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蘇生の章2nd最終話 邪なる新生神は天と地を俯瞰する

 強力な炎の術で連続攻撃を仕掛けニルヴィニアを追い詰めていくリリシアであったが、あと一歩のところで超獄焔化(オーバーバースト)が解けてしまい、窮地に立たされてしまう。ニルヴィニアは裁きの礫を放ちリリシアに大きなダメージを負わせたが、間一髪のところでダークミストを発動させニルヴィニアから逃れることに成功した。リリシアを取り逃がし焦燥するニルヴィニアの前に、破壊の神であるデストラスが黄金郷に降り立った。ニルヴィニアの愚行に怒りの表情を浮かべるデストラスはあらゆるものを破壊する結界でニルヴィニアを苦しめるも、ニルヴィニアは光輪から全ての魔力を打ち消す光を放ちデストラスの結界を無力した後、捕食する鬼牙(プレデター・ファング)を発動させてデストラスを喰らい、地上界と天界を俯瞰する新生神へと変貌を遂げた……。

 

 強力な毒素を含む霧を放出し逃れたリリシアは神殿を抜けることに成功したが、先ほどの戦いで魔力を消費し、神殿の前に来たところで力尽きて倒れてしまった。一方地上界では謎の魔物の群れとの戦いを終えたファルスが王宮に戻ろうとしたその時、何者かによって王宮が上空に持ち上げられていた。それが新生神ニルヴィニアの仕業であると気づいたファルスは槍を構えて怒りの咆哮を上げた瞬間、彼らのニルヴィニアが現れた。ファルスは大規模破滅(カタストロフィ)を起こした張本人を前に果敢に挑むが、圧倒的な神の力の前に敗れ、兵士たちとともにニルヴィニアが創り出した浮遊大陸の強制収容所へと連行されてしまった……。

 

 ニルヴィニアの手中に堕ちたフェルスティアでは、創造の魔力で生み出されたテレポーターが奴隷確保の為に世界中を徘徊し、無差別に人間達を連れさっていく。テレポーターによって連れ去られた人間はレミアポリス王宮へと集められ、戦闘要員であるヘルズヒューマノイドたちによって強制収容所へと連行されていく。。

「クックック…地上界に送り込んだテレポーターのおかげで奴隷が次々とわらわのもとに集まってきているようだな。これだけ奴隷が集まればわらわの望む楽園を作るできそうだ。しかしあの小娘を殺し損ねたのは不覚だった…だが奴は裁きの礫を受けて致命傷を負っているのでそのうち死ぬだろう。」

ニルヴィニアは自らが生み出した魔物たちによって蹂躙されていくフェルスティアを眺めながら、鮮血の色に似たワインを飲みながら悦楽に浸る。一方黄金郷から脱出を果たしたセルフィはニルヴィニアと戦う仲間を探すため、セルディア大陸にある広大な砂漠の中を歩いていた。

 「リリシアは私に全てを託し…私を地上界に行かせてくれた!!だから今度は私があなたを助ける番よっ!!

セルフィは長い髪をリリシアから託された蒼いリボンを束ねた後、決意を胸に広大な砂漠を進んでいく。しかしニルヴィニアの生み出したテレポーターの集団がセルフィの前に現れ、セルフィを黄金郷に連行するべく襲いかかってきた。

「人間ヲ発見!!タダチニ黄金郷ヘト連行スル!!

「な…何をする気なのっ!!

セルフィの気配を察知したテレポーターは触手を伸ばし、セルフィを黄金郷へと連行しようとする。逃れるべく、セルフィは素早い身のこなしで拳の一撃を繰り出し、テレポーターの集団を撃ち落としていく。

「ピピーッ!!ゴミクズノクセニ攻撃シテキヤガッタ。最底辺ノゴミクズ共ハオトナシク奴隷トシテ黄金郷ニ連行サレテイレバイインダヨッ!!

その言葉の後、テレポーターの集団がセルフィを取り囲み力づくで連行しようとする。セルフィを追い込んだテレポーターは次々と触手をセルフィにからませ、身動きを奪う。

「は…離せっ!!

「捕獲完了…コレヨリ捕獲シタ人間ヲ黄金郷ヘト転送シマス……。」

テレポーターがセルフィを黄金郷へと転送しようとしたその時、突如セルフィを取り囲むテレポーターの体が締め付けられ、セルフィの転送を妨害する。

 「……かよわい娘を集団で追い詰めて袋叩きにするのはいただけませんね。醜い化け物には私の糸捌きで美しく華麗に引導を渡してやろう…貫糸(ピアッシング・スレッド)っ!!

突如セルフィの前に現れた青髪の青年は手から見えない糸を放ちテレポーターを縛り付け身動きを封じた後、束ねた糸を鋭い針に変えてテレポーターの集団を次々と貫いていく。

「窮地のところを助けていただき…ありがとうございます!!

「無事でよかった。自己紹介が遅れたね…私はレナード、熟達した糸使いだ。さっきの奴らは人間を触手で動きを封じた後、彼らの言う黄金郷と呼ばれる場所へと転送する魔物だ。私の予想ではこの地上を襲った凄まじい破滅の波動の後、突如発生し人間を次々と連れ去っていった。私の住んでいる街やボルディアポリスでもその魔物により黄金郷に連れ去られたんだ。私はその真実を知るために旅に出たんだ。」

レナードが自己紹介を終えた後、セルフィは簡潔に自分のことをレナードに伝える。

「私はセルフィと申します。ニルヴィニアを倒すため、天界からこの地上界に来ました。天界の中枢である黄金郷を奪い、地上界に破滅をもたらしあの得体の知れない魔物を放ったのは…全てニルヴィニアなのです。ニルヴィニアは創造の神を喰らい、自らを新たな創造の神と名乗り地上界征服に乗り出したのです。私は地上界から天界に来た勇気ある人たちと共にニルヴィニアと戦いましたが、仲間たちは全員生きたまま石に変えられ…生き残ったのは私だけになってしまいました。お願いです…ニルヴィニア討伐のために私の仲間になってくれませんか!!

仲間になって欲くれとのセルフィの言葉に、レナードは困惑気味の表情を浮かべながらセルフィに双伝える。

「ふむふむ…あなたの話はあまりよくわかりませんが、ニルヴィニアとやらが凄まじい破滅を引き起こした全ての元凶であるという事は確かなようですね。いいでしょう…私もあなたの旅に同行いたしましょう。まずはこの広い砂漠を抜け、ボルディアポリスへと向かいましょう。しかしあの得体の知れない魔物たちがまた私たちの前に現れるかもしれないので、気を抜かないようにな。」

糸使いのレナードを仲間に加えたセルフィはボルディアポリスを目指すべく、果てしなく広がる砂漠の中を進むのであった……。

 

 セルフィとレナードが砂漠の中を進む中、黄金郷によって天空へと持ち上げられたレミアポリスの王宮では、ニルヴィニアの持つ創造の魔力によって生み出されたヘルズヒューマノイドたちが王宮の中にいる人たちを強制収容所へと連行していた。

「キキキ…王宮ノ中ニイタ人間ドモハイイ労働力ニナリソウダ。サテ…ニルヴィニア様ノ楽園ヲ作ルタメニ我々ノモトデ働イテモラウゾ!!

数名の兵士と学者たちがヘルズヒューマノイドによって連行される中、謁見の間にいるアメリアと大臣は物陰に隠れ、ヘルズヒューマノイドをやり過ごしていた。

「アメリア様、一体王宮の中では何が起こっているのですか。突如王宮が上空に持ち上げられたり、得体の知れぬ奴らが入り込んできたりと…もう踏んだり蹴ったりですぞ。」

「大臣よ、王宮の中に入り込んできた得体の知れない奴らは口々に『ニルヴィニア』という名前を言っていたようだな。もしかするとニルヴィニアがこの王宮を上空に持ち上げたと私は睨んだ。そのニルヴィニアと言う奴が…あの建造物を地上界に降下させた張本人と言えよう。さて、これから我々はレミアポリスへと戻る方法を考え……っ!?

アメリアがレミアポリスに戻る方法を考えようとしたその時、王宮の中に新生神となったニルヴィニアが自らの創造の魔力で生み出した大勢の魔物を引き連れ、王宮の中に現れる。

 「クックック…これはいい王宮だ。地上界にこれほどの美麗なる王宮を作れる技術を持っているとはな。これからこの王宮は妾(わらわ)の城とし、新たな世界の都市を作り上げる!!しかしまだ足りぬ奴隷が足りぬっ!!妾の楽園を作り上げるための労働力下等生物の人間がっ!!魔物どもよこの腐りきった地上界にいるクズ共の人間から奪え壊せ傷つけ蹂躙するのだっ!!第二のヘルヘイムの実現のためにっ!!

ニルヴィニアの言葉の後、謁見の間に集められた魔物たちが次々と歓喜の声を上げる。アメリアは魔力の波長を消し、物陰からニルヴィニアの魔力を探ろうとする。

「うぐぐ…あの者がニルヴィニアなる者か。その体からとてつもないほどの魔力を感じる…どうやら奴はフェルスティアの人間でも魔界の者でもない。天界から来た天界人だ!!

「て…天界人だと!?ニルヴィニアと言う奴は地上界の遥か上空にあると言われる天界から来たというのかだが我々や他の者たちが生きる地上界を奴らの好きにはさせないですぞ!!アメリア様、まずはレミアポリスへと戻る方法を考えるのが先決だが、しかしここは中央大陸の上空だ。どう考えても我々には逃げ場はないようだ。」

大臣の言葉の後、アメリアがレミアポリスへと戻る方法を大臣に耳打ちする。

 「大丈夫だ…私の笛でロックバードを呼ぶことができればレミアポリスへと戻ることが可能だ。だが中枢である王宮が奴の手に堕ちた以上、我々は一体どうすればよいのか分からぬ。とりあえず、レミアポリスに到着次第これからのことを考えるとしよう。」

アメリアの言葉の後、フェルスティアに放たれたテレポーターが人間を連れて王宮へと戻ってくる。

 「テレポーターが奴隷をつれてきたようだな。その調子で妾の楽園を作るための労働力を掻き集めてくるのだ。」

その一部始終を見ていたアメリアは、大臣にニルヴィニアの目的を伝える。

「大臣よ…どうやらニルヴィニアがあの変な魔物を操り、地上界から人間を連れ去り王宮に連行されてきている…どうやら奴は連れてきた人間を楽園を作るための奴隷として働かせるつもりだ。もし奴らに見つかれば…私たちは奴隷として働かされるだろう。」

「ま…まさか!!あの魔物に連れてこられた人間は死ぬまでここで働かされるということなのですか!!まったくニルヴィニアと言う奴はなんて残虐なやつなんだっ!!

二人が物陰でやり過ごす中、ニルヴィニアと魔物たちは強制収容所の様子を見るべく謁見の間を後にする。ニルヴィニアたちが去った後、アメリアと大臣は急いで王宮の裏口へと走っていく。

「とにかく…王宮の外にさえ出ればロックバードを呼べる。大臣よ、なるべく王宮の中を徘徊する魔物たちに見つからぬようにするのだぞ。もし見つかって捕まれば…奴隷になり下がってしまうぞ!!

二人が裏口から王宮の外に出た後、アメリアは懐からロックバードを呼ぶ笛を取り出し、天に向かって吹き鳴らす。アメリアが笛を吹いてから数分後、笛の音を聞いたロックバードがアメリアと大臣のもとにやってくる。

「アメリア様…ロックバードが来ましたぞっ!!

「このロックバードは私が笛を吹くとすぐに駆けつける私の良きパートナーじゃ。さぁ…これから急降下してレミアポリスに帰還するぞ。大臣よ…振り落とされないようにしっかり掴まっているのだぞ!!

アメリアと大臣はロックバードの背中に乗り、ニルヴィニアの手に堕ちた王宮から脱出することに成功した。そんな中、ニルヴィニアから黄金郷の掃除を任されたヘルズガーディアン達は、傷だらけで倒れている紫色の髪の少女を見つけ、何やら話しあっていた。

「ムム…コンナトコロニ小娘ガ倒レテルゾ。相方、コイツ死ンデルノカ?

「死ンデハイナイ。心臓ハ確カニ動イテイル…ドウヤラ気ヲ失ッテイルダケダ。トリアエズコイツハ収容所ニ連行シテオクカ。人間ハ我々ニトッテ貴重ナ労働力ダカラナ。」

ヘルズガーディアンたちは神殿の前で倒れている紫の髪の少女を背負い、収容所へと向かうのであった……。

 

突如黄金郷とともに天界より現れた新生神ニルヴィニアにより、フェルスティアは完全に彼女の手中に堕ちてしまった。はたして人間界に降り立ったエンプレスガーデンの女帝・セルフィは共に戦う仲間を集め、ニルヴィニアを討つことができるのか!?

――地上界の運命は、一人の少女に託された……。

 

〜蘇生の章2nd 完〜

そして終章へ……

 

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