ヴァルギルスの頭部を切り裂いたが、ヴァルギルスは痛みひとつ感じなかった。攻撃を受けたヴァルギルスは、その大きな腕でレイオスを振り払った。
「お前の力など塵同然だ・・。邪魔をするものは我が爪で切り裂いてくれるわ!!」
ヴァルギルスの大きな腕の一撃を喰らい、レイオスは大きく壁に叩きつけられた。
「ぐぐっ・・・俺の双剣の一撃を喰らっても倒れないとは・・なんという強大な力なんだ・・。しかし仲間はすべてやられてしまった・・。俺一人では到底倒せない・・。」
ヴァルギルスの圧倒的な力を目の当たりにしたレイオスは、弱気な表情で双呟いた。すると何者かがレイオスの心の中に問いかけてきた。
「こんなところで負けるなんて、君らしくないよ!!さぁ、僕たちと力を合わせ、その強大な悪を討ち滅ぼしましょう!!」
レイオスの胸に、聞き覚えのある声が聞こえてきた。そう、その声の主はかつてレイオスとともに旅を続けてきたブレアであった。
「その声は・・ブレアっ!!頼む、俺に力を貸してくれ!今はあの魔導獣を倒すために必要なんだ!!」
レイオスの言葉に、彼の言葉にブレアが答えた。
「もちろんだ。僕とボルガとリュミーネの力を、レイオス、君に託そう!!」
ブレアがそう言った瞬間、レイオスの体が光り輝き始めた。眩い光の中、レイオスの心の中でもう一人の声が聞こえたような気がした。女のような声だが、リュミーネの声ではなかった。
「わたしは・・リュミーネに出会い、戦えたおかげで、私は変われた・・。しかし私の仲間であったベルに裏切られ、一人になってしまったの・・だから・・・今あなたの力になりたいのっ!!おねがいっ、私の力、受け取ってくれるよね!」
その声の主はリリシアであった。彼女はかつてリュミーネを目の仇にしていたが、彼女と戦っているうちに自分の過ちに気付き、リュミーネの言動に心を救われ、二人の間に固い友情を築いた。そして彼女はフェルスティア七大魔王の名を捨て、人間と魔族のハーフとして生きることを選んだのであった。
「そ・・その声、聞き覚えがあるぞ!!お前は確かリュミーネを敵視していたリリシアだな!お前はリュミーネを殺しておいて、よくそんなセリフを吐けるものだな!誰がお前のような悪の手先にはなるもんか!!」
力になりたいというリリシアの頼みを、レイオスは断った。彼は悪の手先にはなりたくないという思いがあった。その時、リュミーネがレイオスとリリシアとの会話の中に入り込んできた。
「やめてレイオス!今のリリシアは今まで出会ってきたリリシアではないわ・・。私との戦いで、リリシアは改心して私たちの友達・・いや仲間になったのよ・・。だから、リリシアのことを敵対視しないで・・仲良くなってあげて・・・。」
リュミーネに諭され、レイオスはリリシアの頼みを聞くことにした。
「すまないリリシア・・お前の力、使わせてもらうぞ・・。あの魔導獣は、野放しにしておくと次は地上界を攻撃するであろう。そのためにも、お前の力が必要だ。奴を倒す力を、俺にくれっ!!」
レイオスがそう言った瞬間、彼の体は大きな炎の鳥に変身した。ブレア、リュミーネ、リリシアの力を手に入れたレイオスは、闇を打ち消す炎を手に入れたのだ。右翼にはリュミーネの力の象徴である闇を打ち消す聖なる青き炎を、左翼にはブレアの象徴である絶対にあきらめぬ信念の紅蓮の炎を、そして頭部の大きな鶏冠は、美しき魔姫の力の象徴である紫の炎を纏った火の鳥が、ヴァルギルスの目の前に降臨したのであった。
「巨大な炎の鳥と化したところで、貴様に何ができるというのだ・・・。我が古代龍の力、今こそ発揮してやろうぞ!!」
ヴァルギルスは雄たけびとともに、その体を炎の鳥と化したレイオスのほうへと反らした瞬間、その大きな尻尾でレイオスを攻撃するが、いとも簡単にかわされてしまった。
「無駄だ・・。私は今まで闘ってきた仲間の力を借り、炎の鳥へと姿を変えた俺の力・・その体で思い知らせてやろうぞっ!!」
炎の鳥と化したレイオスは、大きな羽を羽ばたかせ、炎の嵐を巻き起こす。炎の嵐は、やがて大きな竜巻となり、ヴァルギルスを包み込む。
「これしきの攻撃・・私の炎弾で跳ね返してやろ・・グウオッ!!!」
炎の竜巻を受けたヴァルギルスはわずかだがダメージを与えることができた。しかしヴァルギルスの大きな翼を打ち破らない限り、地上界の崩壊の危機は免れないのだ。
「なんとしてもお前を地上界へは行かせはしないぜ!!ここでお前を倒し、仲間のいるこの世界を守るんだ!!」
レイオスはそう言うと、空に飛び上がり、大きな鉤爪をヴァルギルスの翼めがけて飛び掛った。しかしヴァルギルスは素早い身のこなしでレイオスの攻撃をかわすと、すぐさま大きな翼を広げ、地上界へと侵略を開始すべく、空へと舞い上がった
「ガハハハハハッ!!お前と戦っていても時間の無駄だな。私は地上界を侵略するとするか・・。まぁ私の手にかかれば数時間で破壊できそうだ。地上のものよ、我に平伏すがよい!!」
ヴァルギルスは魔導古代都市から地上界へと侵略を開始するのであった。その様子を見ていたレイオスは、ヴァルギルスの後を追うことにした。
――そのころ、地上界では・・・
魔導の島にできた大きな地割れから、巨大な魔物が轟音とともに空へと舞い上がっていく姿を、アメリアとクリスたちが見ていた・・・。
「とうとう魔導獣が地上界に上陸してしまったか・・・このままじゃとフェルスティアは・・・崩壊じゃ!!」
アメリアは絶望に満ちた表情で、クリスたちを見つめていた。
「あれが・・魔導獣・・。いくらレイオスさんでも敵わないわ・・・。この強大な悪を倒せる人間なんてどこにもいない・・もうこの世界は終わりだわ・・。」
クリスは悲しそうな表情でアメリアを見つめながら、そう呟く。クリスたちが絶望の表情を浮かべていたその時、魔導獣とは別の魔物が地上界に現れた。なにやら鳥のような姿をした魔獣であった・・。
「あれは・・一体なんじゃ!?ヴァルギルスとは別の魔物が、今この地上界にやってきよった!!しかしどう見ても火の鳥のようにしか見えないな・・。」
青と紫の炎を纏った炎の鳥を前に、アメリアはただ呆然としていた。その炎の鳥は、アメリアとクリスたちを見つめ、そう言った。
「クリス・・そしてアメリア様・・・。この世界を守るため、俺はあいつを倒さなければならない。今まで旅してきた仲間の魂と融合し、俺は大きな炎の鳥に変身した!」
クリスとアメリアたちは、その炎の鳥の正体がレイオスだということが分かった。クリスはその炎の鳥を見つめながら、そう言う。
「レイオス・・もしかして、レイオスさんなのでしょうか!?この世界を救う唯一の光・・そう、希望の光を生み出すのはあなた自身です!さぁ、空へと羽ばたき、悪を打ち倒すのです!!」
クリスの言葉に、レイオスはこう言葉を返した。
「生きていたら・・また会おう・・。この戦いはどちらが死ぬかの戦いだからな。もし俺が死んだら、今度はお前が旅をする番だな。俺を生き返らせる方法を探すためのなっ!」
レイオスの言葉に、クリスは涙を浮かべながら、最後の戦いに挑むレイオスを見つめていた。その時、アメリアが最終決戦に挑むレイオスを呼び止めた。
「仲間の仇、必ず取ってくれ・・。あの魔導獣を倒せば、仲間たちもきっと喜ぶであろう・・。さぁ、お前はもうここには用はないはずじゃ!!さぁ、行け!レイオスよ!!」
アメリアがそう言った瞬間、レイオスは大きな翼を羽ばたかせながら、ヴァルギルスの後を追うのであった。
魔導の島付近の上空で、彼はヴァルギルスの姿を見つけた。
「見つけたぞ!!ヴァルギルス!!」
レイオスはそう言うと、徐々にヴァルギルスのほうへと向かっていく。レイオスの気配を察知したのか、ヴァルギルスはレイオスのほうを向き、そう言う。
「この世界は俺のものだ・・。この世界の人間はすべて私の支配下にあるのだ。さぁ、レイオスよ、わしと一緒にこの世界を支配しようではないか。お前には世界の半分を与えよう。要求にこたえなけ得れば死だ・・どうだ、レイオスよ?」
ヴァルギルスの要求に、レイオスは首を横に振り、こう答えた。
「世界の半分などいらない!!誰がお前のような悪の手先になるものかっ!!」
レイオスの言葉に、ヴァルギルスはひどく不満そうな顔をしながらレイオスにそう言う。
「そうか・・・答えはＮＯだな・・。ならばここで死んでもらおうかっ!!」
ヴァルギルスはそう言うと、大きな竜に姿を変え、レイオスに襲い掛かってきた!
倒れていった仲間たちの魂が、レイオスを炎の鳥に変えた。
地上界に現れたヴァルギルスを倒すため、レイオスの最後の戦いが始まる!!