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蘇生の章2nd第九十三話 復活のイングリッド!!

 ジャンドラの部下であるバロールを退けたクリスたちは、ついにヘルヘイムの将である死霊王ジャンドラの待つ玉座の間へと辿りついた。一方その頃、エンプレスガーデンの者たちも死霊王ジャンドラを討つべく、ヘルヘイム王宮へと来ていた。

 

 セルフィとともにヘルヘイム王宮へと来たリリシアがふと周囲を見回すと、草むらに見覚えのある人影が倒れていた。

「むむ…あれは私がヘルヘイム大監獄で倒したはずのラダマンティスだわ。でももう死んでいるみたいね。まさか…クリスたちが倒したのっ!?

「う〜ん…倒されているってことは私たちが来るよりも先にヘルヘイム王宮に入っていった人がいるみたいね。よし、それじゃあ私たちも王宮の中に……っ!!

セルフィがヘルヘイム王宮へと歩こうとした瞬間、翼を生やした魔物たちがリリシアたちの周りを取り囲んでいく。魔物たちの中に、かつてブリスベン要塞で自爆したはずのイングリッドがそこにいた。

「あ…あなたはイングリッドっ!!ブリスベン要塞の戦いで自爆したはずなのになぜ生きているのよ!!

「ほう…誰かと思えばいつぞやの紫の小娘じゃないの。確かに私は死んだ…だが復活の玉を持っていたおかげで砕け散った体を復活し、再びジャンドラの部下になるためにここに戻ってきたのよ。さぁウイングデーモンどもよ、私に逆らう者たちに制裁を与えよっ!!

イングリッドの命令を受けたウイングデーモンたちは、鋭い爪を突きたててセルフィに襲いかかる。しかしセルフィは素早い身のこなしで攻撃を回避し、ウイングデーモンの鳩尾に正拳突きを放つ。

「はぁっ!!

セルフィの覇気を込めた拳の一撃は、ウイングデーモンの腹部に風穴を開けるほどの威力であった。セルフィが奮闘する中、リリシアは髪飾りを鉄扇に変えてセルフィの助太刀に入る。

 「セルフィ様…私も手伝うわっ!!まずは翼の生たあの厄介者を排除するわよ!!

二人はウイングデーモンの群れを蹴散らしながら、イングリッドの方へと向かっていく。

「くっ…なんて奴らなのっ!!私のウイングデーモンたちを全て倒してしまうとはここは私が直々に相手をして差し上げますわ!!

怒りに震えるイングリッドは棘の生えた尻尾を振り回し、セルフィとリリシアに攻撃を仕掛ける。二人はイングリッドの尻尾の一撃を素早い身のこなしで回避し、戦いの構えをとる。

「リリシアここは私が奴と戦うので、術でサポートの方お願い!!

リリシアにサポートをしてくれと告げた後、セルフィは素早い動きでイングリッドに詰め寄り拳の連続攻撃を放ち、イングリッドを押していく。

「うぐぐ…この私が小娘ごときにここまで追い詰められてたまるかぁっ!!

怒りに燃えるイングリッドは両手から無数の魔弾を放ち、セルフィに襲いかかる。セルフィは両手に魔力を集め、必殺の波動弾を放つ態勢に入る。

「精神と魔力を集中させ…あふれ出る魔力を弾丸に変え…敵に放つ!!

セルフィの放った波動弾は、イングリッドの放った無数の魔弾を打ち消しながらイングリッドの方へと進んでいく。イングリッドは波動弾を相殺するべく闇の波動を放とうとしたが、すでに手遅れであった。

「フン…貴様の攻撃などこの私の闇の魔力で相殺し…ぎゃああっ!!

波動弾の直撃を受けたイングリッドは大きく態勢を崩し、そのまま地面へと崩れ落ちる。大きく態勢を崩し身動きの取れないイングリッドに、詠唱を終えたリリシアがイングリッドに止めの術を放つ。

「イングリッド…今度こそあの世に送ってあげるわ!!ブレイズ・トルネード!!

リリシアが術を放った瞬間、イングリッドの周囲に荒れ狂う赤き炎の竜巻が発生する。赤き炎の竜巻に閉じ込められたイングリッドは体を焼かれつつも、赤き炎の竜巻から抜け出すべく翼を羽ばたかせて強風を巻き起こす。

 「うぐぐぐ…まだ戦いは終わっていない!!私は必ずあの小娘を葬り去ってみせる!!

イングリッドが翼を羽ばたかせて強風を巻き起こすも、竜巻の勢いはおさまることはなかった。その無駄な足掻きを見ていたリリシアは、イングリッドの方を指差しながら嘲笑する。

「アハハハハハッ!!無様ねイングリッド私を葬るどころか、逆に私に葬られる側になってしまったようね。さて、ジャンドラとの戦いに備えて無駄に魔力は使いたくないから、ここで止めといこうかしら!!

リリシアが指をぱちんと鳴らした瞬間、赤き炎の竜巻はさらに勢いを増してイングリッドを焼き尽くす。荒れ狂う赤き炎の竜巻が消えた瞬間、イングリッドの体は完全に焼き尽くされ灰と化す。

「ふぅ…なんとか魔力を消費せずにイングリッドに勝つことができたわ。さて、私達もヘルヘイム王宮の中に入りましょう。」

イングリッドとの戦いに勝利したリリシアがヘルヘイム王宮の中に入ろうとしたその時、突如巨大な岩石がリリシアの目の前に落ちてくる。それに気づいたリリシアがふと周囲を見回すと、そこには二人のヘルヘイムの巨人兵がエンプレスガーデンの者達の前に立ちふさがる。

「ジャンドラ様の命により、ヘルヘイム王宮の内部には…誰一人いれさせんっ!!

「王宮への入り口は封じた…侵略者よ、おとなしく降伏すれば危害は加えん!!

行く手を阻む二人の巨人兵がそう言い放った後、地面に手を当てて念仏を唱え始める。するとヘルヘイム王宮の周囲の陸地が隆起し、扉はおろか窓からの侵入も不可能となる。

 「あのでかい奴ら…ヘルヘイム王宮に突入する経路を封じてしまったわ!!セルフィ様、正面の他に王宮の中へと続く突入経路はないかな?

リリシアが他のルートはないかと尋ねると、セルフィは王宮に侵入できるルートが他にあるということをリリシアに告げる。

「私はヘルヘイム出身だから…ヘルヘイムの宮下町のことなら全て知っているわ。確か中央広場の噴水前にあるマンホールから入れる地下水道なら、奴のいる王宮に続いているわ。しかし地下水道はいまや魔物の巣窟よ…多少の危険はあるが何とかなるはずね。あの巨人兵たちなら私たちがなんとかするわ、あなたは先に王宮に突入してちょうだい。」

「ありがとう…地下水道からなら王宮に突入できそうね。セルフィ様、私は頼もしい仲間たちを助けるべく…ヘルヘイム王宮へと向かいますっ!!

リリシアが王宮を去った後、セルフィは雷帝の爪を身につけエンプレスガーデンの者たちとともに立ちはだかる巨人兵に挑むのであった……。

 

 一方その頃ヘルヘイムの将であるジャンドラと対峙するクリスたちは、ジャンドラの死霊の剣から繰り出される死霊の剣技に苦戦を強いられていた。

「クリスがジャンドラと戦っている間に、私の眼鏡でジャンドラの弱点などのデータを調べさせてもらったわ。奴の弱点は炎よ!!ここは私があなたの武器に炎の魔力を付加してあげるわ相手の弱点をつくことも戦略だからね。」

カレニアがクリスの持つ天帝の剣に炎の魔力を身に纏わせた瞬間、クリスの持つ天帝の剣が徐々に紅い色へと代わり、炎の属性を身につける。

「ありがとうカレニア…私が正面からジャンドラを攻撃するから、あなたは炎の術でジャンドラに追撃を加えてっ!!

クリスが真っ向からジャンドラに立ち向かう中、カレニアは炎の魔力を集め術の詠唱を始める。

「ほう…負けると分かっていて立ち向かってくるか。まぁよい、私の死霊の剣技で地獄に送ってやるわっ!!

ジャンドラは死霊の剣を構え、正面から立ち向かっていくクリスを迎えうつ。二人の剣は激しい火花を散らしながらぶつかり合い、つばぜり合いへと発展する。

「つばぜり合いに持ち込むか…だがこの勝負、ヘルヘイムの将である私が勝つ!!

「こんなところで負けるわけにはいかない…私はあなたを倒すっ!!

激しいつばぜり合いの末、ジャンドラの剣がクリスの剣を弾き返す。競り負けてしまったクリスは大きく態勢を崩し、その場に倒れ込む。

「な…何が起こっているのっ!?私の体が動かないっ!!

クリスが立ちあがろうとした瞬間、ジャンドラは死霊の魔力でクリスの影を縛り付け身動きを封じる。

「どうだ、動けないだろう。私は貴様の影に私の体の中にある死霊を送り影を縛り付けた。さて…そろそろ止めを刺すとするか。」

ジャンドラの死霊に影を縛られ動けないクリスの前に、剣を構えたジャンドラがゆっくりと近づいてくる。ゲルヒルデは死霊に影を縛られているクリスを助けるべく、光の魔力を両手に込めてまばゆい光を放つ。

「クリス…ここは私があなたをサポートします!!セイント・フラッシュ!!

ゲルヒルデが術を唱えた瞬間、両手からまばゆい聖なる光が放たれジャンドラの眼を眩ませる。それと同時に、クリスの影を縛っていた死霊が聖なる光によって消滅し、クリスは動けるようになる。

 「ありがとうゲルヒルデ…あなたのおかげで動けるようになったわ。しかもジャンドラは目がくらんでしばらく動けなくなっているわ…今が総攻撃をかけるチャンスよっ!!

ジャンドラが目が眩んで動けない間に、クリスは総攻撃を仕掛けるようにと仲間たちに告げる。

「リリシアの仇は…俺がとってやるぜっ!!俺のとっておき排熱弾で貴様を灰にしてやる!!

「ジャンドラよ、反魂術で俺を蘇らせてくれたことは感謝している。だが…俺は貴様に反旗を翻すっ!!

ディンゴがジャンドラに照準を合わせ、引き金を引き排熱弾を放つ。発射口から放たれた排熱弾は獄炎の熱線となり、ジャンドラの体を焼き尽くす。

 「がはああぁぁっ!!熱い私の体が焼けるぅっ!!!

ディンゴのボウガンから放たれた必殺の排熱弾は、ジャンドラに炎の大ダメージを与えていく。ディンゴが攻撃を終えた瞬間、エルーシュは激しい闇の連打でジャンドラに追撃を加える。

「かつてフェルスティア七大魔王最強の存在と呼ばれていた私の力…貴様の体で思い知るがいいっ!!

闇の魔力を纏った拳の一撃が、ジャンドラの体に次々と叩きこまれていく。エルーシュの連打を受けるたび、ジャンドラの口から死霊が抜け出していく。

「がはぁっ!!しまった私の体の中の死霊が抜け出していくっ!!貴様このままでは済まさんっ!!目が見えるようになったら真っ先に貴様を滅ぼしてやる!!

「ほう…やってみるがいい。先に言っておくが、貴様に私は倒せんっ!!

そう言い放った後、エルーシュは握りこぶしに闇の魔力を込めてジャンドラを殴り飛ばす。エルーシュの渾身の一撃を受けジャンドラが態勢を崩す中、詠唱を終えたカレニアが炎の術を放つ。

「怒れる炎よ…激しい爆発となりて悪しき者を焼き尽くさん…シャイニング・バン!

カレニアが術を唱えた瞬間、ジャンドラの周囲に激しい爆発が巻き起こる。爆発のダメージを受けたジャンドラは大きく吹き飛ばされ、体中に大きな傷を負う。

「おのれ貴様らぁ…よくもこの私をここまで痛めつけてくれたな!!よかろうならば私の最大の力で貴様らを滅ぼし生ける屍にしてくれるわっ!!

怒りの形相でクリスたちにそう言い放った後、ジャンドラは自らの体に眠る死の魔力を増幅させ邪悪な竜の姿へと変身する。

「さて…まずはあの伝説の武具を装備できる適合者から殺してやるとするか…。」

邪悪な竜の姿へと変貌を遂げたジャンドラはおぞましい雄たけびを上げてクリスたちの方へと向かってくる。その様子を見たカレニアは、クリスに隙を見つけて攻撃するようにと指示する。

「ジャンドラめ…まずは手始めに自らの脅威となる伝説の武具の適合者であるクリスを先に殺そうとしているわ!!クリス、ここは無理かもしれないけどなるべく攻撃は行わず、隙を見つけて攻撃するのよ!!

「わかったわ…カレニア、ここは私が奴を攻撃するから、あなたたちはサポートをお願いっ!!

クリスがカレニアにそう伝えた後、クリスは天帝の剣を構えて邪悪な竜と化したジャンドラに立ち向かっていく。強大な死の魔力を持つジャンドラを前に、クリスたちはジャンドラを打ち倒すことができるのか……!!

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