新章激闘編第六十二話 魔導獣ディオ・ヴァルギルス

 

 警備兵の案内で、魔導学校の図書館に来たアメリアとクリスたちは、早速封印されし魔導獣のこと、そしてこの世界を救う方法を調べることにした。
 「みなのものよ、この膨大なる本の中から魔導獣のことを記した本を探してくるのじゃ。くれぐれも如何わしい本や冒険譚などは調べないようにな・・・。」
アメリアがそう言うと、全員はそれぞれたくさんの本が陳列されている棚へと向かった。
 全員が去った後、アメリアはダグにこう話した。
「すまぬダグ殿、レイオスとその仲間たちの動向はどうかね・・。調べられる範囲でよい。」
アメリアがそう言うと、ダグが目を閉じて瞑想を始める。そして、一頻りの静寂の後、アメリアにこう話した。
 「アメリア殿・・・私の話を聞いてがっかりしないでくれ・・さっき千里眼の能力で見たのだが、魔導城に突入したレイオスとその仲間だが、レイオス以外の仲間は・・・すでに死んでいた・・。」
ダグの言葉に、アメリアが唖然となった。
 「な・・・何じゃと!?レイオス以外の仲間が死んだ・・・だと!!ダグ殿、それは本当の話しかね!?
アメリアが唖然の表情を浮かべながらダグにそう言うと、ダグは真剣な眼差しでアメリアを見つめながら答えた。
 「それは誠の話じゃ。レイオスたちの仲間が死んだという事は本当の話だ。生きているのはレイオスただ一人だけじゃ。あいつは魔導獣と戦うために、魔導城の最下層へと向かっているはずじゃ。奴は仮面の魔導士を倒したそうだな。あいつはよくやったと思うが、あいつ一人の力では魔導獣には到底勝てない・・。アメリア様、そしてクリスたち・・そして私たち魔導士たちも助太刀しよう。」
その言葉に、アメリアは頷きながら答えた。
 「ありがとうございます・・ダグ殿。私たちの後ろには頼もしき仲間がおる。ピンチの時には加勢してもらう覚悟でいる。魔導士たちを地割れのあるほうに緊急配備し、この地上界へと進行を開始したとき、一斉に術で足止めしてくれと言っておいてくれ・・・。」
アメリアがそう言うと、ダグは立ち上がり、アメリアにこう言い残すのであった。
 「命を懸けて・・・この地上界を守ってやるぞ。あんな化け物になんぞに、この世界を蹂躙されてたまるか・・!!私は今から魔導士を呼び、あの地割れのほうに向かう。調べ物が終わってからでもいい。アメリア様たちもどうか来てもらいたい・・。」
ダグが魔導学校の図書室を去ろうとしたとき、アメリアが呼び止める。
 「調べ物が終わり次第・・私もその地割れのほうへと向かう。我々とともに今こそ力を合わせるときじゃ!!
アメリアの言葉に、ダグは立ち止まり、こう答える。
「ありがとう・・できれば、なるべく早く来てくれ・・・。」
 ダグはそう言うと、すぐさま魔導学校を去っていった。

 図書室で調べ物をしているクリスたちであったが、どれもこれも難しい内容の本ばかりなのか、目的の本を探せないようだ。
 「この本・・難しくて読めないわ・・。フィリス様、読んでもらえますか?
クリスは難しい本を手に、急いでフィリスのほうにその本を向ける。
「ええ。この本なら私は読めるわ。ぜひとも読ませ・・・!?
クリスから差し出された本を手に取った瞬間、フィリスの表情が急に変わった。その本を見たフィリスは、探し物をしている全員にそう呼びかける。
 「これはもしかすると!魔導獣について記された本ですわ!!これを早くアメリア様の下へもっていくのです!!
フィリスの言葉を聞いたクリスは、本を片手に持ちながら急いでアメリアの元へと向かった。
 「アメリア様・・この本です!!封印されし魔導獣について記された本が見つかったわ!!
クリスはアメリアに見つけた本を手渡すと、アメリアはその本を読み始めた。
「ふむ・・・少し待っておれ。内容を調べているところじゃ・・。」
アメリアはそう言うと、クリスが持ってきた本を読み始める。少し読んでみると、魔導獣に関する内容が記されていた・・。
 「魔導獣ディオ・ヴァルギルス・・・その魔獣は、その昔この地下深くで繁栄していた魔導士の遺跡群を荒らしていた魔導獣じゃ。その力はあまりにも凶暴なので、数十人の魔導士の強力な魔力で奴を封印した。解除する呪文は、「ワールド・オブ・リコンストラクション」という術であったが、しかしながらその術が記された本はエルジェにある禁断の書・・つまりは仮面の魔導士が盗んだ物だ。彼はその呪文を唱え、魔導獣の封を解いたに違いない!!だが奴は死んだ。止める方法も聞きだせぬ・・・。残された道はあの魔導獣を倒さなければならぬ・・・。」
 アメリアが本を読んでいると、全員が集まって話を聞いていた。
「まさか・・・この地下深くに魔獣が封じられているとは・・・。信じられん!!
 話を聞いていたディオンが、アメリアにそう言う。
「そうじゃ。そのまさかじゃ・・。あの魔導獣が呼び起こされてしまったのじゃ。さらに読んだところ、あの獣はひとたび姿をあらわすと辺りすべてを破壊しつくさないと怒りが収まらぬ強暴さをもっている。あの凶暴な獣が地上界に現れたら最後、この地上界は一瞬にして焼け野原になるであろう・・・。なんとしてもあの獣を地上界に上陸させてはならぬ。我々の命をかけてでも魔導獣を倒さなくてはならない・・。皆の者よ、力を貸してくれ・・・。」
アメリアはそう言うと、全員は決意の表情でこう答えた。
 「アメリア様、私たちはいつでも力を貸してあげますわ!!あの魔導獣を何とかしても止めなきゃね!!
クリスがそう言うと、続いてディオンがアメリアに話しかける。
 「私たちが動かなければ、世界がどんどん悪い方向へと曲がっていくであろう。今こそ魔導士と我々が手を組むときだ!奴は必ず私たちで倒してみせる!!
ディオンがそう言うと、続いてフィリスがアメリアに話しかける。
 「ウォルティアの王女の名にかけて、この世界をお守りいたします!!アメリア様、どうか心配しないでください。私たちがやるべきことをしなきゃいけないわ・・。皇帝であるアメリア様も、もちろん力を貸してくれますか・・・。」
 全員の励ましの言葉に、本を読み終えたアメリアが全員に答えた。
「お前たちの言葉、確かに受け取ったぞ・・。おかげで希望の光が見えたような気がした・・。さぁ、ダグが待っている魔導遺跡群(死の世界)へと続く大地の裂け目へと急ごう!!あの魔物を野放しにすることはできんのじゃ!!
アメリアがそう言うと、全員は魔導学校の図書館を後にするのであった。

 一方レイオスは、たった一人で魔導城の最下層へとたどり着いた。
「ここに封印されし魔導獣がいるというわけだが、早速奴を叩くか・・・。」
レイオスはそう言うと、一気に魔導城の最下層の探索を始めた。しばらく進んでいると、何者かによって破壊された大きな扉がそこにあった。
 「あの魔導獣の仕業だな・・。早速奥へと向かおう・・。」
レイオスが扉の奥に進むと、その目の先には巨大な魔獣がそこにいた。その獣はレイオスの気配を察知したのか、レイオスのほうを向きながら唸り声を上げている。
 「グルル・・・我が名は・・魔導獣ディオ・ヴァルギルス・・封印から解き放たれ、自由の身になった・・・。我々を封印した魔導士たちに復讐するため・・地上界へと向かうのだ!!
ヴァルギルスの言葉に、レイオスは怒りの表情でこう答える。
 「お前を地上界へと進ませないぜ!!地上界のすべてを滅ぼそうものなら、俺が許さないぜ!!お前は、俺が倒してやるぜ!!
レイオスは双剣を構え、ヴァルギルスを迎え撃つ態勢に入る!!

ついに姿を現した魔導獣ディオ・ヴァルギルス!!
レイオスはその強敵を前に、どう戦う!?

 

 

 

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