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終章〜破滅の新生神と勇ある者達〜 プロローグ

 突如としてフェルスティアに現れた創造と破壊の神を喰らい二極の力を手に入れたニルヴィニアの手により、フェルスティアは壊滅的な打撃を受けてしまった。戦いを挑んだクリスたちは生きたまま石に変えられてしまった。リリシアは死力を尽くしてニルヴィニアに深手を負わせることに成功し黄金郷から脱出を試みようとしたが神殿の入り口で力尽きてしまい、ニルヴィニアの魔力によって生み出されたヘルズヒューマノイドたちによって強制収容所へと連行されてしまった……。

 

 ニルヴィニアに支配された王宮から脱出を果たしたアメリアと大臣は、レミアポリスへと帰還することに成功した。

「大臣よ、なんとかレミアポリスに帰還できたな。しかしニルヴィニアとやらが地上界に魔物を放っている。この宮下町にも魔の手が広がっているかもしれぬ。そうだ…ファルスならなんとかしてくれるはずじゃ!!

レミアポリスの中央広場へと到着したアメリアはファルスに協力を要請するべく、魔力を頼りにファルスの捜索を開始する。二人がファルスの魔力の反応が強い場所に来た時、信じられない光景を目にする。

「あ…あれはファルスが使っていた槍ではないか!!まさか…まさか黄金郷に連れ去られたのかっ!?

魔力反応が強い場所に到着したアメリアたちが見たのは、無惨に転がったファルスの槍であった。最悪の事態を想定したアメリアは、恐怖のあまり呆然と立ち尽くす。

 「うぐぐ…ファルスと兵士たちが全滅したとなれば、レミアポリスがニルヴィニアの手に堕ちるのは時間の問題だ。大臣よ、今から魔法都市エルジェヘと向かうぞ。高度な魔法の技術を持つエルジェの者に救援を要請し、なんとしてでもレミアポリス陥落だけは防がなければならんからな。」

アメリアは再びロックバードを呼び、救援を要請するべく魔法都市エルジェへと向かうのであった……。

 

 一方強制収容所へと連れてこられたリリシアは、収容所の冷たい床の上で目を覚ます。

「こ、ここはどこなの?私は神殿の前で気を失っていたはずなのに。」

彼女が着ていた深紅のドレスは脱がされ、ただの布切れに着替えさせられていた。しかも魔法を使う者が脱走を図らぬよう、何者かによって魔力を吸い取られてしまっていた。

「こんな場所にいてられないわ!!こんな檻なんて私の魔法でぶっ壊して…あれ、魔法が使えないっ!!

リリシアは魔力で檻を壊そうとするが、魔力を失っているせいで魔法を放てなかった。魔法が使えず困惑の表情を浮かべる中、ひとりの魔術師らしき男がリリシアに話しかけてきた。

「魔法を使って檻を壊そうとしても無駄だ。ここでは魔力を持つ者は脱走を図らぬよう魔力を抜かれてしまっているようだ。つまり私たちは死ぬまで働かされるかもしれんな。つまり…脱獄は不可能ってわけだ。」

「そ…そんな!!ここから出られないとなれば私たちは一生強制労働ですって!?私は絶対に諦めないわ。奴らからどんな仕打ちを受けようが…私はここから脱獄する術を見つけ出してみせる!!

絶対に脱獄してやるというリリシアの言葉に、魔術師の男は否定的な返答を述べる。

「脱獄だと…そんなの無理に決まってるだろ。相手は人の形をした魔物だぜ。武器も魔法も使えない俺たち人間が束になって勝てる相手ではないんだ。」

二人が話し合っている中、リリシア達が収監されている檻の前にヘルズヒューマノイドが現れた。ヘルズヒューマノイドは持っていた鍵で扉を開け、収監されている全員に檻から出るようにと命令する。

 「仕事ノ時間ダ。早ク檻カラ出テ俺ニツイテ来イッ!!

ヘルズヒューマノイドの言葉の後、リリシア達は言われるがままヘルズヒューマノイドの後に続いていく。収容所から出た彼らを待ち受けていたのは、テレポーターによって連れてこられた地上界の人たちがニルヴィニアの楽園建設のために厳しい労働を強いられていた。

「紹介シヨウ…今日カラオ前タチト一緒ニ働イテモラウ新シイメンバーダ。言ッテオクガ…ヤル気ノ無イ奴ハ容赦ナク制裁ヲ加エルカラ覚悟シテオケ。デハオ前タチニハニルヴィニア様ガ疲レタ時ニ利用スル温泉ノ建設作業ヲシテモオウ…クレグレモ手ヲ抜カヌヨウニナッ!!

リリシア達に作業内容を伝えた後、ヘルズガーディアンは脱獄や勝手な真似をしないよう監視に回る。温泉の建設作業に入るように命令されたリリシアは、心の中で愚痴をこぼす。

「なぜ…なぜ私がこんな束縛された環境で働かなきゃいけないわけなのよ!!早く…早くここから出てやるっ!!しかし脱獄には相当数の人脈が必要だわ…なんとか看守にバレないように脱獄の為の戦力をあつめるしかなさそうね。」

リリシアとそのほかの地上界の人間たちが温泉を作るために働かされる中、リリシアたちが収容されている収容所から遠く離れた別の収容所では、ファルスとレミアポリスの兵士たちが働かされていた。

「ちくしょう…将軍であるこの俺がぼろ雑巾のような奴隷の服装に着替えさせられたうえ、こんな重労働を強いられるとはな。おのれニルヴィニアの奴め、地上界の者たちをここに連行して何を企んでいるんだ。」

別の収容所に連行されたファルスとレミアポリスの兵士たちは、地上界から連れてこられた人間たちとともに街を作らされていた。

「オラァッ!!ボヤボヤシテイル暇ハナイゾッ!!サッサト働カナケレバコノ俺ノ鞭ガトブゼッ!!

疲れて動けなくなった人を見つけたヘルズヒューマノイドは鞭を振るい、容赦なく痛めつける。

 「うぐぐ…すみませんっ!!

その残虐な一部始終を見ていたレミアポリスの兵士たちは、拳を握りしめ怒りに震えていた。

「ひどい…あの人は疲れて動くことができないのに…さらに働かせるなんてっ!!

「あの人のすでに疲労はピークに達している…このまま働かされ続ければ働けなくなる。つまり、使えない人材はここで死ぬ…というわけか。」

ただ無惨な光景を見ていることしかできないレミアポリスの兵士たちをよそに、ファルスは果敢にも鞭を振るうヘルズヒューマノイドに体当たりを仕掛け、男を救出する。

「あ…ありがとうございます!!

「礼には及ばん。レミアポリスの将軍である私がこのような凄惨な仕打ちを黙って見過ごすわけにはいかないからな。さて、こんなところさっさと逃げ……!!

その言葉の後、仲間がやられたことを聞きつけた監視役のヘルズヒューマノイドの棍棒がファルスの後頭部に直撃する。不意打ちを受けて気を失ったファルスは駆けつけたヘルズヒューマノイドによって収容所へと運ばれていく。

「コ…コノヤロウ!!ヨクモ俺ノ仲間ヲイタブッテクレタナ!!オ前ノヨウナ反逆因子ハ独居房送リダ…俺達ガココノ『ルール』ッテモンヲ叩キコンデヤルヨォッ!!

ヘルズヒューマノイドたちによって収容所へと運ばれたファルスは、反逆行為などを行った者を閉じ込めておくための独居房へと放り込まれた。独居房に放り込まれたファルスは両手両足に枷を付けられ、全身の自由を奪われてしまった。

「くそっ…なんで俺がこんな場所にいなきゃいけないんだっ!!いつになるかはわからんが…俺はかならず地獄のようなこの収容所から脱走し、神を名乗る不届き者のニルヴィニアを倒してやる!!

全身の自由を奪われたファルスの怒りの叫びが、虚しく独居房の中に響き渡った……。

 

 一方その頃レナードとともに砂漠を抜けたセルフィは、セルディア大陸の都市であるボルディアポリスへと辿りついた。しかしボルディアポリスもレミアポリスと同様、ニルヴィニアが放ったテレポーターが徘徊し、宮下町の人たちは恐怖のあまり逃げ惑っていた。

「な、なんということだ…ボルディアポリスも砂漠で見たさっきの魔物がうようよしているなんて!!セルフィ、ここは襲ってくる魔物たちを退けながら先を進みましょう。」

セルフィとレナードが宮下町に足を踏み込んだ瞬間、人間の気配を感じ取ったテレポーターが一斉に二人の前に群がってくる。

「オッ…コノ街ニ人間ガマダイヤガッタカ。」

「コッチノ男ハイイ労働力ニナリソウダ。遠慮ハイラン…人間トイウ下等生物ハ黄金郷ニ連行シテ楽園建設ノ奴隷トシテ働カセルダケダ!!

格好の労働力を見つけたテレポーターは無数の触手を伸ばし、セルフィたちを黄金郷へと連れ去ろうとする。粘着性の触手がセルフィの体に巻きつこうとしたその時、テレポーターが伸ばした触手が音も無く切断されていく。

「グ…目ニモ止マラヌ速サノ斬撃で触手ガ斬ラレタ!!何ダ今ノ一撃ハ!!

「悪いが、私たちは黄金郷で奴隷として働かされるわけにはいきませんよ。教えてあげよう…私は糸を自由に操る能力を持つ糸使いだ。卓越した糸使いの私にかかれば…非常に耐久性の低い縫い糸や衣服の繊維さえも武器となるのさっ!!貫糸(ピアッシング・スレッド)っ!!

レナードは見えない糸を放ちテレポーターの触手を切り落とした後、束ねた糸を鋭い棘に変えてテレポーターの群れを貫いていく。レナードが次々とテレポーターを倒していく中、テレポーターの一人が警報を鳴らし、援軍を呼び寄せる。

 「いかんセルフィ…援軍を呼ばれた!!協力してくれないかっ!!

レナードが協力してくれとセルフィに告げた後、ボルディアポリスを徘徊していたテレポーターたちが一斉に集まってくる。警報を聞きつけて集まってきたテレポーターの集団を前に、セルフィは拳を構えて攻撃態勢に入る。

「さぁかかって来なさい…私が相手になってやるわっ!!

セルフィは素早い動きでテレポーターの攻撃をかわしつつ、渾身の一撃を放ちテレポーターを破壊していく。セルフィが次々とテレポーターたちを破壊していく中、レナードは糸を自分の周囲に見えない糸を張り巡らせ、大技を放つ態勢に出る。

「セルフィが加勢してくれたおかげでだいぶ数が減ってきたようだな。残りは私が片付けるとしよう!!糸巻(タイフーン・スレッド)!!

レナードが静かに目を閉じて念じた瞬間、自身の周囲に張り巡らされた糸が大きく渦を巻き始める。その渦はやがて大きな竜巻となり、テレポーターの集団を次々と切り刻んでいく。

「クッ…コノ男!!竜巻ヲモ操レルトイウノカ……ピピーッ!!

「分からないなら教えてやろう…私の服の一部と風の魔力を使って糸の竜巻を生み出しただけさ!!

レナードの糸と風の魔力が合わさって生み出された大きな竜巻が消えた瞬間、無惨に切り刻まれたテレポーターの残骸が地面に降り注ぐ。

 「これで全部片付いたようだな。さてと…そろそろ大規模破滅に関する情報を集めるとしようか。」

襲ってきたテレポーターを打ち倒したセルフィはボルディアポリスの宮下町へと向かい、フェルスティアを襲った大規模破滅に関する情報を手に入れるべく情報収集を始めるのであった……。

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