新章激闘編第五十四話 デーモニック・エクスピアシオンA

 

 ついに魔王の力を最大限まで引き出し、混沌と色欲の魔姫と化したリリシアを前に、リュミーネはそのすさまじい光景を前にただ呆然としていた・・。
 「な・・なんという闇の力なのかしら・・。あれがリリシアの真の力・・。」
リュミーネはリリシアのほうを見ると、すかさず槍を構える。彼女が戦闘態勢に入った瞬間、闇の球体が消え、魔姫と化したリリシアが現れた。
「私をこの姿にさせたからには・・・ここで消えてもらうわっ!!
 リリシアが怒りの表情を浮かべると、リュミーネに向けて闇のエネルギーを放つ。しかしリュミーネはその闇のエネルギーをかわし、すぐさま反撃に出る。
「あなたがどれだけ強くても、私はあきらめないわ!!だから・・あなたとここで決着をつけるわっ!!
 リュミーネは槍を握り締め、一気にリリシアに突進していく。しかし、リリシアの体から放出される圧倒的な混沌のオーラにより、リュミーネの足が止まる。
「くっ・・・混沌の力が強すぎて先に進めない・・・。でもここで負けるわけにはっ!!
 リュミーネは魔力を放ちながら槍を回転させ、混沌のオーラを振り払う。しかしその抵抗も、リリシアの混沌のオーラの前には無力であった。
「キャハハハハッ!私の混沌のオーラの前には無力のようね・・。さっきまでの威勢はどうしたのよっ!!
 リリシアは挑発の言葉とともにリュミーネに闇の波動をぶつける。その一撃により、リュミーネは大きく吹き飛ばされた。
「きゃあっ!!
リュミーネはその場に倒れたが、またすぐに立ち上がって見せた。彼女は再び槍を握り締めると、その槍を地面に突き刺し、強く念じた。

 「我が浄光の槍よ・・。私に力をっ!!
するとリュミーネの槍から聖なる光が降り注ぎ、リリシアの邪悪な結界をかき消す。邪悪な結界がかき消されたことで、混沌のオーラの放出が止まった・・。
 「なっ・・何ぃっ!!私の邪悪な結界がかき消されるとはっ!ならば私が直々に相手をして差し上げますわっ!!
リリシアは毒の爪と化した左腕を構え、リュミーネっを迎え撃つ態勢に入る。その左腕からは、ただならぬ闇のエネルギーが漂っていた。
「その左腕の邪悪なエネルギー、ただならぬ魔力を放っているわね。」
 リュミーネがそう言うと、リリシアは不敵な笑みを浮かべながら答える。
「その爪はねぇ・・。相手を毒に至らしめ、触れるものすべてを腐殺するポイズンネイルよ・・。この爪であなたを腐らせ、殺して差し上げますわっ!
リリシアは左腕の爪を見せ、リュミーネに向かって突進していく。リュミーネはリリシアの突進を素早くかわしたものの、毒の爪がリュミーネの腕をかすめていた。
「あうっ!!
リュミーネは毒を受け、その場に倒れる。その隙をつき、リリシアが一気にリュミーネの前まで詰め寄り、リリシアが呟く。
 「魔導学校での恨み、ここで晴らさせてもらうわ・・。私は魔界では「※復讐の黒き魔姫」として恐れられた女よ・・。あの痛み、100倍にして返してあげるわっ!!
リリシアがそう言うと、リュミーネの体を蹴り上げる。リュミーネはその痛みに耐えながら、歯を食いしばって耐えていた。
 「あぐっ・・!!あなたは私と同じ女でしょっ!!女なのにどうしてそんな無慈悲なことが出来るわけ!きっとあなたには何かの苦しみを抱えているはずよっ!?
リュミーネの言葉に怒りを感じたリリシアは、リュミーネの首に毒の爪を突きつけ、答えた。
「あんたに私の何が分かるのよっ!!私の苦しみがあんたに分かるわけないでしょうがっ!!
 怒りの表情を浮かべるリリシアは、リュミーネを毒の爪で切り裂こうとするが、なかなかそれが出来ない。その一瞬の隙をつき、リュミーネがリリシアから離れた。
※TJS外伝参照。

 何かに動揺しているのか、リリシアは突然震えだした。
「震えが止まらない・・。どうして・・・動けっ!!私の体よっ!!あの小娘を殺すのよっ!
リリシアの封印されていた善の心が、彼女の悪の心を抑えていたのであった。
 「くそっ・・私が封印していた善の心が・・・私は人間を捨てたはずなのにっ!!
リリシアがそう言うと、彼女から離れていたリュミーネがリリシアの前まで来てこう言う。
「まだ分からないの・・。あなたに必要なのは魔王の力ではなく・・優しき心なのよっ!だから・・あなたが一番許せないって事は、あなた自身が一番分かっているはずよ・・。」
 リリシアはその言葉を振り払うかのように、リュミーネを攻撃する。彼女は闇のエネルギーを凝縮させ、一気にリュミーネに向けて放った。
「それ以上・・・それ以上言うなあああああっ!!魔導術・カオシックペイン!!
 リリシアの放たれた闇のエネルギーが、リュミーネを襲う。しかし、彼女はすぐさまその術をかわしたが、彼女から受けた毒により、徐々に体力が奪われていた・・。
「もうだめ・・。私の体が持たない・・。リリシアから受けた毒が私を蝕んでいく・・。先に毒を直さないと、長くは持たないわ・・。」
 リュミーネはそう言うと、槍を地面に突き刺し、強く念じた。すると槍から光が溢れだし、リュミーネの体を包み始めた。
「その光は一体何のつもりっ!!
「解毒の光よっ・・。その光はすべての毒素を消し去る・・。もちろん、あなたの毒の爪も消えるわ・・。」
 浄光の槍から放たれた光は、部屋全体に広がり、リリシアを照らす。解毒の光を浴びた事で、リリシアの左腕の毒の爪が跡形もなく消え去った・・。
「私の毒の爪が・・破壊されるとは・・・。」
リュミーネが放つ解毒の光により、リリシアの左腕の毒の爪が跡形もなく消えた。すると、リュミーネがに術を唱えるべく、最後の勝負に出た!!
 「来なさいリリシアっ!!最後の勝負よっ!この日のために取っておいた術であなたを倒しますわっ!!受けてみなさい!虹術(レインボウ・スペル)レインボー・アルカンシェル!
リュミーネがリリシアのほうを向き、そう言う。その言葉に答えるのか、リリシアがリュミーネのほうを向き、最後の術を唱える態勢にでる。
「我が仇敵リュミーネよっ!!混沌と色欲の魔王の名に懸けて、殺して差し上げますわよっ!!さぁ、刺激的な戦いを楽しもうじゃないのっ!いままで直隠しにしていた裏波導の術を見せてあげるわっ!裏波導の術・混沌煉獄炎波(パーガトリアル・デストラーダ)!
 二人の最大級の術がぶつかり合い、大きな衝撃波が生まれた。その衝撃により、二人は大きく飛ばされた・・。

 闇の中で、リリシアは一人立っていた
「ここは一体・・。私は確かリュミーネと戦っていたはずなのに・・。なぜこんなところにいる訳。」
リリシアは辺りを見回すと、そこには何一つない暗闇が広がっていた・・。何もない空間にいる彼女は、不安と寂しさがこみ上げてきた・・。
 「私は魔王なのよっ・・こんなことで、さびしい訳ないじゃない!!でも・・震えが止まらない・・誰か・・助けてっ!!
リリシアの目からは涙が溢れ、誰かに助けを求めるような声で叫ぶ。その時、闇の中から聞き覚えのある叫び声が聞こえてきた。
 「・・・シア・・・。」
リリシアはかすかだがその叫び声に気づき、その声のほうに歩きはじめた。先に進むにつれ、その声が大きくなっていくのを、彼女は感じていた。
「・・リシア・・!!しっかりしてっ・・!
その声を聞いたリリシアは、一瞬で誰が叫んでいるのかが分かった。その声の主は、今まで彼女と熾烈な戦いを繰り広げていたリュミーネであった。その声を放つ彼女の目からは、止めどなく涙が零れ落ちていた・・。
 「今まであたしの敵だったリュミーネが・・・なぜ私を・・。彼女の言動を見ていると・・心が洗われていく・・。」
リリシアがそう言うと、光がリリシアを包み込み、闇の空間が光によって消え去った・・。

 リリシアは気がつくと、リュミーネに抱きかかえられていた。それを心配するかのように、リュミーネは涙を流しながらリリシアの名を呼ぶ。
「リリシア!!
リュミーネの言葉で、リリシアは目を覚ました。その目の先には、涙を流しながらリリシアの無事を心配するリュミーネの姿がそこにあった。
 「許して・・リュミーネ・・。私が・・愚かだったわ・・。」
リリシアがそう言うと、リュミーネが涙を拭きながら答える。リリシアの目を見た彼女の表情は、微笑んでいた。
「よかった・・。生きてて本当によかった!私たちが吹き飛ばされたとき、真っ先に私はあなたの元に行き、無事を祈っていたのよ・・。私はあなたに何度も何度も呼びかけたわ・・。」
 リュミーネの言葉に、リリシアはそっと微笑み返した・・。すると、彼女は魔姫の姿から元の人間の姿に戻った。
「気を失っていたあの時・・暗い闇に一人いた。あなたが私の名を呼んでくれたおかげで、私は暗闇の呪縛から開放された・・。私とあなたが戦う理由・・それはあなたを倒して混沌と色欲の魔姫としてフェルスティアを支配するのか?それとも・・、私を正しい道へと導いてくれる存在なのか?もし私が勝てば、仮面の魔導士の元につきフェルスティアを襲撃するつもりだった。そしてあなたは光の術を使いこなし、見事魔姫である私を打ち破った。憎しみをすべてぶつけると、かえって気持ちのいいものよ・・。これでリュミーネを・・すべての人間を恨むことはなくなった・・・。あなたと戦えて本当によかった・・。」
 その言葉に、リュミーネは涙を流しながらリリシアにそう言った・・。
「リリシア・・・私と友達になってくれる・・?
その言葉を聞いたリリシアの目からも、涙が溢れていた・・。そして彼女は涙声でリュミーネにそう言う。
「ええ・・、なってあげるわ・・。あなたに・・ひどいことしてきたけど・・、こんな私でも友達になってくれる・・?
 リュミーネは首を縦に振ると、リリシアの手を握り、こう答える。
「さぁ・・立って・・。今日からあなたは私の友達よっ!!これからよろしくね・・・。」
彼女がそう言って傷ついたリリシアを起こすと、すぐさまレイオスたちの元に向かおうとしたその時、リリシアが引き止める。
 「私・・本当はリュミーネと一緒にレイオスたちを助けたいんだけど・・ここで待っているわ・・。仮面の魔導士を裏切ることは許されないの・・。そういうことだから・・ごめんね・・。」
レイオスたちのところに向かおうとするリュミーネを、リリシアが見送る。彼女が扉に手をかけたその時、彼女はどこからともなく放たれた魔銃の弾丸に撃ち抜かれた・・。

 「きゃああああああっ!!
魔弾に撃ち抜かれたリュミーネは、その場に倒れる。その異変に気づいたリリシアは、すぐさまリュミーネの元に駆け寄る。
「リュミーネっ!!しっかりしてぇっ!
リリシアが駆け寄ったときには、彼女はすでに死んでいた。そこに落ちていた弾丸を見たリリシアは、犯人がベルだということが分かった。
 「ベルっ!!どうして私の友達を殺したのよっ!!
リリシアが叫ぶと、物陰からベルが現れ、リリシアを睨みつける。まるで裏切者を見るような目で、リリシアを見ていた・・。
 「フハハハハッ!!あの小娘を倒すどころか、あの娘の友達になってしまってどうするんだ・・。いくら仮面の魔導士が見ていなくても、裏切り者は生かしちゃおけねぇ・・。見るに耐えない・・。」
ベルはそう言うとリリシアに魔銃を突きつけ、こう言う。その言動に苛立ちを感じたのか、リリシアは髪飾りを鉄扇に変えて戦闘態勢に入る。
 「許さない・・許さないよぉっ!
怒りの表情で向かってくるリリシアだが、ベルは一瞬のためらいもなく銃を放った!
「あの小娘とともに天国へ逝け!!喰らえっ!カオス・ブラスター!
ベルが魔銃の引き金を引くと、邪悪な炎がリリシアを焼き尽くした・・。
「きゃああああああっ!!
 リリシアはベルの魔銃の凶弾により、跡形もなく消えてなくなった・・。
「フハハハハッ!!二人のエナジーは俺がいただくとするか・・。残り二体の邪魔者は俺が消してやるぜ!!
 ベルはそう言うと、その場から去っていった・・。

リュミーネとリリシアの生まれたての友情は、仮面の魔導士の参謀、ベルによって打ち砕かれた。
先を急ぐレイオスとブレアの前に、二人のエナジーを吸収したベルが襲い掛かろうとしていた!!

 

 

 

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