蘇生の章2nd 〜天の世界と魂石(ソウルキューブ)〜 プロローグ

 

 メディスとの死闘の後、リリシアは魔界の王に即位した。魔界の王のための知識を身につけるべくリリシアと別れたクリスは、カレニア、ディオン、フィリスとともにソウルキューブに封印された魂を解放するための方法を探すべく、旅を続けていた。

 

 旅を続けるクリス達は、ソウルキューブについての情報を探すためボルディアポリスへと向かっていた。しかしその道中、急にフィリスが地面に蹲る。

「うっ……!!急にお腹がっ……!

「フィリス様…大丈夫ですかっ!!クリス、一刻も早くボルディアポリスへと急ごう。このままではフィリス様の命が危ない…。」

ディオンは地面に蹲るフィリスを背負うと、クリス達はボルディアポリスへと走っていく。ボルディアポリスへと到着した一行は、フィリスを診てもらうべく、病院へと急ぐ。

 「医師はいるか…。この者が腹痛を訴えているので、診察をお願いする!!

腹痛を訴えるフィリスをカレニアに託すと、ディオンは呼び鈴を鳴らす。呼び鈴の音が待合室の中に響いたあと、医師がディオの前に現れる。

「わかりました。では診察を始めますので、私に付いてきてください。」

医師の言葉の後、クリス達は診察室へと移動する。カレニアはフィリスをベッドに寝かせた後、医師がフィリスの診察に取り掛かる。

「うむ…診察の結果、彼女のお腹の中に赤ちゃんがいます。腹部が少し大きくなっているので、妊娠三か月の所だな。これ以上の旅は母子ともに負担がかかりますので、流産の恐れがあります。」

フィリスが妊娠している事実に、クリス達は驚きの表情を浮かべる。

「フィ…フィリス様のお腹の中に赤ちゃんがいたなんて……!?

「まさか…ずっとそのことを私に黙って私たちの旅に…。」

「なんということだ…フィリス様が妊娠していたとは…。」

クリス達が驚く中、フィリスが真実を話し始める。

 「ずっと黙っていてごめんなさい…。私、クリス達のお役に立ちたくて、ずっと私がウォルティア王の赤ちゃんを妊娠していることを秘密にしていたの。まだお腹が大きくなっていないから旅に出ても大丈夫だと思いましたが、そろそろ危ないみたいね。」

その言葉の後、ディオンはフィリスを背負い、クリス達にそう告げる。

「フィリス様は医師の言うとおり、ウォルティア王の子を妊娠している。私はウォルティアに戻り妊娠中のフィリス様の身の回りの世話をしなくてはいけないので、君たちと一緒に旅を続けることが出来なくなった。クリス、カレニアよ…レミアポリスへと向かい、その旨をアメリア様に報告してくるのだ……。」

「わかりました。フィリス様のことをアメリア様に伝えるべく、レミアポリスへと向かいます。フィリス様、そしてディオン…気をつけてね。」

クリスの言葉の後、フィリスを背負うディオンはウォルティアへと戻るべく移動術の詠唱を始める。ディオンはウォルティア城の風景を頭に浮かばせながら念を込めた瞬間、ディオンの体が徐々に転送を始めていく……。

 「クリスたちよ…あとは任せたぞっ!!移動術(ワープスキル)・テレポートっ!!

その言葉の後、ディオンの体が完全にウォルティア城へと転送される。クリスはソウルキューブの情報探しを一時中断し、レミアポリスへと向かうべく鞄からレイヴンの翼を取り出し、空へと放り投げる。

「レイヴンの翼よ、私たちをレミアポリスへと導きたまえ……。」

クリスがレイヴンの翼を空へと放り投げた瞬間、見えない風の力が巻き起こり、クリスとカレニアの体がレミアポリスへと導いていく。レイヴンの翼の効力によってレミアポリスの王宮前に到着したクリス達は、アメリアの待つ謁見の間へと向かうのであった…。

 

 謁見の間へと到着したクリス達は、フィリス様が妊娠していることを伝えるべく、クリスがアメリアの前に出て、その旨を話し始める。

「アメリア様…大切な話があります。実は…私と旅をしていたフィリス様が、ウォルティアの王との子供を妊娠していたのです。ボルディアポリスへと向かうとき、急にフィリス様が腹部を抱えてうずくまっていたので、病院で診察してもらったところ、フィリス様は妊娠していたのです。私たちはソウルキューブの調査を一時中断し、それを伝えるために戻ってまいりました。」

その事実に、アメリアはクリスにそう問いかける。

「それで…フィリス様は今どこにいるのだ……。詳しく教えてくれないか?

「フィリス様なら、ディオンとともにウォルティアへと戻りました。ウォルティアに戻ったら、妊娠中のフィリス様の身の回りの世話をすると言っていました…。アメリア様…リリシアがここに戻ってくるまで、私とカレニアだけで調査を行います。」

クリスがアメリアにフィリスのことを伝えると、カレニアがアメリアの前に出て、そう言う。

「アメリア様、心配はいらないわ…。ソウルキューブの調査のことは、私とクリスがいれば大丈夫よ。クリス、今から調査再開よ。ボルディアポリスの王宮に向かうわよっ!!

カレニアはクリスの手を引っ張り、ソウルキューブの調査を再開するべく、謁見の間を去って行った。しかしアメリアには心の中で何か引っかかるものがあった。

 「あと少ししたらリリシアが帰ってくる…か。三人だと少し不安だな。ここは魔界の王であるリリシアに少し無理を言わなければならないな…。待て…腕の立つ魔界の者がクリス達の旅に同行してもらうのも悪くはないようだな…。よし、今から魔界にいるリリシアに手紙を書くとしよう。リリシアならなんとかできるかも知れないからな……。大臣よ…私の寝室から羽ペンとインクが入っているレターセット一式を持ってまいれっ!

魔界にいるリリシアにフィリスが妊娠している旨を伝えるべく、アメリアは大臣にレターセットを持ってくるようにと命じると、大臣は急いで謁見の間を後にする。

「わっ…わかりました!!今すぐレターセットを持ってまいりますので、しばしお待ちをっ!!

その言葉の後、大臣はレターセットを取りに行くべくアメリアの寝室へと向かっていく。そして数分後、大臣がレターセットを手にアメリアの前に現れる。

「アメリア様、レターセットを持ってまいりました…。」

「大臣よ。それを私によこせ。魔界にいるリリシアという者に手紙を送りたいのだからな……。」

大臣が持ってきたレターセットを手に、アメリアは手紙を書くべく書物庫へと向かっていく。書物庫へと来たアメリアは、羽ペンとインクを取り出し、手紙を書く用意を始める。

 「さて…リリシア宛に手紙を書くとしよう。手紙を書き終えたら、ポストマンに渡せば魔界にいるリリシアのいるルーズ・ケープ王宮に配達してくれる。」

アメリアは羽ペンの先にインクをしみこませたあと、華麗な手さばきで紙に内容を書き込んでいく。手紙にリリシアに伝える内容を書き終えた後、手紙に封をし、大臣のもとへと持ってくる。

「大臣よ。この手紙を町の郵便局にいるポストマンに渡してくれ…。」

「御意。」

軽く一礼した後、大臣はリリシア宛の手紙を手に、郵便局へと向かっていく。郵便局へと到着した大臣はポストマンに手紙と発送代金を渡したあと、郵便局を去り、王宮へと戻ってきた。

「アメリア様、手紙を発送してまいりました。」

「ご苦労。大臣よ……今日はもう遅い。部屋で休むがいい…。」

アメリアは大臣にそう告げると、自分の寝室へと向かい、眠りに就いた……。

 

 手紙を発送してから数日後、魔界からの便りがアメリア様のもとに届けられた。大臣が郵便受けからその手紙を取り出すと、急いでアメリア様のもとへと走っていく。

「アメリア様!!魔界からお便りが届きましたぞっ!!

魔界からの便りを手にアメリアの寝室に来た大臣がそう言うと、アメリアは眠い目をこすりながら手紙を受け取り、読み始める。

「差出人はリリシアではなくガルフィス様のようだな。どんな内容が書かれているか楽しみだな…。」

アメリアは手紙の封を開け、中に入っている手紙を読み始める。

 

 「アメリア様…。ルーズ・ケープ王宮副魔界王のガルフィスだ。今日はあなたに報告したいことがあるのでこの手紙を送った。あなたの言っていた人材供出の件だが、魔界から腕の立つものが二人来てくれるとのことです。この二人がクリスたちの旅に役立てれば、光栄でございます……。言い忘れていたが、リリシアは今魔界の法律と魔導術の高等技術を学んでいる。アメリア様のもとに戻ってくるときには、彼女の魔力はさらに強くなっているだろう。では私はこれで……。」

 

 手紙を読み終えたアメリアは嬉しそうな表情でベッドから起き上がり、大臣にそう言った後謁見の間へと戻っていく。

「喜べ大臣よ…魔界から二人の者が来てくれるぞっ!!そのものたちがきっとクリスたちの助けになってくれることを願いたいものだな…。大臣よ、クリス達が戻ってきたらそのことを伝えるのだぞ!!

「わかりました…クリス達が王宮に戻ってきたら、そのことをお話しします。」

大臣はアメリアの後を追い、謁見の間へと向かうのであった。一方ソウルキューブの調査を続けるクリス達は、ボルディアポリス王宮にある書物庫でソウルキューブに関する内容が書かれている本を探していた。

 「クリス、これを見てみて…。ソウルキューブの魂を解放する方法を知る者は、フェルスティアよりはるか上空にあるといわれる天界にあり…って書かれているわ。でもどうやって天界に行けばいいのか分らないわ…。とりあえず、レミアポリスに戻ってアメリア様に相談しましょう。」

カレニアが持ってきた本をクリスに見せながらそう言うと、クリスは本をじっくりと見つめた後、カレニアにこう答える。

「確かに…わからない部分はアメリア様に聞けばわかるかも知れないわ。カレニア、一通り調べてからレミアポリスに戻り、アメリア様にこのことを報告しましょう。」

ボルディアポリスの書物庫で一通りソウルキューブのことについて調べた後、ボルディアポリスの書物庫で得た情報をアメリア様に伝えるべく、レイヴンの翼を天に放り投げ、レミアポリスへと帰還するのであった……。

 

 レイヴンの翼の効力でレミアポリスに到着したクリスたちは、アメリアのいる謁見の間へと向かい、ボルディアポリスでの調査の結果を報告する。

「アメリア様、ボルディアポリスでの調査を終え、戻ってまいりました。調査の結果、ソウルキューブの魂を解放する方法を知る者が天界にいるとの情報を得ました。しかし、天界へと行く方法を知らない今、どうする事もできない所存でございます…。」

かしこまった表情のカレニアがそう告げると、玉座に腰掛けるアメリアが静かに口を開く。

「天界へと行く方法か…それならエルジェの最長老なら何か知っているかもしれぬな。そうじゃ、先ほど魔界にいるガルフィス様から手紙が来たようだ。内容は魔界より二人の援軍が来てくれるとのことだ。リリシアとその仲間を加えれば、旅が少し楽になりそうだな……。」

その言葉に、二人は喜びの表情を浮かべる。

 「リリシアと一緒に魔界から二人の仲間が来るんですって……!?それは嬉しい限りですわ。」

クリス達が喜ぶ中、大臣がクリス達の前に現れる。

「うむ。アメリア様の言うとおり、魔界から腕の立つ者が二人来るそうだ。リリシアのことは私はよく知らないが、よろしく頼むぞ…。」

大臣の言葉の後、アメリアがクリス達にそう告げる。

「クリス、カレニアよ。今日は調査のほうでさぞかし疲れただろう…我が家に帰って休むがいい…。」

調査を終えたクリスはカレニアと別れ、疲れを癒すべくそれぞれの故郷へと戻るのであった……。

 

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