新章激闘編第四十八話 石畳の道A

 

 レイオスたちが石畳の迷宮を進んでいる中、魔導城ではリリシアとベルが実験室にいた。
「仮面の魔導士様、ベルを連れてきたわ。早速魔力強化を始めてちょうだい。」
リリシアがそう言って振り向くと、仮面の魔導士の姿はそこにはなかった。
「あれ?ここに来いって言っていたのに・・・。ベル、少しここで待っていましょう。」
リリシアとベルは、実験室で待つことにした。

 一方仮面の魔導士は、魔導城の地下にある魔獣が保管されている部屋にいた。
一際目立つ大きな檻は、無残にも破壊されていた・・。
「魔物が1匹脱走したか・・。あの魔物は見境なく攻撃を仕掛けてくるオーガ族と呼ばれる凶暴な魔物だ。このままでは地下迷宮を通じて地上に上がってきてしま・・いや、戒めの谷底の高さなら上がってこれまい・・。」
仮面の魔導士は凶暴なオーガを逃がしてしまったことに責任を感じていた。
 かつては魔導城に続く地下迷宮を守る門番であったが、大規模な地殻変動で大幅に数が激減してしまい、現存するのは魔導城にいる一体のみである。
 「奴が自由になった今、地下迷宮を蹂躙しつくすだろうな・・。あの5人衆でさえも歯が立たないほど圧倒的な力を持つオーガには、誰も敵うわけはないのだ・・おっ、いい事を思いついたぞ!!
仮面の魔導士の頭に何かが浮かんできた。
「このオーガがあれば、地下迷宮に入り込んだレイオスたちを倒してくれそうだな。残念だが、5人衆にはここで死んでもらうしかない・・。奴らはオーガになすすべなく食われるだろうな。」
仮面の魔導士はそう言うと、そそくさとその場を去った。

 しばらくして、仮面の魔導士が実験室に戻ってきた。
しかし、リリシアの姿がどこにもいなかった。
「あれ・・?リリシアが見当たらないのだが、どこに行ったのだ・・。」
仮面の魔導士がベルに問いかけると、ベルは置手紙を差し出した。
「なんだこの手紙は・・。ベル、ちゃんと説明しろ。」
それを説明するかのように、ベルが答える
「リリシアがレイオスたちを倒すため、手下であるリリーナイツを従えて地下迷宮に向かって行ったぞ。だから強化は後にしてくれって言っていたじょ〜!!
その言葉を聞いた仮面の魔導士は、リリシアが置いていった手紙を読み始めた。

――精鋭の魔獣部隊・リリーナイツとともに、レイオスたちを倒してまいります。勝手ながら今しばらく不在にいたします。私の魔力強化の話は後でお願いいたします。

 手紙を読み終えた仮面の魔導士は、リリシアの勝手な願いに納得したようだ。
「わかった。無茶だけはするでないぞ・・。ベル、ではお前だけ魔力強化をしてやるとするか・・。」
仮面の魔導士はベルに手をかざし、静かに念じ始めた。
「ぼ・・僕の体に力が入ってくる!!想像以上だ!!
仮面の魔導士の手から、エナジーと呼ばれる生体エネルギーが放出され、ベルの体の中に次々と入っていく・・。
エナジーが入ってくるにつれ、ベルの体が見る見るうちに変貌してくのを、仮面の魔導士は見ていた。
 「成功だ・・。これでお前は完全体だ!これほどの魔力をお前に与えた甲斐があった!これでお前の魔力は格段に上がったぞ!喜べ、ベル!!
仮面の魔導士の言葉に、ベルが振り向いた。
「これが完全体の俺様の姿か・・。姿形もかわっている!体中にみなぎる闇の力と魔力!最高だぞっ!
ベルはあふれ出す力に歓喜の声を上げた!!
「ベル、お前の二つ名は今から魔王ベルゼビュートと呼ぼう。ビック・ベルゼーの名は捨て、これからは魔王ベルゼビュートとして生まれ変わったのだ!ベルよ、今は自分の部屋に戻るがいい。」
仮面の魔導士が魔王として生まれ変わったベルのほうに振り返って言うと、そそくさと実験室を出た。
 「この力・・。このみなぎる力をどこかで試したいものだな。まぁ外の魔物で腕試しでもするか・・。」
ベルは魔導城を抜け出し、一人魔物を探すのであった。

 そのころレイオスたちは、石畳の道の最下層まで来たとき、近くに人影が見えた。
「あれは誰だ・・。近くまで来て見よう・・。」
レイオスが近くに来た瞬間、いきなりレイオスに襲い掛かってきた!
 「待ちくたびれたぞレイオスとその仲間たちよ!!私の名は石のブロキスと申す!!仮面の魔導士の命令でここを守る5人衆の一人だ。ここを通りたければ私と勝負だ!!
石のブロキスがレイオスのほうを振り向き、こう言う
「俺たちはここを通り、魔導城に行かなきゃならないんだ!!お前を倒し、ここを通ってやる!!
レイオスはブロキスを睨み付けながら、こう言い放つ
「ならば見せてやろう!!仮面の魔導士直属の5人衆の力をなっ!!
ブロキスがそう言うと、一気にレイオスたちに襲い掛かってきたのだ!!

 ブロキスの強襲を受けたレイオスたちは、すかさず戦闘態勢に入り、ブロキスを攻撃するチャンスをうかがっていた・・。
「奴の全身は石でできている・・。並大抵の攻撃では歯が立たないだろう・・。それなり強い物理的なダメージを与えない限り、奴は倒せない!
レイオスがそう言うと、仲間の二人がブロキスを迎え撃つ体勢に入った!
「受けてみろ、波導の術・炎流葬!
ブレアはブロキスに向けて炎の術を放った!!
しかし、石でできているブロキスにはダメージを与えることができない!!
「無駄だ無駄だ。俺の体は石でできているから魔法によるダメージは無力に等しい!
ブロキスがそういっている間に、リュミーネが背後から術を放った!!
「これでもどうっ!!波導の術・水竜波!!
「なっ・・・何っ!?
ブロキスが咄嗟に振り向いた瞬間、水の竜がブロキスを飲み込んだ!!
「ふんぬっ!うぐぐぐぐぐぐぐぐっ!!
ブロキスは必死で踏ん張り、何とか難を逃れた。

 「そっ、そんなバカな!?私の水竜波が効かないなんて!!
リュミーネは傷ひとつついていないブロキスのほうに振り向き、そう言う
「フハハハハッ!!もうそこまでか!お前たちの術で私を倒すには、後100発必要だな・・。」
ブロキスがレイオスたちを嘲笑したが、しかしそれを振り払うかのような表情でレイオスが答える
「まだだ・・。まだ俺たちは負けちゃいないぜ・・。反撃はここからだぜ・・。」
レイオスは鞘から双剣を引き抜き、ブロキスのほうを見た。
ブロキスの体には無数の細かい傷が入っていた
「お前の体には、さっきブレアとリュミーネから受けたダメージが残っているようだな。お前、石でできているというが、その話はどうやら嘘に見えるな・・。」
レイオスの言葉に、ブロキスが慌てた表情で答えた
「何を言うか!!この私の体は正真正銘石でできているのだからなっ!!
ブロキスが怒りの表情を浮かべた瞬間、顔に無数のひびができた。
どうやら石でできているという話は全くの嘘であった。
「さぁ勝負の続きだブロキス!!喰らえ、聖光剣・光迅波斬!!
レイオスが剣を振り下ろそうとした瞬間、ブロキスが命乞いを始めた。
「参った参った・・。私の負けだ。だから剣を収めてくれないか・・。」
ブロキスの言葉で、レイオスは剣を収めた。

 戦いが終わり、レイオスがブロキスに話しかけた。
「負けを認めたからには、ここを通らせてもらうぜ。」
レイオスの言葉に、ブロキスはこわばった表情で答える
「本当に通っていいぞ。だから、私の目の前から早く消えてくれ!!
その言葉を聞いたレイオスたちは、そそくさとその場を走り去っていった・・・。

地下迷宮のひとつ、石畳の道をクリアしたレイオスたち。
次なる地下迷宮に、レイオスたちが挑む!!

 

 

 

新章激闘TOP