新章激闘編第六十一話 皇帝と魔導学校

 

 魔導の島に到着したアメリアとクリスたちは、魔導の村を目指すべく、かつて緑があった荒野の中を進んでいた。世界の崩壊を止める使命を胸に、歩き続けていた。
 「ディストラの言うとおり、魔導獣が復活したことでこの地殻変動が起こっているというのか・・。だとしたら一刻も早く魔導の村へと急がなければ、このフェルスティアは完全に魔導エネルギーに満ち溢れてしまう・・みんな急ぐぞ!!
アメリアの言葉で、全員は魔導の村へ向けて、足取りを進める。しかし、それを阻むかのように、突如三人の魔導士がいきなりアメリアの前に現れた。
 「ここには魔導エネルギーが満ち溢れている・・・。ここにいると魔力が体の中にどんどん入ってくるぜ!!
三人の中の一人が、この島一帯に満ち溢れている魔導エネルギーを吸い込んでいた。アメリアたちの気配を察知した一人の魔導士は、アメリアの前に来て話しかけてきた。
 「なんだお前はっ!!お前たちもこのエネルギーが欲しいってのかよっ!!でもこの魔導エネルギーは俺たちのものだから、お前たちなんかにはあげないぜっ!!
その魔導士の言葉に、アメリアは彼らにその旨を話し始めた。
 「私たちは魔導エネルギーが目当てではない・・。私たちはこの世界の崩壊を止めるべくここに来たのだ。お前たちとは戦いたくはないのじゃ。だからここを通してくれぬか?
アメリアは彼らに手を引くように説得した。だが彼らはその説得に応じなかった。三人の魔導士のリーダー格の魔導士が、アメリアに話しかけてきた。
 「悪いが、ここを通すわけにはいかないな・・。ここを通りたければ、俺たちと戦ってもらおう。もしお前たちが勝ったら、おとなしくお前たちから手を引いてやるが、負けた時は死んでもらう・・。それでいいな!!
リーダー格の魔導士の要求に、ディオンはしぶしぶその要求をのむことにした。つまり、三人との戦いを受けて立つということであった。
 「その要求、受けて立とう。だがひとつ私からお前たちに言っておきたいことがある。一対一で正々堂々戦おうではないか。」
ディオンの要求に、三人の魔導士は不満そうな顔つきでこちらを睨んできた。その一部始終を見ていたアメリアは、不満そうに愚痴をこぼす三人の魔導士に呪文を唱えた。
 「ええい!!ディオンよっ、こんな奴と戦っても時間の無駄じゃ!!こんな奴ら、私の術で懲らしめてやる!!喰らえ、ソーン・バインド!!
アメリアが術を唱えると、蔓の鞭が三人の体に巻きつき、身動きを封じる。その隙を見て、アメリアとクリスたちは急いで走り去っていった。

 アメリアたちが去った後、身動きが取れない三人の魔導士が言い争っていた。
「に・・逃げられたかっ!!おい、ゼードがあの時奇襲攻撃を仕掛けていれば奴らを倒せたのに!!
魔導士のジュードが、ゼードに苛々をぶつける。苛々をぶつけられたゼードは、怒りの表情でゼードにこう言い返した。
 「お前こそしっかりやってくれよ!!俺たちは魔導士なんだぜ!こんな術でやられるわけがない!!
ゼードがジュードの言い争っている姿を見た三人のリーダー核である魔導士ロアードが、全員にそう言った。
 「お前たち、言い争いはやめろ・・。あいつらが魔導エネルギーを狙ってここに来たのではないと分かった以上、深追いはやめよう。おとなしく奴らから手を引くべきだと思う・・。俺たちは俺たちのやるべきことをすればいいんだ。」
リーダー格のロアードの言葉で、言い争っていた二人が静まった。冷静さを取り戻した二人は、ロアードにそう言う。
 「すまないリーダー!俺たちが間違っていたようですぜ!!これからもあんたについていくぜ!!
二人の魔導士がそう言うと、ロアードは蔓の鞭を解き、どこかへ去っていった・・・。

 三人の魔導士の強襲を退け、ついにアメリアたち四人は魔導の村へとたどり着いた。だが、かつてレイオスたちが来た時とは違い、村には地割れが起こり、すでに壊滅寸前であった。
 「な・・なんということじゃ。魔導の村がここまで崩壊してしまうとは・・。それほど魔導エネルギーの強力さが伺えるといってもよい・・。」
以前は人でにぎわっていた魔導の村だが、今では崩壊した廃墟と化していた・・。
 四人は情報収集のため、宿屋へと向かおうとした瞬間、一人の魔導士が目の前に現れた。
「おお・・そなたは中央大陸の皇帝・・アメリアさまではありませんか!?私は昔魔導学校で教師を勤めていたダグと申します。一体どのようなことがあってここに来たのですか!!
その魔導士の正体は、レイオスたちを魔導学校へと案内したダグであった。彼の表情を見る限り、疲労困憊の様子であった。
 「ダグ殿・・今この魔導の島に起こっている危機を知っておるか?封印されし魔導獣が復活し、魔導の島だけではない・・。いまやこの世界全体にも危機が及んでいるのだ・・。さぁ、ダグ殿よ、魔導学校へと案内してもらおうか・・。」
その言葉に、ダグは困惑気味な表情でアメリアにこう言ったのだ。
 「案内してくれといわれても・・先ほどの天変地異で地割れが発生して裂け目の底にある死の世界から魔物が溢れ出ているんだ・・。今は術士が何とか結界で抑えているけど、この先いつ結界が破られ、また魔物が現れるか分からない状況なんだ・・。だから、私が移動術で魔導学校へと案内してやろう・・しかし何が起こってもわしは知らんからな・・。」
ダグはそう言うと、鞄の中から大きな絨毯を取り出し、地面に広げ、絨毯に魔力を込め始めた。
 「さぁ、その絨毯に乗るがよい。今から魔導学校へと向かうぞ。落ちないようにしっかり掴まっているのだぞ!!
全員は絨毯に乗った瞬間、アメリアたちが乗った絨毯が宙に浮き始める。マジックカーペットは一見普通の絨毯だが、ダグが魔力を込めることにより、空飛ぶ魔法の絨毯に変化するのだ。
 「おおっ!!この絨毯、宙に浮いているではないかっ!!
ディオンは魔法の絨毯から地面を見ると、確かに全員が乗った絨毯が宙に浮いているのがわかった。あれほどの重量に耐えられるのかが少し心配であったが、全員はダグの言うとおりにしっかり絨毯に掴まっていた。
 「それだけの人が乗っているのにもかかわらず、この絨毯は宙に浮いていますね。途中で落ちたりしないでしょうね・・?
フィリスが疑問の表情を浮かべる。これだけの人数が絨毯の上に乗っても落ちないというのは不思議だと思った彼女は、ダグにそう言う。
 「大丈夫じゃ。このマジックカーペットに込められた魔力によって、カーペットの繊維を鉄に変えるほどの魔力だから安心せい。鉄の板ような耐久性と絨毯ならではのふんわり感を兼ねそろえた物じゃ。さぁもうすぐ動くので、しっかり掴まっておくれ。」
ダグの言葉で 全員はほっと肩を撫で下ろした。ダグは目を閉じ、マジックカーペットに込められた魔力をコントロールする態勢に入ると、マジックカーペットはゆっくりと動き始めた。
 「さぁ、魔導学校へと向かうぞ・・。みんな、しっかり掴まっているのじゃぞ・・・。」
アメリアたちを乗せたマジックカーペットは、ゆっくりと加速しながら魔導学校へと向かっていった。

 アメリアたちを乗せたマジックカーペットは、数時間も経たない内に魔導学校にたどり着いた。アメリアが魔導学校の門を見ると、無残にも破壊されていた。
 「この門・・なぜこんなにも破壊されているのじゃ。ここも魔物に襲われたのか・・・。」
アメリアがそう言うと、見張りを勤めている警備兵が話しかけてきた。
 「どうやらこの門を壊したのは仮面の魔導士とその参謀のようです。私の先輩の警備兵は殺されてしまいましたが、今は私が警備兵を勤めている身分でございます。その事件が起こったのにもかかわらず、生徒たちが全員無事なのは喜ばしいことです!!
警備兵の言葉に、魔導士のダグが答える。
 「仮面の魔導士とその参謀を追い払ってくれたのはレイオスとその仲間たちじゃ。あちらのお方はアメリアという中央大陸の偉大なる皇帝じゃ。生徒たちが無事だったわけは、緊急事態が起こったときには生徒と教師全員を鏡の世界の魔導学校に移す術を校長が持っているからじゃ。その校長がいるから、この学校の安全は保たれているのじゃ・・。」
ダグの言葉で、警備兵は納得した表情でアメリアたちを出迎える。
 「さぁ、アメリア様・・そなたたちはどんなご用件でここに来たのか話してもらおうか・・。」
警備兵の問いに、アメリアが真剣な眼差しでこう答えた。
 「我々は今起こっている危機を止めるため・・そして封印されし魔導獣のことについて調べるため、ここを訪れたのじゃ。さぁ、我々を図書室へと案内しておくれ・・。」
その言葉に、警備兵はアメリアの要求にこたえることにし、早速アメリアたちを図書室へと案内するのであった。
 「このお方たちを図書館へと案内いたします。この魔導学校の図書室には、魔導士の遺跡(死の世界)のことや、封印されし魔導獣のことが記されている本があります。では私の後ろに・・。」
アメリアは警備兵とともに、魔導学校の図書室へと向かうのであった・・・。

 危機を救うために、アメリアとクリスたちは魔導学校に辿りついた。
膨大な魔導学校の図書室の書物の中から、封印されし魔導獣のこと、そして世界を救う方法を見つけ出すことはできるのであろうか・・・?

 

 

 

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