新章激闘編第五十話 リリシアの苦悩

 

 レイオスたちが砂の回廊の先を急ぐ中、リリシアが最下層に戻ってきた。
最下層に来たリリシアは、五人衆の一人である砂のサラシュが行く手をふさいでいた。
「来たわねレイオ・・・いや!あなたは仮面の魔導士の参謀の一人のリリシア様では!?
サラシュがリリシアに問いかけると、リリシアが答える
「そうよ・・。私が仮面の魔導士の参謀、リリシアよ・・。悪いが、レイオスたちにはできるだけ傷がつかないようにしてほしいから、あなたにはここで死んでもらうわ・・。」
リリシアが目の色を変えてサラシュを睨みつける。
その態度に、サラシュがこう答えた。
「それは私に対する宣戦布告かしら・・。なら私も容赦はいたしませんわよ・・。相手が仮面の魔導士の参謀であろうとも!!!
「やってみなさい・・。私に喧嘩を売ったことを、あの世で後悔するがいいわ!!
サラシュとリリシアがそう言うと、二人は戦闘態勢に入った!

 緊迫した二人の表情であったが、先手を取ったのはリリシアであった!
「あなたにはどう足掻いても私には勝てないわ・・・。潔く私に倒されなさい!!
リリシアは鉄扇でサラシュに攻撃を仕掛けた!
「甘いわね・・。私は砂と同化できる力を持っているわ。だから、私はあなたに勝つ!!
サラシュが目を閉じると、サラシュの体が砂のようにさらさらと崩れ落ち、地面の砂と一体化した。
「なんて奴なの・・。サラシュの体が砂になるなんて、思ってもいなかったわ・・。」
リリシアがあたりを見回すと、砂となったサラシュがいきなりリリシアを襲った!!
「きゃああああああっ!!
不意打ちにより、リリシアは身動きが取れなくなった。
「フフフ・・。このままあなたを砂のそこに引きずり込んで差し上げますわ・・。」
サラシュはリリシアの体を砂の底へと引きずり込む・・。
リリシアはまさに蟻地獄に飲まれた蟻のようであった。
 「こんなところで・・、私は負けない!ふんっ!!
リリシアは力を振り絞り、砂の底に引きずり込もうとするサラシュを振り払った!
「な・・何ぃっ!?
サラシュが驚いたような表情でリリシアのほうを見た。
すると、その目の前には勝気な表情を浮かべていたリリシさの姿がそこにあった・・。
 「キャハハハッ!!もう勝負はついたも同然ですわ!!さぁ、おとなしく死んでもらいますわ・・。」
リリシアが高笑いをしながら、サラシュのほうに手を振り下ろした。
「キャハハハハハッ!!これで終わりよサラシュ!!魔導術、デモニック・エクスプロージョン!!
術を唱えた瞬間、すさまじい爆風が巻き起こり、砂と同化しているサラシュもろとも吹き飛ばした!
「キャハハハハハハハハッ!!
リリシアは高笑いを浮かべながら、その場を去っていった・・。

 そのころレイオスたちは、砂の回廊の最下層へとやってきた。
「誰か倒れている・・。しかしもう死んでいるようだ・・。」
レイオスは人の気配を感じ、その方に振り向いた
するとリリシアとの戦いに敗れ、無残にも倒されてしまったサラシュの姿であった。
「一体誰がこんなことを・・。」
「これはひどい・・。これほどまで強い魔力をもつ人間がいるというわけだね・・。」
仲間たちがサラシュの方を見て、呟いた。
「確かに、これほどの魔力を持つものがいれば、この先脅威となるだろうが、俺たちはどんな相手でも負けるわけにはいかないんだ!さぁ、次の地下迷宮に急ぐぞ!
レイオスがそう言うと、次の地下迷宮へと足を運ぶのであった・・。

 第3の地下迷宮の中間地点にやってきたリリシアは、レイオスと戦ったときとは別の魔物で構成されたリリーナイツとともに作戦会議を立てていた。
 「え〜と、今から作戦会議を行う!!その前に新入りで魔導魚兵とハンマーナイトを投入することになったわ。今度こそレイオスたちをやっつけるわよ。」
リリシアがリリーナイツの全員に話しかける
すると魔導獣兵が手を挙げた
「話が飛ぶがすまぬ、あなたとリュミーネとか言う小娘とはどんな関係なんだ・・。」
魔導獣兵の言葉に、リリシアは少し怒りの表情を浮かべた
「あの小娘の名前を口に出すな・・。その名前を聞いただけで怒りがこみ上げてくるわ・・。」
そう言っているリリシアの顔が、少し赤くなっていた。
「リリシア様、顔が赤くなっているが、どうかしたのか・・?
魔導鳥兵の言葉に、リリシアは恥ずかしい表情で答えた
「べっ・・別にあんな小娘のどこがいいのかしらっ!!あんたには関係ないでしょ!
リリシアはふと自分の昔の事を思い出していた・・。

 魔族の父がエルジェ人と魔導士のハーフである母に産ませた魔族の娘。つまりエルジェ人と魔導士と魔族の血筋を継ぐ人間であった。
 やがて彼女は退屈のあまりエルジェを離反し、より高い力を手にするために仮面の魔導士の元につくようになり、仮面の魔導士のふるさとでもある魔界で彼女は十数歳で魔王の試練を無事にクリアし、フェルスティア七大魔王と並ぶ魔力を手に入れ、自らがフェルスティア七大魔王となったのだ。
 そう・・。混沌と堕落の名を持つ名「リリシア」として・・。

 「リリシア様!!どうかなさったのですか!?
魔導魚兵の言葉で、リリシアは目が覚めた
「あれ・・。私は一体何をしていたの・・。ふと気がつくと眠ってしまったわ。さぁ、ここで待ち伏せするわよ!!全員、配置につきなさい!!
リリシアの言葉で、リリーナイツの全員は配置につき、待ち伏せを開始した。

 リリーナイツとともに待ち伏せをしているリリシアだが、過去のことが頭を過ぎった。
「また思い出した・・・私は人間じゃないわ・・。私は魔王なのよ・・。普通の人間とは違う・・・。人間のこと、そして私の過去を思い出したのは、すべてリュミーネのせいだわ!!
リリシアは過去のことを思い出し、苦悩していた。
「人間は嫌いよ・・。もうすこししたら、人間であるこの姿とはおさらばね・・。魔力強化を受けて、私の魔王たる姿になれる。これで私は本当の魔族の娘になるわ!!キャハハハハハッ!!
リリシアは高笑いを浮かべると、自分の持ち場につき、待ち伏せを開始するのであった・・。

 一方仮面の魔導士とベルは、リリシアの帰りを待っていた。
「遅いぞ・・遅いぞリリシアは!!一体何をやっている!
仮面の魔導士が呟くと、ベルが答えた
「リリシアは今ここに来るレイオスたちを始末するために地下迷宮に行った。さっき5人衆のうちの一人であるサラシュが消えたのだが、レイオスが倒したのか?」
ベルの言葉に、仮面の魔導士は緊迫した表情でこう言う
「たった今魔導城から魔獣オーガが檻から脱走した。このままではリリシアや他の5人衆が危ない。お前はあの凶暴なオーガを手懐けたたった一人の人間だ。手懐けていても襲い掛かった場合は、殺しても構わん。ベルよ、至急オーガを檻に閉じ込めるか殺してくれないか・・。」
仮面の魔導士がベルにオーガを止めるために言った。
「OKだ!じゃあ早速オーガを止めてやるぜ!!
ベルがそう言うと、早速地下迷宮へと向かったのであった・・。

第三の地下迷宮へと足を運ぶレイオスたち!
しかし脱走した魔獣、オーガが徐々にレイオスたちに近づいていた・・。

 

 

 

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