新章激闘編第五十五話 戦乙女リュミリア光臨@

 

 リュミーネとリリシアが戦っている間に、レイオスとブレアは魔導城の三階へと足を進めていた。その時、二階から大きな物音が聞こえてきた。
 「どうやらリュミーネとリリシアの戦いが終わったようだ・・。もう少しでリュミーネがこっちに戻ってくるぞ。」
レイオスがそう言うと、ブレアが急に冷たい表情になる。彼は体が急に震えだし、その場に蹲る。
 「僕・・、なぜか胸騒ぎがするんだ。あの物音が起こったときから、リュミーネの生体反応がなくなったような気がするんだ・・。そのことが怖くて怖くてたまらないんだ・・。もしかすると・・・僕たちを先に行かせるためにっ!!もう誰かが死ぬのは嫌なんだっ!!
ブレアは目から涙を流しながら、その場に蹲っていた。その異変に気づいたレイオスは、すぐさま彼に駆けつけ、元気付けた。
 「リュミーネは・・・きっと俺たちを先に行かせるために命を懸けてリリシアと戦ったんだ。リュミーネのがんばりを無駄にしないためにも、俺たちが先に行くしかないんだ!!だから、こんなところで立ち止まっている暇はないんだ。俺たちでこの世界を救うんだ!!
レイオスがそう言うと、ブレアが涙を拭きながら、顔を上げる。リュミーネの死を乗り越え、彼は再び戦うことを決意したのだ。
 「そうだね・・。この世界を守るためにも、僕は戦わなくてはいけないんだ!ここで泣き言を言っていると、世界は救えないんだ。さぁ、先に進もう。この戦いに終止符を打つため、ともに戦おう、レイオス!!
ブレアがレイオスにそう言うと、彼は立ち上がり、再び歩き出す。もう後戻りはできないことを感じた彼らは、再び魔導城の玉座の間へと向かうのであった・・。

 一方リリシアを殺し、エナジーを奪い取ったベルは、四階に続く大扉の前でレイオスたちを待ちぶせていた・・。
「クックック・・・二人分のエナジーを奪い取った俺は、もはやあの二人には勝ち目はないっ!!仮面の魔導士様が手を下すまでもないぜっ!!
 その言葉に、仮面の魔導士がテレパシーでベルに話しかけてきた。
「あの二人の実力は半端ではないぞ・・。お前はあの小娘とリリシアのエナジーを奪ったおかげでリリシアをも上回る力を手に入れたはずだ。その力で、奴らを打ち滅ぼしてみよ!
仮面の魔導士がそう言葉を残し、ベルとの交信が途絶えた・・。
 「わかったぜ・・。仮面の魔導士さんよぉ・・。」
ベルはそう言うと、再びレイオスたちを待ち伏せるのであった・・。

 しばらくして、レイオスたちは四階へと続く大扉の前までやってきた。その時、彼らの目の前に悪魔のような風貌の人間が現れた。そう、その正体こそ、仮面の魔導士の参謀の一人である暴食の魔王ベルゼビュートことベルであった。
 「お前ら・・、ここを通りたければ、この俺を倒していきやがれぇっ!!
ベルの叫び声が、部屋中に響き渡る。レイオスたちはその叫び声のしたほうを向くと、以前出会ったときとは太った感じだったが、今では痩躯で悪魔のような風貌であった。
 「お前・・いつダイエットしたんだよ・・!!あの体重を落とすのは簡単じゃないはずだが・・。それより、魔導戦艦でお前に殺されたボルガが奴に復讐しろと言っている夢を何度も見るようになってしまったのは、お前のせいだ!ボルガの仇、今ここで討ってやる!
レイオスはベルにそう言うと、ベルは魔銃をホルスターから引き抜き、ブレアにこう言う。
 「お前・・・ブレアとか言ったな・・。あの大きな音は俺の魔銃だ。実はなぁ・・あの小娘を撃ち抜いたのは俺だ。あの小娘の言葉で、リリシアが俺たちを裏切り、小娘のほうに寝返ったからだ。だから殺したんだ・・まぁリリシアも俺が殺したんだがなぁ・・。」
ベルの言葉で、ブレアは怒りの表情を浮かべ、剣を鞘から引き抜き、剣先をベルのほうに向ける。仲間であり恋人のリュミーネを殺したベルを睨みながら、こう答える。
 「貴様・・貴様だけは許さないぞぉっ!!よくも・・リュミーネをっ!!
ブレアは怒りの表情でこう言うと、ベルがそれを窘めるかのようにブレアにこう答えた。
「あの小娘の仇を取るんだってか・・それが一番難しいんだがなぁっ!!
ベルは叫び声とともに、ベルは魔力を開放し、大きく空中に浮かぶ。ベルが力を込めると、背中から大きな漆黒の翼が生え、手に持った魔銃が大きな武器に変わった。そして、魔力と精神を極限まで開放したベルがブレアの目の前まで来る。
 「リリシアのエナジーを奪ったおかげで、俺はこの漆黒の翼を手に入れることができた・・。さぁ、勝負の始まりだぁっつ!!
ベルがそう言うと、魔銃を放ちブレアに奇襲攻撃を仕掛けてきた!ブレアはそれをよけると、すぐに戦闘態勢に入るり、魔王と化したベルを迎え撃つ!!
 「レイオス!!君は四階に行くんだ!ここで誰かが止めないと、奴がレイオスを殺しにやってくる!僕はリュミーネの仇を取るため、ここに残るよ・・。」
ブレアの言葉に、レイオスは涙をこらえながら答える。今まで一緒に困難を乗り越え、旅をしてきた仲間を失うことが、彼の中に大きな悲しみがこみ上げてきた。
「お前の力では奴には敵わない!!だから俺も一緒に戦う!俺はお前を失いたくないっ!!
レイオスの言葉に、ブレアが大きな声で叫んだ
 「早く行くんだっ!!もう時間がないんだ・・早く扉を開けて四階へと進むんだ!!こんな僕と一緒に旅をしてくれてありがとう・・・この世界の平和を頼んだよ・・・レイオス!!
ブレアの言葉を聞いたレイオスは、大粒の涙を拭いながら、大きな扉を開け四階へと進むのであった。レイオスが扉の向こう側へと進んだとき、扉が閉ざされ、二度と開くことはなくなった・・。

 レイオスが去った後、部屋にはブレアとベルだけが残された。
「リュミーネを殺したお前を、僕は許さないっ!!来いっ、ベル!!
ブレアが怒りの表情でベルを睨みながら、そう言う。その言葉に、ベルは強化した魔銃を構え、ブレアに突きつけながら答える。
 「お前と俺だけになった・・。さぁ、殺し合いのはじまりだっ!!本気でかかってこなければ、お前は死ぬぜ!!まぁお前の力では俺に太刀打ち出来ねぇんだがな・・・。」
ベルが悪態をつきながらそう言うと、二人は再び戦闘態勢に入った。

 魔王と化したベルの魔力は圧倒的であった。すぐさまブレアから先手を取ると、手に持った魔銃でブレアに向けて発砲した。
「喰らいやがれ!!デモニック・ブレット!!
魔銃から放たれた魔弾は、ブレアの体を捉える。しかし、彼は咄嗟にその魔弾の攻撃をよけると、すぐさま反撃に出る。
 「僕は・・僕は負けられないんだっ!!
ブレアは剣を持ち、一気にベルに向かっていくが、ベルの大きな翼を羽ばたかせ、動きを封じる。
「どうしたぁっ!!まだ俺は八割の力しか出していないぞ!!このまま一気に殺しちまうぞぉっ!!
ベルがブレアに向かって叫ぶと、羽ばたきのスピードをさらに加速する。巻き起こる風により、ブレアは大きく吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
 「うぐぐ・・・このまま負けてはいられない・・。ここは一気に炎の術で畳み掛けるしかない!!
ブレアはそう言うと、手に魔力を込め、反撃に出る。しかし、ベルは余裕の表情でブレアに追撃を加える。
「ハハッ!!これでも喰らえ、魔導術・テラ・アリュマージュ!!
ベルが魔力を込め、術を唱えた途端、巨大な炎弾がブレアの頭上に現れた。ベルが腕を下ろした瞬間、その巨大な炎弾がブレアに落下してきた!!
 「負けられない・・リュミーネの仇をとるまで・・僕は負けられないんだ!!
ブレアはそう言った瞬間、巨大な炎弾が今にもブレアに命中しそうな状況であった。その状況に、彼は術を唱えるべく、魔力を込め始めた・・。
「この術で、このピンチを乗り切って見せるっ!!波導の術・炎龍波!!
 ブレアが術を唱えた瞬間、大きな炎の龍が現れ、ベルの術を打ち破ろうとする。しかし、炎の龍は巨大な炎弾の魔力にかき消された・・。
「そ・・そんな・・・!!君の仇・・果たせそうにないや・・。ごめんね・・リュミーネ・・・。」
ブレアの脳裏に敗北の二文字が過ぎった瞬間、何者かがブレアの心に語りかけてきた。
 「君の素早さなら、あの炎弾をかわせるわっ!!だから、あきらめないで!!私はいつでもあなたのそばにいるわ・・。」
ブレアは謎の言葉に導かれ、咄嗟に炎弾から離れた瞬間、炎弾は灼熱の炎とともに落ちてきた・・。それを交わしたブレアは、自分の胸に問いかける。
「君は一体だれなんだ・・。僕の心の中に語りかけてくるのは・・・。」
 ブレアがそう言うと、謎の声が再びブレアの心の中に語りかけてきた。その謎の言葉に、ブレアは唖然となった・・。
「私よ・・。私はあなたの恋人・・そしてレイオスたちの仲間であるリュミーネです!!今は肉体がないけど、残留思念としてあなたのそばにいるわ・・。それより・・私を忘れるとはどういうつもりよっ!!さぁ、悲しんでいる暇はないわっ!さっさとあいつを倒しちゃいなさいっ!!
 謎の声の正体がリュミーネだと知ったブレアは、涙を流しながら自分の胸に問いかける。まさか死んでしまった彼の大切な人が、残留思念となってそばにいてくれていたことが、彼の支えとなっていたのだ・・。
「リュミーネ・・ありがとう・・・。僕、もう一度がんばってみるよっ!!あいつを倒すために、僕に指示を頼むっ!!
ブレアの言葉に、リュミーネが再び彼の心の中に語りかける。
 「あなた一人の力では絶対に勝てないわ・・。それでいい作戦があるの・・。残留思念となった私の最後の力を使い、あなたと合体するの・・。そうすれば、ブレアの力に私の力が加わり、さらに強力な力を手に入れることが出来るわ。しかし、その合体が解けた後、あなたは死んじゃうわ・・。それでも、私と合体してくれる・・?
リュミーネの言葉に、少し戸惑った表情であった。彼女の前では泣き言を言ってはいられない彼は、すぐさま心の中にいるリュミーネに問いかける。
 「わかった・・。君の言うことに賛成だ・・。さぁ、僕とひとつになってくれ・・。君と一緒なら、どんな敵でも勝てる気がしそうだ!!!
ブレアの一部始終を見ていたベルは、攻撃のチャンスを狙っていた・・。
 「誰とおしゃべりしているんだぁっ!!今はそんなときじゃないぞおっ!カオス・ブラスター!
ベルは魔銃の引き金を引くと、ブレアを焼き尽くそうと、邪悪な炎を発射した。邪悪な炎がブレアを覆い尽くした瞬間、部屋一面に光が満ち溢れ、邪悪な炎がかき消された・・。
「な・・なんだとぉっ!!この俺のカオス・ブラスターがかき消されるとはっ!!
ベルは驚いた表情でブレアのほうを振り向くと、そこにはブレアではなく、見慣れない戦乙女の姿がそこにあった。その女の目の色はは、右側に赤、左側には青く輝いていた・・。
 
 その美しい戦乙女は、魔王と化したベルに聖なる剣を向け、こう言う。
「私は戦乙女リュミリア・・。リュミーネとブレアが合体した姿・・。すなわち、二つの心を持つ戦士ですわ・・。」
意訳(ブレア):僕が女になっちゃった!!元に戻れなくなったらどうしよう!!
意訳(リュミーネ):そんなことはないわ!!解除したらちゃんと元に戻るわ。でも死ぬけどね・・。
リュミリアの言葉に、ベルは怒りの表情を見せる。自分の最大のカオス・ブラスターが破られたことに憤りを感じていた・・。
 「この野郎・・・俺を怒らせるとどうなるか・・・そのお前の体で思い知らせてやるっ!!
ベルは大きな魔銃・ベルゼクス・ダークブラスターを構え、リュミリアに向けた。それを見た彼女は、ベルに向かって侮蔑の言葉を吐き棄てる。
「この汚らわしい武器で私を殺すって・・やってみなさい・・。私の聖なる剣技で翻弄して差し上げますわ・・。」
リュミリアはそう言うと、ルミナスソードを握り締め、戦闘態勢に入るのであった・・。

ブレアとリュミーネ(残留思念)が合体し、戦乙女リュミリアとなった。
彼女の持つ聖なる剣・ルミナスブレードで暴食の魔王ベルゼビュートを打ち破れるか!?

 

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