蘇生の章最終話 魔姫[リリシア]
戴冠の儀を終え、ついにリリシアは魔界の王となった。戴冠式が終わった後、その夜王宮では新たな王のための宴が行われた。歌姫による歌と、踊り子たちによる華麗な踊りで、宴は盛大に行われた。宴が終わった後、クリスたちが寝室に向かおうとしたその時、宴の席で酒を飲みすぎたフィリスとガルフィスが飲み潰れてしまっていた。泥酔状態の二人を寝室に運んだ後、クリスたちは眠りにつくのであった…。
王宮で一晩を過ごしたクリスたちであったが、フィリスとガルフィスは昨晩の宴で酒を飲みすぎたのか、二日酔いで寝込んでいた。
「うう…頭が痛いわ……。」
「だ…誰か水を持ってきてくれ……。」
ベッドに横たわるフィリスとガルフィスは、二日酔いの症状である頭痛にうなされていた。クリスが水の入ったコップを二人に手渡すと、コップに入った水を一気に飲み干す。
「ふぅ…。水を飲むと少しは頭の痛みが和らいでいくようだ……。今日はしばらくベッドから離れられそうにないな……。」
ガルフィスがそう言った後、再びベッドに寝転がる。リリシアはガルフィスにそう告げた後、クリスたちを連れて寝室を去る。
「ガルフィス様、それでは私はクリスたちと共に朝の散歩に出かけて来ますわ……。」
「そうか……。リリシアよ、朝食の時間までには必ず戻ってくるのだぞ…。」
ガルフィスがクリスたちを見送った後、再びベッドに寝転がり、眠りについた。
朝の散歩に出かけたクリスたちは、朝の宮下町を軽やかに歩いていた。クリスたちの前を歩くリリシアに、外にいる民衆たちが手を振って見送る。
「あっ!リリシア様だっ!」
「御覧なさい…あのお方が魔界の王であるリリシア様よ……。そしてその後ろにいる人たちはリリシア様と共にメディスを打ち倒した仲間たちよ…。」
民衆たちの声に、リリシアは民衆たちの方に振り返り、手を振りながら笑顔を見せる。その様子を見たクリスたちは、リリシアにそう言う。
「みんながリリシアの事を魔界の王と認めてくれているわ…。」
「よかったわね、リリシアっ!!」
クリスとカレニアの言葉を聞いたリリシアは、恥ずかしさのあまり顔が赤くなる。
「うふふ……♪魔界の王になったからみんな私を見る目が変わったようだわ…。みんな、そろそろ朝食の時間だわ。王宮に戻りましょう……。」
再び民衆たちに笑顔を見せた後、リリシアはクリスたちは朝食をとるべく、王宮へと戻っていった。
クリスたちが朝食を済ませた後、先日の宴で酒を飲みすぎたことが原因で二日酔いになったフィリスとガルフィスの様子を見るべく、寝室へとやってきた。
「みんなおはよう…。水を飲んでから頭痛が治まったわ。しかしまだ体がふらふらしてベッドから動けないわ。ガルフィス様のほうはもう酔いがさめて元気になったわ…。」
元気になったフィリスがそう言うと、リリシアが笑顔の表情で答える。
「とりあえず頭痛が治ってよかったですわ。とりあえず私たちはソウルキューブの事について調べるために書物庫へと行ってきます。ではお体のほうに気をつけてね……。」
フィリスにそう告げた後、調べ物をするべく書物庫へと向かっていった。書物庫へとやってきたクリスたちは、ソウルキューブの事について書かれている本を探すことにした。
「なかなか見つからないわね……。あれ、この本は一体何かしら……?」
ソウルキューブのことについて書かれた本を探しているうちに、リリシアは埃にまみれた本を見つけた。リリシアはそれを机に置き、埃を払うと、表紙に書かれた文字が見え始める。
「何々……表紙には魔界予言書と書いているわ。悪趣味そうな題名だけど、さっそく読んでみるわ……。」
リリシアは恐る恐るページを開くと、そこには不気味な内容が書かれていた。
<<魔界予言書>>【新たなる魔界の王の項】
『魔界を統べる黒き竜打ち倒せし女、魔界の王と成りし時、白き王復活し、魔獄界より邪悪なる五人の戦乙女降臨し、白き王、魔界の政権握る。白き王、魔界の王となった後、新たなる魔界の王は白き王の子を孕み、魔獄界に堕つ……。』
魔界予言書を読み終えたリリシアは、その内容の馬鹿馬鹿しさに笑みがこぼれる。
「まさかねぇ……黒き竜を打ち倒せし女ってもしかして…私のことかしら?しかしながら可笑しな話ね…。そんな話私が信じるわけないでしょ…あはは♪」
リリシアのその言葉に、カレニアが答える。
「リリシア、予言書って言うのは大体嘘が多いから、気にしちゃいけないわ。すべてが予言どおりになるとはいかないからね……。そんな悪趣味な本は本棚に戻しておいたほうがいいわ。」
カレニアの言葉を聞いたリリシアは、悪趣味な内容が書かれている魔界予言書を本棚に戻し、再び目的の本を探すことにした。その時、クリスがなにやらソウルキューブに関する事が書かれた本を見つけ、机に置くと、ディオンがその本のページを開き始める。
「クリス、いい本を見つけたな。さっそく私が読んでやろう。」
ディオンはソウルキューブに関することが書かれている『ソウルキューブ考察(著:天界研究会)』という本を読み始める。そこにはソウルキューブに関することがいろいろと書かれていた。
<<ソウルキューブ考察(著:天界研究会)>>
『ソウルキューブとは死人の魂の結晶である。恐怖から世界を救った人間が何かしらの事故、災害、殺害によってその人の命の灯火が消えたとき、その死体が稀に、四角い塊となる。そう、それこそがソウルキューブと呼ばれ、まさに魂の塊でもある。その光彩は見るものを魅了し、王族の間で高値で売買されるという。ソウルキューブの魂を解放するためには、はるか上空にあるといわれる世界、天界に住む人々が知っているという噂なのだが、それは定かではない……。』
ディオンがその本を読み終えた時、クリスたちは何かを掴んだのか、嬉しそうな表情であった。
「その本を呼んでみる限り、天界に行けば何かしらのヒントが得られるかも知れないわっ!!」
ソウルキューブの魂を解放させる方法を知るものは天界に住む人々だということを知ったクリスたちは、さっそく天界に関する情報を知るべく、書物庫の中にある本を調べたが、天界について書かれた本は見当たらなかった……。
「天界に関する情報が書かれた本が見当たらないわね。本を探している間にもう夕方だわ。一旦寝室へと戻りましょう。フィリス様とガルフィス様はもう酔いが醒めているかもしれないからね。」
書物庫を後にしたクリスたちは、寝室へと戻ってきた。しかしクリスたちが来たころにはガルフィスとフィリスの姿がなかった。
「あれ?ガルフィス様とフィリス様がいない…。まだ体がふらふらして動けないのだが……。」
ディオンが不思議に思ったその時、酔いが醒めて動けるようになったフィリスとガルフィスが寝室の中に入ってきた。
「書物庫での調べ物はどうだった…?いい情報は見つかったかしら……。」
フィリスがそう問いかけると、嬉しそうな表情でクリスが答える。
「情報は見つかったわ。ソウルキューブに関する情報がねっ!!ソウルキューブの魂を解放するヒントは天界にあるということを『ソウルキューブ考察』という本で見たわ。フィリス様、地上界に戻った後、早速天界について調べましょう!!
その言葉に、フィリスは了承のサインを送る。
「わかったわ。地上界に戻った後、天界に関する情報を得るため、各地を回りましょう。一つでも情報を手に入れ、天界へと向かいましょう!!」
フィリスとクリスとの会話を聞いていたガルフィスは、二人の会話に割ってはいる。
「君たち…書物庫で調べ物をしてきたのか…?クリスの言うとおり、ソウルキューブの魂の解放する方法を知っているのは天界に住む人々が知っているという噂だが、それ以上は知らぬ。地上界の者なら多少はそのことを知っているかも知れぬな……。そろそろ夕食の時間だ、大広間へと向かおう。」
書物庫でいろいろと調べ終わった後、クリスたちは夕食をとるべく、大広間へと向かっていった…。
大広間で夕食を取った後、クリスたちは寝室へと向かい、就寝の準備を済ませていた。明日魔界を発つクリスたちは、リリシアと会話をしていた。
「私たちは明日、地上界へと戻るわ。リリシア、一ヵ月後また会いましょう……。」
クリスの言葉に、リリシアが不安そうな表情で答える。
「私…魔界で王の勉強している間、天界の事について調べるために旅を続けるんだね……。私は魔界の王のための勉強をがんばるから、クリスたちは体に気をつけて旅を続けてね……。」
クリスとの会話が終わり、次にカレニアがリリシアに話しかける。
「リリシア…辛いことがあったら私たちの事を思い出してね。」
カレニアの言葉の後に、次にフィリスがリリシアにそう言う。
「私がリリシアと初めて出会った時は、意見が合わず衝突していたわね。あの時は反省しているわ。今のあなたは仲間と協力できる優しさを身に着けたから、離れていても決して一人じゃないわ。」
フィリスの言葉の後、最後にディオンがリリシアにそう告げる。
「リリシアよ、出会った時は敵同士だったが、今は我々の仲間だ。ソウルキューブを手に入れるために、あなたは命を懸けて魔王に立ち向かい、打ち倒してくれた…。かつてフェルスティア七大魔王として恐れられていたあなたが、今では魔界の王だ……。私はリリシアが私たちとの旅を通じて成長してくれたのが、私はとてもうれしく思っているぞ……。」
クリスたちが言葉を伝えた後、リリシアは嬉しさのあまり、目に涙を浮かべていた。
「ぐすっ……みんな、私の事をそこまで思ってくれていたなんて…。私…これから一ヶ月、魔界の王としてがんばるからねっ……!!みんなも…これからの旅、がんばってね…ぐすっ……。」
涙を流しながらリリシアがクリスたちにそう言うと、クリスがこう答える。
「ありがとう…リリシア……。私、あなたが一ヵ月後、再び地上界に来てくれるのを楽しみに待っているわ。もう夜も更けてきた頃だし、そろそろ寝ましょう…。」
クリスたちはベッドに寝転がり、眠りについた。
そして夜が開け、朝が訪れた。クリスたちは地上界に戻るための準備を済ませた後、ガルフィスがクリスたちの前に現れ、そう言う。
「今日は君たちが地上界に戻る日だったな。リリシアよ、早速だが彼らを大広間へと連れて行ってあげなさい…。」
ガルフィスの命を受け、リリシアはクリスたちを大広間へと案内する。クリスたちを大広間へと案内した後、リリシアは魔界の王のみが持つことの出来る黄金の魔杖を手に、床に大きな円を描きはじめる。
「黄金の魔杖よ……彼らを地上界の都市、レミアポリスへと導きたまえッ!!」
リリシアが魔力を込めると、描かれた円が光り輝き、転送陣と化す。
「さぁクリスたちよ、この転送陣に乗り、地上界へと帰るのだっ!!」
クリスたちが転送陣の上に乗ると、転送陣の光がさらに輝きを増し始める。クリスを除くメンバーがレミアポリスへと転送された後、クリスはリリシアに別れの言葉を言い残し、レミアポリスへと転送を始める。
「リリシアっ!!元気でいてね……。一ヵ月後、あなたが来るのを待っているわ!!」
「さようなら……クリス!!一ヵ月後、必ず地上界にくるからねっ!」
硬い握手を交わした後、クリスの体が完全にレミアポリスへと転送された。全員が転送を終えた瞬間、役割を終えた転送陣は効力を失い、消え去った。
「別れの言葉は済ませたか…リリシアよ。さてと、これから一ヶ月、王のための勉強を始めよう。主に法律、高等魔術の知識を学ぶための勉強だ…勉強は明日から始めよう。」
ガルフィスが魔界の王としての勉強のことを伝えた後、リリシアが答える。
「はい…。ガルフィス様。明日から初めてください。私はもっと知識をつけなきゃいけないからね…。」
リリシアはこれから、王としての勉強に励むのであった……。
一ヵ月後、クリスたちと共にソウルキューブの魂を解放するために……。
長い話ですが、ご愛読ありがとうございました。