新章激闘編第五十九話 崩壊のカウントダウンA

 

 七大魔王の一人であるバルバトーレが滅びの術を唱えたおかげで、世界は崩壊の一途をたどっていた。世界の海面は上昇し、全地域が沈没の危機に瀕していた・・。
 「どうも世界の雲行きが怪しいな・・・。魔導城にいる三人の身に何かあったのか!?
アメリアが皇帝の間から外の世界を見上げる。その目の先には紫の雲が立ち込め、中央大陸の海は、次第に荒れ模様になっていく。そんななか、一人の少女が皇帝の間にやってきた。
 「はぁはぁ・・・アメリア様はいませんか・・・?
皇帝の間の扉から、息を切らせながら少女が現れる。その正体は、一年前に水晶玉でレイオスの無事を仲間とともに祈り続けたレイオスの幼馴染であるクリスであった。
 「いかにも・・私がレミアポリスの皇帝・・・アメリアじゃが・・確かお前は一年前に見覚えがあるのじゃが・・だれじゃったっけ?
ダークキングとの戦いから一年が経ち、アメリアはクリスのことは記憶から薄れ掛けていた。そんな状況に、クリスがアメリアに話しかける。
「私です!!クリスです!一年前にあなたに会ったこと、覚えていますか・・?
その言葉に、アメリアは少しばかり緊張しながら答える。
 「ううむ・・。すまぬが、少しばかりお前のことを忘れかけていたようじゃったが、今ようやく思い出せたようだ・・。確か一年前にレイオスの無事を祈っていたようだが、たしか大きなビー玉・・だったかな?
アメリアの間の抜けた言葉に、クリスは笑いを浮かべながら答える。
 「はははは・・・それを言うなら水晶玉よ・・。私はルディア地域のルドリーの村で占い師をやっている者ですからね。」
クリスの言葉に、アメリアは再び緊張した表情で答えた。
「そうじゃった!!水晶玉じゃったな・・。すまぬ、私の勘違いじゃった。お前がここに来た理由・・じっくりと話してもらおうか・・。」
 二人は椅子に腰掛け、クリスが来た理由をゆっくりと話し始めた・・・。

 クリスが椅子に腰掛けると、アメリアが冷たい水が入ったグラスをクリスの目の前に置く。
「こんなに豪華な王宮なのに水しかないのじゃが・・よろしければ飲んでいってくれ・・。」
「ありがとうございます・・。早速飲んでもいいですか?私のどが渇いていたもので・・。」
 クリスがグラスを手に取り、水を飲み初めると、アメリアがクリスに答える。
「飲み終わった後でもいい。ゆっくりと話を聞かせてくれ。水ならお代わりは自由だぞ・・。」
アメリアがそう言った後には、すでにクリスは水を飲み干していた。するとアメリアは、再びグラスに水を注ぎ始めた。
 「どうじゃ、おいしかったか?その水は水の大国であるウォルティアの天然水だからこの辺の井戸水よりは数倍うまいはずじゃ・・。それより、ここに来た訳を聞かせてもらおうか・・。」
冷たい水でのどを潤したクリスは、早速レミアポリスの皇帝の間に来た理由を話し始めた・・。
 「私がここに来た理由・・・世界の危機が迫っているということを知り、アメリア様や王宮のみんなに対策を練ってほしいということでここに来ました!!
その言葉に、アメリアは半ば真剣な眼差しでこう答えた。
 「やはりお前もそう感じたか・・。紫の雲を見たのか・・。私は魔導城に向かった三人の身に何かあったと思うと、夜も眠れないほどだ・・。たった今外で王宮の外の魔物を討伐していた三人が戻ってきたようだ。早速その三人とお前さんを交えて、対策を練るとしよう・・。見張りの者よ!魔物討伐を任されている三人を呼んで参れ!!
 見張り番はアメリアの命を受け、すぐさま魔物討伐を任されているファルスたちを呼びに行った。クリスは二杯目の水を飲み干し、グラスをテーブルに置く。
「少し待っておれ・・。長話のせいでのどが渇いてしまったな・・水でも飲むとするか・・。」
 アメリアはグラスの水を一気飲みすると、椅子に深く腰掛けるのであった・・。

 そして数分後、クリスの元に戦いを終えた三人の仲間が現れた。
「おっ、来たようだな。三人に代わって私が自己紹介をしてやろう。右の者はファルスだ。かつてレイオスたちのリーダーを勤めてきた仲間じゃ。次に真ん中にいる者がディオンだ。そいつはレイオスたちの仲間の一人であるリュミーネの実の兄にしてウォルティア最強の戦士とも呼ばれている武勇じゃ。そして左にいる者はウォルティアの現王女にして姫将軍とも呼ばれているエルフィリスというものじゃ。彼女はリュミーネを越える光の力と剣技をかねそろえた姫で、あのリュミーネに武術を教えたのも彼女じゃゃ・・。さぁ、この世界を救うためにも、今ここで対策を練ろうではないか・・。」
 アメリアがそう言うと、全員が椅子に腰掛け、この世界を救うための対策を練るのであった。

 一方その頃、レイオスはバルバトーレとの激闘が今も続いていた。二人が熾烈な戦いを繰り広げている間にも、世界の崩壊のカウントダウンは刻一刻と迫っていた・・。
「魔王と化したこの私をここまで怒らせた罪、世界全人類の命で償ってもらうぞっ!!
バルバトーレは杖を持ち、一気にレイオスのほうへと向かっていく。バルバトーレがレイオスのすぐ近くまで来たとき、杖を宙に放り投げ、強く念じる。
 「はああああっ!!喰らえっ、サンダー・ランス!!
宙に放り投げた杖が、雷の槍となりレイオスを捉える。そのことを察知したレイオスは、すぐさま防壁の術を唱え、ダメージを軽減させる態勢に入る。
「これなら・・どうだっ!!波導の術・刹那の防壁!!
 レイオスの周りに、高密度のエネルギーでできた防壁が現れ、バルバトーレの放った雷の槍を防ぐ。しかし雷の槍は防壁を突き破ったが、雷の力は失われ、防壁の中にバルバトーレの杖が転がる。
 「こんなもの・・こうしてやるっ!!
レイオスは地面に転がったバルバトーレの杖を手に取り、力を込めて叩き割った。レイオスによって杖を叩き割られたおかげで、バルバトーレの魔力が減少したようだ。
「きっ・・貴様っ!!よくも私の杖をっ!おかげで私の魔力が衰えてしまったではないか!
 魔力が失われ、バルバトーレの体から魔力の波長が鈍くなる。攻撃のチャンスを掴んだレイオスは、すぐさま双剣を握り締めると、すぐさまバルバトーレの懐に入り込み、十字を描くように切り裂いた。
 「これで最後だっ!!喰らえ、聖迅十字斬!!
レイオスの一撃を喰らい、バルバトーレの体から魔力が消え、地面に倒れる。レイオスはすぐさまバルバトーレに近寄り、こう言う。
 「さぁ、滅びの予言を解除する方法を話してもらおうか・・。」
その言葉に、バルバトーレはレイオスをバカにするかのような表情で答える。
「止められぬ・・といったはずだ。だが私が死ぬ前にお前にひとつ話しておく・・あの術を唱えたとき、この魔導城のさらに地下深くにある封印されし魔導獣を呼び起こす術だったのだ。あの魔物が呼び起こされれば、もはやこの魔導城だけではない・・この世界をも滅ぼす最強最悪の魔物だ。あの魔物を倒せば滅びの予言は止められるのだが、お前一人の力では到底敵わないと思うがなぁ・・クハハハハッ!!
 高笑いを浮かべた後、バルバトーレは息絶えた。バルバトーレを倒した彼は、すぐさま魔導城の最下層へと向かうのであった。
 「封印されし魔物・・・どれほど強大な力か分からないが、この俺の命を懸けてでも倒してやるっ!!魔物を倒した後、生きてここから帰るんだ!!
レイオスはそう言うと、魔導城の最下層へと足を運ぶのであった・・・。

 その頃、レミアポリスではクリスとアメリア、そして戦いを終えた三人を交え、急遽この世界を救うための対策会議を開いた。アメリアは王宮内にいる科学者たちを呼び寄せ、この世界の危機を救うために知恵を出し合っていた。
「アメリア様!!魔導の島に高濃度の魔導エネルギーを確認しました!魔導エネルギーは、この島から徐々に他の大陸へと向かっています!!
 一人の科学者の言葉に、アメリアの表情が曇った。このまま魔導エネルギーが広まれば、数時間もしないうちにフェルスティア全土を覆いつくしてしまうであろう。その危機を止めるべく、ファルスは立ち上がり、全員に話した。
「うろたえるなみんな!我々が今やるべきことをしなければ、この世界が滅んでしまうかも知れないんだぞ!私一人の力ではできに!力を貸してくれ、ディオン!エルフィリス様・・アメリア様!ともに魔導エネルギーの発生源である魔導の島に向かうぞ!!
 ファルスの言葉で、全員の曇っていた表情が明るくなる。皇帝の間にいる全員は、すぐさま時空船メルファに乗り込むと、魔導の島に向けて発進した。
「魔導の島の結界が解けている・・・これはいい突入のチャンスだ!さぁ、この世界の危機を救うべく、魔導の島に向かうのじゃ!メルファにはもしものときのために数十人の騎士を配備している。到着次第騎士とともに魔導エネルギーの発生源へと向かうぞ。」
 メルファが発進の態勢に入り、全員は今、魔導の島に向かう!!

世界の危機を救うため、ついにアメリアとファルスたちが立ち上がった。
そして、封印されし魔物の正体とは!?

 

 

 

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