新章第八話 静かな港町と空間の宝石

 

ファルスが命を懸けた作戦は成功し、レイオスたちが隕石が落ちてきたダイヤ暦738年にワープした。
タイムワープにかかった時間は、約30分だった。
その30分の間、勇者たちはそれぞれ休息を取っていた。しかし休んでいる彼らの表情には、リーダーであるファルスを失った悲しみが残っていた・・。

レイオスは悲しいのか、一人自室でドミノのブロックをピラミッド状に積み上げていた・・・。積み上げた後は、時空船の食堂で一人コーヒーを飲んでいたが、悲しみと涙が交じり合って、ブラック以上に苦い味だった。
「悲しい、俺が何も出来なかったから、ファルスが・・、ファルスがっ!!
レイオスは叫んだあと、一気に苦いコーヒーを飲み干した。

ボルガはトレーニングルームでひたすらサンドバッグに拳を打ち込んでいた、どうやら彼は暗黒将軍ウェルガスを見立ててパンチを打ち込んでいるようだ!
「オラァッ!!
ばんッ!ばんッ!ばんッ!!
ボルガの一撃がサンドバックを大きく揺らした。
「俺が弱かったのかもしれない、俺が前に出て戦っていたらファルスは一緒にいたってのによぉ!!
ボルガは30分をトレーニングに費やした。

一方ブレアのほうはゲームに熱中していた。
未来のシューティングゲームのようだ
「やっぱり悲しいときはこれに限るね。でも、ファルスが居なくなったから・・ぐすっ。」
ブレアは泣きながら100Gを入れてゲームを始めた
やはり初めてなのですぐにゲームオーバーになってしまった。
「あちゃー、負けちゃった。もう一度だ!
ブレアはもう一度100Gを入れてもう一度チャレンジした。
前回の反省を生かし、だんだんと高得点をマークしていった。
「やっと1ステージクリアだ!
ブレアは喜んだ。
しかし、その次のステージでゲームオーバーという結果に終わった。

リュミーネは自室で「騎士道精神」という本を読んでいた。
しかし、なんとなく読んだ後、次の本に読み替えた。それは「失われた二つの宝石」という本だった。
ヴィクトリアス城から宝石が盗まれ、ヴィンたちが冒険に出るというストーリーだった。
リュミーネはその本をみて、どんどん勇気がわいてきたようだ。
「私、この本に出てくるルーナみたいに、強くて聖なる術が使える人になる!こんなところで悲しんではいられないわ。」
リュミーネの心に何か強い力が芽生えたようだ。

一方皇帝アメリアは、ナビゲーターのエリスと話していた。
「その時空船は一体、何処からきたのじゃ。」
アメリアがエリスにこう問いかけた
「この船は、パール暦1100年で作られ、とある大金持ちがこの船を「メルファ」と名づけ、10億Gで購入しました。そしてパール暦1140年に、最後のタイムワープで、乗組員が消息を絶ちました。忘れ去られようとしたとき、レイオスたちが偶然この船を見つけてくださったんです。」
エリスがこう言うと、アメリアはこう答えた
「ほほう、話は分かった。レイオスたち5人の勇者は私が認めたのじゃ。だが、ファルスがいなくなったのじゃ。われわれはファルスは絶対に生き延びていると信じているぞ。」
その言葉にエリスはこう言葉を返した
「わたしも生きていると信じています!だから、勇者たちも諦めないで、絶対に隕石の謎を解き明かし、現代に戻ろう。ファルスが帰りを待っているわよ。」
エリスがそう言うとアメリアはこう言った
「わかった。ではタイムワープが終わり次第、ナレーションでワープ完了を報告しておくれ。」
アメリアはエリスにこう言うと、自分の部屋に戻っていった・・。

ワープ完了まであと5分。
レイオスは自分の武器と防具を布できれいに磨いていた。
ふきふき・・・・。
過去とのゲイザーとの戦いで黒ずんでいたのだろうか。
剣や盾、そして鎧が汚れていて、虫でも沸いて出てきそうな感じだった。
「やっぱり激闘の後はきれいに磨くのが一番!汚れると武器の威力が落ちるからな。」
そう言うとレイオスはせっせと布で剣や鎧を磨いていた。
「これでどうかな。」
レイオスはかなり拭きすぎたのか、剣や鎧から眩しいくらいの光でピカピカになっていた。
少し張り切りすぎたようだ・・・。
レイオスはその後靴を磨き、コクピットに向かった。

ボルガはサンドバッグを殴りすぎて、サンドバッグが地面に落ちてしまったので、腕立て伏せを10秒間に30回という速さで開始した。こんな速さで腕立て伏せをする人間がほかにいるだろうか。むしろ有り得ない。
それを3分間した後、コクピットに向かっていった。

ブレアはついにゲームを全ステージクリアした。
クリアするのに掛かったお金は、1200Gだった。
ブレアはクリアした優越感に浸っていたが、2周目はやる気がおきなかったので、そのままプレイを放置してコクピットに向かった。
もぬけの殻となったゲームコーナーには、ゲーム機の筐体の画面にはランキングのネームエントリーが空しく写っていた・・・。

リュミーネは本を読み終えると、急いで風呂に入り着替えを済まし、コクピットに向かったが、何かを思い出し、戻ってきた。
「あれ?化粧するの忘れてた!!
リュミーネは急いで化粧を済まし、コクピットに向かった。

こうして全員がコクピットに集まった。
「ダイヤ暦738年にタイムワープ完了。着陸準備に入ります。みなさま、席についてシートベルトをおしめください。」
エリスの機内放送が時空船中に響き渡った。全員は席に着き、着陸態勢に入った。

ゴウンッ!!

すると時空船が大きな轟音とともに、席が大きく揺れた。
「着陸完了。外に出るときはロックを忘れずに行ってください。なお、この船は、ステルス機能が働き、誰からも見えなくなってしまいます。船の位置はお手持ちのレーダーで確認できます。」
エリスのアナウンスが終わり、全員が2年前の世界の大地を踏みしめた。

「まずは隕石のかけらが落ちてきたという港町シリアポート(旧名港町アサギ)に向かうぞ!
レイオスがそう言うと、一行はシリアポートに向かうのであった・・・・。

レイオスたちはシリアポートに到着した。しかし何かがおかしい。にぎやかだった町は静まり返っていた。全員はやけに妙な感じに襲われた。
「ここは活気付いていた港町だったが、隕石の落下によって避難しているようだ。それよりも早く船のある所に行くぞ!
レイオスがそう言うと、全員は船のある港の漁港にやってきた。

「なんだこれは!
レイオスが港のほうを見ると、隕石のかけらがごろごろと転がっていた。
隕石のかけらの中に、真珠色に光る宝石を発見した。
「これは何かの宝石のようだ。いちおう拾っておこう。」
レイオスは真珠のような宝石を袋に入れようとした、するとアメリアが宝石を手に取り見定めた。

「この宝石は、1000年前のヴィクトリアス城に安置されている真珠と同じものじゃ!
アメリアがレイオスにこう言った。
「ええっ!!1000年前に奪われた二つの宝石の中にあったものと一緒の宝石なのか!!
レイオスがそう言うと、全員が驚愕した!
「たしか・・!この真珠のような宝石は、空間の宝石と呼ばれているわ!
リュミーネがビックリしながら言った。
「そうじゃ。これが正真正銘の真珠。すなわち空間をつかさどる宝石じゃ!!
アメリアがそう言うと、全員が口をそろえてこう叫んだ!
「ええええええええええ!!!!

「でも、この石はどうやって使うか分からないな。現代に戻って調査開始じゃ。」
全員が時空船メルファに戻ろうとした、その時!?

「グリュオオオオオオオッ!!!

突然空から魔物が降り立った!
その魔物はこう言った
「その石、よこせ!空間の神様に、もって行く!!
その言葉にレイオスはこう答えた
「やるわけねぇだろ!この宝石は俺の者だ!
その言葉に魔物はこう言った
「渡せないなら、お前を殺す!!

レイオスたちと空から襲ってきた魔物とのバトルが始まろうとしていた・・・。

 

 

 

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