新章激闘編第六十話 皇帝、立つ!!

 

時空船に乗りこんだアメリアとその一行は、魔導エネルギーの発生源である魔導の島へと航路を進めていた。しかしその進路を阻むべく、空中から魔物が進撃をはじめたのだ。
 「魔物がこんなところにも!?アメリア様、どういたしますか?
予想外の事態であった。空からも魔物が攻めてきたという事態に、アメリアはメルファのエンジンを発進させ、一気に回避する。
「いや、ここはエンジンを発進させて回避するぞ!!皆の者、しっかり掴まっているのだぞ!!
 アメリアの言葉で、全員がしっかりと掴まる。全員がしっかりと掴まっていることを確認すると、アメリアは一気にハンドルを握り、一気に速度を上げた!!
 「おお・・大勢のロックバードが弾き飛ばされているが、これでよかったのですか・・・。」
ディオンの問いかけに、自信満々な表情でアメリアが答える。
「大丈夫だ。機体はこの時代のものではないレアメタルでできているから安心せい・・・。だが細かな傷が残ってしまうのが難点だ・・。」
メルファはスピードを上げ、一気に魔導の島へと航路を進めるのであった。しかし何者かがそのアメリアたちの一部始終を見ていた。
 「魔導の島から膨大な魔導エネルギーが発生している・・。もしかするとこの島の地下深くに封じられている魔導獣を復活させたのでは!?まぁ呼び覚ます方法はエルジェの禁断の書しか書いていないのだが・・・。それにあの飛行船・・魔導の島に向かっていたような気が・・とりあえずあの飛行船を追う事にした。」
一人の男の魔導士が呟くと、彼は魔導の島に向かっていく。彼を追うかのように、大勢のロックバードが魔導の島へと急降下を開始し始めた。どうやらメルファを襲ったロックバードたちは、あの魔導士が操っていたのだ。
 「まさかあの飛行船・・魔導エネルギーを横取りしようとしているかもしれぬな!!先回りしてやる!!
男の魔導士はそう言うと、魔導の島へと上陸を開始した。

 魔導の島にやってきたアメリアとクリスたちは、早速魔導の島の大地を踏みしめる。だが、かつてレイオスたちが見た緑が溢れる島ではなかった。もはや草木も生えない不毛の大地と化していたのであった・・・。
「まさか・・・ここが魔導術の発祥の地である魔導の島なのですか・・・?どう見ても人がいそうな気配などしませんが、アメリア様の言うとおり、この小さな島に村なんてあるのですか?
 いつの間にか荒れ放題になっている魔導の島の光景を見て、エルフィリスがアメリアにそう言う。
「この島には村はあったはずじゃ。あの辺りに魔導の村がある。急いでそこに向かうぞ!!
全員は半ば不安げな表情であったが、アメリアの言うとおりについていくことにした。すると、いきなり目の前に男の魔導士が現れたのだ
 「どこに向かおうというのだ・・・この島から発生する魔導エネルギーを狙っているんだろう!だったらお前には渡さん!!
彼がこの島に来た目的はこの島から発生する魔導エネルギーであった。アメリアとクリスたちは魔導エネルギーが目的ではなかったが、有無を言わさず襲い掛かる態勢であった。
 「私たちは魔導エネルギーが目当てでここに来ているのではないっ!早くそこを退いてくれぬか・・。我々はこの世界を守るために戦っているのだぞ・・。」
アメリアが男の魔導士を説得するものの、彼は耳を傾けることはなかった。魔導エネルギーのことで頭がいっぱいであった。どうやらどうしても魔導エネルギーを渡したくないようだ・・。
 「悪いがここを通すわけには行かない!!私の名は魔導士のディストラだ!俺はこの島の魔導エネルギーを使い、仮面の魔導士を追い落として俺が最強の魔導士になってやるんだ!お前らなんかに邪魔はさせないぜ!悪いがお前たちにはここで消えてもらおう・・・。」
 魔導士のディストラのその言葉に、アメリアは自信満々な表情であった。彼女の後ろには、頼もしい三人の守護者がアメリアの後ろに来る。
 「ほう・・退かぬというのか・・。ならこちらとて相手になってやろう。私の後ろには三人の頼もしい味方がいるから、そいつらが相手になってやると仰っておる。さぁ、行け!三人の戦士たちよ!
アメリアの言葉で、クリスたち三人の戦士がアメリアの前に現れる。三人は威圧するかのように、ディストラを睨みつけていた。
 「お・・俺はそんなぐらいで怖気づいたりはしない!ロックバードよ、あいつらを倒してしまえ!!
ディストラの命令で、ロックバードの群れが一気にクリスたちに向かって急降下してきた。その危険を察知したアメリアは、三人の後ろで術を唱える態勢に入る。
 「あの奴・・卑怯な真似を・・。喰らえっ!インペリアル・フラッシュ!!
アメリアが手を天にかざすと、聖なる光がロックバードの大群を照らす。照らされた瞬間、ロックバードの群れを光の中へと消し去っていく・・・。
 「ふんっ・・。ディストラよ・・逃げるのなら今のうちじゃ。我々はお前と戦うつもりはひとつもないのじゃ。だからおとなしく手を引くことだな・・。」
アメリアがそう言うと、ディストラは半ば怖気づいた表情であった。あれほどの数のロックバードを一瞬にして消し去るほどのアメリアの魔力に圧倒されていた。
 「ぐぐぐ・・・、魔導エネルギーの力はどんどん世界各地に広がっていることを知らないのか・・・。あの魔導エネルギーは、この島の奥底に封印されている魔導獣が復活したときに放出される魔のエネルギーだ。二千年前の魔導戦争(エルジェ術士と魔導士の戦い)では偉大なる魔導王メルビオスがこの魔物を召喚したおかげでこの戦争を終結へと導いたのだ・・。さぁ話は終わりだ・・、たった今魔導エネルギーの発生源に行かなくとも、この地に充満している魔導士エネルギーを集めて、私はあの仮面の魔導士を追い落としてやるのだっ!!
ディストラがそう言った瞬間、体が光り輝き、見る見るうちにその姿を変貌させていく。そして、魔導士は巨大な魔獣へと変貌を遂げた・・。

 「これがこの島の魔導エネルギーの力・・想像以上だ!!体中に力がみなぎってくる!!
ディストラは体中にみなぎる力を抑えきれず、見境なく暴れはじめた。その異変に気づいたアメリアは、全員に注意を促す。
 「皆の者、奴が魔獣に変貌を遂げた今、奴は倒さなければならん!!さぁ、戦闘態勢に入るのじゃ!!
全員は戦闘態勢に入ると、すぐさまディストラを迎えうつ。暴れ狂うディストラを前に、全員は物怖じしない態度で武器を構えていた。
「ここは私が囮になって攻撃のチャンスを作るわ・・。その隙に背後から攻撃を仕掛けて!!
エルフィリスはディストラの注意をひきつけるべく、すぐさまディストラの前に立った。吼え狂う魔獣の攻撃をかわしながら、攻撃のチャンスを作っていた。
 「この攻撃に当たれば・・ひとたまりもないわね・・。ここは逃げ回って二人を助けないとね・・。」
巨大な腕から繰り出される攻撃をかわしながら、彼女は背後にいる二人のために走り回っていた。その隙に、クリスとディオンはディストラの背後に回り、一気に強烈な一撃をお見舞いする。
 「喰らえっ!ゾディアック・スピン!!
ディオンは手に持った剣を握り締め、回転を加えてディストラの背中を斬りつける。ディオンの攻撃が終わったのを確認すると、クリスが術を唱える態勢に入る。
 「水晶の術をお見舞いして差し上げますわよ!!水晶術(クリスタル・スペル)、クリスタラ・ニドリアス!!
クリスが術を唱えた瞬間、水晶でできた巨大な棘を発生させ、ディストラの背中を貫いた。その一撃により、ディストラは人間の姿に戻り、その場に倒れた。

 ディストラとの勝負に勝ったアメリアとクリスたちに、死ぬ間際にディストラがこう言った。
「魔導獣は凶悪な力だ・・・奴はひとたび目覚めると、この世界を破壊するまで暴れるであろう・・。悪しき魔導士が呼び起こしてしまったから・・世界の危機が起こってしまったのだ・・。」
 ディストラの言葉を聞いたクリスが、ディストラにこう答える。
「悪しき魔導士とは・・一体誰のことなのですか!?それを教えてください!!
クリスの言葉で、ディストラは深刻な表情で答える。その言葉を聞いたクリスたちは、唖然となるのであった・・・。
 「悪しき魔導士の名は・・バルバトーレのことだ。奴は七大魔王にして狡猾なる魔導士だ。奴は素顔を隠すため、仮面を着用しているということだけは知っている。たった今奴の生体反応が消えたところだが、封印されし魔導獣は目覚めてしまったようだ・・・。もうこの崩壊へのカウントダウンはもう始まっている・・私たちの分まで・・頼んだぞっ!!
その言葉を最後に、ディストラは二度と息をすることはなかった・・。
 「さぁ、行くぞ。ディストラの死を無駄にしないためにも、魔導の村に行き、封印されし魔導獣のことをもっとよく調べないとならない。そして、あの魔導獣を倒す方法を探るのじゃ!!
アメリアがそう言うと、全員は重い足取りで魔導の村へと向かうのであった・・。

世界の危機を守るため、ついに皇帝と三人の仲間が立ち上がった。
アメリアとクリスたち四人は、魔導の村へと向かう!!

 

 

 

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